「ディーゼル微粒子捕集フィルター」の版間の差分

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フィルターの素材は、熱に強い[[セラミック]]が用いられてきたが、コストの軽減を図るために[[ステンレス]]を用いるものもある。
フィルターの素材は、熱に強い[[セラミック]]が用いられてきたが、コストの軽減を図るために[[ステンレス]]を用いるものもある。


なお、従来のディーゼルエンジンに使用されるエンジンオイルにはエンジンを早期の摩耗から保護するため[[亜鉛]]化合物や清浄剤・酸中和剤として[[カルシウム]]化合物などの灰分(アッシュ)を含む金属系添加剤が多く配合されていたが、これらの成分は排気ガスとともに燃えずに排出され浄化装置に悪影響(早期の目詰まりや浄化性能の低下など)を与える。そのためDPF車付き車両には粒子状物質浄化システムに対応すべくアッシュ成分を大幅に低減した低灰分オイルが使用される。低灰分オイル規格としては日本では軽量車用としてDL-1、重量車用としてDH-2が,アメリカではCJ-4、欧州のACEA規格では乗用車,軽負荷商用車用のCカテゴリ全般と高負荷商用車用のEカテゴリのE6,E9などがそれにあたる。
なお、従来のディーゼルエンジンに使用されるエンジンオイルにはエンジンを早期の摩耗から保護するため[[亜鉛]]化合物や清浄剤・酸中和剤として[[カルシウム]]化合物などの灰分(アッシュ)を含む金属系添加剤が多く配合されていたが、これらの成分は排気ガスとともに燃えずに排出され浄化装置に悪影響(早期の目詰まりや浄化性能の低下など)を与える。そのためDPF車付き車両には粒子状物質浄化システムに対応すべくアッシュ成分を大幅に低減した低灰分オイルが使用される。低灰分オイル規格としては日本では[[JASO規格]]の軽量車用としてDL-1、重量車用としてDH-2が,アメリカでは[[API規格]]のCJ-4、欧州の[[ACEA]]規格では乗用車,軽負荷商用車用のCカテゴリ全般と高負荷商用車用のEカテゴリのE6,E9などがそれにあたる。


== 種類 ==
== 種類 ==

2011年9月14日 (水) 15:29時点における版

日産・M9Rエンジンに装着されるDPFのカットモデル
日産・M9Rエンジンに装着されるDPFのカットモデル
マフラーに装着されたDPF
マフラーに装着されたDPF

DPF(Diesel particulate filter)とは、ディーゼルエンジン排気ガスに含まれる粒子状物質を減少させる装置(フィルター)である。トラックバストラクターなどのマフラーなどに装着する。2003年八都県市で実施された排気ガス規制が実施された際には、基準を満たさない車両に半ば強制的に装着が義務づけられたことから注目された。最近では鉄道車両気動車の一部にも装着されている。日本語訳としては、JASOにおいてディーゼル微粒子捕集フィルターという名称が用いられている。

機構

基本的には、粒子状物質をフィルターで捕捉するだけである。ただし、フィルターが目詰まりを起こして機能が低下するため、ヒーターなどで燃焼再生させるセルフクリーニング機能が付加されている場合もある。また、触媒を組み合わせることにより、酸化されやすい一酸化炭素炭化水素、粒子状物質を除去するものもある。この触媒方式では、フィルターの前段に強力な酸化触媒を置くことで、排気ガス中の窒素酸化物 (NOx)をより二酸化窒素 (NO2) の多い状態にし、二酸化窒素の強力な酸化性能で粒子状物質を燃焼させるというジョンソン・マッセイ社(イギリス)が開発したCRT(連続再生式フィルター、Continuously Regenerating Trap)が初めて実用化のめどを示した[1]

フィルターの素材は、熱に強いセラミックが用いられてきたが、コストの軽減を図るためにステンレスを用いるものもある。

なお、従来のディーゼルエンジンに使用されるエンジンオイルにはエンジンを早期の摩耗から保護するため亜鉛化合物や清浄剤・酸中和剤としてカルシウム化合物などの灰分(アッシュ)を含む金属系添加剤が多く配合されていたが、これらの成分は排気ガスとともに燃えずに排出され浄化装置に悪影響(早期の目詰まりや浄化性能の低下など)を与える。そのためDPF車付き車両には粒子状物質浄化システムに対応すべくアッシュ成分を大幅に低減した低灰分オイルが使用される。低灰分オイル規格としては日本ではJASO規格の軽量車用としてDL-1、重量車用としてDH-2が,アメリカではAPI規格のCJ-4、欧州のACEA規格では乗用車,軽負荷商用車用のCカテゴリ全般と高負荷商用車用のEカテゴリのE6,E9などがそれにあたる。

種類

DPFは再生方式により以下の種類に分類できる。

連続再生方式
CRTに代表される方式で、フィルタに捕集しながら再生を行う理想的な方式。CRTなどは、電気など外部からのエネルギーの補填を必要としないので自己再生方式とも呼ぶ。ウォールフロー型のため、PMの低減率は概ね9割を超え比較的高く、酸化触媒の作用によりCO、HCにも低減効果がある。
再生するためは、酸化触媒内の温度を二酸化窒素を生成するのに必要な摂氏250-300度程度に上昇維持させる必要があり、この温度維持のために排気ガスの熱エネルギーやポスト噴射(燃焼工程後の追加噴射)した燃料を触媒内で燃焼させることによって得た熱を利用する。再生に使うポスト噴射は多少の燃費の悪化を伴う上、燃料の一部がシリンダー壁に付着してエンジンオイルを希釈するという問題がある。そのため、オイル管理を適切に行う必要がある。
なお、再生可能な温度に達しないまま走行を続けるとフィルタが詰まり,さらにこの状態で高速走行あるいは高負荷運転を行うと溜まった粒子状物質が急激に燃焼、その燃焼熱でフィルターの耐熱温度(約600度程度)を超えてしまいフィルタが溶損する。したがって、稼働のためには、酸化触媒とフィルタの温度制御が重要である。
連続してエンジンに負荷をかければ使用中に再生が行われるが、アイドリングや短時間の運転を繰り返すと排気温が上がらないため再生が進まない。フィルターが詰まってくると警告灯が点灯するようになっている。一部にはすすの堆積量を表示できるものもある。車両の運行等の使用中に再生できない場合は手動で再生する。エンジン回転を上げて、排気温度を上昇させる方法で行う。再生には数分~数十分の時間を要する上、通常は走行等ができないため、燃料と時間のロスを伴う。
また、酸化触媒が、軽油内の硫黄分から触媒内で生成されるサルフェート(硫酸塩)の被毒に対して弱いため、S50などの低硫黄軽油の使用が推奨されている。
なお、既存エンジンにも装着可能な後付タイプとエンジン製造時に装着されエンジンシステムに統合された一体型の2種が存在するが、後付タイプでは温度維持を排気ガスの熱のみに頼っており、市街走行など排気温度が上がりにくい条件下では再生が効かないなど稼働条件が限定されるため、コモンレール式噴射システムを併用することで触媒とフィルタの温度制御を細かく行え稼働条件の制限が少ない一体型が主流となっている。
間欠再生方式
排気圧力をセンサー感知して、フィルタが目詰まりを起こす前に自動で新しいフィルタに切り替え,もう一方で捕集している間に電気ヒータによって高温でPMを燃焼させる方式である。エンジンの運転状態に左右されることなく再生を行える利点はあるもののフィルターを自動で切り替える装置が複雑かつ大型になることと,再生用ヒーターを稼働させるために大容量オルタネータや大容量バッテリが必要なことから搭載スペースに余裕のある大型車にしか装着できない欠点がある。なお、酸化触媒を装備しないため、CO、HC、NOxの低減効果はないが、軽油内の硫黄分の影響を受けないため硫黄分の多いS100以上の軽油も使用できる。
また、これに似た方式として、目詰まり警報を行うものの、フィルターの交換装置を持たず、警報時に運転者が外部電源式のヒータを機動させて再生を行う手動式のものも存在する。こちらのものは、自動型より装置自体が簡単かつ小型で追加の電気装置も不要なため後付けしやすい利点があるが、反面走行中は一切再生が出来ずPMが蓄積される一方になるため、一回の再生で走行できる距離が短く(100km前後)長距離走行ができない欠点がある。
添加剤再生方式
燃料中にセリア(酸化セリウム、CeO)などの触媒を添加し、粒子状物質と触媒とをより接近させることで粒子状物質の酸化を促進することにより再生するやり方。装置自体は比較的単純でコストも安価だが、触媒を定期的に給油する必要がある。

外部リンク


脚注