フーシ

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フーシ[1]またはフシ[2]アラビア語: حوثیون‎、英語: Houthis)は、イエメン北部サアダ県から発展し、北部を拠点に活動するイスラム教シーア派の一派ザイド派の武装組織である[1]

1990年代にイエメン北部を基盤とするザイード派宗教運動「信仰する若者」が発展し、フセイン・バドルッディーン・フーシ師が中核となるが、2004年9月に治安当局により殺害され、「フーシ派」と呼ばれるようになる。正式名称は「アンサール・アッラー」(神の支持者)である[3][4]。現指導者はフセインの異母弟であるアブドルマリク・アル・フーシ[5][6](1982年生まれ)。

2004年から2010年までイエメン軍と断続的に戦闘を繰り返す。2011年イエメン騒乱に乗じ、サアダ県を占領して拠点とする。2013年から南部に勢力を伸ばし、2014年9月首都サヌアに侵攻、以来権限拡大を進めてきた。2015年1月、アブド・ラッボ・マンスール・ハーディー大統領が辞意を表明したことを受けて、政府の実権を完全に掌握、事実上のクーデターを遂げた[2]。2月にハーディー大統領が辞意を撤回したため現在イエメン軍及びそれを支援するサウジアラビア主導の連合軍と内戦中。

スローガンは「神は偉大なり。アメリカに死を。イスラエルに死を。ユダヤ教徒に呪いを。イスラムに勝利を」[7]であり、イランとの連携もあってイスラエルに恐怖感を与えている。

国営サバ通信(アラビア語: وكالة الأنباء اليمنية‎、英語: Saba News Agency)によると、フーシは2月6日議会を強制的に解散。スンナ派政党やハーディー前政権の幹部も立ち会う中、「憲法宣言」を発表した。発表された内容は、(1)暫定統治機構として5人からなる大統領評議会を発足させ最長2年間にわたる統治を始める(2)議会に代わる立法機関として、551人で作る暫定国民評議会を設立する(3)大統領評議会構成員候補は、フーシの同意を条件に暫定国民評議会で選ばれる(4)内閣を新たに発足させる(5)現行憲法は「憲法宣言」と矛盾しない範囲で維持される、などとなっている[8][2][9]

サヌアを含めた北部・中部を実効支配しているが、南部・東部のスンナ派部族はフーシへの反発を強めており[2]アラビア半島のアルカーイダISILはフーシへの抗戦や殲滅を呼びかけている[10]イスラム世界のスンナ派諸国も反発を強めており、サウジアラビアなどのスンナ派諸国の連合軍は国連憲章に基づく自衛権[11]を理由にイエメンへの軍事介入を開始し、スンナ派諸国が多数を占めるアラブ連盟イスラム協力機構の他、トルコなどの非アラブのスンナ派イスラム諸国も軍事作戦の支持を表明した[12][13][14]

支配地域の拡大には、イランの協力があるといわれており、首都サヌアではイランの輸送機が頻繁に見られる。

2015年3月2日、第3の都市タイズの支配を固めた[15]アリー・アブドッラー・サーレハ前大統領とも蜜月関係にあったものの、その後サーレハはサウジに接近。裏切られた形となったフーシは2017年12月4日にサーレハを殺害したことを公表した[16]

2017年5月、国内のコレラ感染が深刻化したことを踏まえて非常事態を宣言[17]

弾道ミサイルの発射[編集]

2017年11月以降、複数回にわたり周辺国へ弾道ミサイルを発射した。サウジアラビアに向けとして少なくとも2度発射。1度目はキング・ハーリド国際空港を狙い[18]、2度目はサウジ南西部のハミースムシャイトに向けてたものとなったが、いずれも目的には命中せず、サウジアラビア政府はミサイルを撃墜したと発表した[19]アラブ首長国連邦に向けては、同国西部で建設中のバラカ原子力発電所に向けて弾道ミサイルを発射。フーシ側は、「標的に命中させた」と主張するもののアラブ首長国連邦は、目標に到達しておらず発射の情報は虚偽と否定している[20]

フーシは、独力で生産・保有する弾道ミサイルを「ブルカーンH2」と命名して運用しているが、公表されたビデオから観察できるミサイルの外見はイラン製の地対地巡航ミサイル「スーマール」(ロシア製巡航ミサイルKh-55を改造したもの)と酷似しており、イランの影響力を示唆するものとなっている[21]。2017年12月14日、アメリカのニッキー・ヘイリー国連大使は、イランが武器を供給している具体的な証拠としてフーシが発射した弾道ミサイルの残骸を提示。武器の供給時期は不明としながらも、イランによる武器の供給が国連安保理決議の違反だと指摘している[22]

参考資料[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b イエメン政府庁舎を反政府勢力が占拠、首相辞任で停戦合意”. AFP (2014年9月22日). 2015年1月24日閲覧。
  2. ^ a b c d イエメン:シーア派武装組織が掌握…暫定統治機構開設へ”. 毎日新聞 (2015年2月7日). 2015年2月13日閲覧。
  3. ^ イエメン空爆を招いた過激派「フーシ派」の正体 イランとサウジアラビアの代理戦争の行方(前篇)JB Press 2015年4月9日
  4. ^ 松本 太松本 太 Futoshi Matsumoto 世界平和研究所 主任研究員。東京大学卒。在エジプト大使館参事官、内閣情報調査室国際部主幹、外務省情報統括官組織国際情報官を経て、平成25年より現職。
  5. ^ イエメン、民兵が大統領宮殿を制圧 シーア派系ザイド派”. 日本経済新聞 (2015年1月21日). 2015年1月24日閲覧。
  6. ^ 民兵組織がイエメン大統領宮殿を制圧、公邸を襲撃”. AFP日本語版 (2015年1月21日). 2015年1月24日閲覧。
  7. ^ イエメン空爆を招いた過激派「フーシ派」の正体 イランとサウジアラビアの代理戦争の行方(前篇)JB Press 2015年4月9日
  8. ^ Revolutionary Committee issues Constitutional Declaration organizing governance rules during Yemen transitional period”. イエメン国営サバ通信 (2015年2月6日). 2015年2月13日閲覧。
  9. ^ イエメン、シーア派民兵組織が政権掌握 米政府など非難”. AFP日本語版 (2015年2月7日). 2015年2月13日閲覧。
  10. ^ ISIS gaining ground in Yemen, competing with al Qaeda
  11. ^ The Royal Embassy of Saudi Arabia, Washington, DC, USA
  12. ^ "Arab League's joint military force is a 'defining moment' for region". Los Angeles Times. 29 March 2015. Retrieved 3 April 2015.
  13. ^ "OIC supports military action in Yemen". Arab News. 27 March 2015. Retrieved 6 April 2015.
  14. ^ Turkey supports Saudi mission in Yemen, says Iran must withdraw
  15. ^ イエメン情勢Q&A:フーシの侵攻で内戦の瀬戸際JB Press 2015年3月24日
  16. ^ “イエメンの反政府武装勢力、サレハ前大統領の「殺害」を発表”. AFPBB News. フランス通信社. (2017年12月4日). http://www.afpbb.com/articles/-/3154120 2017年12月4日閲覧。 
  17. ^ イエメン、コレラの拡大止まらず、1カ月で600人死亡 朝日新聞デジタル(2017年6月3日)2017年6月4日閲覧
  18. ^ ホーシー派によるサウジアラビアのキング・ハーリド国際空港へのミサイル攻撃について日本国外務省ホームページ(2017年11月4日)2017年12月9日閲覧
  19. ^ サウジ、イエメンからの弾道ミサイルを撃墜CNN(2017/12/01)閲覧
  20. ^ 建設中の原発にミサイル?=シーア派組織主張、政府は否定 時事通信社(2017年12月3日)2017年12月9日閲覧
  21. ^ JSF「UAEの原子力発電所にフーシ派がイラン製巡航ミサイルで攻撃」 週刊オブイェクト(2017年12月4日)2017年12月9日閲覧
  22. ^ 米大使、イラン武器供給の「証拠」提示 CNN(2017年12月15日)2017年12月15日閲覧
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