アクロス・ザ・ユニバース

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アクロス・ザ・ユニバース
ビートルズ楽曲
収録アルバム ノー・ワンズ・ゴナ・チェンジ・アワ・ワールド英語版
英語名 Across the Universe
リリース
  • 1969年12月12日 (1969-12-12) (Album "No One's Gonna Change Our World")
  • 1970年5月8日 (1970-05-08) (Album "Let It Be")
録音
ジャンル サイケデリックフォーク
時間
  • 3分47秒 ("No One's Gonna Change Our World" version)
  • 3分45秒 ("Let It Be" version)
  • 3分28秒 ("The Beatles Anthology 2" version)
  • 3分38秒 ("Let It Be...Naked" version)
レーベル
作詞者 レノン=マッカートニー
プロデュース

ノー・ワンズ・ゴナ・チェンジ・アワ・ワールド英語版 収録曲
  • アクロス・ザ・ユニバース
  • (ビートルズ)

(1)

(2)
レット・イット・ビー 収録曲
ディグ・ア・ポニー
(A-2)
アクロス・ザ・ユニバース
(A-3)
アイ・ミー・マイン
(A-4)
ミュージックビデオ

アクロス・ザ・ユニバース」 (英語: Across the Universe) は、ビートルズの楽曲で、1969年に発売されたWWFへのチャリティ・アルバム『ノー・ワンズ・ゴナ・チェンジ・アワ・ワールド英語版』に収録された。レノン=マッカートニー名義であるが、実質的にはジョン・レノンによって書かれた楽曲。1970年に発売されたオリジナル・アルバムレット・イット・ビー』には、別アレンジの音源で収録された。

背景・構成[編集]

「アクロス・ザ・ユニバース」の歌詞は、レノンの当時の妻であるシンシア・レノンが延々と喋り続けることに由来している。1967年のある夜にレノンはそんなシンシアに腹を立て、寝室を出て階下に降りたところで冒頭の"words are flowing out like endless rain into a paper cup" という一節が浮かび、しばらく考えた末に一気に歌詞が書き上げられた。このことについてレノンは、「ベッドでシンシアの隣に寝そべっていたときのことだ。僕はイライラしていた。きっと彼女がどうでもいいことを延々と喋り続けていたからだろう。僕の耳には彼女の言葉が、尽きることのない流れのように、幾度となく聞こえてきた。階下に降りた瞬間に、それがイライラの歌から宇宙の歌へと変わった。職人技なんて関係ない。あの曲は勝手に出来上がったのさ。」と回想している[2][1]

本作は1967年後半から1968年初頭にビートルズのメンバーが超越瞑想に興味を寄せたことに影響しているとされており、繰り返し歌われる "Jai Guru Deva Om…" は、サンスクリット語で「我らが導師、神に勝利あれ」(神に感謝を)の意で、マハリシ・マヘーシュ・ヨギの師にあたるグル・デヴに感謝を捧げるマントラである[3][1]

楽曲は、ヴァースのあとに「Jai Guru Deva Om…」というフレーズが後に、「Nothing's gonna change the world」というフレーズを3回繰り返すという構成になっている。3つのヴァースでは、それぞれ「歓びの波」、「落ち着かない風」、「百万の太陽の輝き」について歌われている[1]

後にレノンは、「実際のところ、最高傑作かもしれない。呼び名はどうであれ、良い詩だよ。僕が好きなのは、メロディ抜きでも単体で成り立つ歌詞。メロディを必要としなかったら、詩みたいに読めるだろう。」と語っている[1]

レコーディング[編集]

1968年2月のセッション[編集]

1968年2月にビートルズはアビー・ロード・スタジオに集まり、インドでの瞑想修行中に発売するシングルに収録する予定の楽曲のレコーディングを行っていた。ポール・マッカートニーは「レディ・マドンナ」、レノンは「アクロス・ザ・ユニバース」を書き、いずれの楽曲も同じく「ヘイ・ブルドッグ」CITEREF同年に公開されたアニメ映画『イエロー・サブマリン』で使用されたのち、1969年に発売された映画のサウンドトラック盤に収録された。やジョージ・ハリスン作の「ジ・インナー・ライト」のボーカル・トラックと共に2月3日から11日の間にレコーディングされた。

「アクロス・ザ・ユニバース」は、2月4日にアビー・ロード・スタジオの第2スタジオで開始された[1]。この日のセッションでは6テイク録音され、テイク数のナンバリングを途中で誤り、テイク3から繰り上がってテイク4からテイク7とされた[4][1]。ベーシック・トラックは、レノンがアコースティック・ギター、ハリスンがタンブーラ英語版リンゴ・スタートムトムという編成で録音された[1]

オーバー・ダビング用にテイク7が選ばれ、トラック2にハリスンによるタンブーラで演奏したドローン、トラック3にレノンのダブルトラック処理を施したボーカルを録音。ここで女性のボーカルが必要だと判断したメンバーは、スタジオの外で待っていた2名のファン(リジー・ブラヴォーとゲイリーン・ビース)を招き、バッキング・ボーカルを担当させた[1]。その後、レノンのボーカルとギター、スターのトムトムをトラック1、ハリスンのタンブーラとファン2名のバッキング・ボーカルをトラック2にピンポン録音し、テイク8を作成[4]。このテイク8にベースオルガンドラムスがオーバー・ダビングされた[1]

しかし、レノンはアレンジに満足せず、テイク8にオーバー・ダビングしたベース、オルガン、オルガンを除去。代わりにロータリースピーカーを通したエレクトリック・ギターとハーモニー・ボーカルを加えた[1]。2月8日にモノラル・ミックスが一度制作された[5][1]

メンバーは、シングルとして発売する楽曲を「レディ・マドンナ」と「ジ・インナー・ライト」に決定し[注釈 1]、本作と「ヘイ・ブルドッグ」はシングル曲候補から外された。その後、同年9月に映画『イエロー・サブマリン』で使用された「ヘイ・ブルドッグ」「オール・トゥゲザー・ナウ」「オンリー・ア・ノーザン・ソング」「イッツ・オール・トゥ・マッチ」の4曲の新曲[注釈 2]とともにEPとして発売する案[注釈 3]があり、1969年3月13日には改めてモノラル・ミックスが作成されたが、EP発売の話が立ち消えとなった[6]

アルバム『ノー・ワンズ・ゴナ・チェンジ・アワ・ワールド』収録バージョン[編集]

1968年2月のレコーディング時にスパイク・ミリガンが、スタジオに立ち寄って本作を聴いた。そこでミリガンは、世界自然保護基金のチャリティ・アルバムの話をメンバーに持ちかけた。メンバーはこの提案に賛同し、1969年1月にチャリティ・アルバムのためのモノラル・ミックスが作成された[7]。このモノラル・ミックスでは、チャリティ・アルバムの趣旨に合わせるために楽曲の冒頭とフェード・アウト部分にSE(鳥の鳴き声)が加えられた[8]。その後10月2日にステレオ・ミックスが、SEが入っていないミックスとSEが入っているミックスの2種類が作成された。2種類のうち後者は、テープの回転速度が上げられたことにより、オリジナルのDからE♭とキーが高くなった[9][1]。1969年12月にチャリティ・アルバム『ノー・ワンズ・ゴナ・チェンジ・アワ・ワールド英語版』が発売され、初めて楽曲が発表される形となった[9]

なお、チャリティ・アルバムでは、SEが入ったミックスが収録され、のちに1979年にイギリスで発売された『レアリティーズ』、1980年にアメリカで発売された『レアリティーズ Vol.2』と同年に発売された『ビートルズ バラード・ベスト20』、1988年に発売された『パスト・マスターズ』にも収録された。なお、1969年1月に作成されたモノラル・ミックスは、2009年に発売された『ザ・ビートルズ MONO BOX』にコンパイルされた『モノ・マスターズ』で初収録となった。

アルバム『レット・イット・ビー』収録バージョン[編集]

1969年1月より行われたゲット・バック・セッションにて本作も採り上げられ、翌年に公開された映画『レット・イット・ビー』にレノンが本作を演奏している映像が含まれている。しかし、トゥイッケナム映画撮影所でのリハーサルで演奏されたのみで、のちにアップル・スタジオで行われたレコーディングでは採り上げられなかった。このため、映画の内容に沿ったサウンドトラックを制作することを依頼されたグリン・ジョンズは、1970年1月5日に1968年2月にレコーディングされた音源を使用してリミックスを施した[9]。「デビュー当時のようにオーバー・ダビングを一切行わないアルバムを制作する」というコンセプト[10]に沿うために、バッキング・ボーカルと鳥の鳴き声を除去した。しかし、このアルバムの出来にメンバーが納得しなかったことから、このアルバムは未発表となった[11]

その後、1970年3月下旬と4月上旬にフィル・スペクターの再プロデュースにより、テープの回転速度が下げられてオーケストラとコーラスがオーバー・ダビングされ[12]、曲のキーもDからD♭に変更された。このアレンジは、1970年5月に発売されたアルバム『レット・イット・ビー』に収録された[12]。なお、ビートルズのアルバムに収録されたのは、このアレンジの方が先である[1]

他のバージョン[編集]

1996年に発売された『ザ・ビートルズ・アンソロジー3』に、テイク2が収録された。この音源では、ギターとボーカル、スワラマンダラ英語版、アコースティック・ギターとタンブーラという編成となっている[1]

2003年に発売された『レット・イット・ビー...ネイキッド』には、オーケストラやコーラスのオーバー・ダビングが除去され、レノンのアコースティック・ギターとリード・ボーカルを主体としたシンプルなアレンジになっている。なお、チャリティ・アルバムや『レット・イット・ビー』に収録された音源とは異なり、キーは元の音源と同様のDとなっている。

2018年に発売された『ザ・ビートルズ (ホワイト・アルバム)〈スーパー・デラックス・エディション〉』のCD 6の22曲目には、テイク6が収録された。この音源では、レノンのギターでの弾き語りとスターのトムトムのみのシンプルな構成となっている[1]

評価[編集]

音楽評論家のリッチー・アンターバーガー英語版は、本作について「ビートルズで最も繊細かつ広大無辺なバラードの1つ」「アルバム『レット・イット・ビー』のハイライトにあたる」と高く評価する一方で、音楽評論家のイアン・マクドナルド英語版は「あからさまに幼稚な呪文」と酷評している[13]

また、レノンも本作のレコーディングに不満を持っており、1980年のPLAYBOY誌のインタビューで「録音がうまくいかなかった。」「ギターも僕も調子が狂っている。」と語り、さらに「ポールは無意識のうちに僕の名曲を台無しにする。みんなはポールの曲には一生懸命取り組むのに、どういうわけか僕の曲の時だけ実験的なことをしたり、だらけたりする。」とメンバーを非難している[2]

2008年2月4日米東部時間午後7時(日本時間5日午前9時)に、NASAが設立50周年を迎えることを記念して北極星へ向けて本作が発信された[14][15]。マッカートニーとレノンの未亡人であるオノ・ヨーコは、この計画を賞賛した。なお、地球から北極星の距離は約431光年であることから、北極点に本作が到着するのは2439年ごろとされている[16]

パーソネル[編集]

※特記がない限り、出典はイアン・マクドナルド英語版の著書[17]

参加ミュージシャン[編集]

『ノー・ワンズ・ゴナ・チェンジ・アワ・ワールド』『パスト・マスターズ』収録テイク

『レット・イット・ビー』収録テイク

  • ジョン・レノン - リード・ボーカル、アコースティック・ギター、エレクトリック・ギター
  • ポール・マッカートニー - ピアノ
  • ジョージ・ハリスン - タンブーラ
  • リンゴ・スター - マラカス、バスドラム
  • フィル・スペクター - ストリングス合唱団

『ザ・ビートルズ・アンソロジー2』収録テイク

『レット・イット・ビー...ネイキッド』収録テイク

  • ジョン・レノン - リード・ボーカル、アコースティック・ギター、ロータリースピーカーを通したエレクトリック・ギター
  • ジョージ・ハリスン - タンブーラ
  • リンゴ・スター - バスドラム

『ザ・ビートルズ (ホワイト・アルバム)〈スーパー・デラックス・エディション〉』収録テイク

  • ジョン・レノン - リード・ボーカル、アコースティック・ギター[1]
  • リンゴ・スター - トムトム[1]

スタッフ[編集]

収録アルバム[編集]

初期ヴァージョン

バード・ヴァージョン

『レット・イット・ビー』ヴァージョン

オーヴァー・ダビングのトリミングされたヴァージョン

カバー・バージョン[編集]

この他、三井不動産レジデンシャルがテレビCM内でこの曲を採用し、様々なアーティストがカバーしている。

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ 3月15日にシングル盤『レディ・マドンナ』(B面「ジ・インナー・ライト」)として発売された。
  2. ^ いずれも1969年1月に発売されたアルバム『イエロー・サブマリン』に収録。
  3. ^ A面に「オンリー・ア・ノーザン・ソング」と「ヘイ・ブルドッグ」、そして「アクロス・ザ・ユニバース」、B面に「オール・トゥゲザー・ナウ」と「イッツ・オール・トゥ・マッチ」を収録する予定だった[6]
  4. ^ 『ザ・ビートルズ (ホワイト・アルバム) (スーパー・デラックス・エディション)』に付属のブックレットに記載のクレジットでは、マッカートニーの担当はベースのみとなっている[1]

出典[編集]

参考文献[編集]

  • Howlett, Kevin (2009年). The BeatlesThe Beatles in Mono』のアルバム・ノーツ [ブックレット]. Apple Records.
  • ハウレット, ケヴィン (2018年). ビートルズザ・ビートルズ (ホワイト・アルバム) (スーパー・デラックス・エディション)』のアルバム・ノーツ [ブックレット]. アップル・レコード.
  • Lewisohn, Mark (1988). The Beatles Recording Sessions. New York: Harmony Books. ISBN 0-517-57066-1 
  • Lewisohn, Mark (1996). The Complete Beatles Chronicle. Chancellor Press. ISBN 0-7607-0327-2 
  • MacDonald, Ian (2005). Revolution in the Head: The Beatles' Records and the Sixties (Second Revised ed.). London: Pimlico (Rand). ISBN 1-84413-828-3 
  • Sheff, David (2000). All We Are Saying. St Martin's Griffin. ISBN 0-312-25464-4 
  • Everett, Walter (1999). The Beatles as Musicians: Revolver Through the Anthology. New York, NY: Oxford University Press. ISBN 0-19-512941-5 

外部リンク[編集]