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強襲揚陸艦

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アメリカ海軍ワスプ級強襲揚陸艦バターン(USS Bataan, LHD-5)

強襲揚陸艦(きょうしゅうようりくかん、Amphibious assault ship)とは、揚陸艦のうち、輸送ヘリコプター及びエア・クッション型揚陸艇を始めとした各種上陸用舟艇を搭載・運用する能力を持つ艦のことである。特徴としては、大規模なヘリコプター運用能力と全通飛行甲板が挙げられる。また大半は垂直離着陸機(STOVL機)を搭載・運用することによる揚陸支援攻撃能力をも持つ。

広義にはヘリコプターのみを搭載運用し、揚陸能力をヘリコプターのみに依存しているヘリコプター揚陸艦も強襲揚陸艦と呼び、狭義には船体内にウェルドックを持ち、上陸用舟艇の搭載・発進機能とヘリコプターによる空輸上陸機能を併せ持つ軍艦のことを指す。

歴史

世界初の強襲揚陸艦 

日本陸軍が建造した神州丸は上陸用舟艇の母艦として高い能力を持ち、艦載機をカタパルト発進させて航空支援を行なわせる機能も持ち合わせるなど、今日の強襲揚陸艦の先駆者的存在である。存在秘匿のため龍城(丸)、MT(船)、GL(船)などのさまざまな名称が使われた。日本陸軍内での艦種名は特殊船とされた。

空母から発展した強襲揚陸艦

ヘリコプターの実用第1号は1939年アメリカ合衆国で初飛行した、シコルスキー社製のVS-300である。アメリカ海軍はすぐにヘリコプターを対潜哨戒や捜索・救難に使用した。第二次世界大戦後ヘリコプターが発達し搭載力が増大するにつれ、太平洋戦争で大規模な上陸戦を何度も経験したアメリカ海軍はヘリコプターを使用した迅速な揚陸作戦の検討を開始した。

この案に沿って朝鮮戦争後の1955年に、余剰になっている護衛空母セティス・ベイ」を強襲ヘリコプター航空母艦(CVHA)に改装することが行なわれた。更に1959年から正規空母エセックス級3隻(ボクサープリンストンヴァリー・フォージ)の固定翼機運用能力を撤去して揚陸艦に改装した。この3隻は満載排水量3万トンに達し、ヘリコプター30機とアメリカ海兵隊の兵員約1,500名を収容でき、ヘリコプター揚陸艦(LPH)と呼ばれるようになった(1959年にセティス・ベイもLPHに類別変更)。

同様にイギリス海軍においてもコロッサス級軽空母2隻(オーシャン、シーシュース)を空母の類別のまま第二次中東戦争においてヘリコプター揚陸任務に用いて成功をおさめ、この成果を基に余剰となったセントー級軽空母3隻(アルビオン、ブルワーク、ハーミーズ)をコマンド母艦(commando carrier・イギリス海軍でのLPHに相当)に改装して運用した。

この能力や飛行甲板・艦橋配置などの外観は、その後、アメリカで新造されたイオー・ジマ級7隻(1961年、満載排水量18,000トン)、タラワ級5隻(1976年、満載排水量39,000トン、LHA)、ワスプ級7隻(1989年、満載排水量40,000トン、LHD)、アメリカ級2012年、満載排水量45,000トン、LHA)に引き継がれている。そしてイオー・ジマ級からは垂直離着陸機の運用も可能となった。

空母からの改装ヘリコプター揚陸艦やイオー・ジマ級は、実戦に投入するとヘリコプターの離着艦が困難な悪天候下では揚陸作戦が行えないという弱点が明らかになった。この弱点を克服するため、タラワ級以降ではドック式上陸用舟艇発進機能も併せ持つこととなり、ここに狭義の強襲揚陸艦が誕生した。

上陸作戦の主要機能を単艦で保有

タラワ級とワスプ級では、ヘリコプターと垂直/短距離離着陸機(S/VTOL機)の運用能力だけでなく、エア・クッション型揚陸艇や上陸用舟艇を運用できるウェルドックも有することで主力戦車も揚陸でき、また、揚陸指揮艦の機能を備える他、補給物資の搭載能力を大きく備えることによって給兵艦としての能力もある程度付与されているなど、単艦で空海2つのルートから自己完結した敵前上陸作戦が行なえるようになっている。

21世紀に入ると、フランスミストラル級韓国独島級揚陸艦スペインフアン・カルロス1世など、タラワ級と同様に全通甲板とウェルドックを共に持つ艦が各国で建造されるようになった。

主な強襲揚陸艦

アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 アメリカ海軍式の艦種分類記号では下記の記号が当てられる。

LPH(Landing Platform, Helicopter )、ヘリコプターによる人員の輸送・揚陸を主体とするヘリコプター揚陸艦
LHA(Landing Helicopter Assault )、LPHに艦内ドックを装備、揚陸艇による重装備の揚陸も可能に、狭義の強襲揚陸艦。
LHD(Landing Helicopter Dock )、LHAのドック容積を拡大し、揚陸艇運用能力を強化したもの。狭義の強襲揚陸艦。

また、アメリカ海軍が運用する強襲揚陸艦は、大きさが第二次世界大戦期の正規空母ほどもあり、ハリアーIIなどの固定翼機を運用することもできる。

大日本帝国の旗 大日本帝国

イギリスの旗 イギリス

イギリス海軍オーシャン(HMS Ocean, L12)

イタリアの旗 イタリア

オーストラリアの旗 オーストラリア

スペインの旗 スペイン

大韓民国の旗 韓国

フランスの旗 フランス

フランス海軍ではミストラル級を「Bâtiment de Projection et de Commandement」と呼んでおり、BPCと略されることが多い。日本語に直訳すると「指揮・戦力投入艦」という意味になる。

ロシアの旗 ロシア

  • ミストラル級強襲揚陸艦準同型艦 フランスから2隻の購入を契約し、2隻の自国ライセンス生産を計画している。2012年2月1日に1番艦の建造が開始された。ロシアは本級に攻撃・防衛用の対空・対艦・対潜ミサイルの搭載を希望しており、フランス海軍のものとは武装や船体構造が異なる準同型艦となる予定である。

関連項目