式日
式日 | |
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ritual | |
監督 | 庵野秀明 |
脚本 | 庵野秀明 |
原作 |
藤谷文子 『逃避夢』 |
製作 | 鈴木敏夫 |
製作総指揮 | 徳間康快 |
ナレーター |
松尾スズキ 林原めぐみ |
出演者 |
岩井俊二 藤谷文子 村上淳 大竹しのぶ |
音楽 | 加古隆 |
主題歌 |
Cocco 『Raining』 |
撮影 |
長田勇市 岩井俊二 |
編集 | 上野聡一 |
製作会社 | スタジオカジノ |
配給 | 徳間書店 |
公開 |
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上映時間 | 128分 |
製作国 |
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言語 | 日本語 |
前作 | ラブ&ポップ |
次作 | キューティーハニー |
『式日』(しきじつ、SHIKI-JITSU、英語: ritual)は、2000年に公開された日本映画。庵野秀明監督による実写映画である。「式日」は「儀式を執り行う日」を意味する。
概要
2000年(平成12年)12月7日に東京都写真美術館にて初公開された。第13回東京国際映画祭最優秀芸術貢献賞を受賞している。
スタジオジブリの第2レーベルとして設立されたスタジオカジノの第1回作品である。そのためか、ジブリコレクションのひとつとしてビデオ・DVD化されている。DVD-Videoに関しては、後に英語字幕がつけられ、アメリカ合衆国でもリリースされる。
不幸な家庭と過去の体験に絶望し、現実世界を隔離して生活を送る少女の孤独で病的な精神世界の変遷を、非常に芸術的な映像で描き出した作品である。ゆえに「映画興行で儲からない、赤字になる」と庵野が言ったものの、徳間書店の徳間康快が制作を強く勧めたため、映画になった。
撮影前に鈴木敏夫にシナリオに関する意見を尋ねた際、「アート系の映画なんだからもっと謎が謎を呼ぶ、ちょっと難しいラストにしたらどうかな」と提案をしたところ、庵野は「じゃあそうします」と笑ったという。
アニメ作品が中心であった庵野監督が、それまでの実写作品はDVカメラによるものだったため、35mmフィルムの実写映画作品は、これが初めてである。
美術館での上映となったことが象徴するように、芸術性の高い作品であり「エンターテインメント」や「大衆・万人受け」を全く目指しておらず、庵野は「100人中1人が、この映画を観て良かった」と思える映画作品作りに徹しており、作中でもそうした映像を批判する。
藤谷文子の書いた小説『逃避夢』が原作で、藤谷本人が主演した。この原作も、藤谷自身の家族問題が下地になっている。また、映画監督の岩井俊二がこの映画で初めて俳優として出演(カントクこと庵野秀明の役として)している。作中、岩井俊二がワープロを打っているシーンは、仕事の文章を真面目に作っていると庵野が語っている。
物語の舞台およびロケ地は、庵野の出身地である山口県宇部市である。作品中では基底として標準語や関西弁が使用されているものの、後半では効果的に山口弁が使用されている。
作品は岩井俊二の影響を強く受けているように見えるとも言われており、全体的に岩井俊二テイストの音楽、編集、テロップなどが出てくるが、その映像の構図、撮り方などは庵野独特のものに他ならない。庵野特有の映像、カットが実写にも取り入れられ、映像作家として、彼の世界を垣間見ることができる。
第27回東京国際映画祭の「庵野秀明の世界」で、東京国際映画祭で再び上映されている。
スタッフ
- 製作総指揮:徳間康快
- 製作:鈴木敏夫
- 原作:藤谷文子
- 監督・脚本:庵野秀明
- 特殊技術:尾上克郎(特撮研究所)
- 撮影監督:長田勇市
- 撮影:大沢佳子
- 照明:長田達也
- ビデオポートレート撮影:岩井俊二
- 音楽:加古隆
- 音楽監督:岸健二郎
- 録音:橋本奏雄・清水和法
- 衣装:伊藤佐智子
- ヘアメイク監督:柘植伊佐夫
- 美術:林田裕至
- 編集:上野聡一
- 音響効果:伊藤進一、林彦祐
- 助監督:大崎章、谷口正晃
- VRX Supervisor:石井教雄(オムニバス・ジャパン)
- 挿入歌作・編曲:川井憲次
- プロデューサー:高橋望・南里幸
- エンディングテーマ:Cocco「Raining」
メインキャスト
あらすじ
「カントク」は、宇部市に里帰りする。鉄路と巨大なコンビナート地帯、人影のないシャッター通りのアーケード商店街に、コンクリート製の電柱ばかりが目立つ寂れた街並み。物語の冒頭、赤いブラウスとヒールを纏い、線路に横たわう若い女性に気がつく。
彼女は「明日は私の誕生日なの」と語る。カントクはそれまで、東京で映像作家としての仕事をして、大きな成功を得たが、ヒットによって生まれた無力感や、本当は実写をやりたいという不満を溜め込んでいた。物語の全期間を象徴する31日間の、「私の誕生日」の前の日を共に送りながら、彼女とカントクは次第に心を開いてゆく。
カントクは、自分の作品の素材として、彼女の日々を撮り始めるようになる。眠らない彼女。毎朝6時に決まって、住居としている廃墟ビルの屋上に上って、身を投げる勇気を試す「儀式」。入ってはならないと言われたビルの地下室は、水浸しの床に赤い傘と赤いろうそくが一面に並ぶ。
二人で生活し始めるうち、当初は被写体としてしか捉えていなかったカントクだが、彼女がうちに秘める喪失感、自分を捨てた母親への憎しみ、常に比較の対象にされてきた姉への嫉妬など…虚構の世界に引きこもる動機に直面し、次第に彼女の心の問題そのものに取り組むようになる。やがて「錯乱した彼女の心」を持て余すようになった、カントクと彼女の間に……。