ろうそく

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本来の表記は「蠟燭」です。この記事に付けられた題名は記事名の制約から不正確なものとなっています。
火を点したロウソク

ろうそく(蝋燭、蠟燭)は、(ろう)に綿糸などでできた芯を埋め込んだもので、芯に火を点して灯りとして用いる。ロウソクローソク、またはキャンドル(英語:candle)ともいう。

芯の先に点ったによって周囲の蝋が融けて芯に染み込み、さらにそれが気化して燃焼することで燃え続けるしくみである。粗悪なものを除いて、炎はほぼ一定の明るさを保つ。

芯として用いられるのは三つ編みにした綿糸(めんし)やイグサ(灯心草)で、芯を据えた型に蝋(ろう、パラフィン)を流し込んだり、融けた蝋を芯に繰り返し絡ませたりして作られる。

ろうそくに関する著作では、マイケル・ファラデーの『ロウソクの科学』が有名。光源の明るさの単位"カンデラ"(燭光)は、もともと特定の規格のろうそくの明るさを基準として決められた単位である。

歴史[編集]

古代エジプトではミイラ作成などで古くから蜜蝋が使われており、2300年前のツタンカーメンの王墓からは燭台が発見されていることから古くからろうそくが使われていたと見られている。 紀元前3世紀エトルリア(現在のイタリアの一部)の遺跡から燭台の絵が出土し、この時代にろうそくがあったことは確かだとされる。この時代の中国の遺跡でも燭台が出土している。

ヨーロッパにおいては、ガス灯の登場する19世紀まで、室内の主な照明として用いられた。キリスト教の典礼で必ず使われるため、修道院などでミツバチを飼い、巣板から蜜ろうそくを生産することが行われた。釣燭台(シャンデリア)は本来ろうそくを光源とするものであり、従僕が長い棒の先に灯りをつけ、ろうそくにそれぞれ点火した。蜜ろうそくのほかには獣脂を原料とするろうそくが生産された。マッコウクジラの脳油を原料とするものが高級品とされ、19世紀にはアメリカ合衆国を中心に盛んに捕鯨が行われた。

和蝋燭の製造元

日本でろうそくが最初に登場したのは奈良時代である。当時のろうそくは中国から輸入された蜜ろうそくと考えられている。恐らく、仏教の伝来とともにあわせて伝わった。平安時代になり、蜜ろうそくに代わって松脂ろうそくの製造が始まったと考えられる。その後、和ろうそくと呼ばれるはぜの蝋や漆の蝋などを使ったものに変わり、江戸時代にはろうそくと松ヤニと混ぜてハードワックスにしていた。また、江戸時代には木蝋の原料となるハゼノキが琉球から伝わり、外出用の提灯のための需要が増えたこともあって、和ろうそくの生産量が増えた。和ろうそくは裸で使うより提灯などに入れて使うことが多かったので、蝋が減っても炎の高さが変わりにくいように上の方が太く作られていた。明治以降の西洋ろうそくの輸入により、その地位も取って代わられている。

産業革命石油化学工業の発達により18世紀後半以降、石油パラフィンからろうそくが作られるようになり、工業的大量生産が可能になった。厳密にはではないが、「ろうそく」として最も普及している。

「電気ろうそく」と称するものもある。家庭でのろうそく使用は火災の原因ともなっており、火災防止の観点から主に仏壇用に売られている。寺院用の大型の燭台に対応したものもある。これはヤブロチコフの電気ろうそく(アーク灯)ではなく、電球LED照明を用い、交流電源や乾電池を用いた照明器具である。一部では炎の揺らめきを再現したムードランプ用の電気ろうそくも販売されている。

分類[編集]

ろうそくは大別して原料・成形方法が異なる和ろうそくと洋ろうそくに分けられる。

和ろうそくはハゼノキの果実からとれる木蝋をイグサと和紙からなる芯に塗り重ねて成形される。純粋に植物性である。(など他の素材もあったが、経済性からほぼ消滅した。)

洋ろうそくは元来、溶けた蜜蝋に芯を何度もつけて作られていたが、現在では主に石油パラフィンステアリン酸の蝋を芯を入れた型に流し込んで成形し作られている。

構造[編集]

形状は基本的に蝋を固めた円柱状で、中央に芯が入っている。芯は上端に一部が露出している。表面がラセン状に加工されていたり、キャラクターなどの形状に形成されているものもある。下端には燭台のピンに立てるために穴が開いているものが多いが、誕生日ケーキ用では金属箔で巻かれており、太く短い防災用ろうそくでは自立して安定するので穴は無い。色は白が一般的だが、儀式やデコレーションの目的で着色されていたり描画されている場合もある。

最近では、燭台に挿すことを想定していないティーキャンドルというものもある。あらかじめカップ状のものに入れられていて、置き場所を選ばない利点がある。ろうの融点が低くても燃えていられるよう、芯を部品で支える構造になっている。ろうがすべて液状になるところまで溶け、粘性も水のように低くなるので、転倒等に注意しなければならない。カップには安価なアルミカップと、照明範囲を広くとるようにしたガラス等のクリアカップがある。

用途[編集]

実用照明として[編集]

安価で携帯性・保存性に優れており、電灯の普及以前には家庭の照明としても利用されていた。また、電灯の普及後も、停電などに備えてろうそくを用意することが多かったが、これは高性能の懐中電灯の普及とともに廃れた。しかし、明るい室内照明を好む日本を含むアジアとは異なり、暗い室内を好む欧米文化では、21世紀になっても室内照明としてろうそくを好んで用いる家庭もある。また、ろうそくは耐水性もあるため、災害時の必需品として見直される傾向もある。

熱源として[編集]

火力は著しく弱く暖房や一般的な調理には不十分であるが、戦時中には飯盒を用いた炊飯も行われた。ろうそくとは呼ばれないが、非常用固形燃料にはパラフィンを原料とし、芯をつけたものもある。なお、鍋物用など一般的な卓上調理用の固形燃料はアルコールであり芯がないので、ろうそくではない。

調理以外では、香炉を加熱するタイプのアロマ用キャンドルも熱源としての使用である。ポンポン船の用に工作、理科実験で熱源として利用されている。合図用の小型熱気球であった天灯も元々はろうそくを熱源・光源に用いた。

計時器具として[編集]

機械式時計が登場するまで線香などとともに計時器具に用いられたこともある。

接着剤や潤滑剤、防水用として[編集]

ろうそくから溶け落ちた蝋は、封蝋のように接着剤としても使われた。また、敷居にろうそくを擦りつけて襖のすべりをよくするなど、潤滑剤としても使われる。耐水性では無い地図などをアウトドアで用いる場合に、ろうそくで両面をこすってコーティングすることで耐水性を高めることができる。

宗教儀式に[編集]

願掛けのろうそく

ろうそくはまたキリスト教の儀式においても用いられてきた。これは多く光の象徴として用いられる。

伝統的なキリスト教の祭儀では、祭壇の上にろうそくが献じられる。正教会奉神礼、ローマ典礼いずれの典礼書でも、聖体礼儀(正教会)、聖体祭儀(カトリック教会の、いわゆるミサ)においてろうそくを灯すことが義務づけられている。正教会・東方典礼・ローマ典礼のカトリック教会では、ミツロウを用いるのが好ましいとされる。また死者のための祈祷(埋葬式パニヒダ)や復活祭(正教会では復活大祭)の祈祷では手に灯りをともしたろうそくをもって礼拝に参加する。復活祭のろうそくは地方によってはそのまま家に持ち帰り、家庭の火を灯すのに使われることがある。

日本の仏事においてもろうそくは欠かせない道具となっている。お盆やお彼岸におけるお参り、寺社参拝時には線香とともにろうそくを燭台に立てるのが一般的である。このろうそくの淡い光は仏の慈悲によって人の心を明るくするものとも、先祖が子孫(つまり立てた本人)へ生きるための光を導き出す一種の道標ともいわれている。

本来、仏事には和ろうそくを用いる。和ろうそくは植物から採取出来る油を使用している一方で、洋ろうそくは動物性油(鯨・魚類)等の油が原料であり、命を殺めてはいけない、命のあったモノを使えないという理由からである。但し、現在売られている仏事用ろうそくの多くは洋ろうそくではあるが、石油パラフィンから作られているので問題は無い。

現在の仏事において蝋燭の色は朱(赤)・金・銀・白の4色である。色の使い分けは、朱(赤)は法事(年忌法要)・祥月命日・お盆・春や秋のお彼岸の時に灯す。金は仏前結婚式(挙式)や落慶法要のお祝いの時に灯す。銀は通夜・葬儀・中陰の時に灯す。本来仏教においては白は使用しないが朱・金・銀の蝋燭が準備できない時の代替品として用いられるのが一般的になっている。 宗教・宗派によらない慰霊式でもろうそくが用いられる。事故や災害現場での慰霊式典などで犠牲者の数と同数のろうそくが灯される事がある。故人を偲ぶ伝統行事である灯籠流しにも通じるものがある。

水虫の治療に[編集]

化学薬品を使用してもなかなか改善できない水虫であるが、その原因は皮膚の深い部分に白癬菌が潜むため、薬剤が浸透しにくいためである。だが、蝋燭に点火し、溶けたばかりの蝋を患部に垂らすことにより、溶けた蝋が熱を持ったまま密着することで皮膚の深い面にまで熱を伝え、その部位の白癬菌を効果的に殺すことが出来るといわれており、水虫治療の民間療法として使われている。缶や小鍋で蝋燭を溶かし、筆で熱い蝋を塗布する方法も使われる。

その他の演出道具として[編集]

ろうそくの炎は色温度が低く、落ち着いてくつろいだ雰囲気をつくる照明となる。茶道においては夜咄の茶事においてろうそくを用いることを常とする。雰囲気を重視するレストラン等でもテーブル用の照明として使われる。その他、伝統行事における提灯(ちょうちん)、行灯(あんどん)の照明、誕生日のケーキの飾り、結婚式などの装飾やイベント用、アロマセラピーの香具など様々な目的で用いられる。

その他に、SMにおいて、肉体に溶けたろうそくをたらす責めがあり、ろうそくプレイと呼ばれる。これには和蝋燭のように、融点の低いろうそくが用いられる。

使用方法[編集]

色付きのガラスなどに入れることで豊かな光の演出も可能、加えて風に強くなる。

ろうそくの炎は小さいが温度は高く、火傷火災には十分に気をつける必要がある。燃え尽きる前の燭台や容器の温度は上がり、また衣服に引火しての火傷にも十分気をつける必要がある。

以下に一般的に売られている西洋ろうそくを屋内で使用する場合について述べる。

  1. ろうそくを燭台に設置する。
    • ピン方式の燭台では、ピンのサイズにあう穴のろうそくを用意する。
    • 燭台の穴に差し込むタイプでは、穴の大きさに合う太さのろうそくを用意する。
    • 自立式やガラスカップ入りのキャンドルは不燃性受け皿に乗せる。
  2. 設置する場所は、風の無い安定した場所を選び、可燃物の近くをさける。
    • ろうそくが短くなると燭台は高温になるので、特にプラスチック製の家具・家電の上は避け熱に強い場所に燭台等を置く。
    • ガラス金属陶磁器等燃え難い材質の受け皿や防火性シートを敷くことが望ましい。
  3. 芯にライターマッチで点火する。
    • 寒冷時や再点火時には芯だけが燃え尽きる場合があるので、ライター等の炎で芯の付け根の蝋を溶かすようにすると良い。
    • 芯が折れたり燃え尽きて点火できない場合は、ろうそくを逆立ててライター等の炎で芯の周りの蝋を溶かして捨てて芯を露出するか、ナイフなどで芯だけ残して蝋を折り取る。
  4. 燃焼中は基本的に手入れは必要ないが、芯がうまく燃えずに炎が大きくなった場合に芯を調節する。
  5. 短くなったら燭台のピンが露出する前に新しいものに交換する。

なお、短くなったろうそくを最後まで燃やすと、溶けた蝋が器具にこびりついて交換しづらくなったり、燭台が加熱して事故の原因になる。特に着火したまま就寝すると火事の虞がある。燃焼途中で消火する場合、吹き消すか、ろうそく消しと呼ばれる専用の器具を使用する。

ろうそく消しには釣鐘型とはさみ・ピンセット型がある。前者は炎の上からかぶせて酸欠により消火する。後者(金属製切手用ピンセットでも代用可能)は芯を挟んで温度を奪い蝋の気化を止めることで消火するので、蝋の煙による臭気や室内の汚れを低減でき、また、芯に蝋が残り再着火しやすいので、点火・消火を繰り返す場合に向いている。ちなみに仏壇に供えるろうそくでは、息を吹きつける行為は無作法とみなされる[1]ため、手で扇いで消したり、ろうそく消しが積極的に使われる。僧侶などでは指でつまんで消す者もいるが、これは熟練を要し火傷の危険もあるため、一般には余り行われない。

現在の洋ろうそくでは、芯が燃焼に伴って炎より長くなった部分(液化した蝋が浸透しきらないほど長くなった箇所)は炎上部の特に高温になっている位置で燃え尽きるようになっているが、芯の太い和ろうそくや、やはり芯の太い古い洋ろうそくでは芯が燃え尽きず、上に伸びてしまうこともあり、こうなってしまうと明るい炎上部が遮られ、明るさが落ちることになる。このため、適時芯の先を切りそろえて明るさを取り戻す操作を必要とする。

脚注[編集]

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関連項目[編集]

外部リンク[編集]