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(いと)とは天然繊維および化学繊維を引き揃えて、撚りをかけた物のことである。 この工業的に撚りをかけたもののことを専門的には撚糸(ねんし)という[1]。 また、フィラメント糸クモの糸の様な紡績とは無関係な長細い形状の物も含めて糸と呼ぶ。

概説[編集]

自然界から得られる繊維は、ウールのように短い(短繊維)ので、これをまとめてねじることにより長くつなげ、扱いやすい太さとしたものが糸である。複数を撚り合わせることで強度も増す。ポリエステルのようにもともと長い繊維(長繊維)も2本以上の繊維をねじることで強度が増すため使われる。も糸の材料として使われており、ルイ・ヴィトン社やランバン社にて紳士服に使用される。

織物などの場合、その素材となる糸は、長ければ長いほどよい。逆に繕い物などの際には長すぎる糸は絡まるなどのトラブルを起こしやすい。繊維を糸に加工するのは結構やっかいなことなので、普通はできるだけたくさんまとめて作り、絡まないように糸巻きなどに巻き付けて管理する。繕い物などの場合はその一部を切り取って利用する。

繕い物は日常における衣服のメンテナンスとして重要であり、そのための道具である糸とは必ず一纏めに扱われる。童話『眠れる森の美女』で美女の指に刺さったのが糸を作るための道具、紡錘(つむ)である。

繊維を撚り合わせることで太く長くなり、様々な用途に使えるようになるが、その最も細いのが糸であり、さらに太いものはロープ等と呼ばれる。

植物からの糸[編集]

植物から得られる糸は、原則的には細胞壁からなるものである。表面のとして得られるものは、表皮から突出する細胞の細胞壁であり、内部から得られるものは、維管束や皮層にある線維細胞のそれである。これらが特に長く発達する植物のそれが糸として利用される。

動物からの糸[編集]

動物から得られる糸は、大きく二つに分かれる。

一つは動物の体の一部が糸状になっているもので、例えば羊毛がそれである。

もう一つは体内から作られた化学物質が糸の形をなすものであり、絹糸クモの糸などがこれにあたる。

動物が使う糸[編集]

動物自身が糸を使う例も多々ある。糸はを作る際や動物体を基質に固定するなど、それぞれに用途がある。

代表的なものを以下にあげる。

糸の単位[編集]

糸の太さ[編集]

番手
糸の太さを表す単位。恒重式番手と恒長式番手に大別される。
  • 恒重式番手
単位重さあたりの長さとして計算する糸の太さ表記法
  • 英式綿番手
綿糸または綿紡績方式で製造された糸に対して使用される。単位重さ1ポンド(453.6g)あたりの長さが840ヤード(768m)のものを「一番手」といい、糸の太さが細くなると番手数が大きくなる。
  • 共通式番手(メートル番手)
毛(ウール)糸、特に梳毛紡績方式で製造された糸に対して使用される。単位重さ1000gあたりの長さが1000mのものを「一番手」といい、糸が細くなると番手数も大きくなる。
  • 麻番手
麻糸または麻紡績方式で製造された糸に対して使用される。単位重さ1ポンド(453.6g)あたりの長さが300ヤード(274m)のものを「一番手」といい、糸が細くなると番手数も大きくなる。
  • カタン番手
ミシン糸に用いる綿縫い糸(カタン糸)に使用される。原糸の英式綿番手を3倍し、撚り合わせた原糸の本数で割った値。


  • 恒長式番手
単位長さあたりの重さとして計算する糸の太さ表記法
絹糸(フィラメント糸)の太さを表す単位。フィラメント1本や繊維1本の太さを表す場合にも用いられる。単位長さ9000mあたりの糸の重さが1gのものを1デニールといい、糸の太さが増すとデニール数も増加する。
  • テックス(tex)
素材や紡績法によらず統一表記法として用いられている。単位長さ1000mあたりの糸の重さが1gのものを1テックスといい、糸の太さが増すとテックス数も増加する。国際単位系(SI単位)の暫定併用単位とされており、国内では日本工業規格(JIS)によりJIS L0101(テックス方式)およびJIS L0104(テックス方式による糸の表示)として規格化されている。

糸の種類[編集]

手縫い糸とミシン糸では、よりの方向が逆になっている。

  • 手縫い糸
    • 絹糸
  • ミシン糸
    • スパン…一番一般的な糸。ポリエステルで作られている物が多い。
    • レジロン…ニット用の糸。主に本縫いミシン用に使われる。ナイロン製が多い。
    • ウーリー…ニット用の糸。主にロックミシンのルーパー糸として使われる。ナイロン製が多い。
    • カタン…綿の糸
  • 刺繍糸…撚りが甘く、光沢を持つものが一般的である。
    • 25番…一般的な刺繍糸。
    • 5番

用途[編集]

衣料[編集]

糸の最も一般的な使い道として、衣服などの衣料がある。 衣料の原料となる織物は経(たて)糸と緯(よこ)糸を組み合わせて作られる。

楽器[編集]

弦楽器の発音体()は糸状をしており、やはり「糸」と呼ばれる。この糸はピアノ線の様に繊維と無関係な糸状の金属の場合もあれば、動植物などに由来する紡績糸である場合もある。転じて三味線胡弓琵琶など弦楽器の総称としても「糸」の語を使う。 日本の管楽器でできているので、糸と合わせ音楽のことを「糸竹 (いとたけ) 」とも言う。また小唄などでは、三味線パートのことを「糸」とも言う。原料はで、春を使い、撚り合わせて糊で固める。三味線の糸一つをとっても様々な太さがある。

釣り[編集]

伝統的に釣り糸として使われてきたものに絹の紡績糸であるテグスがある。今日ではナイロンなどの化学繊維の釣り糸が一般的。

人形劇[編集]

操り人形を上から吊るし上げて動かすのにテグスが用いられる。

凧揚げ[編集]

を操るのに凧糸が用いられる。

料理[編集]

主に焼豚ハムなどを作る時、肉が崩れたりするのを防ぐため、凧糸で肉を縛ってから調理する事が多い。

糸を使った慣用句[編集]

物事を結びつけるという意味が込められる。

  • 糸目を付けない。
  • 糸を引く。
  • 糸の切れた凧。
  • 赤い糸で結ばれている。

糸は細くて長いため、往々にして互いに絡み合い、もつれてほぐせなくなる。その場合、無理に引っ張るとさらにからんで、結び目になったり切れたりするから、ゆっくりと丁寧にほぐさなければならない。

  • もつれた糸をほぐす
  • 記憶の糸を辿る。
  • 糸口

ギリシャ喜劇の『女の平和』では、主人公が戦争を女たちに任せよ、と主張、戦争の原因となった諍いを解消することを糸をほぐす作業にたとえて説明している。

関連項目[編集]


[編集]

  1. ^ 撚糸とは”. 日本撚糸工業組合連合会. 2013年12月28日閲覧。