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大飯発電所

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大飯発電所
種類 原子力発電所
電気事業者 関西電力
所在地 日本の旗 日本
919-2101 福井県大飯郡おおい町大島1字吉見1-1
1号機
出力 117.5万 kW
燃料 低濃縮二酸化ウラン
冷却水 深層取水
約 m³ / 秒
営業運転開始日 1979年3月27日
2号機
出力 117.5万 kW
燃料 低濃縮二酸化ウラン
冷却水 深層取水
約 38 m³ / 秒
営業運転開始日 1979年12月5日
3号機
出力 117.5万 kW
燃料 低濃縮二酸化ウラン、ウランプルトニウム混合酸化物
冷却水 深層取水
約 m³ / 秒
営業運転開始日 1991年12月18日
4号機
出力 117.5万 kW
燃料 低濃縮二酸化ウラン、ウランプルトニウム混合酸化物
冷却水 深層取水
約 m³ / 秒
営業運転開始日 1993年2月2日
公式サイト:大飯発電所
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関西電力大飯発電所(3、4号機)
建設中の大飯発電所(1、2号機)[1]

大飯発電所(おおいはつでんしょ)は、福井県大飯郡おおい町にある関西電力原子力発電所

関西電力が保有する原子力発電所としては最大規模で、日本の原子力発電所では柏崎刈羽原子力発電所福島第一原子力発電所に次ぎ、日本で3位の発電量がある。施設周辺は若狭湾に面し、半径20km圏内に高浜発電所(大飯郡高浜町)もある。

概要

建設費抑制のため原子炉を一度に2機分を建設する方式が採用されており、タービン建屋1棟で2機分収める構造となっている。

原子力事故への対応として、1号機と2号機には、アイスコンデンサ方式という他の原子炉にはない方式を採用している。これは、格納容器の周りに設けられた1,944本のバスケットに、ブロック状の氷を入れ、事故時に発生する蒸気を急速に冷却し圧力をさげる方式である。アイスコンデンサーには常時1,250トンの氷が格納してある。この方式により、格納容器の体積は同クラスのものより小さい。

その後、3号機と4号機には格納容器のコンクリート壁内部にPC鋼より線(テンドン)を入れて、あらかじめ格納容器全体を締め付けておき、事故時に発生する大きな圧力に耐えるプレストレストコンクリート製方式が採用されるようになり、この方式の採用はこの2基に留まった。

2005年12月22日午前8時50分頃、大雪と強風のために送電線にトラブルが発生し、自動停止した。2011年7月16日、調整運転中の1号機で、C-蓄圧タンク圧力の低下により同機の運転を手動で停止した。

シースルーで公開されていたコントロールルームの様子(1993年5月撮影)

大飯発電所のPR施設として、おおい町大島に「エル・パーク・おおい」がある。おおいり館は発電所を1/3で再現する。

発電所の内部をガラス越しに軽装で見学できる「シースルー見学施設」が設けられていたが、現在はテロ対策のために見学できない。

電気工事会社・太平電業福井県大飯事業所長らが、大飯発電所に、請負契約を装う形で、請負会社の社員を設備改修工事に派遣していたことが明らかとなり、請負会社の役員らとともに、職業安定法違反の容疑で逮捕された。請負会社の役員の1人が、指定暴力団工藤会系組長の妻であることも判明しており、これら一連の原発への派遣事業が、工藤会への資金源となっていた可能性が指摘されている[2]

発電設備

番号 原子炉形式 主契約者 定格電気出力 定格熱出力 運転開始日 設備利用率
(2009年度)
現況
1号機 加圧水型軽水炉(PWR) WH三菱商事 117.5万kW 342.3万kW 1979年3月27日 85.6% 定期点検中
2号機 加圧水型軽水炉(PWR) WH、三菱商事 117.5万kW 342.3万kW 1979年12月5日 93.2% 定期点検中
3号機 加圧水型軽水炉(PWR) 三菱重工業 118万kW 342.3万kW 1991年12月18日 78.5% 定期点検中
4号機 加圧水型軽水炉(PWR) 三菱重工業 118万kW 342.3万kW 1993年2月2日 87.6% 定期点検中

大飯発電所で想定される地震の強さは700ガル津波の高さは1.66mから1.86m[3]

2011年以降の運転再開問題

2011年3月11日の時点では、大飯発電所の1 - 4号機はそれぞれ以下の状態であった[4]

番号 状態
1号機 2010年12月10日から定期検査中(2011年3月10日から調整運転中)
2号機 2010年11月17日から通常運転中
3号機 2010年6月6日から通常運転中
4号機 2010年6月23日から通常運転中

3月11日に福島第一原子力発電所事故が発生し、原発の安全性の問題が全国で注目を集めるようになった。

国の原子力安全・保安院は約3週間後の3月末に、緊急安全対策を各電力会社に指示した[5]経済産業省はこの対策が講じられたことが確認できれば再稼働は可能との見解で、海江田万里経済産業大臣は6月に原発の安全宣言を出し、定期検査の予定の作業が終了した玄海原発の再稼働を進めようとしていた[5]。しかし、全国の市民からの反対の他、事故の検証が未実施で安全基準が示されていないとして、13基の商用原発を抱える福井県などからも時期尚早との声が上がった[5]。そこで、政府(菅政権)は、ストレステストを導入し、1次評価で安全性を確認してから再稼働の是非を判断することとなった[5]

これを受け、関西電力は10月28日に3号機の[6]11月17日に4号機のストレステスト1次評価を原子力安全・保安院に提出した[7]

国の原子力安全・保安院は、2012年2月13日に関西電力が提出した3,4号機のストレステストについて、「妥当」とする審査書を発表した[8][9]。また、3月23日原子力安全委員会はこの保安院の審査書を「妥当」と確認した[10][11]。この日の安全委員会では、保安院の審査書を「妥当」とする確認文書(案)が用意されており、班目春樹委員長が淡々と議事を進め、5分後には「これを本委員会の見解とします」と述べて会議を打ち切った[12]。傍聴した再稼働に反対する市民は「結論ありきの茶番」だと批判した[12]

政府3閣僚協議

原子力安全・保安院と原子力安全委員会が関西電力が提出したストレステストの結果、安全性は確保されていると認定したため、その後の再稼働は政治判断となった[13]4月3日から[14]野田佳彦首相枝野幸男経済産業大臣、細野豪志原発事故担当大臣藤村修官房長官(関係3閣僚)の協議が6回行われた[15]

この過程で4月6日に国は「原子力発電所の再起動にあたっての安全性に関する判断基準」(暫定基準)を示し、関西電力は4月9日に、当時得られた福島原発事故の技術的知見から必要とされる安全対策の現状と今後の計画を提出した[16]。同日にも3閣僚協議が開かれ、枝野経産相は「工程表は再稼働の安全基準におおむね適合している」と表明し、事実上の安全宣言をした[17]4月13日に開かれた6回目の協議で、3,4号機が新たな安全基準を満たしていると最終確認し、関西電力の供給力を上積みしても管内は厳しい電力不足に直面しているとして、再稼働が必要だと結論づけた[15]

この工程表で、放射性物質を除去するフィルター付きベント装置を2015年度に設置する方針が初めて示されたり、免震事務棟の設置が1年前倒しの2015年度とされたりと安全対策の計画に進展はあった[18]。しかし、国は組織の立て直しと原子力規制庁の発足をしておらず、関西電力は暫定基準に沿う対策の計画を示しただけであり、国が基準を示してから3日で関西電力が工程表を提出するというのは、あまりに拙速であり、政府が世論や必要性、安全性によらず「再稼働ありき」で周到なスケジュールを練り上げていると批判する意見もある[19]

また、政府は再稼働を巡って福井県とおおい町の「同意」と滋賀県や京都府など近隣自治体の「理解」を得る必要があるとしたが、藤村修官房長官がこれには法的な義務はないと述べている[20]

立地自治体

政府は4月13日までに安全性確認と再稼働必要性の検討を終え、4月14日には枝野経産相が福井入りし、地元自治体である福井県の西川一誠知事やおおい町の時岡忍町長に再稼働を要請した[21]。西川知事と時岡町長は判断を保留した上で、電力消費地が再稼働に理解することに政府が責任を持つよう要求した[21]

政府は再稼働への同意をおおい町議会に要請し、5月14日に全員協議会が開かれ、議員のほとんどが賛成して再稼働容認を決めた[22]。しかし、時岡町長は県原子力安全専門委員会(県専門家委)の意向も踏まえて判断するとしている[22]ため、県専門家委の結論が大幅にずれ込んでいることから、町としての同意には至っていない[23]

また、県専門家委の結論が出ていないことや、国が原発の中長期的な方向性を示さず姿勢が明確でないことに西川知事が反発していることから、福井県の意見集約はあまり進んでいない状況である[23]

過去の津波による被害記録の発見

大飯発電所の他にも関西電力、北陸電力と日本原電の商用原発、日本原子力研究開発機構もんじゅが位置する若狭湾は、天正大地震の津波で大きな被害が出たことが明らかになった(なお関西電力はこの地震を受けて実施された調査以前から文献の内容を把握していた)[24]。関西電力は、日本原電、日本原子力研究開発機構と共同で調査を行い、天正大地震の津波については5月中旬、ボーリング調査の調査でわかる範囲の他の時代の津波を含め、最終的な報告を10月末頃に行うとしている[25]

脚注

  1. ^ 国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成(1975年度撮影)
  2. ^ 偽装請負:関電原発工事、暴力団が関与 3容疑者を逮捕 毎日新聞 2012年1月13日
  3. ^ 『新潮45別冊 日本の原発』 - 新潮社(2011年) 50ページ記載。
  4. ^ 平成22年度 原子力発電所の運転状況 関西電力 2011年4月7日
  5. ^ a b c d 原発再稼働、迷走の1年 国の場当たり対策に批判 朝日新聞 2012年5月4日
  6. ^ 大飯発電所3号機の安全性に関する総合評価に係る報告書の提出について 関西電力 2011年10月28日
  7. ^ 大飯発電所4号機の安全性に関する総合評価に係る報告書の提出について 関西電力 2011年11月17日
  8. ^ 保安院、大飯原発ストレステスト評価を「妥当」 読売新聞 2012年1月19日
  9. ^ 関西電力株式会社大飯発電所3号機及び4号機の安全性に関する総合的評価(いわゆるストレステスト)一次評価に係る審査結果について 経済産業省 2012年2月13日
  10. ^ 関西電力株式会社大飯発電所3号機及び4号機の安全性に関する総合的評価(一次評価)に関する原子力安全・保安院による確認結果について 原子力安全委員会 2012年3月23日
  11. ^ 大飯原発の耐性評価、安全委も「妥当」 確認文書公表 朝日新聞 2012年3月23日
  12. ^ a b 「こんなのは茶番だ」 原子力安全委員会、5分で打ち切り大荒れ 大飯原発安全評価 産経新聞 2012年3月23日
  13. ^ 大飯原発「妥当」判断 「地元」の範囲めぐり見解にずれ 産経新聞 2012年3月23日
  14. ^ 再稼働「3日は決まらず」 大飯原発で細野氏 産経新聞 2012年4月3日
  15. ^ a b 大飯原発再稼働へ協力要請決定 関係3閣僚協議 佐賀新聞 2012年4月13日
  16. ^ 大飯発電所3、4号機における更なる安全性・信頼性向上のための対策の実施計画等の報告について 関西電力 2012年4月9日
  17. ^ 大飯原発「安全基準に適合」 政府、再稼働を地元要請へ 関電工程表を評価 日本経済新聞 2012年4月10日
  18. ^ 関西電力が大飯原発の工程表提出 おおい町にも内容説明 福井新聞 2012年4月9日
  19. ^ [大飯原発再稼働]不安つきない拙速対応 沖縄タイムス 2012年4月10日
  20. ^ 官房長官、原発再稼働「地元同意、義務ではない」 日本経済新聞 2012年4月5日
  21. ^ a b 大飯再稼働:関西圏の理解が必要…経産相要請に福井知事ら 毎日新聞 2012年4月14日
  22. ^ a b 福井県おおい町議会 原発再稼動容認を決定 読売新聞 2012年5月14日
  23. ^ a b 大飯再稼働、ずれ込む地元・福井の意見集約 知事の不信感も影響 産経新聞 2012年5月27日
  24. ^ 若狭湾の津波、調査検討=古文書に被害の記述―関電 朝日新聞 2011年5月26日(2011年5月27日閲覧)
  25. ^ 若狭湾沿岸における津波堆積物に関する追加調査の実施について 関西電力 2012年2月16日

外部リンク

座標: 北緯35度32分32秒 東経135度39分18秒 / 北緯35.54222度 東経135.65500度 / 35.54222; 135.65500