協定世界時
協定世界時(きょうていせかいじ、UTC、英: Coordinated Universal Time[1]) とはセシウム原子時計が刻む国際原子時 (TAI) をもとに、天文学的に決められる世界時 (UT1) との差が0.9秒未満となるよう国際協定により人工的に維持されている世界共通の標準時である。具体的には、世界時との差が0.9秒以内になるように閏秒を挿入して維持している。世界各地の標準時はこれを基準として決めている。例えば、日本標準時 (JST) は協定世界時より9時間進んでおり、「+0900 (JST)」のように表示する。
世界時、協定世界時と国際原子時
国際単位系 (SI) では、1秒は「セシウム133の原子の基底状態の2つの超微細準位の間の遷移に対応する放射の周期の9 192 631 770倍に等しい時間」と定義されている。国際原子時 (TAI) は、世界時の1958年1月1日0時0分0秒を起点として原子時計で計測して時刻を決めている。計測機関はフランス・セーヴルにある国際度量衡局である。
他方、世界時 (UT) は地球の自転を観測して決められるが種々の要因により、地球の自転周期は一定していない。2004年のスマトラ島沖地震や2011年の東北地方太平洋沖地震の際には自転が僅かに早まったことが確認されている[2][3]が、長期的かつ日常生活に影響を与えるほどの主要因は海の潮汐運動の影響である。地球の自転周期は少しずつ長くなっている一方、世界時と国際原子時とのずれを補正するために、国際原子時に閏秒を導入したものがこの協定世界時 (UTC) である。
協定世界時は世界中の法的な時刻の基礎であり、世界時 (UT) とのずれが0.9秒を超えると閏秒として1秒が挿入あるいは削除されることになっているため、協定世界時 (UTC) は国際原子時 (TAI) と常に整数秒の差を持つ。2011年10月現在、UTCはTAIから正確に34秒だけ遅れている(詳細は閏秒の項目を参照)。
閏秒によってずれを補正するようになったのは1972年からである。それまでは地球の自転の変動にあわせて原子時計の周波数を一定値オフセットして世界時の進行に近似させ、必要に応じて0.1秒のステップ調整を行うことで世界時とのずれが常に0.1秒以内になるようにしていた。しかし周波数のオフセット値を毎年調整する必要があり、これは困難なものであった。そのため、1972年から1秒の閏秒による現在の方式に変更された。
略称
協定世界時の略称はUTCである。
国際電気通信連合 (ITU) では、協定世界時の略称は1つだけにしようと考えていた。英語では coordinated universal time で「CUT」、フランス語では temps universel coordonné で「TUC」、イタリア語では tempo coordinato universale で「TCU」と言語によって略し方が異なると不便であるからである。「UTC」でも世界時 (UT) の変形という意味合いを表すことができ、またすでにあるUT0、UT1などとも整合がとれる。
略称から逆成される形で、英: "Universal Time, Coordinated", 仏: "universel temps coordonné" などのような展開がなされることもあるが、これらはあくまでも非公式な呼称である[4]。
脚注
- ^ (英語) Frequently asked questions (FAQ), National Institute of Standards and Technology, (2010-02-03) 2012年5月10日閲覧。
- ^ Cook-Anderson, Gretchen; Beasley, Dolores (2005-01-10) (英語), NASA Details Earthquake Effects on the Earth, press release, NASA 2009年5月1日閲覧。
- ^ Buis, Alan (2011-03-14) (英語), Japan Quake May Have Shortened Earth Days, Moved Axis, NASA 2012年5月10日閲覧。
- ^ BelleSerene (2009-05-27) (英語), French time: "heure légale" 2012年5月10日閲覧。