99式戦車
中国人民革命軍事博物館の99式戦車 | |
性能諸元 | |
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全長 | 11.0m |
車体長 | 7.30m |
全幅 | 3.40m |
全高 | 2.40m |
重量 | 54.0t |
懸架方式 | トーションバー方式 |
速度 |
80km/h(整地) 60km/h(不整地) |
行動距離 | 650km(予備燃料タンク使用時) |
主砲 | ZPT-98式50口径125mm滑腔砲 |
副武装 |
85式12.7mm重機関銃(原型車)もしくは 02式14.5mm重機関銃(量産車) 86式7.62mm機関銃 砲発射式対戦車ミサイル |
装甲 | 複合装甲および爆発反応装甲 |
エンジン |
水冷4ストロークV型12気筒ディーゼル 1,500hp |
乗員 | 3名 |
99式戦車(99しきせんしゃ 中: 99式主战坦克、英: ZTZ-99/WZ-123B)は、中国の第3.5世代主力戦車である。
概要
98式戦車(ZTZ-98)の名称を、98式が1999年の建国50周年軍事パレードに参加したことを記念して、99式戦車(ZTZ-99)に改称したもの。軍事パレードの時点では完全な実用段階に達しておらず、射撃管制装置や照準装置に不具合があった98式の改良型(完成型)であり(よって実質的には98式と99式はほとんど同じ戦車である)、欧州の技術が多く取り込まれ、独自開発のレーザー誘導兵器およびレーザー検知式アクティブ防護システムも導入するなど従来の中国人民解放軍の戦車とは異なるユニークなものとなった。そのため、1輌あたりの価格も高価となり、現状では廉価モデルである96式戦車とのハイ・ローミックスの形で配備が進んでいる。
本車の特徴であるアクティブ防護システム(JD-3)は、98式戦車の物を引き継いでいる。
2001年にノリンコが開発を公表したもので、本車の生産は内モンゴル自治区の617工場で2000年から開始され、2001年中に約40輌が配備された。以降、毎月10輌程度のペースで生産されていると見られている。
特徴
99式戦車は実質的に98式戦車の改称版であるが、さらなる改良により99G式戦車に更新されている。最大の特徴は砲塔で、レオパルト2A6のような楔型の増加装甲が取り付けられており、これはただの増加装甲ではなく爆発反応装甲と複合装甲を組み合わせた装甲の一種とされる。
砲塔側面にも爆発反応装甲が装着され、HEAT弾への防御能力を向上させている。車体や砲塔各部に装着された爆発反応装甲は、山西省の中北大学で開発されたFY-4/FY-5 爆発反応装甲(FYは中国語の「反応(FanYing)」の略だと思われる)と見られている。FY-4/FY-5は中国第二世代の爆発反応装甲で、対成形炸薬弾換算で400mm以上の防御力を有し、HEAT弾だけでなく運動エネルギー弾に対する防御能力も兼ね備えているとしている[1]。増加装甲と併せて、前部装甲の防御力は対HEATで1,000-1,200mmの均質鋼板に相当し、爆発反応装甲の搭載だけで重量が約700kg増加したとする[1]。
99式には、増加装甲の装着方式が異なるいくつかのタイプが存在する。最近確認されたタイプでは、砲塔の増加装甲の装着形状が変更され、上から見ると砲塔前方に絞り込まれる様になっており、楔形装甲の傾斜角も強められている。砲塔側面の籠状ラックは砲塔後部まで延長され、ラック側面に装着された爆発反応装甲の数も増加している。車体前面の爆発反応装甲の形状も若干異なる。このタイプの増加装甲の取付け方は、96式戦車の装甲強化型である96G式戦車の装着方法と類似しており、共通の増加装甲を採用したことが推測される[1]。
主砲の命中精度については98式戦車や90-II式戦車の項などを参照されたいが、実際に行われた射撃試験では2,000m離れた機動目標(人間が遠隔操作)に対して46発の発射試験を行い、次弾命中率100%の精度であった[2]。
98式戦車に比べ、99式戦車の搭載するエンジンは改良型の1,500hpディーゼルエンジンに換装され、最高速度も80km/h[3]に向上している。
アクティブ防護システム
本車の最大の特徴は、JD-3と呼ばれる中国軍独自のアクティブ防護システム(Active Protection System)である「アクティブ・レーザー防御システム」[4]を、砲塔上面左側砲手用ハッチ後方に搭載している事である。これは、ロシアのシュトーラのような対赤外線防御装置では、対応できる脅威が赤外線利用の兵器だけに限られてしまうために開発されたもので、敵車輌や対戦車ミサイル発射機や対戦車ヘリコプターなどからの測距/照準レーザーを検知して警告を発し、敵のレーザー測距儀/照準器などに対して攪乱レーザーを発する事で攻撃を防ぐシステムである[5]。 JD-3は攪乱だけでなく、無線封鎖下での僚車との通信[6]、敵兵器の照準装置の破壊・敵搭乗員を失明させることも可能[7]という情報もあるが、確定情報では無く、詳細は不明である。
JD-3の構成は中央部の警戒レーダー部分と左側のレーザー発振器兼レーザー測距儀兼レーザー送受信機と右側の3連装の散弾発射機(ディスチャージャー)からなる。中央部のレーダーは左右に旋回し、その左右に取り付けられたレーザー発振器と散弾発射機は上下に俯仰する。最大射程は4,000m、システム連続作動時間は30分、可動範囲は俯仰角-12~+90度、左右旋回360度である[6]。
配備軍区
少数ながら上記の軍区に配備されている。
発展型
- 99式(99式改)戦車
- 99式戦車の改良版。制式名称は99式と同じ「ZTZ-99」のままである。
- 99A式戦車[8]
- 0910工程で開発された、99式戦車の改良版。基本は90-II式戦車の車体に99式の砲塔を載せたもの。90-II式は横置き式でコンパクトなウクライナ製の6TD ディーゼルエンジンを搭載する事で(99式、99G式は縦置き式)、動力部の容積を最小限に抑え、車体長は6.487mと、99式(7.3m)より0.8m近く短くなった。99A2式はこれにより99G式より軽量化を達成した。また、従来の中国製戦車は機械式変速装置で超信地旋回が不可能で、90-II式だけが全自動変速装置で超信地旋回が可能であったが、90-II式の車体を基にした99A2式も超信地旋回が可能となっている[9]。
- 主砲は125mm滑腔砲。爆発反応装甲が隙間無く付けられており、 また、車両間情報システム(IVIS)が新たに搭載されている。これにより、今までよりも多量かつ速やかな車両間の情報伝達が可能になった、また、探知した敵車両および味方部隊の位置・行動データを戦車部隊全体にリアルタイムで配信でき、戦車隊が本部などと情報を共有できる[10]。(IVISは既にアメリカのM1エイブラムスの改修型(M1A2)やフランスのルクレールなど西側第3.5世代戦車でも導入されている)。また、高名な軍事雑誌などでは2009年に配備されるとしている[11]。
エピソード
- 海外
- 2007年3月24日にアメリカ軍のピーター・ペース海兵隊大将(当時、2007年9月に退役)が、中国軍の基地を訪れた際、99式戦車の行進間射撃を見学したが、その時99式戦車はAPFSDS弾6発全てを1,400mの距離から目標に命中させた[12]。
- 2008年時点の台湾の報道(新浪軍事)では本車をアジア最強の戦闘力(スペック上)を持つと評価している(この記事が発表された時点では、日本の10式戦車と韓国のK2戦車はまだ制式となっていない)[13]。
登場作品
ゲーム
小説
- 『中国完全包囲作戦』(文庫名:中国軍壊滅大作戦)
- 紅軍の主力戦車として登場し、ロシア赤軍のT-90を圧倒し、アメリカ陸軍第1機甲師団のM1A2 エイブラムスをも数で押すが、陸上国防軍の90式戦車改の側面攻撃を受け、後退する。
- 『日中尖閣戦争』
- 中国海軍の揚陸艦に搭載され、88式戦車および86式歩兵戦闘車と共に台湾に上陸する。
脚注
- ^ a b c 99式戦車(98G式戦車/WZ-123B/ZTZ-99)
- ^ [1]
- ^ “中国の軍用車両”. 時事ドットコム (時事通信社). (2009年10月1日) 2012年6月10日閲覧。
- ^ 参考(中国のレーザー兵器について)
- ^ "Collaborative Point Paper On Active Protection Systems" page 7 published in October,2006 by North American Technology And Industrial Base Organization
- ^ a b 98式戦車(WZ-123/ZTZ-98)
- ^ T-90M/S vs. Type 98G
- ^ 新浪BLOG 中国99A2坦克可洞穿所有三代坦克(图)
- ^ Jane's Defence News「China trials enhanced Type 99 MBT」Jonathan Weng/2007年8月24日
- ^ 次期主力戦車(「0910工程」/99A2式戦車)
- ^ 新浪網 简氏揭秘中国99A2坦克:加装新型主动防护系统
- ^ 新浪軍事_新浪網 中国最新99坦克在美军上将面前弹无虚发(组图)
- ^ 新浪軍事 台湾媒体称解放军99式主战坦克战力东亚最强