1958年ドイツグランプリ

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西ドイツ 1958年ドイツグランプリ
レース詳細
1958年F1世界選手権全11戦の第8戦
ニュルブルクリンク北コース(1927-1967)
ニュルブルクリンク北コース(1927-1967)
日程 1958年8月3日
正式名称 XX Großer Preis von Deutschland
開催地 ニュルブルクリンク
西ドイツの旗 西ドイツ ニュルブルク
コース 恒久的レース施設
コース長 22.810 km (14.173 mi)
レース距離 15周 342.150 km (212.595 mi)
決勝日天候 晴(ドライ)
ポールポジション
ドライバー フェラーリ
タイム 9:14.0
ファステストラップ
ドライバー イギリス スターリング・モス ヴァンウォール
タイム 9:09.2
決勝順位
優勝 ヴァンウォール
2位 クーパー-クライマックス
3位 クーパー-クライマックス

1958年ドイツグランプリ (1958 German Grand Prix) は、1958年のF1世界選手権第8戦として、1958年8月3日ニュルブルクリンクで開催された。

レース概要[編集]

序盤首位を走行したスターリング・モスはハイペースで先行するが、前戦イギリスGPに続いてマシントラブルでリタイアに終わる。これでピーター・コリンズマイク・ホーソーンフェラーリ2台が競り合いながらリードし、ヴァンウォールトニー・ブルックスが追いかける展開となる。中盤過ぎになってブルックスはペースを上げてフェラーリ勢を出し抜くことに成功して首位に浮上する。コリンズは必死に食い下がったが、11周目に森の中のコーナーでコースアウトを喫し、立木に激突して即死してしまう。直後を走っていたホーソーンはショックを受け、ピットに戻ってリタイアした。以後はブルックスが独走して優勝し、クーパーロイ・サルヴァドーリが2位で2戦連続表彰台に立った[1]

フェラーリは1ヶ月前のフランスGPルイジ・ムッソを失ったばかりだったが、コリンズも失ってしまい大打撃を受けた。ホーソーンは親友コリンズの死を目の当たりにして、真剣に引退を考えることになる[2]

参加台数を増やすため、前年に引き続きF2のマシンも混走した(黄色で表示)[3]。なお、F2のマシンは入賞してもポイントは獲得できないが、F1出走回数にはカウントされる[4]ブルース・マクラーレンはクーパーからF2部門でデビューを果たし総合5位となったが、ポイント獲得対象外のため無得点となった。

エントリーリスト[編集]

No. ドライバー エントラント コンストラクター シャシー エンジン タイヤ
2 イギリスの旗 ピーター・コリンズ イタリアの旗 スクーデリア・フェラーリ フェラーリ 246 フェラーリ Tipo143 2.4L V6 E
3 イギリスの旗 マイク・ホーソーン
4 西ドイツの旗 ヴォルフガング・フォン・トリップス
5 フランスの旗 ジャン・ベーラ イギリスの旗 オーウェン・レーシング・オーガニゼーション BRM P25 BRM P25 2.5L L4 D
6 アメリカ合衆国の旗 ハリー・シェル
7 イギリスの旗 スターリング・モス イギリスの旗 ヴァンダーヴェル・プロダクツ・リミテッド ヴァンウォール VW5 ヴァンウォール 254 2.5L L4 D
8 イギリスの旗 トニー・ブルックス
9 イギリスの旗 スチュアート・ルイス=エヴァンズ 1
10 イギリスの旗 ロイ・サルヴァドーリ イギリスの旗 クーパー・カー・カンパニー クーパー T45 クライマックス FPF 2.2L L4 D
11 フランスの旗 モーリス・トランティニアン イギリスの旗 RRCウォーカー・レーシングチーム クーパー T45 クライマックス FPF 2.2L L4 D
12 イギリスの旗 クリフ・アリソン イギリスの旗 チーム・ロータス ロータス 16 クライマックス FPF 2.2L L4 D
14 アメリカ合衆国の旗 トロイ・ラットマン イタリアの旗 スクーデリア・セントロ・スッド マセラティ 250F マセラティ 250F1 2.5L L6 P
15 スペインの旗 パコ・ゴディア 1
16 スウェーデンの旗 ヨアキム・ボニエ
17 西ドイツの旗 ハンス・ヘルマン
18 オランダの旗 カレル・ゴダン・ド・ボーフォール オランダの旗 エキュリー・マールスベルゲン ポルシェ RS550 ポルシェ 547/3 1.5L F4 D
19 イギリスの旗 ディック・ギブソン イギリスの旗 ディック・ギブソン クーパー T43 クライマックス FPF 1.5L L4 D
20 ニュージーランドの旗 ブルース・マクラーレン イギリスの旗 クーパー・カー・カンパニー クーパー T45 クライマックス FPF 1.5L L4 D
21 西ドイツの旗 エドガー・バース 西ドイツの旗 ポルシェKG ポルシェ RSK ポルシェ 547/3 1.5L F4 ?
22 西ドイツの旗 ヴォルフガング・ザイデル イタリアの旗 スクーデリア・セントロ・スッド クーパー T43 クライマックス FPF 1.5L L4 D
23 アメリカ合衆国の旗 フィル・ヒル イタリアの旗 スクーデリア・フェラーリ フェラーリ 156(F2) フェラーリ ディーノ156 1.5L V6 E
24 オーストラリアの旗 ジャック・ブラバム イギリスの旗 クーパー・カー・カンパニー クーパー T45 クライマックス FPF 1.5L L4 D
25 イギリスの旗 グラハム・ヒル イギリスの旗 チーム・ロータス ロータス 16 クライマックス FPF 1.5L L4 D
26 イギリスの旗 イアン・バージェス イギリスの旗 ハイ・エフィシエンシー・モータース クーパー T43 クライマックス FPF 1.5L L4 D
27 ベルギーの旗 クリスチャン・ゲータルズ ベルギーの旗 エキュリー・エペロン・ドール クーパー T43 クライマックス FPF 1.5L L4 E
28 イギリスの旗 アイヴァー・ビューブ イギリスの旗 エキュリー・デミ・リットル ロータス 12 クライマックス FPF 1.5L L4 D
29 イギリスの旗 ブライアン・ネイラー イギリスの旗 ブライアン・ネイラー クーパー T45 クライマックス FPF 1.5L L4 D
30 イギリスの旗 トニー・マーシュ イギリスの旗 トニー・マーシュ クーパー T45 クライマックス FPF 1.5L L4 D
32 イギリスの旗 リチャード・アトリー 1 イギリスの旗 リチャード・アトリー トジェイロ F2 クライマックス FPF 1.5L L4 ?
ソース:[5]
追記
  • ^1 - エントリーしたが出場せず

結果[編集]

予選[編集]

順位 No. ドライバー コンストラクター タイム
1 3 イギリスの旗 マイク・ホーソーン フェラーリ 09:14.0
2 8 イギリスの旗 トニー・ブルックス ヴァンウォール 09:15.0 + 1.0
3 7 イギリスの旗 スターリング・モス ヴァンウォール 09:19.1 + 5.1
4 2 イギリスの旗 ピーター・コリンズ フェラーリ 09:21.9 + 7.9
5 4 西ドイツの旗 ヴォルフガング・フォン・トリップス フェラーリ 09:24.7 + 10.7
6 10 イギリスの旗 ロイ・サルヴァドーリ クーパー-クライマックス 09:35.3 + 21.3
7 11 フランスの旗 モーリス・トランティニアン クーパー-クライマックス 09:36.9 + 22.9
8 6 アメリカ合衆国の旗 ハリー・シェル BRM 09:39.6 + 25.6
9 5 フランスの旗 ジャン・ベーラ BRM 09:46.8 + 32.8
10 23 アメリカ合衆国の旗 フィル・ヒル フェラーリ 09:48.9 + 34.9
11 26 イギリスの旗 イアン・バージェス クーパー-クライマックス 09:55.3 + 41.3
12 20 ニュージーランドの旗 ブルース・マクラーレン クーパー-クライマックス 09:56.0 + 42.0
13 21 西ドイツの旗 エドガー・バース ポルシェ 09:57.2 + 43.2
14 30 イギリスの旗 トニー・マーシュ クーパー-クライマックス 09:57.5 + 43.5
15 18 オランダの旗 カレル・ゴダン・ド・ボーフォール ポルシェ 10:01.5 + 47.5
16 28 イギリスの旗 アイヴァー・ビューブ ロータス-クライマックス 10:02.6 + 48.6
17 22 西ドイツの旗 ヴォルフガング・ザイデル クーパー-クライマックス 10:21.0 + 1:07.0
18 19 イギリスの旗 ディック・ギブソン クーパー-クライマックス 10:55.0 + 1:41.0
19 24 オーストラリアの旗 ジャック・ブラバム 1 クーパー-クライマックス 09:43.4 + 29.4
20 17 西ドイツの旗 ハンス・ヘルマン 1 マセラティ 10:13.5 + 59.5
21 16 スウェーデンの旗 ヨアキム・ボニエ 1 マセラティ 09:42.7 + 28.7
22 25 イギリスの旗 グラハム・ヒル ロータス-クライマックス 10:58.0 + 1:44.0
23 27 ベルギーの旗 クリスチャン・ゲータルズ クーパー-クライマックス 11:22.9 + 2:08.9
24 12 イギリスの旗 クリフ・アリソン 1 ロータス-クライマックス 09:44.3 + 30.3
25 29 イギリスの旗 ブライアン・ネイラー 2 クーパー-クライマックス 10:17.9 + 1:03.9
ソース:[6]
追記
  • ^1 - 6周走行しなかったためグリッド降格[7]
  • ^2 - 車両規定違反のため最後尾グリッドへ降格[7]

決勝[編集]

順位 No. ドライバー コンストラクター 周回数 タイム/リタイア原因 グリッド ポイント
1 8 イギリスの旗 トニー・ブルックス ヴァンウォール 15 2:21:15.0 2 8
2 10 イギリスの旗 ロイ・サルヴァドーリ クーパー-クライマックス 15 +3:29.7 6 6
3 11 フランスの旗 モーリス・トランティニアン クーパー-クライマックス 15 +5:11.2 7 4
4 4 西ドイツの旗 ヴォルフガング・フォン・トリップス フェラーリ 15 +6:16.3 5 3
5 20 ニュージーランドの旗 ブルース・マクラーレン クーパー-クライマックス 15 +6:26.3 12 0 1
6 21 西ドイツの旗 エドガー・バース ポルシェ 15 +6:32.4 13
7 26 イギリスの旗 イアン・バージェス クーパー-クライマックス 15 +6:59.3 11
8 30 イギリスの旗 トニー・マーシュ クーパー-クライマックス 15 +7:09.9 14
9 23 アメリカ合衆国の旗 フィル・ヒル フェラーリ 15 +7:45.5 10
10 12 イギリスの旗 クリフ・アリソン ロータス-クライマックス 13 +2 Laps 24 0 2
11 28 イギリスの旗 アイヴァー・ビューブ ロータス-クライマックス 13 +2 Laps 16
Ret 3 イギリスの旗 マイク・ホーソーン フェラーリ 11 クラッチ 1
Ret 2 イギリスの旗 ピーター・コリンズ フェラーリ 10 事故死 4
Ret 22 西ドイツの旗 ヴォルフガング・ザイデル クーパー-クライマックス 9 サスペンション 17
Ret 6 アメリカ合衆国の旗 ハリー・シェル BRM 9 ブレーキ 8
Ret 27 ベルギーの旗 クリスチャン・ゲータルズ クーパー-クライマックス 4 燃料ポンプ 23
Ret 25 イギリスの旗 グラハム・ヒル ロータス-クライマックス 4 オイルパイプ 22
Ret 5 フランスの旗 ジャン・ベーラ BRM 4 サスペンション 9
Ret 18 オランダの旗 カレル・ゴダン・ド・ボーフォール ポルシェ 3 エンジン 15
Ret 17 西ドイツの旗 ハンス・ヘルマン マセラティ 3 エンジン 20
Ret 7 イギリスの旗 スターリング・モス ヴァンウォール 3 マグネトー 3 1 3
Ret 19 イギリスの旗 ディック・ギブソン クーパー-クライマックス 2 エンジン 18
Ret 29 イギリスの旗 ブライアン・ネイラー クーパー-クライマックス 1 燃料ポンプ 25
Ret 24 オーストラリアの旗 ジャック・ブラバム クーパー-クライマックス 1 接触 19
Ret 16 スウェーデンの旗 ヨアキム・ボニエ マセラティ 1 アクシデント 21
DNS 14 アメリカ合衆国の旗 トロイ・ラットマン マセラティ エンジン
ソース:[8]
追記
  • ^1 - マクラーレンは総合5位となったが、F2部門で出走したためポイント対象外
  • ^2 - アリソンはF1部門で5位となったが、総合10位のためポイント対象外
  • ^3 - ファステストラップの1点を含む

注記[編集]

  • F1史上初めてイタリア人ドライバーが不在のレースとなった。

第8戦終了時点のランキング[編集]

  • : トップ5のみ表示。ベスト6戦のみがカウントされる。ポイントは有効ポイント、括弧内は総獲得ポイント。

脚注[編集]

  1. ^ (林信次 1999, p. 59)
  2. ^ (林信次 1999, p. 59-60)
  3. ^ (林信次 1999, p. 119)。ドイツGPでは1969年までしばしばF2との混走が行われた。
  4. ^ (林信次 1995, p. 51)。ただし、文献によっては出走回数にカウントされない場合もある。
  5. ^ Germany 1958 - Race entrants”. statsf1.com. 2018年2月7日閲覧。
  6. ^ Germany 1958 - Qualifications”. statsf1.com. 2018年2月6日閲覧。
  7. ^ a b (en) Mike Lang, Grand Prix volume 1, Haynes Publishing Group,‎ , 288 p. (ISBN 0-85429-276-4)
  8. ^ 1958 German Grand Prix”. formula1.com. 2014年6月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年8月16日閲覧。

参照文献[編集]

  • 林信次『F1全史 1956-1960』ニューズ出版、1999年。ISBN 4-938495-27-9 
  • 林信次『F1全史 1966-1969』ニューズ出版、1995年。ISBN 4-938495-06-6 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

前戦
1958年イギリスグランプリ
FIA F1世界選手権
1958年シーズン
次戦
1958年ポルトガルグランプリ
前回開催
1957年ドイツグランプリ
西ドイツの旗 ドイツグランプリ 次回開催
1959年ドイツグランプリ