「フランシウム」の版間の差分

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{{元素
{| class="wikitable" style="width: 20em; float: right; margin-left: 0.5em; background: white; font-size: 95%"
|japanese name=フランシウム
|- style="background-color: white"
|number=87
| colspan="2" style="text-align: center" |
|symbol=Fr
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| || style="border-style: none; text-align: center" | [[ラドン]] - '''フランシウム''' - [[ラジウム]]
|pronounce={{IPAc-en|ˈ|f|r|æ|n|s|i|əm}}<br />{{respell|FRAN|see-əm}}
|-
|left=[[ラドン]]
| style="border-style: none; text-align: center; vertical-align: middle" | [[セシウム|Cs]]<br />'''Fr'''<br /> [[ウンウンエンニウム|Uue]]
|right=[[ラジウム]]
|above=[[セシウム|Cs]]
|below=[[ウンウンエンニウム|Uue]]
|series = アルカリ金属
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|electrons per shell= 2, 8, 18, 32, 18, 8, 1
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|isotopes=
{{Elementbox_isotopes_decay | mn=221 | sym=Fr
| na=[[:en:synthetic radioisotope|syn]] | hl=4.8&nbsp;min
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|isotopes comment=
}}
'''フランシウム'''({{lang-en-short|francium}}):[[原子番号]] 87 の[[元素]]。[[元素記号]]は'''Fr'''。[[アルカリ金属]]元素の一つ(最も原子番号が大きい)で、[[典型元素]]である。又、フランシウムの単体金属をもいう。


<sup>223</sup>Frは[[アスタチン]]と同じく[[ウラン]]や[[トリウム]]鉱石において絶えず作られ、崩壊しているため、これらの中で少量見つかる。フランシウムはアスタチンについで地殻含有量が少ない元素である。わずかに20から30グラムほどの<sup>223</sup>Frが地球の地殻において常に存在しており、他の同位体は全て人工的に作られたものである。最も多いものでは、研究所において300,000以上の原子が作られた<ref name=chemnews>{{citation|url=http://pubs.acs.org/cen/80th/francium.html|title=Francium|journal=Chemical and Engineering News|year=2003|author=Luis A. Orozco }}</ref>。以前にはエカ・セシウムもしくはアクチニウムK<ref group="注釈">実際には最も安定な同位体元素<sup>223</sup>Frに対して</ref>と呼ばれていた。
| style="border-style: none" | [[画像:Fr-TableImage.png|250px]]<div style="text-align: right"><span style="font-size:90%;">[[周期表]]</span></div>
|}
|-
! colspan="2" style="background: #ff6666" | 一般特性
|-
| style="width: 43%" | [[元素の名前順一覧|名称]], [[元素の記号順一覧|記号]], [[元素の番号順一覧|番号]] || フランシウム, Fr, 87
|-
| [[元素の分類|分類]] || [[アルカリ金属]]
|-
| [[元素の族|族]], [[元素の周期|周期]], [[元素のブロック|ブロック]] || [[第1族元素|1 (IVB)]], [[第7周期元素|7]] , [[sブロック元素|s]]
|-
| [[密度]], [[モース硬度|硬度]] || 1870 kg·m<span style="font-size:90%;"><sup>−3</sup></span>, no data
|-
| 単体の[[色]] || 銀白色(推定)
|-
! colspan="2" style="background: #ff6666" | 原子特性
|-
| [[原子量]] || [223.0197] [[原子質量単位|u]]
|-
| [[原子半径]] (計測値) || no data
|-
| [[共有結合半径]] || no data
|-
| [[ファンデルワールス半径|VDW半径]] || no data
|-
| [[電子配置]] || <nowiki>[</nowiki>[[ラドン|Rn]]<nowiki>]</nowiki>7[[s軌道|s]]<sup>1</sup>
|-
| [[電子殻]] || 2, 8, 18, 32, 18, 8, 1
|-
| [[酸化数]]([[酸化物]]) || 1([[塩基|強塩基性酸化物]])
|-
| [[結晶構造]] || 体心立方構造(推定)
|-
! colspan="2" style="background-color: #ff6666" | 物理特性
|-
| [[相]] || 固体
|-
| [[融点]] || 300 [[ケルビン|K]] <br/> (26.8 [[摂氏|℃]], 80.33 °[[華氏|F]],推定値)
|-
| [[沸点]] || 950 K <br/>(677 ℃, 523.4 °F,推定値)
|-
| [[モル体積]] || no data
|-
| [[気化熱]] || no data
|-
| [[融解熱]] || no data
|-
| [[蒸気圧]] || no data
|-
| [[音速|音の伝わる速さ]] || no data
|-
! colspan="2" style="background: #ff6666" | その他
|-
| [[クラーク数]] || no data
|-
| [[電気陰性度]] || 0.7 ([[ライナス・ポーリング|ポーリング]])
|-
| [[比熱容量]] || no data
|-
| [[導電率]] || 3 &times; 10<span style="font-size:90%;"><sup>6</sup></span> m<span style="font-size:90%;"><sup>-1</sup></span>·[[オーム|Ω]]<span style="font-size:90%;"><sup>-1</sup></span>
|-
| [[熱伝導率]] || 15 W·m<span style="font-size:90%;"><sup>−1</sup></span>·K<span style="font-size:90%;"><sup>−1</sup></span>
|-
| [[イオン化エネルギー]] || 380 kJ·mol<span style="font-size:90%;"><sup>−1</sup>
|-
! colspan="2" style="background: #ff6666" | (比較的)安定同位体
|-
| colspan="2" |
{| class="wikitable" style="width: 98%; margin: 0; background: white"
|- style="font-size: 85%; text-align: center; font-weight: bold"
| [[同位体]] || [[天然存在比|NA]] || [[半減期]] || [[崩壊モード|DM]] || [[崩壊エネルギー|DE]]/[[メガ|M]][[電子ボルト|eV]] || [[崩壊生成物|DP]]
|-
| <sup>222</sup>Fr || [[放射性同位体|{syn.}]] || 14.2 [[分]] || [[ベータ崩壊|&beta;-]] || 2.033 || [[ラジウム|<sup>222</sup>Ra]]
|-
| <sup>223</sup>Fr || '''100%''' || 21.8 分 || [[アルファ崩壊|&alpha;]]<br/>&beta;- || 5.430<br/>1.149 || [[アスタチン|<sup>219</sup>At]]<br/><sup>223</sup>Ra
|}
|-
! colspan="2" style="background: #ff6666; font-size: 85%" | 注記がない限り[[国際単位系]]使用及び[[標準状態]]下。
|}


[[安定同位体]]は存在せず、最も[[半減期]]が長いフランシウム223でも22分しかない。このため化学的、物理的性質は良く分かっていないが、原子価は1価である事が確認されている。このため、化学的性質は[[セシウム]]に類似するようである。[[アクチニウム]]227の1.2%がα崩壊して、フランシウム223となることが分かっている。また、フランシウムはアスタチン、[[ラジウム]]および[[ラドン]]へと崩壊する、非常に放射性の強い金属である。
'''フランシウム'''({{lang-en-short|francium}}):[[原子番号]] 87 の[[元素]]。[[元素記号]]は'''Fr'''。[[アルカリ金属]]元素の一つ(最も原子番号が大きい)で、[[典型元素]]である。この放射性元素は[[アスタチン]]と同じく[[ウラン]]や[[トリウム]]の中から少量見つかる。
又、フランシウムの単体金属をもいう。


フランシウムは合成でなく自然において発見された最後の元素である<ref group="注釈">[[テクネチウム]]のような合成された元素が後に自然において発見されることはあった</ref>。
[[安定同位体]]は存在せず、最も[[半減期]]が長いフランシウム223でも22分しかない。このため化学的、物理的性質は良く分かっていないが、原子価は1価である事が確認されている。このため、化学的性質は[[セシウム]]に類似するようである。


== 歴史 ==
[[アクチニウム]]227の1.2%がα崩壊して、フランシウム223となることが分かっている。
1870年という早い時期に、化学者はセシウムの次のアルカリ金属である[[原子番号]]87の元素があるべきであると考えていた<ref name="andyscouse" />。それは暫定的に''エカ-セシウム''という名で言及されていた<ref name="chemeducator">Adloff, Jean-Pierre; Kaufman, George B. (2005-09-25). [http://chemeducator.org/sbibs/s0010005/spapers/1050387gk.htm Francium (Atomic Number 87), the Last Discovered Natural Element]. ''The Chemical Educator'' '''10''' (5). Retrieved on 2007-03-26.</ref>。この未確認な元素を発見し、単離するための研究チームによる試みは、本物のフランシウムが発見されるまでに、少なくとも4つの誤った主張がなされた。


===誤発見===
また、フランシウムはアスタチンについで地殻含有量が少ない元素である。
[[ソビエト連邦]]の化学者D. K. Dobroserdovはエカ-セシウム(フランシウム)を発見したと主張した初の科学者であった。1925年、彼は[[カリウム]]および他のアルカリ金属のサンプルから弱い放射能を観測し、これはエカ-セシウムがサンプルを汚染しているためであると誤って結論付けた。しかし、サンプルからの放射能は、実際には天然に存在するカリウムの放射性同位体である[[カリウム40]]によるものであった<ref name="fontani">{{cite conference| first = Marco| last = Fontani| title = The Twilight of the Naturally-Occurring Elements: Moldavium (Ml), Sequanium (Sq) and Dor (Do)| booktitle = International Conference on the History of Chemistry| pages = 1–8| date = 2005-09-10| location = Lisbon|url = http://5ichc-portugal.ulusofona.pt/uploads/PaperLong-MarcoFontani.doc| archiveurl = http://web.archive.org/web/20060224090117/http://5ichc-portugal.ulusofona.pt/uploads/PaperLong-MarcoFontani.doc|archivedate=2006-02-24|accessdate = 2007-04-08}}</ref>。その後彼はエカ-セシウムの物性の予測を発表し、そこで彼は祖国の名を取ってこの元素を''russium''と名付けた<ref name="vanderkroft">{{cite web| last = Van der Krogt| first = Peter| title = Francium| work = Elementymology & Elements Multidict| date = 2006-01-10| url = http://elements.vanderkrogt.net/element.php?sym=Fr| accessdate = 2007-04-08}}</ref>。その後すぐに、彼は[[オデッサ]]のクライストチャーチ・ポリテクニック工科大学での教育活動に専念し、その元素に関する更なる研究を続けなかった<ref name="fontani"/>。


その翌年、[[イギリス]]の化学者Gerald J. F. DruceおよびFrederick H. Loringは、[[硫酸マンガン(II)]]の[[X線]]写真の解析を行い<ref name="vanderkroft"/>、彼らは観測した[[スペクトル線]]をエカ-セシウムであると推定した。彼らは87番目の元素の発見を発表し、それが最も重いアルカリ金属元素であることから''alkalinium''という名前を提案した<ref name="fontani"/>。
== 歴史 ==

[[マルグリット・ペレー]] (M.Perey) が[[1939年]]に発見。ペレーの祖国のフランスが語源。この元素は当時アクチニウムから崩壊することから'''アクチニウムK'''と呼ばれていた。しかしペレーがフランシウムを発見する前にもこの元素が発見されており、当時はフランシウムのような短い半減期を持つ放射性元素が周期表の空席に入ることは有り得ないと思われていた。そのためペレーがこの元素を発見する1939年までこの元素は忘れられていた。
1930年、[[オーバーン大学]]の{{仮リンク|フレッド・アリソン|en|Fred Allison}}は、[[リチア雲母]]および{{仮リンク|ポルックス石|en|Pollucite}}を彼の[[磁気光学効果|磁気光学機器]]を用いて解析した際に原子番号87の元素を発見したと主張した。アリソンは、彼の故郷である[[ヴァージニア州]]から''virginium''と名付け、その[[原子記号]]をViおよびVmとするように要請した<ref name="vanderkroft"/><ref>{{cite news| title = Alabamine & Virginium| publisher = TIME| date = 1932-02-15|url = http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,743159,00.html| accessdate = 2007-04-01}}</ref>。しかし、1934年、[[カリフォルニア大学バークレー校]]のH. G. マクファーソンは、アリソンの装置の効果と、この間違った発見の有用性について反証した<ref>{{citation| last = MacPherson| first = H. G.| title = An Investigation of the Magneto-Optic Method of Chemical Analysis| journal = Physical Review| volume = 47| issue = 4| pages = 310–315| publisher = American Physical Society|year=1934|doi = 10.1103/PhysRev.47.310}}</ref>。

1936年、[[ルーマニア]]の化学者{{仮リンク|ホリア・フルベイ|en|Horia Hulubei}}と、彼のフランスの同僚{{仮リンク|イヴェット・コショワ|en|Yvette Cauchois}}もまた、彼らの高解像度X線装置を用いたポルックス石の分析を行った<ref name="fontani"/>。彼らはいくつかの弱い輝線を観測し、それを原子番号87の元素であると推定した。フルベイおよびコショワはこの発見を報告し、彼らが仕事をしていたルーマニアの行政区からその名前を''moldavium''、原子記号をMlと提唱した<ref name="vanderkroft"/>。1937年、フルベイの仕事は、フルベイの研究手法を拒絶した[[アメリカ]]の[[物理学者]]F. H. Hirsh Jr.によって批判された。Hirshはエカ-セシウムは自然界には存在しないと確信しており、フルベイは[[水銀]]もしくは[[ビスマス]]のX線の輝線を見たのであろうとした。しかしフルベイは、彼のX線装置と手法はそのような取り違いをするにはあまりに精密であると主張した。このため、[[ノーベル物理学賞]]受賞者でありフルベイの師である[[ジャン・ペラン]]は、[[マルグリット・ペレー]]が発見した''francium''よりも、エカ-セシウムとしての''moldavium''を支持した。しかし、ペレーは、彼女が原子番号87の元素のただ一人の発見者であると信じられるまで、フルベイの仕事を批判し続けた<ref name="fontani"/>。

===ペレーの分析===
フランシウムは、[[マルグリット・ペレー]] (M.Perey) が[[フランス]]の[[パリ]]にある{{仮リンク|キュリー研究所 (パリ)|en|Curie Institute (Paris)}}において[[1939年]]に発見した。彼女が<sup>227</sup>Acのサンプルを精製した際、220 k[[エレクトロンボルト|eV]]の崩壊エネルギーがあることが報告された。しかし、彼女は80 keV以下のエネルギー準位の崩壊素粒子に着目した。彼女は、このサンプルの崩壊は、精製しきれなかった未確認の崩壊生成物に起因するのかもしれないと考えたが、再び純粋な<sup>227</sup>Acを用いて試験を行っても同一の結果となった。様々な試験の結果、この未知の物質が[[トリウム]]、[[ラジウム]]、[[鉛]]、[[ビスマス]]、[[タリウム]]である可能性が消去された。この新しい生成物は、セシウム塩と共沈するようなアルカリ金属の化学的性質を示し、<sup>227</sup>Acの[[アルファ崩壊]]によって生成した、原子番号87の元素であるとペレーは信じた<ref name="chemeducator" />。ペレーはその後、<sup>227</sup>Acのアルファ崩壊と[[ベータ崩壊]]の割合の測定を試みた。彼女の初めの試験では、アルファ崩壊への分岐は0.6パーセントであり、その後彼女はその数字を1パーセントに修正した<ref name="mcgraw">{{citation| contribution = Francium| year = 2002| title = [[McGraw-Hill Encyclopedia of Science & Technology]]| volume = 7| pages = 493–494| publisher = McGraw-Hill Professional|isbn = 0-07-913665-6}}</ref>。

ペレーは新しい同位体元素をアクチニウム-K(現在は<sup>223</sup>Frとして知られる)と命名した<ref name="chemeducator" />。そして、1946年に、彼女は新しく発見された元素の名前を''catium''とするよう提案した。これは、彼女がこの元素が全ての元素の中で最も電気陽性 (cation)であると考えていたためである。ペレーの監督者の一人である[[イレーヌ・ジョリオ=キュリー]]は、''cation''よりむしろ''cat''の含意のためにその名称に反対した<ref name="chemeducator"/>。ペレーはその後、フランスにちなんだフランシウムという名前を提案した。フランシウムという名称は1949年に[[国際純正・応用化学連合]]によって公式に採用され<ref name="andyscouse" />、[[ガリウム]]に次いで2つ目のフランスにちなんで名づけられた元素となった。フランシウムは初め、元素記号Faを割り当てられたが、その後まもなくFrに修正された<ref name="hackh">{{citation| last = Grant| first = Julius| contribution = Francium| year = 1969| title = Hackh's Chemical Dictionary| pages = 279–280| publisher = McGraw-Hill| isbn = 0-07-024067-1}}</ref>。フランシウムは1925年に発見された[[レニウム]]に続いて発見された、自然界で発見された最後の元素であり、その後発見された元素は全て合成されたものである<ref name="chemeducator" />。フランシウムの構造に関する更なる研究は、1970年代から1980年代にかけて、Sylvain Liebermanおよび彼のチームによって[[欧州原子核研究機構]]において行われた<ref>{{cite web|title = History|work = Francium|publisher = [[State University of New York at Stony Brook]]|date = 2007-02-20|url = http://fr.physics.sunysb.edu/francium_news/history.HTM|accessdate = 2007-03-26}}</ref>。


== 特徴 ==
== 特徴 ==
最も長い半減期を持つフランシウム223でも半減期が22分しかないため、秤量可能な量の単体金属及び化合物として取り出すことがほとんどできない。よってフランシウムの化学的、物理的性質は実験結果として求められた実際の数値は少なく、理論的な推定値が大半を占める。
フランシウムは自然に産出する元素の中で最も不安定な元素である。最も長い半減期を持つフランシウム223でも半減期が22分しかないため、秤量可能な量の単体金属及び化合物として取り出すことがほとんどできない。よってフランシウムの化学的、物理的性質は実験結果として求められた実際の数値は少なく、理論的な推定値が大半を占める。対照的に、自然に産出する元素の中で2番目に不安定な元素であるアスタチンの最大の半減期は8.5時間である<ref name="andyscouse">{{cite web| last = Price| first = Andy| title = Francium| date = 2004-12-20| url = http://www.andyscouse.com/pages/francium.htm| accessdate = 2007-03-25}}</ref>。フランシウムの全ての同位体は崩壊してアスタチン、ラジウムもしくはラドンとなる<ref name="andyscouse"/>。<sup>215m</sup>Frは半減期がわずか3.5ナノ秒しかなく、原子番号105([[ドブニウム]])までの合成された元素の内、最も不安定なものである<ref name="CRC2006">{{citation|year =2006 |title = CRC Handbook of Chemistry and Physics |volume = 4|page= 12|publisher = CRC|isbn= 0-8493-0474-1}}</ref>。単体は銀白色の金属と推定されている。また、フランシウムは高度に[[放射性]]である。


フランシウムは、化学的性質の大部分が[[セシウム]]に似たアルカリ金属元素である<ref name="CRC2006"/>。1価の[[価電子]]を持つとても重い元素であり<ref>{{cite web| last = Winter| first = Mark| title = Electron Configuration| work = Francium| publisher = The University of Sheffield| url = http://www.webelements.com/webelements/elements/text/Fr/eneg.html| accessdate = 2007-04-18}}</ref>、[[化学当量|元素の当量]]は最も大きい<ref name="CRC2006" />。もし固体のフランシウムが作られたならば、その融点において[[表面張力]]はおそらく0.05092 [[ニュートンN]]/mである<ref>{{citation|last = Kozhitov| first = L. V.| coauthors = Kol'tsov, V. B.; Kol'tsov, A. V.| title = Evaluation of the Surface Tension of Liquid Francium|journal = Inorganic Materials| volume = 39| issue = 11|pages = 1138–1141| year = 2003|doi = 10.1023/A:1027389223381}}</ref>。フランシウムの融点は計算上およそ27度付近になると主張されている<ref name="losalamos">{{cite web| title = Francium| publisher = Los Alamos National Laboratory|date = 2003-12-15| url = http://periodic.lanl.gov/elements/87.html|accessdate = 2007-03-29}}</ref>。しかし、融点はフランシウム元素の非常な希さと放射性のためはっきりと確認されていない。このように、推定された677度という沸点もまた未確認である。放射性元素は放熱するため、その熱によってフランシウムはほぼ間違いなく液体であると考えられている。
フランシウムは最も重いアルカリ金属で、すべての元素の中で最も低い[[電気陰性度]]を持っている。単体は銀白色の金属と推定されている。

また、フランシウムは高度に[[放射性]]である。
[[ライナス・ポーリング]]は、フランシウムの[[電気陰性度]]を、その値が正しいとするような実験データはないものの、セシウムのもつ0.79という[[電気陰性度#ポーリングの電気陰性度(1932年)|ポーリング・スケール]]からポーリング・スケールで0.7と推測した<ref>{{citation| last = Pauling| first = Linus| title = The Nature of the Chemical Bond (3rd Edn.)| authorlink = Linus Pauling| publisher = Cornell University Press| year = 1960| pages = 93}}</ref><ref>{{citation|author= Allred, A. L. |year= 1961 |journal= J. Inorg. Nucl. Chem.|volume= 17 |issue= 3–4 |pages= 215–221 |title= Electronegativity values from thermochemical data |doi= 10.1016/0022-1902(61)80142-5}}</ref>。フランシウムの[[イオン化エネルギー]]は[[不活性電子対効果]]より想定されるように、セシウムの375.7041(2) k[[ジュール|J]]/molよりわずかに高い392.811(4) kJ/molであり<ref>{{citation|author = Andreev, S.V.; Letokhov, V.S.; Mishin, V.I.,|title = Laser resonance photoionization spectroscopy of Rydberg levels in Fr|journal = [[Physical Review Letters]]|year = 1987|volume = 59|pages = 1274–76|doi = 10.1103/PhysRevLett.59.1274|pmid=10035190|bibcode=1987PhRvL..59.1274A}}</ref>、これはセシウムがフランシウムよりも電気陰性度が低いことを示唆している。

過塩素酸セシウムと[[共沈法|共沈]]させることによってごく少量の過塩素酸セシウムが得られる。この共沈物はL. E. グレンダナンおよびC. M. ネルソンによる放射性セシウムの共沈法を適応することによってフランシウムを分離するのに用いることができる。それはまた、[[ヨウ素酸]]塩、[[ピクリン酸]]塩、[[酒石酸]]塩(酒石酸ルビジウムも)、[[ヘキサクロロ白金酸]]塩、タングストケイ酸などを含む、他の多くのセシウム塩と共沈させる事ができる。タングストケイ酸および過塩素酸塩による共沈もまた、担体としての他のアルカリ金属なしにフランシウムを分離する方法を提供する<ref>{{citation|last= Hyde |first= E. K. |title= Radiochemical Methods for the Isolation of Element 87 (Francium) |journal= [[J. Am. Chem. Soc.]] |year= 1952 |volume= 74 |issue= 16 |pages= 4181–4184 |doi= 10.1021/ja01136a066}}</ref><ref>E. N K. Hyde ''Radiochemistry of Francium'',Subcommittee on Radiochemistry, National Academy of Sciences-National Research Council; available from the Office of Technical Services, Dept. of Commerce, 1960.</ref>。ほとんど全てのフランシウム塩は水溶性である<ref>{{citation|author=Maddock, A. G. |title=Radioactivity of the heavy elements|journal=Q. Rev., Chem. Soc.|year=1951|volume=3|pages=270–314|doi=10.1039/QR9510500270}}</ref>。

==用途==
その不安定さと希少性のため、フランシウムの市販される用途はない<ref>{{cite web| last = Winter| first = Mark| title = Uses| work = Francium| publisher = The University of Sheffield|url = http://www.webelements.com/webelements/elements/text/Fr/uses.html| accessdate = 2007-03-25}}</ref><ref name="s">{{cite web| last = Bentor| first = Yinon| title = Chemical Element.com - Francium| url = http://www.chemicalelements.com/elements/fr.html| accessdate = 2007-03-25}}</ref><ref name="nbb">{{citation| last = Emsley|url=http://books.google.com/books?id=Yhi5X7OwuGkC&pg=PA151| first = John| title = Nature's Building Blocks| publisher = Oxford University Press| year = 2001| location = Oxford| pages = 151–153| isbn = 0-19-850341-5}}</ref><ref name="elemental">{{cite web| last = Gagnon| first = Steve| title = Francium| publisher = Jefferson Science Associates, LLC| url = http://education.jlab.org/itselemental/ele087.html| accessdate = 2007-04-01}}</ref><ref name="nostrand332">{{citation|year = 2005|title= Chemical Elements, in Van Nostrand's Encyclopedia of Chemistry|editor-last = Considine| editor-first = Glenn D.|page=332|location= New York| publisher = Wiley-Interscience| isbn = 0-471-61525-0}}</ref>。それは生物学<ref name='bio'>{{citation| last = Haverlock|first = TJ|pmid = 12553788|doi= 10.1021/ja0255251|title = Selectivity of calix[4]arene-bis(benzocrown-6) in the complexation and transport of francium ion|journal = J Am Chem Soc|year = 2003|volume=125|pages=1126–7| last2 = Mirzadeh| first2 = S| last3 = Moyer| first3 = BA| issue = 5}}</ref>および原子構造の分野における研究目的で用いられる。フランシウムはまた、さまざまな[[がん]]の潜在的な診断補助の用途も検討された<ref name="andyscouse" />が、この用途においては実用的でないとみなされた<ref name="nbb" />。

フランシウムを合成し、トラップし、冷却する技術によって、フランシウムは比較的単純な原子構造と共に、専門的な[[分光学]]実験の対象とされる。これらの実験は、原子を構成する[[素粒子]]同士の[[結合定数 (物理学)|結合定数]]や[[エネルギー準位]]に関する情報の特定につながった<ref>{{citation| last = Gomez| first = E| coauthors = Orozco, L A, and Sprouse, G D| title = Spectroscopy with trapped francium: advances and perspectives for weak interaction studies| journal = Rep. Prog. Phys.| volume = 69| issue = 1| pages = 79–118| date = 2005-11-07|doi = 10.1088/0034-4885/69/1/R02}}</ref>。[[光ピンセット|レーザートラッピング]]された<sup>210</sup>Frイオンによる発光の研究は、[[量子力学]]によって予測された値と非常に類似した、原子エネルギー準位間の遷移の正確なデータを与えた<ref>{{citation|last = Peterson|first = I|title = Creating, cooling, trapping francium atoms|page= 294|journal= Science News|date = 1996-05-11|url = http://www.sciencenews.org/pages/pdfs/data/1996/149-19/14919-06.pdf|accessdate = 2009-09-11|volume=149|issue=19}}</ref>。

==存在==
[[File:Pichblende.jpg|thumb|この[[閃ウラン鉱]]のサンプルはおよそ100,000個のフランシウム原子(3.3×10<sup>-20</sup> g)を常に含んでいる<ref name="nbb" />。|alt=A shiny gray 5-centimeter piece of matter with a rough surface.]]
===自然界===
<sup>223</sup>Frは、<sup>227</sup>Acのアルファ崩壊によって生産されるため、[[ウラン]]および[[トリウム]][[鉱石]]中に痕跡量存在している<ref name="CRC2006" />。ウランのサンプル中には、ウラン原子1×10<sup>18</sup>個中に1個のフランシウム原子が存在していると推定される<ref name="nbb" />。また、[[地殻]]中には常に多くても30グラムのフランシウムが存在していると算出されている<ref>{{cite web|last = Winter|first = Mark|title = Geological information|work = Francium|publisher = The University of Sheffield|url = http://www.webelements.com/webelements/elements/text/Fr/geol.html|accessdate = 2007-03-26}}</ref>。フランシウムは、地殻中において[[アスタチン]]に次いで2番目に存在量の少ない元素である<ref name="andyscouse" /><ref name="nbb" />([[地殻中の元素の存在度]]も参照)。

===合成===
フランシウムは[[核反応]]によって合成することができる。
: <math>\mathrm{^{197}_{\ 79}Au +\ ^{18}_{\ 8}O \longrightarrow\ ^{210}_{\ 87}Fr + 5\ ^{1}_{0}n}</math>
このプロセスは[[ニューヨーク州立大学ストーニブルック校]]物理学科によって開発され、209、210、211のフランシウムの同位体を生じさせる<ref name="sbproduction">{{cite web| title = Production of Francium| work = Francium| publisher = [[State University of New York at Stony Brook]]|date = 2007-02-20|url = http://fr.physics.sunysb.edu/francium_news/production.HTM| accessdate = 2007-03-26}}</ref>。これらは[[磁気光学効果|磁気光学トラップ]](MOT)によって分離される<ref name="sbtrapping">{{cite web| title = Cooling and Trapping| work = Francium| publisher = [[State University of New York at Stony Brook]]| date = 2007-02-20| url = http://fr.physics.sunysb.edu/francium_news/trapping.HTM| accessdate = 2007-05-01}}</ref>。特定の同位体の生産率は酸素ビームのエネルギーに依存する。ニューヨーク州立大学ストーニブルック校の電子・陽電子線形加速器(LINAC)から放たれた<sup>18</sup>Oビームは、[[金]]のターゲットにおける核反応によって<sup>210</sup>Frを合成する。この生産は、理解と発展にいくらかの時間を要した。金のターゲットを融点の非常に近くまで操作し、その表面が非常に清浄であることを確認することが重要であった。核反応は、フランシウム原子を金のターゲットの奥深くに埋め込み、それを効率的に除去しなければならなかった。その原子は金のターゲットの表面を素早く拡散し、イオンとして放出される。フランシウムイオンは静電レンズによって誘導され、熱された[[イットリウム]]上に誘導され、再び電気的に中性となる。その後、フランシウムはガラス球に噴射される。磁場とレーザービームによって冷却され、ガラス球中に留められる。とはいえ、元素を留めておくことができるのはフランシウム原子が逃げるか崩壊する前のわずか20秒ほどだけであり、新しい原子の規則的な流れが失われた原子と入れ替わることで、数分以上の間一定数の原子の数を保持される。まずはじめに、およそ1,000個のフランシウム原子が実験においてトラップされた。この方法は徐々に改善され、単位時間ごとに300,000を超える中性のフランシウム原子をトラップできるだけの能力に改善された<ref name=chemnews>{{citation|url=http://pubs.acs.org/cen/80th/francium.html|title=Francium|journal=Chemical and Engineering News|year=2003|author=Luis A. Orozco }}</ref>。これらは中性な金属原子(フランシウム金属)であるとされているものの、結合していないバラバラな気体状態になっている。フランシウム原子によって放たれる光を蛍光として[[ビデオカメラ]]で捕らえることができるのに十分な量のフランシウムがトラップされた。原子は直径1ミリメートルの赤熱した球として現れる。これはフランシウムを見た一番最初の瞬間であった。研究者は、トラップされた原子による発光と吸収を測定するための非常に敏感な測定器を作り、フランシウムにおける原子エネルギー準位間のさまざまな遷移に関する初めての実験結果を得た。始めの測定結果は、量子論に基く実験値との間で非常に良い一致を示した。他の合成方法は、ラジウムを[[中性子]]で攻撃する、トリウムを[[陽子]]、[[重陽子]]もしくは[[ヘリウム]]イオンで攻撃する方法が含まれる<ref name="mcgraw">{{citation| contribution = Francium| year = 2002| title = [[McGraw-Hill Encyclopedia of Science & Technology]]| volume = 7| pages = 493–494| publisher = McGraw-Hill Professional|isbn = 0-07-913665-6}}</ref>。フランシウムは2009年現在まだ、十分に多くの重量は合成されていない<ref name="andyscouse" /><ref name="CRC2006" /><ref name="losalamos">{{cite web| title = Francium| publisher = Los Alamos National Laboratory|date = 2003-12-15| url = http://periodic.lanl.gov/elements/87.html|accessdate = 2007-03-29}}</ref><ref name="nbb" />。


== 同位体 ==
== 同位体 ==
{{main|フランシウムの同位体}}
{{main|フランシウムの同位体}}
フランシウムは34の同位体を持っいる。質量範囲はフランシウム199からフランシウム232まで。しかし安定同位体は存在せず、非常に不安定である。うち半減期22分フランシウム223最も安定と言える。
フランシウムは34の同位体が知られおり、その質量範囲はフランシウム199からフランシウム232までである<ref name="CRC2006">{{citation|year = 2006 |title = CRC Handbook of Chemistry and Physics |editor-last = Lide |editor-first = David R. |volume = 11 |pages = 180–181 |publisher = CRC |isbn=0-8493-0487-3}}</ref>フランシウムは7つの準安定核同位体を有ている<ref name="CRC2006" />。安定同位体は存在せず、非常に不安定な元素である。<sup>223</sup>Frおよび<sup>221</sup>Frみが自然に存在する同位体であり前者はるかに一般的であ<ref name="nostrand679">{{citation|year = 2005|title= Francium, in Van Nostrand's Encyclopedia of Chemistry|editor-last = Considine| editor-first = Glenn D.| page= 679|location= New York| publisher = Wiley-Interscience| isbn = 0-471-61525-0}}</ref>

半減期21.8分の<sup>223</sup>Frが最も安定であり<ref name="CRC2006" />、これまでに発見および合成されたフランシウムの同位体で、これより長い半減期を持つものは非常にありそうにない<ref name="mcgraw" />。<sup>223</sup>Frは[[アクチニウム系列]]における5番目の生成元素であり、その後大部分はベータ崩壊によって1149 keVの崩壊エネルギーとともに<sup>223</sup>Raへと崩壊し、0.006パーセントはアルファ崩壊の経路によって5.4 MeVの崩壊熱と共に<sup>219</sup>Atへと崩壊する<ref>{{cite web |author=National Nuclear Data Center |year=1990 |title=Table of Isotopes decay data |url=http://ie.lbl.gov/toi/nuclide.asp?iZA=870223 |publisher=[[Brookhaven National Laboratory]]|accessdate=2007-04-04}}</ref> 。

<sup>221</sup>Frは4.8分の半減期を有している<ref name="CRC2006" />。それは[[ネプツニウム系列]]の9番目の生成元素であり、<sup>225</sup>Acの娘元素である<ref name="nostrand332" />。<sup>221</sup>Frはアルファ崩壊によって6.457 MeVの崩壊熱と共に<sup>217</sup>Atへと崩壊する<ref name="CRC2006" /> 。

最も不安定な[[基底状態]]の同位元素は<sup>221</sup>Frであり、0.12マイクロ秒の半減期を有し、9.54 MeVの崩壊熱と共に<sup>211</sup>Atへと崩壊する<ref name="CRC2006" />。準安定状態の[[核異性体]]である<sup>215m</sup>Frはさらに不安定であり、その半減期はわずか3.5ナノ秒である<ref name="NNDClist">{{cite web |author=National Nuclear Data Center |year=2003 |title=Fr Isotopes |url=http://ie.lbl.gov/education/parent/Fr_iso.htm |publisher=[[Brookhaven National Laboratory]] |accessdate=2007-04-04}}</ref>。

==注釈==
<references group="注釈"/>

==出典==
{{reflist}}


{{Commons|Francium}}
{{Commons|Francium}}

2011年5月8日 (日) 03:20時点における版

ラドン フランシウム ラジウム
Cs

Fr

Uue
Element 1: 水素 (H),
Element 2: ヘリウム (He),
Element 3: リチウム (Li),
Element 4: ベリリウム (Be),
Element 5: ホウ素 (B),
Element 6: 炭素 (C),
Element 7: 窒素 (N),
Element 8: 酸素 (O),
Element 9: フッ素 (F),
Element 10: ネオン (Ne),
Element 11: ナトリウム (Na),
Element 12: マグネシウム (Mg),
Element 13: アルミニウム (Al),
Element 14: ケイ素 (Si),
Element 15: リン (P),
Element 16: 硫黄 (S),
Element 17: 塩素 (Cl),
Element 18: アルゴン (Ar),
Element 19: カリウム (K),
Element 20: カルシウム (Ca),
Element 21: スカンジウム (Sc),
Element 22: チタン (Ti),
Element 23: バナジウム (V),
Element 24: クロム (Cr),
Element 25: マンガン (Mn),
Element 26: 鉄 (Fe),
Element 27: コバルト (Co),
Element 28: ニッケル (Ni),
Element 29: 銅 (Cu),
Element 30: 亜鉛 (Zn),
Element 31: ガリウム (Ga),
Element 32: ゲルマニウム (Ge),
Element 33: ヒ素 (As),
Element 34: セレン (Se),
Element 35: 臭素 (Br),
Element 36: クリプトン (Kr),
Element 37: ルビジウム (Rb),
Element 38: ストロンチウム (Sr),
Element 39: イットリウム (Y),
Element 40: ジルコニウム (Zr),
Element 41: ニオブ (Nb),
Element 42: モリブデン (Mo),
Element 43: テクネチウム (Tc),
Element 44: ルテニウム (Ru),
Element 45: ロジウム (Rh),
Element 46: パラジウム (Pd),
Element 47: 銀 (Ag),
Element 48: カドミウム (Cd),
Element 49: インジウム (In),
Element 50: スズ (Sn),
Element 51: アンチモン (Sb),
Element 52: テルル (Te),
Element 53: ヨウ素 (I),
Element 54: キセノン (Xe),
Element 55: セシウム (Cs),
Element 56: バリウム (Ba),
Element 57: ランタン (La),
Element 58: セリウム (Ce),
Element 59: プラセオジム (Pr),
Element 60: ネオジム (Nd),
Element 61: プロメチウム (Pm),
Element 62: サマリウム (Sm),
Element 63: ユウロピウム (Eu),
Element 64: ガドリニウム (Gd),
Element 65: テルビウム (Tb),
Element 66: ジスプロシウム (Dy),
Element 67: ホルミウム (Ho),
Element 68: エルビウム (Er),
Element 69: ツリウム (Tm),
Element 70: イッテルビウム (Yb),
Element 71: ルテチウム (Lu),
Element 72: ハフニウム (Hf),
Element 73: タンタル (Ta),
Element 74: タングステン (W),
Element 75: レニウム (Re),
Element 76: オスミウム (Os),
Element 77: イリジウム (Ir),
Element 78: 白金 (Pt),
Element 79: 金 (Au),
Element 80: 水銀 (Hg),
Element 81: タリウム (Tl),
Element 82: 鉛 (Pb),
Element 83: ビスマス (Bi),
Element 84: ポロニウム (Po),
Element 85: アスタチン (At),
Element 86: ラドン (Rn),
Element 87: フランシウム (Fr),
Element 88: ラジウム (Ra),
Element 89: アクチニウム (Ac),
Element 90: トリウム (Th),
Element 91: プロトアクチニウム (Pa),
Element 92: ウラン (U),
Element 93: ネプツニウム (Np),
Element 94: プルトニウム (Pu),
Element 95: アメリシウム (Am),
Element 96: キュリウム (Cm),
Element 97: バークリウム (Bk),
Element 98: カリホルニウム (Cf),
Element 99: アインスタイニウム (Es),
Element 100: フェルミウム (Fm),
Element 101: メンデレビウム (Md),
Element 102: ノーベリウム (No),
Element 103: ローレンシウム (Lr),
Element 104: ラザホージウム (Rf),
Element 105: ドブニウム (Db),
Element 106: シーボーギウム (Sg),
Element 107: ボーリウム (Bh),
Element 108: ハッシウム (Hs),
Element 109: マイトネリウム (Mt),
Element 110: ダームスタチウム (Ds),
Element 111: レントゲニウム (Rg),
Element 112: コペルニシウム (Cn),
Element 113: ニホニウム (Nh),
Element 114: フレロビウム (Fl),
Element 115: モスコビウム (Mc),
Element 116: リバモリウム (Lv),
Element 117: テネシン (Ts),
Element 118: オガネソン (Og),
87Fr
外見
銀白色(推定)
一般特性
名称, 記号, 番号 フランシウム, Fr, 87
分類 アルカリ金属
, 周期, ブロック 1, 7, s
原子量 (223)
電子配置 [Rn] 7s1
電子殻 2, 8, 18, 32, 18, 8, 1(画像
物理特性
solid
密度室温付近) 1.87 g/cm3
融点 ? 300 K, ? 27 °C, ? 80 °F
沸点 ? 950 K, ? 677 °C, ? 1250 °F
融解熱 ca. 2 kJ/mol
蒸発熱 ca. 65 kJ/mol
蒸気圧(推定)
圧力 (Pa) 1 10 100 1 k 10 k 100 k
温度 (K) 404 454 519 608 738 946
原子特性
酸化数 1(強塩基性酸化物)
電気陰性度 0.7(ポーリングの値)
イオン化エネルギー 1st: 380 kJ/mol
共有結合半径 260 pm
ファンデルワールス半径 348 pm
その他
結晶構造 体心立方構造(推定)
磁性 常磁性
電気抵抗率 3 µΩ⋅m
熱伝導率 (300 K) 15 W/(m⋅K)
CAS登録番号 7440-73-5
主な同位体
詳細はフランシウムの同位体を参照
同位体 NA 半減期 DM DE (MeV) DP
221Fr syn 4.8 min α 6.457 217At
222Fr syn 14.2 min β 2.033 222Ra
223Fr trace 21.8 min β 1.149 223Ra
α 5.430 219At

フランシウム: francium):原子番号 87 の元素元素記号Frアルカリ金属元素の一つ(最も原子番号が大きい)で、典型元素である。又、フランシウムの単体金属をもいう。

223Frはアスタチンと同じくウラントリウム鉱石において絶えず作られ、崩壊しているため、これらの中で少量見つかる。フランシウムはアスタチンについで地殻含有量が少ない元素である。わずかに20から30グラムほどの223Frが地球の地殻において常に存在しており、他の同位体は全て人工的に作られたものである。最も多いものでは、研究所において300,000以上の原子が作られた[1]。以前にはエカ・セシウムもしくはアクチニウムK[注釈 1]と呼ばれていた。

安定同位体は存在せず、最も半減期が長いフランシウム223でも22分しかない。このため化学的、物理的性質は良く分かっていないが、原子価は1価である事が確認されている。このため、化学的性質はセシウムに類似するようである。アクチニウム227の1.2%がα崩壊して、フランシウム223となることが分かっている。また、フランシウムはアスタチン、ラジウムおよびラドンへと崩壊する、非常に放射性の強い金属である。

フランシウムは合成でなく自然において発見された最後の元素である[注釈 2]

歴史

1870年という早い時期に、化学者はセシウムの次のアルカリ金属である原子番号87の元素があるべきであると考えていた[2]。それは暫定的にエカ-セシウムという名で言及されていた[3]。この未確認な元素を発見し、単離するための研究チームによる試みは、本物のフランシウムが発見されるまでに、少なくとも4つの誤った主張がなされた。

誤発見

ソビエト連邦の化学者D. K. Dobroserdovはエカ-セシウム(フランシウム)を発見したと主張した初の科学者であった。1925年、彼はカリウムおよび他のアルカリ金属のサンプルから弱い放射能を観測し、これはエカ-セシウムがサンプルを汚染しているためであると誤って結論付けた。しかし、サンプルからの放射能は、実際には天然に存在するカリウムの放射性同位体であるカリウム40によるものであった[4]。その後彼はエカ-セシウムの物性の予測を発表し、そこで彼は祖国の名を取ってこの元素をrussiumと名付けた[5]。その後すぐに、彼はオデッサのクライストチャーチ・ポリテクニック工科大学での教育活動に専念し、その元素に関する更なる研究を続けなかった[4]

その翌年、イギリスの化学者Gerald J. F. DruceおよびFrederick H. Loringは、硫酸マンガン(II)X線写真の解析を行い[5]、彼らは観測したスペクトル線をエカ-セシウムであると推定した。彼らは87番目の元素の発見を発表し、それが最も重いアルカリ金属元素であることからalkaliniumという名前を提案した[4]

1930年、オーバーン大学フレッド・アリソン英語版は、リチア雲母およびポルックス石を彼の磁気光学機器を用いて解析した際に原子番号87の元素を発見したと主張した。アリソンは、彼の故郷であるヴァージニア州からvirginiumと名付け、その原子記号をViおよびVmとするように要請した[5][6]。しかし、1934年、カリフォルニア大学バークレー校のH. G. マクファーソンは、アリソンの装置の効果と、この間違った発見の有用性について反証した[7]

1936年、ルーマニアの化学者ホリア・フルベイ英語版と、彼のフランスの同僚イヴェット・コショワ英語版もまた、彼らの高解像度X線装置を用いたポルックス石の分析を行った[4]。彼らはいくつかの弱い輝線を観測し、それを原子番号87の元素であると推定した。フルベイおよびコショワはこの発見を報告し、彼らが仕事をしていたルーマニアの行政区からその名前をmoldavium、原子記号をMlと提唱した[5]。1937年、フルベイの仕事は、フルベイの研究手法を拒絶したアメリカ物理学者F. H. Hirsh Jr.によって批判された。Hirshはエカ-セシウムは自然界には存在しないと確信しており、フルベイは水銀もしくはビスマスのX線の輝線を見たのであろうとした。しかしフルベイは、彼のX線装置と手法はそのような取り違いをするにはあまりに精密であると主張した。このため、ノーベル物理学賞受賞者でありフルベイの師であるジャン・ペランは、マルグリット・ペレーが発見したfranciumよりも、エカ-セシウムとしてのmoldaviumを支持した。しかし、ペレーは、彼女が原子番号87の元素のただ一人の発見者であると信じられるまで、フルベイの仕事を批判し続けた[4]

ペレーの分析

フランシウムは、マルグリット・ペレー (M.Perey) がフランスパリにあるキュリー研究所 (パリ)において1939年に発見した。彼女が227Acのサンプルを精製した際、220 keVの崩壊エネルギーがあることが報告された。しかし、彼女は80 keV以下のエネルギー準位の崩壊素粒子に着目した。彼女は、このサンプルの崩壊は、精製しきれなかった未確認の崩壊生成物に起因するのかもしれないと考えたが、再び純粋な227Acを用いて試験を行っても同一の結果となった。様々な試験の結果、この未知の物質がトリウムラジウムビスマスタリウムである可能性が消去された。この新しい生成物は、セシウム塩と共沈するようなアルカリ金属の化学的性質を示し、227Acのアルファ崩壊によって生成した、原子番号87の元素であるとペレーは信じた[3]。ペレーはその後、227Acのアルファ崩壊とベータ崩壊の割合の測定を試みた。彼女の初めの試験では、アルファ崩壊への分岐は0.6パーセントであり、その後彼女はその数字を1パーセントに修正した[8]

ペレーは新しい同位体元素をアクチニウム-K(現在は223Frとして知られる)と命名した[3]。そして、1946年に、彼女は新しく発見された元素の名前をcatiumとするよう提案した。これは、彼女がこの元素が全ての元素の中で最も電気陽性 (cation)であると考えていたためである。ペレーの監督者の一人であるイレーヌ・ジョリオ=キュリーは、cationよりむしろcatの含意のためにその名称に反対した[3]。ペレーはその後、フランスにちなんだフランシウムという名前を提案した。フランシウムという名称は1949年に国際純正・応用化学連合によって公式に採用され[2]ガリウムに次いで2つ目のフランスにちなんで名づけられた元素となった。フランシウムは初め、元素記号Faを割り当てられたが、その後まもなくFrに修正された[9]。フランシウムは1925年に発見されたレニウムに続いて発見された、自然界で発見された最後の元素であり、その後発見された元素は全て合成されたものである[3]。フランシウムの構造に関する更なる研究は、1970年代から1980年代にかけて、Sylvain Liebermanおよび彼のチームによって欧州原子核研究機構において行われた[10]

特徴

フランシウムは自然に産出する元素の中で最も不安定な元素である。最も長い半減期を持つフランシウム223でも半減期が22分しかないため、秤量可能な量の単体金属及び化合物として取り出すことがほとんどできない。よってフランシウムの化学的、物理的性質は実験結果として求められた実際の数値は少なく、理論的な推定値が大半を占める。対照的に、自然に産出する元素の中で2番目に不安定な元素であるアスタチンの最大の半減期は8.5時間である[2]。フランシウムの全ての同位体は崩壊してアスタチン、ラジウムもしくはラドンとなる[2]215mFrは半減期がわずか3.5ナノ秒しかなく、原子番号105(ドブニウム)までの合成された元素の内、最も不安定なものである[11]。単体は銀白色の金属と推定されている。また、フランシウムは高度に放射性である。

フランシウムは、化学的性質の大部分がセシウムに似たアルカリ金属元素である[11]。1価の価電子を持つとても重い元素であり[12]元素の当量は最も大きい[11]。もし固体のフランシウムが作られたならば、その融点において表面張力はおそらく0.05092 ニュートンN/mである[13]。フランシウムの融点は計算上およそ27度付近になると主張されている[14]。しかし、融点はフランシウム元素の非常な希さと放射性のためはっきりと確認されていない。このように、推定された677度という沸点もまた未確認である。放射性元素は放熱するため、その熱によってフランシウムはほぼ間違いなく液体であると考えられている。

ライナス・ポーリングは、フランシウムの電気陰性度を、その値が正しいとするような実験データはないものの、セシウムのもつ0.79というポーリング・スケールからポーリング・スケールで0.7と推測した[15][16]。フランシウムのイオン化エネルギー不活性電子対効果より想定されるように、セシウムの375.7041(2) kJ/molよりわずかに高い392.811(4) kJ/molであり[17]、これはセシウムがフランシウムよりも電気陰性度が低いことを示唆している。

過塩素酸セシウムと共沈させることによってごく少量の過塩素酸セシウムが得られる。この共沈物はL. E. グレンダナンおよびC. M. ネルソンによる放射性セシウムの共沈法を適応することによってフランシウムを分離するのに用いることができる。それはまた、ヨウ素酸塩、ピクリン酸塩、酒石酸塩(酒石酸ルビジウムも)、ヘキサクロロ白金酸塩、タングストケイ酸などを含む、他の多くのセシウム塩と共沈させる事ができる。タングストケイ酸および過塩素酸塩による共沈もまた、担体としての他のアルカリ金属なしにフランシウムを分離する方法を提供する[18][19]。ほとんど全てのフランシウム塩は水溶性である[20]

用途

その不安定さと希少性のため、フランシウムの市販される用途はない[21][22][23][24][25]。それは生物学[26]および原子構造の分野における研究目的で用いられる。フランシウムはまた、さまざまながんの潜在的な診断補助の用途も検討された[2]が、この用途においては実用的でないとみなされた[23]

フランシウムを合成し、トラップし、冷却する技術によって、フランシウムは比較的単純な原子構造と共に、専門的な分光学実験の対象とされる。これらの実験は、原子を構成する素粒子同士の結合定数エネルギー準位に関する情報の特定につながった[27]レーザートラッピングされた210Frイオンによる発光の研究は、量子力学によって予測された値と非常に類似した、原子エネルギー準位間の遷移の正確なデータを与えた[28]

存在

A shiny gray 5-centimeter piece of matter with a rough surface.
この閃ウラン鉱のサンプルはおよそ100,000個のフランシウム原子(3.3×10-20 g)を常に含んでいる[23]

自然界

223Frは、227Acのアルファ崩壊によって生産されるため、ウランおよびトリウム鉱石中に痕跡量存在している[11]。ウランのサンプル中には、ウラン原子1×1018個中に1個のフランシウム原子が存在していると推定される[23]。また、地殻中には常に多くても30グラムのフランシウムが存在していると算出されている[29]。フランシウムは、地殻中においてアスタチンに次いで2番目に存在量の少ない元素である[2][23]地殻中の元素の存在度も参照)。

合成

フランシウムは核反応によって合成することができる。

このプロセスはニューヨーク州立大学ストーニブルック校物理学科によって開発され、209、210、211のフランシウムの同位体を生じさせる[30]。これらは磁気光学トラップ(MOT)によって分離される[31]。特定の同位体の生産率は酸素ビームのエネルギーに依存する。ニューヨーク州立大学ストーニブルック校の電子・陽電子線形加速器(LINAC)から放たれた18Oビームは、のターゲットにおける核反応によって210Frを合成する。この生産は、理解と発展にいくらかの時間を要した。金のターゲットを融点の非常に近くまで操作し、その表面が非常に清浄であることを確認することが重要であった。核反応は、フランシウム原子を金のターゲットの奥深くに埋め込み、それを効率的に除去しなければならなかった。その原子は金のターゲットの表面を素早く拡散し、イオンとして放出される。フランシウムイオンは静電レンズによって誘導され、熱されたイットリウム上に誘導され、再び電気的に中性となる。その後、フランシウムはガラス球に噴射される。磁場とレーザービームによって冷却され、ガラス球中に留められる。とはいえ、元素を留めておくことができるのはフランシウム原子が逃げるか崩壊する前のわずか20秒ほどだけであり、新しい原子の規則的な流れが失われた原子と入れ替わることで、数分以上の間一定数の原子の数を保持される。まずはじめに、およそ1,000個のフランシウム原子が実験においてトラップされた。この方法は徐々に改善され、単位時間ごとに300,000を超える中性のフランシウム原子をトラップできるだけの能力に改善された[1]。これらは中性な金属原子(フランシウム金属)であるとされているものの、結合していないバラバラな気体状態になっている。フランシウム原子によって放たれる光を蛍光としてビデオカメラで捕らえることができるのに十分な量のフランシウムがトラップされた。原子は直径1ミリメートルの赤熱した球として現れる。これはフランシウムを見た一番最初の瞬間であった。研究者は、トラップされた原子による発光と吸収を測定するための非常に敏感な測定器を作り、フランシウムにおける原子エネルギー準位間のさまざまな遷移に関する初めての実験結果を得た。始めの測定結果は、量子論に基く実験値との間で非常に良い一致を示した。他の合成方法は、ラジウムを中性子で攻撃する、トリウムを陽子重陽子もしくはヘリウムイオンで攻撃する方法が含まれる[8]。フランシウムは2009年現在まだ、十分に多くの重量は合成されていない[2][11][14][23]

同位体

フランシウムは34の同位体が知られており、その質量範囲はフランシウム199からフランシウム232までである[11]。フランシウムは7つの準安定核同位体を有している[11]。安定同位体は存在せず、非常に不安定な元素である。223Frおよび221Frのみが自然に存在する同位体であり、前者の方がはるかに一般的である[32]

半減期21.8分の223Frが最も安定であり[11]、これまでに発見および合成されたフランシウムの同位体で、これより長い半減期を持つものは非常にありそうにない[8]223Frはアクチニウム系列における5番目の生成元素であり、その後大部分はベータ崩壊によって1149 keVの崩壊エネルギーとともに223Raへと崩壊し、0.006パーセントはアルファ崩壊の経路によって5.4 MeVの崩壊熱と共に219Atへと崩壊する[33]

221Frは4.8分の半減期を有している[11]。それはネプツニウム系列の9番目の生成元素であり、225Acの娘元素である[25]221Frはアルファ崩壊によって6.457 MeVの崩壊熱と共に217Atへと崩壊する[11]

最も不安定な基底状態の同位元素は221Frであり、0.12マイクロ秒の半減期を有し、9.54 MeVの崩壊熱と共に211Atへと崩壊する[11]。準安定状態の核異性体である215mFrはさらに不安定であり、その半減期はわずか3.5ナノ秒である[34]

注釈

  1. ^ 実際には最も安定な同位体元素223Frに対して
  2. ^ テクネチウムのような合成された元素が後に自然において発見されることはあった

出典

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