ヴァルター・ベンヤミン

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ヴァルター・ベンディクス・シェーンフリース・ベンヤミンWalter Bendix Schönflies Benjamin ['valtɐ 'bεnjami:n], 1892年7月15日 - 1940年9月26日)は、ドイツの文芸評論家。思想家、エッセイスト、翻訳家、また、一部では哲学者としても知られる。

文化社会学者として、史的唯物論とユダヤ的神秘主義を結びつけた。エッセイのかたちを採った自由闊達なエスプリの豊かさと文化史、精神史に通暁した思索の深さ、2021世紀都市と人々の有り様を冷徹に予見したような分析には定評がある。

マルセル・プルーストシャルル・ボードレール翻訳がある。またベルトルト・ブレヒトを高く評価した。フランクフルト学派の1人に数えられる。第二次世界大戦中、 ナチスの追っ手から逃亡中、ピレネーの山中で服毒自殺を遂げた。ハンナ・アーレントは、彼を「homme de lettres(オム・ド・レットル/文の人)」と呼んだ。1929年1932年に少年少女向けのラジオ番組に出演した。

目次

[編集] 生涯

ベルリンの裕福なユダヤ人家庭に生まれ、幸福な少年時代を送る。

[編集] 略年譜

[編集] 代表作品

[編集] 『複製技術時代の芸術』

成立(1936年-1939年?)

初版は1936年に社会学研究所の紀要として『社会研究時報』に掲載された。初版はフランス語に訳出される際、訳者によって修正および若干の構成変更が入っている[1]。その後『複製技術時代の芸術』はドイツ語で出版されるが、最終的にこの著作は1936年から1939年まで、つまりベンヤミンがスペインで自殺を遂げる前年まで、本人は書き直していた 。なお、本書は出版されているものの中でも幾つか版があり、内容もそれぞれによって大きく異なっている。

この著作には彼の主要な思想の一つであるアウラ(オーラ)の概念が著されている。

[編集] 写真小史

この論文は19世紀の写真家ウジェーヌ・アジェ(Jean-Eugène Atget)の古いパリの写真を元に彼の写真論が展開されている。内容は『複製技術時代の芸術』と若干重複する箇所もある。

[編集] 『パサージュ論』

ベンヤミンが自殺するまで肌身離さずに持っていた原稿こそがパサージュ論であると言われている。『パサージュ論』は長らく準備していながらも未完に終わった大部の著作のためのノートを中心とした草稿群である。内容としては数ページにわたる当時の著書からの引用や随想が項目ごとに分類されているだけである。一つの著作としてのまとまりには欠けるが、19世紀から20世紀におけるパリの町並みの変遷や歴史についての考察が網羅的に記述されている。

第二次世界大戦勃発後、原稿の散逸を恐れてパリ市内の国立図書館に原稿を隠した。このときに原稿を受け取って秘匿に協力したのは、当時国立図書館の司書を務めていたジョルジュ・バタイユである。終戦後に発見されたこれらの原稿はほとんどが出版されており、ほかに新たに発見された原稿もある。しかし、亡命を試みてスペインへ向かっていたときにも原稿を入れて肌身離さず持っていたという黒い鞄もいまだ発見されておらず、未発見のまま散逸した原稿は相当な量に及ぶと推測されている。

内容としては目次や文の並び方はある程度まとまってはいるものの原稿の域を出ない、段落単位の断片的な記述や引用が殆どを占める。


[編集] 『パサージュ論』の内容

[編集] 邦訳著作

  • 『ヴァルター・ベンヤミン著作集』(晶文社、1969年 - 1975年)
    • 1巻「暴力批判論」
    • 2巻「複製技術時代の芸術
    • 3巻「言語と社会」
    • 4巻「ドイツ・ロマン主義」
    • 5巻「ゲーテ親和力」
    • 6巻「ボードレール」
    • 7巻「文学の危機」
    • 8巻「シュルレアリスム
    • 9巻「ブレヒト
    • 10巻「一方通交路」
    • 11巻「都市の肖像」
    • 12巻「ベルリンの幼年時代」
    • 13巻「新しい天使」
    • 14巻「書簡(1)1910-1928」
    • 15巻「書簡(1)1929-1940」
  • 『複製技術時代の芸術』(紀伊國屋書店、1969年/晶文社、新版1999年)
  • 『ドイツ悲劇の根源』(法政大学出版局、1975年/ちくま学芸文庫上下、1999年/講談社文芸文庫、2001年)
  • 『教育としての遊び』(晶文社 1981年)   
  • 『モスクワの冬』(晶文社、1982年)
  • 『ドイツの人びと』(晶文社、1984年)
  • 『子どものための文化史』(晶文社、1988年、平凡社ライブラリー、2008年)
  • 『来たるべき哲学のプログラム』 (晶文社 1992年)
  • 『陶酔論』(晶文社、1992年)
  • 『呼ぶ者と聴く者 三つの放送劇』 (西田書店 1989年)
  • パサージュ論』(岩波書店、1993年/岩波現代文庫、2003年)
    • 1巻「パリの原風景」
    • 2巻「ボードレールのパリ」
    • 3巻「都市の遊歩者」
    • 4巻「方法としてのユートピア
    • 5巻「ブルジョアジーの夢」
  • 『ボードレール他五篇——ベンヤミンの仕事』(岩波文庫、1994年)
  • 『暴力批判論他十篇——ベンヤミンの仕事』(岩波文庫、1994年)
  • 『ベンヤミン・コレクション』(ちくま学芸文庫、1995年-1997年・2007年)
    • 1巻「近代の意味」
    • 2巻「エッセイの思想」
    • 3巻「記憶への旅」
    • 4巻「批評の瞬間」
  • 『図説写真小史』(ちくま学芸文庫、1998年)(解説金子隆一
  • 『ドイツ・ロマン主義における芸術批評の概念』(ちくま学芸文庫、2001年)
  • ヘンリー・ローニツ編『ベンヤミン/アドルノ往復書簡——1928-1940』(晶文社、1996年)

[編集] 関連文献

  • 『暗い時代の人々』ハンナ・アレント (河出書房新社、ちくま学芸文庫、)
  • 『ベンヤミンの黒い鞄 亡命の記録』リーザ・フィトコ(野村美紀子訳、晶文社、1993年)
  • 『ヴァルター・ベンヤミン』 テオドール・W.アドルノ (大久保健治訳、晶文社、2006年)
  • 『ベンヤミン―破壊・収集・記憶 』三島憲一(現代思想の冒険者たち 09、講談社、1998年)
  • 『ベンヤミンの生涯』野村修(平凡社選書、1977年 平凡社ライブラリー、1994年)
  • 『ベンヤミン Kawade道の手帖』  (河出書房新社  2006年) ほか多数
  • ゲルショム・ショーレム 『わが友ベンヤミン』 (野村修訳、晶文社 1978年)
  • 『ブレヒトの思い出』(法政大学出版局、1973年、新版1986年) ベンヤミン他で共著

[編集] 関連項目

[編集] 脚注

  1. ^ この修正についてベンヤミンは始終気にしていた様子である。ヴェルナー・クラフト宛て1936年8月11日の書簡では初稿のフランス語版の構成について心配している様子が伺える。 野村修編集解説『書簡II 1929-1940 ヴァルター・ベンヤミン著作集15』晶文社1987年。(77 p.176)。
  2. ^ 「概要」「覚え書および資料」と内容が重複するため、日本語版では割愛されている。
  3. ^ 同上。