スイス・フラン

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スイス・フランは、スイスリヒテンシュタイン通貨。略称CHF(Confoederatio Helvetica Franc の頭文字)。補助単位はラッペン(Rappen, Rp.; ドイツ語)またはサンチーム(centime, ct.; フランス語)で、1フラン=100Rp./ct.。 フランス語名は Franc suisseフラン・シュイス)、ドイツ語名は Schweizer Frankenシュヴァイツァー・フランケン)、イタリア語名は Franco svizzeroフランコ・ズヴィッツェロ)、ロマンシュ語名は Franc svizzerフランク・スヴィッツェル)。

目次

[編集] 概要

スイス・フランは国際金融市場において、イギリス・ポンドドイツ・マルクフランス・フランと並ぶ重要な通貨であったが、欧州連合統一通貨ユーロの誕生後は、ユーロ圏に浮かぶ孤立した島のような状態になってしまった。とはいえ、その重要性はいささかも変わっていない。国際社会におけるスイスの地位により、「金よりも堅い」といわれるように、世界で最も安定した通貨の一つとして知られている。国際決済通貨(ハードカレンシー)であるため、自国の通貨が不安定な国では海外との貿易にスイス・フランが使われることも多い。

[編集] 歴史

1848年スイス連邦成立の時、各カントンでばらばらであった通貨を統合し、1850年に正式にスイスフランが制定された。当時のフランス・フランに倣って、品位.900重量5グラム(純銀含有量は4.5グラム)の1フラン銀貨をもって基準通貨とする実質的な銀本位制であった。その後、1865年ラテン通貨同盟に参加し、金本位制に移行。同時に銀貨の品位を.835に落とし銀貨は補助貨幣となった。

[編集] 紙幣

スイスでは、連邦成立後も各カントンの公立銀行で発行された紙幣が流通していたが、これを連邦銀行で一括して発行管理することになり、1907年に第1次紙幣が製造、発行された。以後100年の間に8つのシリーズの紙幣が製造されたが、現在流通している紙幣は第8次型である。このうち、第4次と第7次の紙幣は、流通紙幣の予備在庫確保という名目で保管され、発行されることはなかった。第5次までの高額紙幣は非常に大型であり(第5次紙幣の1000フランは横228mm、縦125mm)ほぼA5サイズに近い大型紙幣であったが、現在でも、高額になるほど大きさが大きくなり、また、50フラン以上の紙幣では昔から額面により印刷色が決まっている(50:緑、100:青、200、500:茶、1000:紫)ので一目で見分けがつく。なおスイスの紙幣には、公用語であるドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4言語(第5次紙幣まではロマンシュ語を除く3言語)で額面などの標記がされていることは、よく知られている。

スイスの紙幣は概ね20年程度で改定されてきたが、デンマークや日本の紙幣のように第二次大戦後に発行された物が全て法的に有効というわけでないので注意が必要である。現在流通している紙幣以外で法的に有効なのは第6次紙幣(1975年発行2000年流通停止)のみで、他の旧紙幣は全て通貨としての価値を失っている。第6次紙幣については2020年まで交換が保証されている。

スイスには紙幣発行当初から1000フランの高額紙幣があり、現在も発行され流通している。使い勝手の良くないと言われた500フラン紙幣は、現在では発行中止になり、200フラン紙幣に代わっているが、1000フラン紙幣は発行が続いている。さすがに日本円10万円相当の高額紙幣であるために、一般旅行者が手にする機会は無いし、現地でも滅多にお目にかかれないが、スイスは自由通貨国であるので、資産家などが外貨や金を購入する時に使われるようである。10000フランの支払いに100フラン紙幣100枚より、1000フラン紙幣10枚の方が合理的だという考え方が存在するようだ。アメリカではクレジットカードが決済の主要手段であり、現金は50ドル紙幣でさえ受け取りを拒否する店があるようだが、スイスは日本同様現金を重視する国であるので、よほどの田舎や小さな商店でないかぎり、旅行者が支払いで1000フランを出しても受け取りを拒否されることは少ない。この点は同じヨーロッパでも200ユーロ紙幣の受け取りも拒む店の多いイタリアやフランスなどとは異なっている。

[編集] 第1次紙幣

第1次紙幣の100フラン(表)ヘルヴェティア女神の立像。
第1次紙幣の100フラン(表)
ヘルヴェティア女神の立像。

第1次紙幣は、1907年6月に発行された。50、100、500、1000フランの4種で、デザインは各額面共通。それまでに各カントンの公立銀行で発行されていたものと同じく、表面には左にヘルヴェティア女神の立像、右に天使の像が描かれていた。裏面には帽子を被ったヘルメスの頭像が左右に配されていた。このシリーズは1925年6月まで流通し、1945年6月末に通貨価値が消滅している。

[編集] 第2次紙幣

第2次紙幣の50フラン(裏)ホドラー作「木を伐る人」。
第2次紙幣の50フラン(裏)
ホドラー作「木を伐る人」。
第2次紙幣の100フラン(表)ホドラー作の少女の頭像。
第2次紙幣の100フラン(表)
ホドラー作の少女の頭像。

第2次紙幣は、5、10、20、40、50、100、500、1000フランの額面のものが製造され、1911年から14年にかけて発行されてから、1955年、57年に第5次紙幣に置き換わるまで、比較的長期間にわたって流通した。このうち、10と40フラン紙幣は準備券で発行されることはなかった。また、5フラン紙幣は第2次大戦中に5フラン銀貨を回収し銀を国庫保管するために積極的に使用された。これらの第2次紙幣は、20フラン紙幣は1935年末まで流通し、無効となったのは1956年、50フラン以上の高額紙幣は1958年まで流通し、無効になったのは1978年であったが、5フラン紙幣のみは1980年まで現行紙幣であり、通貨価値が無くなったのは2000年の5月であった。

第2次銀行券では50フラン以上の高額紙幣は表面に女性の頭像、裏面にはスイスの産業を表すモチーフが描かれていた。このうち、50および100フラン紙幣は、スイスの著名な画家フェルディナント・ホドラーが裏表共にデザインを担当していて、50フラン紙幣の裏面には代表作の木を伐る人が描かれていた。この他、20フラン紙幣は兌換金券で紙幣の表には当時の20フラン金貨と同じブレネリの肖像が入っていた。この20フラン紙幣は、第1次大戦中に金貨を引き上げる目的で発行された。また、5フラン紙幣の肖像はウィリアム・テルであり、低額紙幣の裏面は額面と装飾図案のみであった。

[編集] 第3次紙幣

第3次紙幣の100フラン(表)ウィリアム・テルの頭像。
第3次紙幣の100フラン(表)
ウィリアム・テルの頭像。

第3次紙幣は20、100フランの2額面のみで、第2次紙幣の増刷的性格が強い。1918年に100フラン紙幣が、1930年に20フラン紙幣が発行された。100フラン紙幣の肖像はウィリアム・テルであった。またこの100フラン紙幣にはテルの肖像の異なったものが戦時の準備紙幣として製造されたが発行されることはなかった。また、20フラン紙幣はスイスの紙幣初めての文化人の肖像として教育者のペスタロッチが描かれていた。20フラン紙幣にも他にペスタロッチの肖像の異なるものや、女性の肖像の紙幣が準備紙幣として用意されていたが発行はされなかった。100フラン紙幣は1925年6月まで流通し、1945年6月限りで無効となった。一方20フラン紙幣の方は、1956年3月まで流通し、1976年3月末限りで無効となった。

[編集] 第4次紙幣

第4次紙幣の100フラン(表)女性の頭像。
第4次紙幣の100フラン(表)
女性の頭像。

第4次紙幣は1938年にデザインされ、第二次大戦中に発行できるよう準備がされた。50、100、1000フラン紙幣は印刷までされた(特に1000フラン紙幣は1500万枚印刷)が、500フラン紙幣は試作段階で終わっている。各額面の紙幣いずれも発行されることはなかった。これらの紙幣は表面に女性の頭像、裏面は産業の象徴が描かれていた。(100フラン紙幣の裏面は単なる装飾模様。)

[編集] 第5次紙幣

第5次紙幣の100フラン(表)少年の頭像。アルプスの少女ハイジに出てくるペーター少年だと言われている。
第5次紙幣の100フラン(表)
少年の頭像。
アルプスの少女ハイジに出てくるペーター少年だと言われている。

第5次紙幣は低額の10、20フラン紙幣が1956年に、高額の50、100、500、1000フラン紙幣は1957年に発行された。この第5次紙幣では、低額紙幣は表面に著名人の肖像が、裏面には高山植物がデザインされた。一方高額紙幣は表面に女性や子供の肖像、裏面には歴史的故事などが絵画調で描かれた芸術性の高いものとなった。これら第5次紙幣は1980年4月まで流通し2000年4月末限りで無効となった。

[編集] 第6次紙幣

第6次紙幣の100フラン(表)ボロミニの頭像。
第6次紙幣の100フラン(表)
ボロミニの頭像。

第6次紙幣は1976年(100フラン)~1979年(10フラン)にかけて登場し、10、20、50、100、500、1000フランの6種類。この紙幣で表面に文化人、裏面にその人物に関係のあるモチーフというスタイルが確立され、現行の第8次紙幣に引き継がれた。この第6次紙幣で裏面デザインが初めて縦長となった。2000年4月まで流通し、2020年4月末まで有効である。

[編集] 第7次紙幣

第7次紙幣の100フラン(表)ボロミニの肖像。
第7次紙幣の100フラン(表)
ボロミニの肖像。

第7次紙幣は1984年に第6次紙幣の増備目的に印刷され保管されていたが、セキュリティ対策の進んだ第8次紙幣が製造されることが決定したため、発行はされなかった。10、20、50、100、500、1000フランの6種類で1000フラン紙幣を除いて第6次紙幣と同じ人物の肖像と関連モチーフが表裏面に描かれていた。

第7次紙幣の50フラン(表・部分)長らくこの写真だけしか公表されていなかった。
第7次紙幣の50フラン(表・部分)
長らくこの写真だけしか公表されていなかった。

この第7次紙幣は機密保持のため、製造後20年以上に渡って詳細が公表されず、図案も50フラン紙幣の表面のごく一部分の写真が公表されるにとどまり、詳細が不明で幻の紙幣であったが、流通させる予定が完全に無くなり廃止となったため、2007年に図案や詳細などその全容が初めて公表された。なお、このシリーズに施されたセキュリティは第6次紙幣と同等のものであった。

[編集] 第8次紙幣

現在流通しているのは第8次型紙幣で、10、20、50、100、200、1000フランの6種類である。500フラン紙幣に代わって新たに200フラン紙幣が発行されるようになったが、これらの紙幣は世界で最も偽造が難しい紙幣といわれるほど、様々なハイテク技術を使った偽造防止策が施されている。また、縦長のデザインも最近では徐々に採用する国が増えてきたが、先進諸国においては非常に珍しい物となっている。スイスでは先に述べた通り、第6次紙幣の裏面で初めて縦長のデザインが採用されたが、現行第8次紙幣では裏表共に縦長のデザインとなった。

  • 第8次紙幣におけるセキュリティ
20フランにおけるセキュリティAマークとホログラム
20フランにおけるセキュリティ
Aマークとホログラム
20フランにおけるセキュリティEマークとGマーク
20フランにおけるセキュリティ
EマークとGマーク

現行の第8次紙幣には、世界の紙幣の中でも最も複雑なセキュリティが仕組まれていると言われている。縦長の紙幣の表面左端にはアルファベットでA~Hまでのマーキングがあり、それぞれの個所に各紙幣の額面の数字が示されている。

A:パールインク。紙幣の基本色に発色するパールインクで額面を表示

B:漉き入れ。額面の数字の漉き入れパターン

C:深刻凹版。額面が複雑な模様の凹版で表示

D:ピンホールセキュリティ。額面の数字のピンホールが開いている。50フラン以下の紙幣には施されていなかったが2000年~2002年の間に、100フラン以上の紙幣同様の処理が施された。

E:メタリックインク。紙幣基本色の濃淡が変化するインクで額面が表示されている。

F:紫外線インク。左右に紫外線に発光するインクで額面が印刷されているが、右が黄色に蛍光を放つ一般的な紫外線発光インクであるのに対し、左側は、紙幣基本色の濃い色に発光する非常に珍しいもの。

G:マイクロ文字フォイル。マイクロ文字の入ったアルミフォイルインクで額面を表示。

H:潜像凹版。見る角度により額面表示が現れる。

この他各額面ともに4個所にホログラムパッチが施されているが、内2つ(200フランは3つ)のホログラムは、額面数字がアニメーションする複雑なホログラムである。

また、安全線も1本漉き込まれている。

スイスの紙幣には最近各国の紙幣に見られる複製防止のためのユーリオン模様は採用されていないが、これに代るものとして、2005年以降に製造された紙幣には電子透かしが埋め込まれているという。

この他当然ながら黒透かしも採用されている。なお、表の肖像は日本の紙幣のように手彫りではなく、コンピュータによる彫刻 である。

  • 第8次紙幣の仕様
10フラン
黄色 126x74mm 1997年4月8日発行、2000年改定
ル・コルビュジエ(Le Corbusier 1887年-1965年建築家
20フラン
赤 137x74mm 1996年10月1日発行、2000年改定
アルテュール・オネゲル(Arthur Honegger 1892年-1955年作曲家
50フラン
緑 148x74mm 1995年10月3日発行、2002年改定
ゾフィー・トイベル・アルプ(Sophie Täuber-Arp 1889年-1943年芸術家
100フラン
青 159x74mm 1998年10月1日発行
アルベルト・ジャコメッティ(Alberto Giacometti 1901年-1966年彫刻家画家
200フラン
茶色170x74mm 1997年10月1日発行
シャルル・フェルディナン・ラミュ(Charles Ferdinand Ramuz 1878年-1947年小説家
1,000フラン
紫 181x74mm 1998年4月1日発行
ヤーコプ・ブルクハルト(Jacob Burckhardt 1818年-1897年歴史家
  • 第8次紙幣の画像

[編集] 第9次紙幣

スイス連邦銀行では、来るべき9次の新紙幣(2010年から流通予定)のデザインコンペティションが行われ、入賞作品が公開された。このコンペのグランプリ獲得者のデザインにはエイズウィルスなどがモチーフにされており、一部で論議を呼んでいる。次のリンク先に全てのデザインが公開されている。 [1]

[編集] 硬貨

1フラン硬貨 1903年銘(銀貨)
1フラン硬貨 1903年銘(銀貨)
1フラン硬貨 1980年銘(白銅貨)
1フラン硬貨 1980年銘(白銅貨)
5フラン硬貨(白銅貨)ウィリアム・テルと言われているが実態は不明
5フラン硬貨(白銅貨)
ウィリアム・テルと言われているが実態は不明

スイスの現行硬貨は、5、10、20ラッペン(サンチーム)、1/2、1、2、5フランの7種類。1ラッペンの銅貨は先頃まで、セット販売用に製造されていたが、2007年1月1日に廃止された。かつて存在した2ラッペンの銅貨は1974年で製造が打ち切られ、その後1997年に廃止され、こちらはすでに他額面硬貨との交換が終了していて、通貨としての価値を失っている。

スイスの硬貨は、これまで様々な材質で製造されてきており、これらが長期に渡って流通している。しかし、近年になって自動販売機の普及、銀行のATMでの硬貨の利用の増加などにより、支障を来たすようになった。現在の硬貨は5ラッペンの黄銅貨を除き全て白銅貨である。かつてフラン硬貨は.835品位の銀貨であったが、1971年以降回収が行われ、現在は市中で銀貨を見かけることはない。また、5、10、20ラッペン硬貨のうち、純ニッケル素材の硬貨も、2004年に流通停止になっている。このほか5フラン硬貨も周囲のギザに相当する部分に刻まれた文字がレリーフ状のタイプと彫り込んだタイプが存在し、この彫り込んだタイプも自動販売機の誤作動を招くので流通停止となっている。

現在流通している硬貨のうち、2フラン以下の6種類の硬貨のデザインは、フラン硬貨がヘルベティア女神の立像、ラッペン硬貨が同じく頭像で、これらの図案は1870年代から変更されていない。材質こそ銀や純ニッケルから白銅に変わりはしたが、概ね130年以上も同じデザインの硬貨が流通しているような国は、他には全く見当たらない。これは如何にスイス・フランが安定している通貨であるかの裏付けに他ならない。なお、低・中額面硬貨のヘルベティア女神像に対し、最高額面の5フラン硬貨のデザインはウィリアム・テルとなっている。この5フラン硬貨は、広く一般に流通している硬貨においては、日本の500円硬貨と並んで先進諸国の硬貨ではもっとも実質価値の高い額面の硬貨である。

100フラン金貨 1925年銘(ブレネリ)
100フラン金貨 1925年銘(ブレネリ)

この他の硬貨として、1880年代から10フラン、20フランの本位金貨が流通していた。20フラン金貨はラテン通貨同盟の基準金貨でフランスの20フラン金貨(ナポレオン金貨)と同じ6.4516グラムの重量を有する金純度90%の金貨で、アルプスの少女「ブレネリ」が描かれていた。また、様々な記念の硬貨も時々発行されるが、この中でも射撃大会の記念硬貨は希少価値も高くコレクターの注目アイテムとなっている。また、コレクション用の地金型や収集型の金貨や銀貨も発行されている。

スイスの紙幣には4言語で銘文があるが、硬貨においては4言語全てを入れるのは困難なため、基本的に国名はラテン語名のHELVETIAまたはCONFOEDERATIO HELVETICAの銘が使われている。

[編集] 為替レート

為替レートも参照。

日本ではあまり取り上げられなかったが、2008年3月14日、アメリカドルとスイスフランが同じレートとなった。これは歴史上初の出来事である。

CHF対ドル為替レート(1989年~)
CHF対ドル為替レート(1989年~)
円対CHF為替レート(1989年~)
円対CHF為替レート(1989年~)
現在のスイス・フランの為替レート
Yahoo!ファイナンスで計算: 豪ドル 加ドル ユーロ 英ポンド 香港ドル 日本円 米ドル
Googleで計算: 豪ドル 加ドル ユーロ 英ポンド 香港ドル 日本円 米ドル

[編集] 関連記事

  • フラン - 曖昧さ回避のためのページ。スイスフラン以外のフランへ。

[編集] 関連項目