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== 概要 ==
== 概要 ==
カルデラは、水深約200メートルの平坦な地形で、[[姶良カルデラ]]の一部となっており、約25,000年前に起きた、姶良大噴火の主要な[[火口]]の跡と考えられている。海底火山は、タギリ中央火口丘、ホリノデ中央火口丘、アブラツボ中央火口丘などがあり、記録に残っている噴火はないが現在も活動が継続しており、年間数回から数十回の微小な[[地震]]が観測される。海底において活発な噴気活動が観察されており<ref name="grsj.37.13">藤野恵子ほか、[https://doi.org/10.11367/grsj.37.13 鹿児島湾若尊火口と周辺での熱流量分布] 日本地熱学会誌 Vol.37 (2015) No.1 p.13-26</ref>、海面に泡となって現れることから地元漁師の間で「滾り(たぎり)」と呼ばれている。また、この若尊海底火山からの噴出物により、鹿児島湾内安永諸島のひとつが形成されたと考える研究者もいる<ref>小林哲夫佐々木寿、[https://doi.org/10.5575/geosoc.2014.0020 桜島火山] 日本地質学会第121年学術大会(2014年・鹿児島)巡検案内書、地質学雑誌 Vol.120 (2014) No.Supplement p.S63-S78</ref>。
カルデラは、水深約200メートルの平坦な地形で、[[姶良カルデラ]]の一部となっており、約25,000年前に起きた、姶良大噴火の主要な[[火口]]の跡と考えられている。海底火山は、タギリ中央火口丘、ホリノデ中央火口丘、アブラツボ中央火口丘などがあり、記録に残っている噴火はないが現在も活動が継続しており、年間数回から数十回の微小な[[地震]]が観測される。海底において活発な噴気活動が観察されており<ref name="grsj.37.13">藤野恵子, 山中寿朗, 江原幸雄 ほか、[https://doi.org/10.11367/grsj.37.13 鹿児島湾若尊火口と周辺での熱流量分布]」『日本地熱学会誌』 2015年 37 1 p.13-26, {{doi|10.11367/grsj.37.13}}, 日本地熱学会</ref>、海面に泡となって現れることから地元漁師の間で「滾り(たぎり)」と呼ばれている。また、この若尊海底火山からの噴出物により、鹿児島湾内安永諸島のひとつが形成されたと考える研究者もいる<ref>小林哲夫, 佐々木寿、[https://doi.org/10.5575/geosoc.2014.0020 桜島火山] 日本地質学会第121年学術大会(2014年・鹿児島)巡検案内書、地質学雑誌 2014年 120巻 Supplement p.S63-S78, {{doi|10.5575/geosoc.2014.0020}}, 日本地質学会</ref>。


==主な調査==
==主な調査==
1970年代から姶良カルデラの活動年代や活動状態調査の一環で様々な調査研究行われている。
1970年代から姶良カルデラの活動年代や活動状態調査の一環で様々な調査研究行われている。
* [[1977年]] 噴気中に[[二酸化炭素]]と[[硫化水素]]が検出され、火山性の活動であることが確認された。
* 1977年 噴気中に[[二酸化炭素]]と[[硫化水素]]が検出され、火山性の活動であることが確認された。
* [[2003年]] [[海洋研究開発機構]]の[[ハイパードルフィン]]を使用した調査では、海底表面に熱水が浸み出ている様子を採集した海水から確認。また、海底下20m で、137℃を観測している<ref name="geochemproc.52.0.103.0">山中寿朗ほか、[https://doi.org/10.14862/geochemproc.52.0.103.0 鹿児島湾若尊火口における熱水湧出] 2005年度日本地球化学会第52回年会講演要旨集 セッションID:1P26</ref>。
* 2003年 [[海洋研究開発機構]]の[[ハイパードルフィン]]を使用した調査では、海底表面に熱水が浸み出ている様子を採集した海水から確認。また、海底下20m で、137℃を観測している<ref name="geochemproc.52.0.103.0">山中寿朗, 石橋純一郎, 山下徹 ほか、[https://doi.org/10.14862/geochemproc.52.0.103.0 鹿児島湾若尊火口における熱水湧出]」『日本地球化学会年会要旨集』 2005年度日本地球化学会第52回年会講演要旨集 セッションID:1P26, {{doi|10.14862/geochemproc.52.0.103.0}}, 日本地球化学会</ref>。
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* 2007年 [[熱水噴出口]](チムニー)が発見された<ref>三好陽子, 石橋純一郎, 松倉誠也 ほか、[https://doi.org/10.14862/geochemproc.55.0.135.0 鹿児島湾若尊火口熱水域における堆積物中の熱水変質反応]」『日本地球化学会年会要旨集』 2008年度日本地球化学会第55回年会講演要旨集 セッションID:1P09 14-P01, {[doi|10.14862/geochemproc.55.0.135.0}}, 日本地球化学会</ref>。また、噴出口の熱水の温度は、187.3℃と報告されている<ref name="grsj.37.13"/>。
* 2007年、2008年に実施された熱水噴出口付近の海底堆積物採取調査では、採取された柱状海底堆積物試料中に高濃度の[[アンチモン]]が確認された。周囲の岩石も[[輝安鉱]]の塊であったことより、日本国内需要の180年分のアンチモンの埋蔵が見込まれた。金も計算上は25t程度埋蔵されると試算された<ref>[http://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/soumu_pdf/press23/press-110419-6.pdf 岡山大学 プレスリリース 鹿児島湾奥部海底に有望なレアメタル鉱床を確認]</ref>
* 2007年、2008年に実施された熱水噴出口付近の海底堆積物採取調査では、採取された柱状海底堆積物試料中に高濃度の[[アンチモン]]が確認された。周囲の岩石も[[輝安鉱]]の塊であったことより、日本国内需要の180年分のアンチモンの埋蔵が見込まれた。金も計算上は25t程度埋蔵されると試算された<ref>[https://www.gizmodo.jp/2011/04/okayama_sb.html アンチモン90万トン(推定)を含むレアメタルの鉱床を鹿児島湾奥部海底で発見! 岡山大] 岡山大学 プレスリリース 2011.4.28</ref>。


== 生物群 ==
== 生物群 ==
[[1993年]]の調査によって噴気口周辺の海底に新種の[[ハオリムシ]]([[チューブワーム]])<ref>[http://www.godac.jamstec.go.jp/catalog/data/doc_catalog/media/shinkai09_24.pdf 有光層におけるハオリムシの発見] しんかいシンポジウム報告書 Proceedings of JAMSTEC Symposium on Deep Sea Research
[[1993年]]の調査によって噴気口周辺の海底に新種の[[ハオリムシ]]([[チューブワーム]])<ref>[http://www.godac.jamstec.go.jp/catalog/data/doc_catalog/media/shinkai09_24.pdf 有光層におけるハオリムシの発見] しんかいシンポジウム報告書 Proceedings of JAMSTEC Symposium on Deep Sea Research (9) , pp.321 - 326 , 1993年11月 , 海洋科学技術センター (JAMSTEC)</ref>が生息しており、[[サツマハオリムシ]]と名付けられた。
(9) , pp.321 - 326 , 1993年11月 , 海洋科学技術センター (JAMSTEC)</ref>が生息しており、[[サツマハオリムシ]]と名付けられた。


== 脚注 ==
== 脚注 ==

2019年10月31日 (木) 03:55時点における版

若尊
姶良カルデラと若尊カルデラ 地図
所在地 日本の旗 日本
鹿児島湾
位置 北緯31度39分38.4秒 東経130度47分55.2秒 / 北緯31.660667度 東経130.798667度 / 31.660667; 130.798667座標: 北緯31度39分38.4秒 東経130度47分55.2秒 / 北緯31.660667度 東経130.798667度 / 31.660667; 130.798667
山系 姶良カルデラ
種類 海底火山
プロジェクト 山
テンプレートを表示

若尊(わかみこ)とは、日本鹿児島湾北東部の海中にある南北約2.5キロメートル、東西約3.5キロメートルの海底カルデラおよび海底火山群2003年(平成15年)には活火山に指定された。

概要

カルデラは、水深約200メートルの平坦な地形で、姶良カルデラの一部となっており、約25,000年前に起きた、姶良大噴火の主要な火口の跡と考えられている。海底火山は、タギリ中央火口丘、ホリノデ中央火口丘、アブラツボ中央火口丘などがあり、記録に残っている噴火はないが現在も活動が継続しており、年間数回から数十回の微小な地震が観測される。海底において活発な噴気活動が観察されており[1]、海面に泡となって現れることから地元漁師の間で「滾り(たぎり)」と呼ばれている。また、この若尊海底火山からの噴出物により、鹿児島湾内安永諸島のひとつが形成されたと考える研究者もいる[2]

主な調査

1970年代から姶良カルデラの活動年代や活動状態調査の一環で様々な調査研究行われている。

  • 1977年 噴気中に二酸化炭素硫化水素が検出され、火山性の活動であることが確認された。
  • 2003年 海洋研究開発機構ハイパードルフィンを使用した調査では、海底表面に熱水が浸み出ている様子を採集した海水から確認。また、海底下20m で、137℃を観測している[3]
  • 2007年 熱水噴出口(チムニー)が発見された[4]。また、噴出口の熱水の温度は、187.3℃と報告されている[1]
  • 2007年、2008年に実施された熱水噴出口付近の海底堆積物採取調査では、採取された柱状海底堆積物試料中に高濃度のアンチモンが確認された。周囲の岩石も輝安鉱の塊であったことより、日本国内需要の180年分のアンチモンの埋蔵が見込まれた。金も計算上は25t程度埋蔵されると試算された[5]

生物群

1993年の調査によって噴気口周辺の海底に新種のハオリムシチューブワーム[6]が生息しており、サツマハオリムシと名付けられた。

脚注

  1. ^ a b 藤野恵子, 山中寿朗, 江原幸雄 ほか、「鹿児島湾若尊火口と周辺での熱流量分布」『日本地熱学会誌』 2015年 37巻 1号 p.13-26, doi:10.11367/grsj.37.13, 日本地熱学会
  2. ^ 小林哲夫, 佐々木寿、桜島火山 日本地質学会第121年学術大会(2014年・鹿児島)巡検案内書、『地質学雑誌』 2014年 120巻 Supplement号 p.S63-S78, doi:10.5575/geosoc.2014.0020, 日本地質学会
  3. ^ 山中寿朗, 石橋純一郎, 山下徹 ほか、「鹿児島湾若尊火口における熱水湧出」『日本地球化学会年会要旨集』 2005年度日本地球化学会第52回年会講演要旨集 セッションID:1P26, doi:10.14862/geochemproc.52.0.103.0, 日本地球化学会
  4. ^ 三好陽子, 石橋純一郎, 松倉誠也 ほか、「鹿児島湾若尊火口熱水域における堆積物中の熱水変質反応」『日本地球化学会年会要旨集』 2008年度日本地球化学会第55回年会講演要旨集 セッションID:1P09 14-P01, {[doi|10.14862/geochemproc.55.0.135.0}}, 日本地球化学会
  5. ^ アンチモン90万トン(推定)を含むレアメタルの鉱床を鹿児島湾奥部海底で発見! 岡山大 岡山大学 プレスリリース 2011.4.28
  6. ^ 有光層におけるハオリムシの発見 しんかいシンポジウム報告書 Proceedings of JAMSTEC Symposium on Deep Sea Research (9) , pp.321 - 326 , 1993年11月 , 海洋科学技術センター (JAMSTEC)

参考文献

  • 『かごしま文庫61 鹿児島湾の謎を追って』(大木公彦、春苑堂出版、2000年、ISBN 4915093689

関連項目

外部リンク