「ラリアット」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
編集の要約なし
Puronohu (会話 | 投稿記録)
249行目: 249行目:
** [[宮本和志]]
** [[宮本和志]]
** [[潮崎豪]]
** [[潮崎豪]]
** [[GO浅川|浅川紫悠]](リベリオン名義で使用)


=== カウンター式 ===
=== カウンター式 ===

2019年6月7日 (金) 08:02時点における版

シェルトン・ベンジャミンによるラリアット(クローズライン)。

ラリアットLariat)は、プロレス技の一種である。ラリアートと表記される場合もある。アメリカ合衆国ではクローズラインClothesline)、メキシコではアンティプラソと呼ばれている。片腕を横方向へと突き出して相手の喉や胸板に目掛けて叩きつける。

概要

1970年代後半、新日本プロレスにおいてスタン・ハンセンウエスタン・ラリアット(西部式投げ縄打ち)の名称で公開して以降、日本で広く使用されるようになった。アメリカでは同型の技がクローズラインとして普及しているが、ハンセンは「ラリアットは自身のアメリカンフットボール経験を活かしたオリジナル技であり、激突時の衝撃を吸収する柔軟かつ強靭な下半身が必要」という。やがてラリアットはハンセンの代名詞的フィニッシュ・ホールドとなり、ハンセンは日本でスーパースターの地位を築いた。技を編み出す際の逸話として「ハンセンが全日本プロレスに初来日した際、ジャイアント馬場ランニング・ネックブリーカー・ドロップを見てヒントにした」などという俗説があるが、前述の通りハンセンは否定している。

アメリカではブラックジャック・マリガンマスクド・スーパースタービッグ・ジョン・スタッドなど、1970年代後半にハンセンと同じテリトリー(WWWFジョージアミッドアトランティックなど)で活動していた大型レスラーもラリアット(クローズライン)を使用することがあった。マスクド・スーパースターは得意技であるフライング・ネックブリーカー・ドロップについて、日本のプロレス雑誌のインタビューにおいて、「1976年頃、ハンセンのウエスタン・ラリアットを見たマネージャーのグレート・マレンコのアドバイスで使用するようになった」と語っている[1]

1980年代に入ると、ラリアットはハンセン以外のレスラーにも使用されるようになる。新日本プロレスでハンセンのタッグパートナーを務めていたハルク・ホーガンは、ハンセンの新日本離脱後、改良型ラリアットをアックスボンバーという名称で日本でのフィニッシュ・ホールドとした(肘の角度と打点にラリアットとの差異があるとされる)。

ジョン・ブラッドショー・レイフィールドクローズライン・フロム・ヘルは、フットボールで鍛えたダッシュ力を活かし、体ごとぶち当たる勢いで突進して腕を振り抜き相手の首に叩きつける。レイフィールドは同郷の先輩レスラーであるハンセンを尊敬しており、ハンセンと同様にカウボーイギミックを用いていたこともあるが、ラリアットに関してはテリー・ゴディの打ち方を参考にしたと語っている。

日本のプロレス界において1970年代までは、特定のレスラーが用いるフィニッシュ・ホールドやオリジナル・ホールドは、他のレスラーは使ってはいけないという暗黙のルールがあった。しかし、アントニオ猪木が対ハンセン戦で掟破りの逆ラリアットを決めてみせた。そうした中、長州力はハンセンのラリアットを何度も浴びて撃沈されていた。その破壊力を身をもって知っていた長州は、ラリアットを自身の必殺技に出来ないものかと思案した結果、ハンセンの新日本プロレス離脱後の1982年1月1日、後楽園ホール大会においてアニマル浜口を相手にラリアットを初公開した。後に長州は藤波辰爾との抗争を通して、自身がロープに向かって走り込み、その反動を利用した打ち方をリキ・ラリアットの名称で使用。以降、自身のフィニッシュ・ホールドとして確立した。

全日本プロレスでは長州同様に上背のない阿修羅原が同じようにハンセンからラリアットによって倒され続けた後に、これを真似てヒットマン・ラリアットの名称で使用。その後、日本では様々なレスラーのラリアットにレスラーのリングネームやニックネームに関連した名称が付けられた(ラッシャー木村ラッシング・ラリアットジャンボ鶴田ジャンボ・ラリアットなど)が、多くのレスラーがラリアットを使用するようになった1990年代以降は一部の例外を除いて単にラリアットと呼ばれている。

2000年代にはラリアットは強靱な上半身を誇る佐々木健介小橋建太小島聡高岩竜一潮崎豪らがフィニッシュ・ホールドとして使用している他に繋ぎ技として多くのレスラーが使用している。

橋本真也は海外遠征から日本に帰国した頃を除いてラリアットを試合で繰り出すことはなかった。同じく海外遠征をしていた蝶野正洋武藤敬司も試合でラリアットを使うことはほとんど無い(武藤はラリアットを「ただ腕を横に出すだけ」と評している。ただし、武藤の化身であるグレート・ムタは花道で使用する花道ラリアットを得意技としていた)。

ハンセンは多くのレスラーがラリアットを使用していることについて「皆が使いたがるのは、この技がいい技である証拠だ」とコメントしており、不快感を抱いたりはしていない(ただし、1990年6月にハンセンが一時的に新日本プロレスに復帰して長州とタッグを組んだ[2]際に「ラリアット・コンビ」と話題になった時は少なくともストーリー上では不快感を露わにしている)[要出典]。ハンセンが相手のラリアットで負けたことも何度かある。

受け方

ラリアットは食らった相手が倒れる際、後頭部に高い衝撃がかかるため、通常は打たれたら後ろ受け身をとる場合がほとんどである。だが、後ろ受け身の他に以下のような受け方をするレスラーもいる。

  • 真正面から受けて倒れずに挑発して更にラリアットを打つのを促したり、自身がラリアットを打ちにいったりする。パワーレスラー同士の対戦では打ち合いになることもある。
  • 回転して(半回転から1回転半)受身をとる。身体能力が優れていて受け身がうまいレスラーが使用している。後頭部の強打を防ぐだけでなく相手のラリアットの威力を引き立たせる効果がある。パット・タナカニコライ・ボルコフのラリアットを受けた際に勢いがつき過ぎて腕を軸にして後方1回転する形になったことから多用するようになり、広まった受け方だといわれている(中邑真輔腕ひしぎ逆十字固めへの切り返しも、このパターンの応用)。

受けない場合のバリエーションには次のようなものがある。

  • 上半身を丸くして相手の腕の下をくぐり抜ける。
  • 飛ばされたときにロープをつかんで戻って来ないようにする。
  • こちらもラリアットを打つ(アントニオ猪木の有名な掟破りの逆ラリアット)。
    • ラリアットを得意技とするレスラー同士の場合はラリアットをラリアットで迎撃する場合もある。
  • ラリアットに来る腕を取って脇固めを仕掛ける。
  • ラリアットに来る腕にカウンターキックを打つ(1984年7月31日、全日本プロレスの蔵前国技館大会で行われたPWFヘビー級選手権試合でジャイアント馬場スタン・ハンセンから勝利した際に使用していた)。
  • ラリアットに来る腕に袈裟斬りぎみにラリアットを打つ(佐々木健介の対ラリアット迎撃技「かまいたち」、同型のラリアット迎撃法は小島聡も使用している)。
  • ラリアットに来る腕に袈裟斬りチョップを打つ。

技名について

アメリカではラリアットのことをクローズラインと呼ぶのが一般的である。語源は洗濯物を干す縄が転じて、道に糸などを張りオートバイなどで通過する人間の首に引っ掛けるアメリカンフットボールで腕を相手の首に引っ掛けて倒す反則としても知られる。フットボーラー時代のスタン・ハンセンは、当時は反則でなかった「腕タックル」としてよく使用していたと著書「魂のラリアット」で述べている。

なお、クローズラインは日本では古くからタッグマッチの連携技としてクロスラインという名称で存在しており、ツープラトンの攻撃として互いの手を繋いでカウンターで相手の首にラリアットと同じ形で攻撃する。1977年3月25日、国際プロレスの横浜文化体育館大会で行われた「IWAワールド・タッグ・トーナメント」決勝戦において、優勝チームのビッグ・ジョン・クイン&クルト・フォン・ヘスアニマル浜口&寺西勇に繰り出した試合などがラリアットの普及以前から見られた。

主な使用者と技名称

バリエーション

ランニング式

助走して相手の首にラリアットを叩きつける。相手が立っている場合、相手も自身のほうへと向かって走ってくる場合がある。

ショートレンジ式

助走しないで至近距離から相手の首にラリアットを叩き込む。相手の頭や肩や腕などを片腕で掴んで逃がさないように固定して放つ場合もある。

カウンター式

走ってきた相手の首にカウンターでラリアットを叩きつける。多くのレスラーは逆転技として使用するがスタン・ハンセンと小島聡フィニッシュ・ホールドとして使用する場合があり、その場合は相手をハンマースルーでロープに振って返ってきたところを相手の首にカウンターでラリアットを叩きつける。森嶋猛は背後からの攻撃に対して振り向きざまから相手の首にラリアットを叩きつける。

かち上げ式

助走して相手の首にラリアットを叩きつけると同時に自身の腕を振り上げる。

倒れ込み式

助走して前のめりに倒れ込みながら相手の首にラリアットを叩きつける。

延髄式(後頭部式)

助走して相手の延髄、後頭部にラリアットを叩きつける。助走しないで至近距離で相手の延髄、後頭部にラリアットを叩き込む場合もある。

串刺し式(追いかけ式)

コーナーポストに寄り掛かっている相手の首にラリアットを叩きつける。テリー・ゴディの串刺し式ラリアットは魚雷ラリアットとも呼ばれてコーナーに相手を振り、その直後に自身もコーナーに走り、相手がコーナーのターンバックルに背中を打ち付けた瞬間にラリアットを叩きつける。衝撃の逃がし場所がないため、相手は体重(ゴディは身長195cm、体重135kg)のたっぷり乗ったラリアットを浴びせられて仰け反ったあと前のめりに倒れ込む。後ろにピッタリ付いてくる姿から背後霊ラリアットとも呼ばれる。

ロコモーション式(連続式、起き上がり小法師式)

向かい合った相手の右腕を左手で掴み、その腕を引っ張ることで相手の体を引き寄せて相手の首に右腕でラリアットを叩き込んだあと相手の腕を引っ張って、相手を無理やり引き起こして再度相手の首に右腕でラリアットを叩き込む。

居合抜き式

倒れている相手の頭を左手で鷲掴みにして相手を引き起こして自身の上半身を右方向へと軽く捻って右腕を振りかぶって上半身を左方向へと振ると同時に右腕を振り抜いて相手の首にラリアットを叩きつける。

派生技

スライディング・ラリアット

助走してスライディングをするように体を滑らせながら尻餅をついた相手の首にラリアットを叩きつける。

ローリング・ラリアット

相手と向かい合ったあと右足を軸にして体を左方向へと捻って半身の体勢になったところで軸足を左足に切り替えて更に捻りを加えて相手に背を向けた状態になって体を軽くジャンプしてリズムをとって再び軸足を右足に切り替えて左方向へと捻って左足で踏み込みながら相手の首にラリアットを叩き込む。

フライング・ラリアット

助走してジャンプしながら相手の首にラリアットを叩きつける。

ダイビング・ラリアット

コーナー最上段からジャンプして立っている相手の首にラリアットを叩きつける。

サンドイッチ・ラリアット

クロスボンバーとも呼ばれる。タッグマッチで相手の前後から同時に相手の首にラリアットを叩きつける。現在のプロレスでは危険だとして反則技に指定されている。

ダブル・インパクト

ドゥームズデイ・デバイスとも呼ばれる。ロード・ウォリアーズロード・ウォリアー・アニマル&ロード・ウォリアー・ホーク)のオリジナル合体技。アニマルがコーナーの方を向きながら相手を肩車してコーナー最上段からホークがジャンプして相手の首にラリアットを叩きつける。

アックスボンバー

ハルク・ホーガンのオリジナル技。助走しながら右腕を「く」の字に折り曲げて相手の顔面、喉元、後頭部に折り曲げた腕を叩きつける。

ジョーブレイカー・ラリアット

ナイジェル・マッギネスのオリジナル技。助走してセカンドロープに両腕を絡ませてセカンドロープに背中をあずけて両足を振り上げて再び、両足をマットに着地させてロープの反動を利用して相手の首にラリアットを叩きつける。

リターン・ラリアット

スコット・ノートンのオリジナル技。向かい合った相手の右腕を左手で掴んで引っ張り、引き寄せた相手の首に右腕でラリアットを叩きつける。

レインメーカー

オカダ・カズチカのオリジナル技。相手の背後に回り込んで相手の腹部の方に左腕を回し、左手で掴んだ相手の右腕を引っ張った勢いで相手の顔を自身の方に振り向かせて無防備になった相手の胸板目掛けて右腕でアックスボンバー気味にラリアットを打ち込み、相手の体をなぎ倒す。

ゴールデン・アームボンバー

輪島大士のオリジナル技。ロープから返ってきた相手の喉を左手で鷲掴みにして後ろに押し倒した相手の後頭部を打ちつける。

レッグ・ラリアット

ジャンボ鶴田のオリジナル技。一見するとジャンピング・ニー・バットが横に流れた感じで脛(もしくは太もも)を相手の顔面に叩きつける。評判が悪かったようで数回の使用で封印している。

派生技として菊池毅ドロップキックを仕掛けるような感じでジャンプしながら体を左方向へと軽く捻って相手に背中を向けた状態になって振り上げた右足の脹脛あたりで相手の顔を蹴り飛ばして自身は腹這いの状態で着地するのをゼロ戦キックの名称で使用。

稲妻レッグ・ラリアット

木村健悟のオリジナル技。助走してジャンプしながら体の重心を右方向へと傾けて振り抜いた左足の脛を相手の胸板または首元にラリアット気味に叩きつける。

スカルドロン・サンダー

ジョージ高野ザ・コブラの時代に開発したオリジナル技。リングに背を向けた状態でコーナーのトップロープを掴み、ジャンプしてセカンドロープに両足で跳び乗って上半身を左方向へと捻ってリングの方にジャンプして空中で振り抜いた右足の甲でコーナー側にいた相手の胸板を蹴り飛ばす。

ラスト・インプレッション

ダグ・バシャムのオリジナル技。助走して相手に正面から近づいて右足を振り上げるようにジャンプして相手の喉元に右足の脹脛のあたりを叩きつけて相手の喉に右足を引っ掛けたまま自身は尻餅をつく形で落下して、その衝撃で後ろにひっくり返った相手の後頭部や背中を痛打させる。

脚注

  1. ^ 『デラックス・プロレス』1982年5月号「マイ・フェイバリット・ホールド:マスクド・スーパースターのフライング・ネックブリーカー・ドロップ」(ベースボール・マガジン社)95Pより
  2. ^ Riki Choshu and Stan Hansen”. Wrestlingdata.com. 2017年5月23日閲覧。