仮想移動体通信事業者

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仮想移動体通信事業者(かそういどうたいつうしんじぎょうしゃ、英語: Mobile Virtual Network Operator, MVNO、モバイル・バーチャル・ネットワーク・オペレーター)とは、無線通信回線設備を開設・運用せずに、自社ブランド携帯電話PHSなどの移動体通信サービスを行う事業者のことである。通信サービスの提供には移動体通信事業者(MNO)の卸売をうけたり、仮想移動体サービス提供者(MVNE)の機能を利用したりする。携帯電話サービスプロバイダまたは単にサービスプロバイダと呼ばれる。wireless communications services provider ワイヤレス コミュニケーションズ サービス プロバイダ とも呼ばれる。

なお、総務省による定義では、「MNOの提供する移動通信サービスを利用して、又はMNOと接続して、移動通信サービスを提供する電気通信事業者であって、当該移動通信サービスに係る無線局基地局)を自ら開設しておらず、かつ、運用をしていない者」である[1]

概略

移動体通信サービスにおけるOEM製品ともいえる。MVNOは、物理的な移動体回線網設備の負担なくサービスを提供できる(ただし、MVNOは間接的に、MNOが物理的設備にかけるコストの一部を負担している)。

MVNOとMNOとの契約形態は、大きく卸売(卸電気通信役務)か相互接続(事業者間接続)に分けられる。両者は、MVNO側が個人等の利用契約者に対して契約上提供する電気通信サービス(SIMカードからインターネット等まで)の範囲が異なる。すなわち、前者においては電気通信サービスの各部分のうち、本来であればMNOのみが提供できる部分(SIMカードや無線基地局等)も含め、MVNOが(利用契約者との契約上は)提供している(※MVNOは、MNOから当該部分の電気通信サービスを卸で購入している)。よって、利用契約者はMNOと契約する必要はない。一方後者は、本来であればMNOのみが提供できる部分については利用契約者とMNOが、それ以外の部分は利用契約者とMVNOがそれぞれ契約を結んで、電気通信サービスが提供されている。

最終的に電気通信サービスを利用する個人等から見たとき、どのサービスを利用するのか選択するにあたり「このサービス提供会社がMNOなのかMVNOなのか」やMVNOサービスの中でも「このサービスはどのMNOを経由するものか」が比較のための属性の一つとなる場合がある。また、MVNOに分類される会社によっては、複数のMNOと卸等の契約を結んでおり、それにより経由するMNOが異なる複数の通信サービスを提供しているものもある(例:2019年現在、株式会社インターネットイニシアティブは、MNOであるNTTドコモを経由するサービスプラン、およびMNOであるKDDIを経由するサービスプランを有する)。

2019年現在においては、最終利用者から見たとき、無線通信そのものの質では同程度の通信サービスについて、MNOと契約するよりもMVNOと契約する方が安価となるケースが存在している。このような安価となりうるMVNOサービス全般を指して「格安SIMサービス」という言葉が使われることもある。

日本におけるMVNO

2017年時点の日本で、MNOによるMVNOを除くMVNOは、NTTドコモKDDIの携帯電話網、UQコミュニケーションズモバイルWiMAXを利用したものがある。また、MNOによるMVNOは、KDDIの+WiMAXソフトバンクSoftBank 4Gなどがある。

日本でのMVNO第1号は、2001年の日本通信 b-mobile(ビーモバイル)で、DDIポケット(現・ソフトバンク)のPHS網を利用した。同社は2009年からNTTドコモ網のレイヤー2接続も開始している。

2020年9月時点で、1450社がMVNOに参入している(MNOによるMVNOを除く)[2]

テレコムサービス協会は、MVNOの普及、認知度向上を目的として「しむし」というゆるキャラを作成した[3]

電話番号は、概ね関東甲信越地域で卸元と契約した場合に発番される番号が割り当てられる(ディズニー・モバイルは、契約した各地域毎の番号帯が割り当てられる)。ただし、Y!mobileの自社回線[4]は、開業当初から全国一社体制だった関係もあり、地域別の附番は行っていないため、総務省が同社割り当てた番号帯のいずれも附番されうる。

音声通話系

音声通話MVNO
名称 MVNO MVNE MNO サービス 備考
開始 新規加入停止 廃止
J:COM MOBILE powerd by WILLCOM ジュピターテレコム
(J:COM PHONE)
Y!mobile
(PHS)
2006年3月1日 2010年7月1日 2013年3月31日 事実上、ウィルコム定額プランの再販。
.Phoneユビキタス NTTコミュニケーションズ
050IP電話
2007年10月25日 2018年3月8日 2020年3月31日 NTTコミュニケーションズや無料通話先プロバイダを通話相手とした音声通話定額制
FUSION IP-Phone PHSプラン
(旧称 楽天モバイル for Business)
楽天コミュニケーションズ
(050IP電話)
2009年4月15日 2018年3月9日 2020年7月31日 自社IP電話回線と併用する形でのFMCサービス
ディズニー・モバイル・オン・ソフトバンク ウォルト・ディズニー・ジャパン ソフトバンク 2008年3月1日 2015年9月30日 2017年11月30日 プランはソフトバンクのものと同様

SIMカード型

データ通信回線の提供を主とするサービスで、「格安SIM」とも呼ばれる。一部の事業者は、データ通信機能に加えてSMS機能や音声通話機能に対応したサービスを提供している。

通信端末には、当該MVNOと対応するMNOが発売した端末、または、SIMフリー端末を使用することができる。ただし、MNOにより使用周波数帯が異なるため、使用する端末が対応しているかを当該MVNOのウェブサイト等であらかじめ確認する必要がある。一部のMVNOは独自に対応を確認したSIMフリー端末を販売している。

NTTドコモ系

名称 MVNO MVNE サービス開始 系統 備考
OCN モバイル ONE NTTコミュニケーションズ NTTコミュニケーションズ 2013年8月29日 ISP NTTドコモの兄弟会社
ASAHIネット LTE 朝日ネット 2013年3月4日 ISP系
NifMo ニフティ 2014年11月26日 ISP系
@モバイルくん。 SORAシム 2015年6月10日 ISP系
カシモ MEモバイル 2016年9月27日 独立系
@Sモバイル 静岡新聞 2017年2月1日 独立系
INTERFONE mobile IPC World, Inc. 2017年4月20日 衛星放送系
LINEモバイル LINEモバイル 2016年9月21日 キャリア系
イオンモバイル タイプ2 イオンリテール 2016年12月15日 流通系
インターリンクLTE SIM インターリンク NTTPCコミュニケーションズ 2014年7月8日 ISP系
SkyLinkMobile エレコム→アイキューブ・マーケティング 2014年9月1日 独立系 2018年2月28日新規受付終了
mineo Dプラン オプテージ オプテージ 2015年9月1日 電力系 関西電力グループ
Fiimo Dプラン STNet 2016年2月15日 電力系 四国電力グループ
nuroモバイル ソニーネットワークコミュニケーションズ ソニーネットワークコミュニケーションズ 2016年10月1日 ISP系
ロケットモバイル プランD IoTコンサルティング 2016年5月16日 独立系
リペアSIM Dプラン ギア 2018年3月12日 独立系
AIRSIMモバイル エア・コミュニケーション 2016年7月19日 ISP系
イプシム WITH Networks 2017年10月2日 ISP系
IIJmio タイプD インターネットイニシアティブ インターネットイニシアティブ 2012年2月27日 ISP系
BIC SIM タイプD ラネット 2013年6月14日 流通系 ビックカメラの完全子会社
Tikimo SIM タイプD エヌディエス 2015年6月26日 ISP系
エキサイトモバイル エキサイト 2016年7月1日 ISP系
hi-ho mobile ハイホー 2012年3月1日 ISP系 IIJの完全子会社
DMM mobile DMM.com→楽天モバイル 2014年12月17日 独立系 2019年8月27日新規受付終了
G-Call SIM ジーエーピー 2016年7月1日 独立系
エックスモバイル エックスモバイル 2017年10月10日 独立系
QTmobile Dタイプ QTnet 2017年3月1日 電力系 九州電力グループ
J:COM MOBILE Dプラン ジュピターテレコム 2015年10月29日 CATV系
イオンモバイル タイプ1 イオンリテール 2016年2月26日 流通系
U-mobile PREMIUM U-NEXT 2016年7月1日 ISP系 2017年6月30日新規受付終了
BIGLOBEモバイル タイプD ビッグローブ ビッグローブ 2017年10月10日 ISP系
b-mobile 日本通信 日本通信 2008年8月7日[5] 独立系
日本通信SIM 2020年7月15日
HISモバイル H.I.S.Mobile 2018年2月15日 独立系 H.I.S.と日本通信の合弁企業
ヤマダ ニューモバイル Y.U-mobile 2017年4月1日 独立系 ヤマダ電機とU-NEXTの合弁企業
U-mobile MAX U-NEXT 2016年10月17日[6] ISP系 2020年2月6日新規受付終了
TONEモバイル トーンモバイル→ドリーム・トレイン・インターネット フリービット 2015年5月5日 ISP系
DTI SIM ドリーム・トレイン・インターネット 2015年9月17日 ISP系
レキオスモバイル レキオス 2015年10月1日 ISP系
y.u mobile Y.U-mobile 2020年3月12日 独立系
スマモバ スマートモバイルコミュニケーションズ 2015年2月23日 ISP系
U-mobile 通話プラス/データ専用 U-NEXT 2013年9月2日 ISP系 2020年2月6日新規受付終了
LinksMate LogicLinks LogicLinks 2017年7月1日 独立系 Cygamesの子会社
COMST SIM 兼松コミュニケーションズ 2018年11月8日 独立系
WirelessGate SIM ワイヤレスゲート ワイヤレスゲート 2014年9月1日 ISP系
楽天モバイル 楽天モバイル 楽天モバイル 2014年10月29日 中継電話 2020年4月7日新規受付終了
Wonderlink パナソニック 富士通 2015年7月16日 独立系
LIBMO TOKAIコミュニケーションズ TOKAIコミュニケーションズ 2017年2月23日 ISP系
ピクセラモバイル ピクセラ 楽天コミュニケーションズ 2017年3月22日 独立系
ペンギンモバイル 日本自由化事業協会 2015年11月1日 独立系
GMOとくとくBB SIM GMOインターネット 2016年3月31日 ISP系

au系

名称 MVNO MVNE サービス開始 系統 備考
UQ mobile UQコミュニケーションズKDDI UQコミュニケーションズ 2014年12月18日 キャリア系 KDDIの関連会社、2020年10月1日よりKDDIへ事業承継によりMNOに分類
J:COM MOBILE Aプラン ジュピターテレコム 2015年10月29日 CATV KDDIの子会社
BIGLOBEモバイル タイプA ビッグローブ ビッグローブ 2017年10月10日 ISP KDDIの完全子会社
mineo Aプラン オプテージ オプテージ 2014年6月3日 電力系
Fiimo Aプラン STNet 2016年2月15日 電力系
QTmobile Aタイプ QTnet 2017年3月1日 電力系
nuroモバイル ソニーネットワークコミュニケーションズ ソニーネットワークコミュニケーションズ 2019年5月9日 ISP系
ロケットモバイル プランA IoTコンサルティング 2019年9月17日 独立系
IIJmio タイプA インターネットイニシアティブ インターネットイニシアティブ 2016年10月1日 ISP系
BIC SIM タイプA ラネット 2016年10月1日 流通系
Tikimo SIM タイプA エヌディエス 2017年6月15日 ISP系
エキサイトモバイル エキサイト 2020年11月4日 ISP系
イオンモバイル タイプ1 イオンリテール 2018年3月1日 流通系
楽天モバイル 楽天モバイル 2018年10月1日 中継電話 2020年4月7日新規受付終了
LINEモバイル LINEモバイル 2019年4月22日 キャリア系

ソフトバンク系

名称 MVNO MVNE サービス開始 系統 備考
LINEモバイル LINEモバイル LINEモバイル 2018年7月2日 キャリア系 LINEソフトバンクの合弁企業
Hitスマホ 飛騨高山ケーブルネットワーク SBパートナーズ 2016年8月22日 CATV
mineo Sプラン オプテージ オプテージ 2018年9月4日[7] 電力系
nuroモバイル ソニーネットワークコミュニケーションズ ソニーネットワークコミュニケーションズ 2017年12月19日 ISP系
ロケットモバイル プランS IoTコンサルティング 2018年7月18日 独立系
リペアSIM Sプラン ギア 2018年3月12日 独立系
QTmobile Sタイプ QTnet 2018年2月1日 電力系
b-mobile S 日本通信 日本通信 2017年3月22日 独立系
HISモバイル H.I.S.Mobile 2018年2月15日 独立系
スマモバ スマートモバイルコミュニケーションズ 2017年3月22日 ISP系
U-mobile S U-NEXT 2017年3月22日 ISP系 2020年2月6日新規受付終了

課金体系

SIMカード型サービスのデータ通信の課金体系は下記のようなものがある。

  • 高速で通信可能な通信量が決まっており、それ以上の通信は速度が規制されるもの。1か月を単位として通信量を計算することが多いが、MVNOによっては1日単位とする契約プランもある
    • MVNOによっては、専用アプリの操作で低速モードに切り替えることにより、高速で利用可能な通信量を消費しないようにすることができる
    • 特定サービスの利用に関する通信は通信量の計算に含まないMVNOもある
  • 速度は中速または低速だが、総通信量には制限がないもの
  • 規定の通信量に達すると、追加料金を支払わなければ所定の期間中は通信不可能になるもの
  • プリペイド方式で、利用可能期間と通信量が決まっているもの。なお、プリペイド方式では、本人確認不要にするため通話機能をなくしデータ通信専用とするのが一般的である

サービス終了または、事業撤退

サービス終了MVNO
名称 MVNO MVNE MNO サービス 系統 備考
開始 新規加入停止 廃止
ファンダム支援SIM アイストリーム NTTドコモ 2015年07月14日[8] 2018年03月31日[9] 独立系
ぷららモバイルLTE NTTぷらら NTTコミュニケーションズ NTTドコモ 2013年11月1日 2017年5月2日 2017年11月30日[10] ISP系 NTTコミュニケーションズの関連会社
ポインティSIM アクセリア NTTPCコミュニケーションズ NTTドコモ 2014年4月22日 2018年7月31日 独立系
FREETEL SIM プラスワン・マーケティング→楽天モバイル プラスワン・マーケティング NTTドコモ 2015年7月15日[11] 2017年12月4日[12] 独立系
J:COM MOBILE ジュピターテレコム ウィルコム 2006年 2013年3月31日 CATV PHSと直収電話とのFMC
通話料にオプション割引制度
talkingSIM 日本通信   NTTドコモ 2010年7月30日 2013年5月16日   独立系 UIMカードのみ
talking b-microSIM Platinum Service SIMフリー版のiPhone4向けmicroSIM
WILLCOM CORE 3G ウィルコム NTTドコモ 2009年03月09日[13] 2010年10月01日・08日[14] 2017年11月30日[15] キャリア系 日本通信の協力を得てサービスを開始したが、IIJに移管
WILLCOM CORE 3G ウィルコム ソフトバンクモバイル 2010年10月01日・08日[14] 2014年8月 キャリア系 PHSとの組み合わせを音声でも提供開始
EMOBILE 4G-S イー・アクセス ソフトバンクモバイル3G
Wireless City Planning AXGP
2013年8月20日 2014年8月 キャリア系 自社回線を一切利用しない
ECナビケータイ ECナビ インフォニックス
セレクトモバイル
au電話
CDMA 1X WIN
2009年8月3日 2012年7月27日 2013年2月28日 独立系 初期投資での資金不足により基盤ごとKDDIに移管[16]
Tigersケータイ 阪神タイガース 2010年5月24日
受付開始5月10日
独立系
GIANTSケータイ 読売ジャイアンツ 2010年6月30日
受付開始6月10日
独立系
JALマイルフォン 日本航空インターナショナル 2010年5月18日 2013年6月30日 独立系
ベネッセモバイルFREO ベネッセコーポレーション ソフトバンクテレコム ソフトバンクモバイル 2010年2月9日 2010年5月15日 2011年2月28日 独立系 進研ゼミ会員を対象
VERTU ノキア NTTドコモ 2009年5月 2011年8月31日[17] 独立系 国際ローミングサービスWORLD WING対応。
銀座旗艦店をオープン。プラチナ宝石螺鈿をちりばめた職人手作りの端末、電話やメールでホテルやレストラン、航空券の予約などを行える"VERTU Club"コンシェルジュも展開。[18]

なお、MVNOとは称していなかったが、現在で言うMVNOに近いものとして、次のサービスがあった。

  • YOZAN時代末期のアステル東京が2004年9月より「全国コールサービス」としてDDIポケット(当時)網に接続するサービスを開始したが、その実態はアステル電話機にDDIポケットの番号を書き込むというものであった(旧番号への着信は1ヶ月間無料で新番号に転送された)。これにより自社網は一切使えず、通話以外の機能は使えなかった。対象者は同年8月末時点での契約者に限られ、2005年3月に受付終了、同年11月30日にアステル東京自体がサービス終了した。同サービス利用者のウィルコムへの移行は番号変更なしでできた。

データ通信系

契約数

日本におけるMVNOは、2013年頃に「格安SIM」や「SIMフリー」などのキーワードがマスコミなどによって取り上げられ[19]、一般ユーザーに浸透した。この時期から契約数が急速に伸びている[20]。 しかし、2020年9月末時点でも移動系通信全体の1割強にしかすぎず[2]、主流にはなっていない。特に、2017年ごろからMVNOでは契約数の伸びが鈍化している。その理由としては、MNO系列のサブブランドの台頭、総務省の指導によるMNOの料金値下げ、実店舗が少ないMVNOへのネットでの番号ポータビリティの手続きや、SIMカードの入れ替え、APNの設定などに手間を惜しまないITリテラシーの高いユーザーの需要の一巡、日本のスマートフォン市場で圧倒的な人気を誇るiPhoneの最新ハイエンドモデルがMVNOから販売されていないことなどが挙げられる。

MNOから自社グループ外のMVNOへの顧客流出はMNOにとっては痛手であるため、SIMロックフリースマートフォンの発売やMVNOの新規参入が相次いだ2014年には、MNOであるソフトバンクとKDDIはMVNO(特にNTTドコモ回線を利用したMVNO)への対抗策として、自社のメインプランドとは別に、サブブランドであるY!mobileUQ mobile(当時はMVNOで現在はMNO)をそれぞれ設けた。これらのサブブランドは、有名タレントを起用したテレビCM、MNOの販売網を利用した実店舗展開やそれによるアフターサービス、小規模MVNOでは困難な型落ちのiPhoneの販売、これまでのMVNOのネックだった通信速度などで差別化を図った。また、MNOのメインブランドでも、2017年ごろから総務省の指導などにより、端末との分離プランの導入や、ある程度の料金の値下げが進んだ結果、顧客流出に歯止めがかかった[21][22][23]。特に、これまでサブブランドを持っていなかったNTTドコモは、菅義偉内閣の値下げ要請を受け、2020年12月に、既存の料金プランとは分離された、サブブランドに相当する独自プランの「ahamo」を発表し[24]、さらに、すでにサブブランドを持っているKDDI・沖縄セルラーとソフトバンクも、ahamoの内容に近いプランを発表するなど、MNOの影響力が増してきている。

この結果、2010年代後半には早くもMVNOの淘汰が始まり、FREETELDMM mobileが楽天モバイルに吸収されて事業を撤退した。また、BIGLOBELINEモバイルのようにMNOの傘下に入ったMVNOもある。さらに、MVNOからMNOに転換することになった楽天モバイルやUQ mobileのような事例もある[25]

MVNO(MNOであるMVNOを除く)サービスの契約数の推移[2][26]
時期 サービスの契約数
(万件)
移動系通信の
契約数に占める比率
(%)
携帯電話・PHS BWA
(+WiMAXSoftBank 4G)
合計
2013年9月 485 127 611 4.2
2013年12月 537 132 669 4.6
2014年3月 596 143 739 4.9
2014年6月 644 147 792 5.2
2014年9月 687 153 840 5.5
2014年12月 735 156 892 5.8
2015年3月 786 166 952 6.1
2015年6月 836 161 997 6.3
2015年9月 901 163 1,063 6.7
2015年12月 991 164 1,155 7.2
2016年3月 1,102 167 1,269 7.8
2016年6月 1,176 169 1,346 8.2
2016年9月 1,256 171 1,427 8.6
2016年12月 1,314 171 1,485 8.9
2017年3月 1,409 177 1,586 9.4
2017年6月 1,454 182 1,636 9.7
2017年9月 1,501 186 1,687 10.0
2017年12月 1,575 188 1,764 10.3
2018年3月 1,652 188 1,840 10.6
2018年6月 1,731 188 1,918 11.0
2018年9月 1,801 187 1,988 11.3
2018年12月 1,850 186 2,036 11.5
2019年3月 1,905 190 2,094 11.6
2019年6月 2,036 194 2,230 12.2
2019年9月 2,102 196 2,298 12.5
2019年12月 2,192 196 2,388 12.9
2020年3月 2,265 201 2,465 13.2
2020年6月 2,323 207 2,531 13.4
2020年9月 2,350 210 2,560 13.4

事業者別シェア

総務省が公表した、2020年9月末時点でのMVNOの「SIMカード型の契約数における事業者別シェア」では以下の通り[2]。 上位5社で半数を超えている。

MMD研究所の『2020年11月格安SIMサービスの利用動向調査』[27]による、「メイン利用のMVNO」では以下の通り。 楽天モバイル(MVNO)が3割に達しており、また上位3社で半数を超えている。

法規制

MVNO/MVNEの提供役務に関しても、音声通話が可能となる通信端末やSIMカード等は、携帯電話不正利用防止法の規制対象となり、契約者の本人性確認の義務付けや、不正な譲渡の禁止等がなされている。その為、契約において身分証明書の提出が必要となり、解約の際には違約金が発生する。なお、データ通信専用となる通信端末やSIMカード等は、同法の規制対象外である。

一部のMVNO/MVNE事業者では、データ通信専用となる通信端末やSIMカード等について本人確認書類の授受を省略しているものがある。(空港等で販売している、訪日観光客向けのデータ通信専用のSIMカード等)

欧米におけるMVNO

GSMA Intelligence(2015年)の統計によると2014年の全世界のMVNO事業者のうち最も多いのがヨーロッパであり59%となっている[28]

イギリスやイタリアなどでは、郵便局のMVNO事業参入が行われた一方、アメリカでは、MVNOを保護する法規制は存在しないため、ネットワークを安価に調達することが難しく、価格面でのMNOとの差別化が困難になっている[29]

ドイツ

欧州地域ではMVNOの普及率が高いが、ドイツは主要国の中でも特にMVNOの普及率が高い[28]

2003年12月現在、ドイツの移動通信市場(契約件数)の約27%はMVNOであり、2004年以降もMVNOによる事業参入が増加[30]。2015年9月時点ではドイツの移動体市場の契約数の約半数をMVNO契約が占める[28]

イギリス

イギリスでは2000年代にMVNOによるサービスが活発化し、ヴァージン・グループ傘下のヴァージン・モバイルは2004年3月末に400万弱の加入者を獲得した[30]

また、小売業者のテスコや移動体事業を分離したBTなどMVNOへの新規事業者の参入が相次いでいる[30]

脚注

  1. ^ "MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン(再改定)" (PDF) (Press release). 総務省. 19 May 2008. 2015年11月4日閲覧
  2. ^ a b c d 総務省電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表(令和2年度第2四半期(9月末)) 別紙」 総務省、2020年12月18日
  3. ^ 【ニュース】業界の現状や展望について話し合う「MVNOフォーラム」開催、キャラクター「しむし」選ばれる
  4. ^ EMOBILE 4G-S契約は、ソフトバンク関東・甲信地域(旧・ジェイフォン東京)の番号帯が割り当てられる。
  5. ^ 日本通信、プリペイドスタイルの3Gデータ通信サービスを開始――「b-mobile3G hours150」”. ITmedia mobile. アイティメディア. 2018年4月23日閲覧。
  6. ^ "新プラン「U-mobile MAX 25GB」を本日より提供開始!" (Press release). U-NEXT. 17 October 2016. 2018年4月23日閲覧
  7. ^ プレスリリース 「mineo」ソフトバンク回線を利用したSプラン提供開始!」『ケイ・オプティコム』 ケイ・オプティコム、2018年7月23日
  8. ^ "格安SIM業界初!最大19枚のSIMでデータシェア可能!家族でも友達同士でも使える「ファンダム支援SIM」発売開始!" (Press release). アイストリーム. 4 July 2015. 2018年4月23日閲覧
  9. ^ iStream”. 2018年4月23日閲覧。
  10. ^ 【重要】「ぷららモバイルLTE」サービス終了のお知らせ”. NTTぷらら. 2018年4月23日閲覧。
  11. ^ 井上翔. “格安SIM定点観測:フリーテルがブランドリニューアル 格安SIM初の通話定額は延期――2015年6月音声通話編”. ITmedia mobile. アイティメディア. 2018年4月23日閲覧。
  12. ^ SIM|料金・プラン”. FREETEL SIM mobile. プラスワン・マーケティング. 2018年4月23日閲覧。
  13. ^ 平賀洋一 (2009年3月4日). “人口カバー率100%:ウィルコム、FOMA網を使った「WILLCOM CORE 3G」を開始――法人向けデータ通信サービス”. ITmedia Mobile. アイティメディア. 2018年4月23日閲覧。
  14. ^ a b 園部修 (2010年3月27日). “HYBRID W-ZERO3販売再開:ウィルコム、ソフトバンク回線を使う3Gサービスを提供開始 新料金プランを発表”. ITmedia Mobile. アイティメディア. 2018年4月23日閲覧。
  15. ^ IIJ 3Gサービス(旧 WILLCOM CORE 3Gサービス) 終了について”. ソフトバンク. 2018年4月23日閲覧。
  16. ^ 〈お知らせ〉 「JALマイルフォン」、「Tigersケータイ」、「GIANTSケータイ」および「ECナビケータイ」に係るMVNO事業の譲り受け完了について
  17. ^ スマートフォンの台頭などによるVERTU事業・ノキア業績悪化のため
  18. ^ VERTU端末向けサービス「VERTU Club」発表(ITMedia)
  19. ^ SIMフリーとは? | OCN プロバイダ(インターネット接続)
  20. ^ 格安SIMの今後はどうなるのかをMVNOの中の人に聞いてみた
  21. ^ 大手キャリアの“逆襲”が目立った2017年/MVNOは「勝ち組」「負け組」が明確に (1/3) ITmedia、2017年12月23日
  22. ^ 国内携帯の出荷台数、Appleが前年比2%減も6年連続1位 ITmedia、2018年2月14日
  23. ^ 目標の200万回線は困難に…… 伸び悩むMVNO「mineo」が挽回策 カギは“通信回線の譲り合い” ITmedia、2020年1月30日
  24. ^ 新料金プラン「ahamo(アハモ)」を発表 NTTドコモ 報道発表資料 2020年12月3日
  25. ^ 楽天モバイルとUQ mobileの“MNO化”により、2021年3月末の格安SIMは純減の見込み MM総研の調査 ITmedia、2020年6月17日
  26. ^ 総務省電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表(平成26年度第4四半期(3月末)) 別紙」 総務省、2015年6月23日
  27. ^ 2020年11月格安SIMサービスの利用動向調査 MMD研究所、2020年11月4日
  28. ^ a b c 平成28年版 情報通信白書”. 総務省. 2018年7月23日閲覧。
  29. ^ “MVNOの深イイ話:海外のMVNOから学ぶべきこと”. (2016年1月29日). http://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/1601/29/news144.html 2016年11月26日閲覧。 
  30. ^ a b c 平成17年版 情報通信白書”. 総務省. 2018年7月23日閲覧。

関連項目