菅義偉内閣
菅義偉内閣 | |
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![]() 国務大臣任命式後の記念撮影 (2020年9月16日) | |
内閣総理大臣 | 第99代 菅義偉 |
成立年月日 | 2020年(令和2年)9月16日 |
与党・支持基盤 |
自由民主党、公明党 (自公連立政権) |
内閣閣僚名簿(首相官邸) |
菅義偉内閣(すがよしひでないかく)は、内閣官房長官、拉致問題担当大臣、衆議院議員及び自由民主党総裁の菅義偉が第99代内閣総理大臣に任命され、2020年(令和2年)9月16日に成立した日本の内閣である。
自由民主党と公明党を与党とする連立内閣(自公連立政権)である。
安倍晋三首相兼自由民主党総裁の辞意表明に伴って実施された2020年自由民主党総裁選挙において内閣官房長官の菅義偉が第26代自由民主党総裁に選出されたことを受け、第4次安倍第2次改造内閣の内閣総辞職に伴って、その後継政権として成立した。
内閣の顔ぶれ、人事[編集]
国務大臣[編集]
2020年(令和2年)9月16日任命。
職名 | 氏名 | 出身等 | 特命事項等 | 備考 | |
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内閣総理大臣 | 菅義偉 | ![]() |
衆議院 自由民主党 (無派閥) |
自由民主党総裁 | |
副総理 財務大臣 内閣府特命担当大臣 (金融) |
麻生太郎 | ![]() |
衆議院 自由民主党 (麻生派) |
デフレ脱却担当 内閣総理大臣臨時代理 就任順位第1位(副総理) |
再任 |
総務大臣 | 武田良太 | ![]() |
衆議院 自由民主党 (二階派) |
横滑り | |
法務大臣 | 上川陽子 | ![]() |
衆議院 自由民主党 (岸田派) |
再入閣 | |
外務大臣 | 茂木敏充 | ![]() |
衆議院 自由民主党 (竹下派) |
内閣総理大臣臨時代理 就任順位第3位 |
再任 |
文部科学大臣 | 萩生田光一 | ![]() |
衆議院 自由民主党 (細田派) |
教育再生担当 国立国会図書館連絡調整委員会委員 |
再任 |
厚生労働大臣 | 田村憲久 | ![]() |
衆議院 自由民主党 (石破派) |
働き方改革担当 内閣総理大臣臨時代理 就任順位第5位(2021年2月18日以降) |
再入閣 |
農林水産大臣 | 野上浩太郎 | ![]() |
参議院 自由民主党 (細田派) |
初入閣 | |
経済産業大臣 内閣府特命担当大臣 (原子力損害賠償・ 廃炉等支援機構) |
梶山弘志 | ![]() |
衆議院 自由民主党 (無派閥) |
産業競争力担当 ロシア経済分野協力担当 原子力経済被害担当 |
再任 |
国土交通大臣 | 赤羽一嘉 | ![]() |
衆議院 公明党 |
水循環政策担当 | 再任 |
環境大臣 内閣府特命担当大臣 (原子力防災) |
小泉進次郎 | ![]() |
衆議院 自由民主党 (無派閥) |
再任 | |
防衛大臣 | 岸信夫 | ![]() |
衆議院 自由民主党 (細田派) |
初入閣 | |
内閣官房長官 | 加藤勝信 | ![]() |
衆議院 自由民主党 (竹下派) |
沖縄基地負担軽減担当 拉致問題担当 内閣総理大臣臨時代理 就任順位第2位 |
横滑り |
復興大臣 | 平沢勝栄 | ![]() |
衆議院 自由民主党 (二階派) |
福島原発事故再生総括担当 | 初入閣 |
国家公安委員会委員長 内閣府特命担当大臣 (防災) (海洋政策) |
小此木八郎 | ![]() |
衆議院 自由民主党 (無派閥) |
国土強靭化担当 領土問題担当 |
再入閣 |
内閣府特命担当大臣 (沖縄及び北方対策) (規制改革) |
河野太郎 | ![]() |
衆議院 自由民主党 (麻生派) |
行政改革担当 国家公務員制度担当 新型コロナウイルスワクチン接種担当 (2021年1月18日以降) 内閣総理大臣臨時代理 就任順位第4位 |
横滑り |
内閣府特命担当大臣 (少子化対策) (地方創生) |
坂本哲志 | ![]() |
衆議院 自由民主党 (石原派) |
一億総活躍担当 まち・ひと・しごと創生担当 孤独・孤立問題担当 (2021年2月12日以降) |
初入閣 |
内閣府特命担当大臣 (経済財政政策) |
西村康稔 | ![]() |
衆議院 自由民主党 (細田派) |
経済再生担当 全世代型社会保障改革担当 新型コロナウイルス対策担当 |
再任 |
内閣府特命担当大臣 (マイナンバー制度) |
平井卓也 | ![]() |
衆議院 自由民主党 (岸田派) |
デジタル改革担当 情報通信技術(IT)政策担当 |
再入閣 |
国務大臣 内閣府特命担当大臣 (男女共同参画) |
橋本聖子 | ![]() |
参議院 自由民主党 (細田派) |
東京オリンピック・ パラリンピック競技大会担当 女性活躍担当 内閣総理大臣臨時代理 就任順位第5位 |
再任 2021年2月18日免 |
丸川珠代 | ![]() |
参議院 自由民主党 (細田派) |
東京オリンピック・ パラリンピック競技大会担当 女性活躍担当 |
再入閣 2021年2月18日任 | |
国務大臣 内閣府特命担当大臣 (消費者及び食品安全) (クールジャパン戦略) (知的財産戦略) (科学技術政策) (宇宙政策) |
井上信治 | ![]() |
衆議院 自由民主党 (麻生派) |
2025年国際博覧会担当 | 初入閣 |
内閣官房副長官、内閣法制局長官[編集]
2020年(令和2年)9月16日任命。
職名 | 氏名 | 出身等 | 備考 |
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内閣官房副長官 | 坂井学 | 衆議院/自由民主党(無派閥) | |
岡田直樹 | 参議院/自由民主党(細田派) | 再任 | |
杉田和博 | 事務担当(警察庁) | 再任 | |
内閣法制局長官 | 近藤正春 | 前内閣法制次長/経済産業省 | 再任 |
内閣総理大臣補佐官[編集]
2020年(令和2年)9月16日任命。
職名 | 氏名 | 所属等 | 備考 |
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内閣総理大臣補佐官 (国家安全保障に関する重要政策担当) |
木原稔 | 衆議院/自由民主党(竹下派) | 再任 |
内閣総理大臣補佐官 (経済・外交担当) |
阿達雅志 | 参議院/自由民主党(無派閥) | |
内閣総理大臣補佐官 (国土強靭化及び復興等の社会資本整備、地方創生、 健康・医療に関する成長戦略並びに科学技術イノベーション政策その他特命事項担当) |
和泉洋人 | 民間(国土交通省) | 再任 |
内閣総理大臣補佐官 (政策評価、検証担当) |
柿崎明二 | 民間 | 10月1日任命 |
副大臣[編集]
2020年(令和2年)9月18日任命。
職名 | 氏名 | 出身等 | 備考 |
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復興副大臣 | 亀岡偉民 | 衆議院/自由民主党(細田派) | 横滑り |
横山信一 | 参議院/公明党 | 留任 | |
岩井茂樹 | 参議院/自由民主党(竹下派) | 内閣府、国土交通副大臣兼任 | |
内閣府副大臣 | 赤沢亮正 | 衆議院/自由民主党(石破派) | |
藤井比早之 | 衆議院/自由民主党(無派閥) | ||
三ッ林裕巳 | 衆議院/自由民主党(細田派) | ||
田野瀬太道 | 衆議院/自由民主党(石原派) | 文部科学副大臣兼任/2021年2月1日免 | |
丹羽秀樹 | 衆議院/自由民主党(麻生派) | 文部科学副大臣兼任/2021年2月1日任 | |
長坂康正 | 衆議院/自由民主党(麻生派) | 経済産業副大臣兼任 | |
江島潔 | 参議院/自由民主党(細田派) | 経済産業副大臣兼任 | |
堀内詔子 | 衆議院/自由民主党(岸田派) | 環境副大臣兼任 | |
中山泰秀 | 衆議院/自由民主党(細田派) | 防衛副大臣兼任 | |
岩井茂樹 | 参議院/自由民主党(竹下派) | 復興、国土交通副大臣兼任 | |
山本博司 | 参議院/公明党 | 厚生労働副大臣兼任/2021年1月22日任 | |
総務副大臣 | 熊田裕通 | 衆議院/自由民主党(無派閥) | |
新谷正義 | 衆議院/自由民主党(竹下派) | ||
法務副大臣 | 田所嘉徳 | 衆議院/自由民主党(石破派) | |
外務副大臣 | 鷲尾英一郎 | 衆議院/自由民主党(二階派) | |
宇都隆史 | 参議院/自由民主党(竹下派) | ||
財務副大臣 | 伊藤渉 | 衆議院/公明党 | |
中西健治 | 参議院/自由民主党(麻生派) | ||
文部科学副大臣 | 高橋比奈子 | 衆議院/自由民主党(麻生派) | |
田野瀬太道 | 衆議院/自由民主党(石原派) | 内閣府副大臣兼任/2021年2月1日免 | |
丹羽秀樹 | 衆議院/自由民主党(麻生派) | 内閣府副大臣兼任/2021年2月1日任 | |
厚生労働副大臣 | 三原じゅん子 | 参議院/自由民主党(無派閥) | |
山本博司 | 参議院/公明党 | 内閣府副大臣兼任/2021年1月22日以降 | |
農林水産副大臣 | 葉梨康弘 | 衆議院/自由民主党(岸田派) | |
宮内秀樹 | 衆議院/自由民主党(二階派) | ||
経済産業副大臣 | 長坂康正 | 衆議院/自由民主党(麻生派) | 内閣府副大臣兼任 |
江島潔 | 参議院/自由民主党(細田派) | 内閣府副大臣兼任 | |
国土交通副大臣 | 大西英男 | 衆議院/自由民主党(細田派) | |
岩井茂樹 | 参議院/自由民主党(竹下派) | 復興、内閣府副大臣兼任 | |
環境副大臣 | 笹川博義 | 衆議院/自由民主党(竹下派) | |
堀内詔子 | 衆議院/自由民主党(岸田派) | 内閣府副大臣兼任 | |
防衛副大臣 | 中山泰秀 | 衆議院/自由民主党(細田派) | 内閣府副大臣兼任 |
大臣政務官[編集]
2020年(令和2年)9月18日任命。
職名 | 氏名 | 出身等 | 備考 |
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復興大臣政務官 | 吉川赳 | 衆議院/自由民主党(岸田派) | 内閣府大臣政務官兼任 |
三谷英弘 | 衆議院/自由民主党(無派閥) | 内閣府、文部科学大臣政務官兼任 | |
佐藤啓 | 参議院/自由民主党(細田派) | 内閣府、経済産業大臣政務官兼任 | |
内閣府大臣政務官 | 岡下昌平 | 衆議院/自由民主党(二階派) | |
和田義明 | 衆議院/自由民主党(細田派) | ||
宗清皇一 | 衆議院/自由民主党(細田派) | 経済産業大臣政務官兼任 | |
鳩山二郎 | 衆議院/自由民主党(二階派) | 国土交通大臣政務官兼任 | |
神谷昇 | 衆議院/自由民主党(二階派) | 環境大臣政務官兼任 | |
松川るい | 参議院/自由民主党(細田派) | 防衛大臣政務官兼任 | |
吉川赳 | 衆議院/自由民主党(岸田派) | 復興大臣政務官兼任 | |
三谷英弘 | 衆議院/自由民主党(無派閥) | 復興、文部科学大臣政務官兼任 | |
佐藤啓 | 参議院/自由民主党(細田派) | 復興、経済産業大臣政務官兼任 | |
総務大臣政務官 | 谷川とむ | 衆議院/自由民主党(細田派) | |
古川康 | 衆議院/自由民主党(竹下派) | ||
宮路拓馬 | 衆議院/自由民主党(石原派) | ||
法務大臣政務官 | 小野田紀美 | 参議院/自由民主党(竹下派) | |
外務大臣政務官 | 國場幸之助 | 衆議院/自由民主党(岸田派) | |
鈴木隼人 | 衆議院/自由民主党(岸田派) | ||
中西哲 | 参議院/自由民主党(石破派) | ||
財務大臣政務官 | 船橋利実 | 衆議院/自由民主党(麻生派) | |
元榮太一郎 | 参議院/自由民主党(竹下派) | ||
文部科学大臣政務官 | 鰐淵洋子 | 衆議院/公明党 | |
三谷英弘 | 衆議院/自由民主党(無派閥) | 復興、内閣府大臣政務官兼任 | |
厚生労働大臣政務官 | 大隈和英 | 衆議院/自由民主党(麻生派) | |
小鑓隆史 | 参議院/自由民主党(岸田派) | ||
農林水産大臣政務官 | 池田道孝 | 衆議院/自由民主党(竹下派) | |
熊野正士 | 参議院/公明党 | ||
経済産業大臣政務官 | 宗清皇一 | 衆議院/自由民主党(細田派) | 内閣府大臣政務官兼任 |
佐藤啓 | 参議院/自由民主党(細田派) | 復興、内閣府大臣政務官兼任 | |
国土交通大臣政務官 | 小林茂樹 | 衆議院/自由民主党(二階派) | |
朝日健太郎 | 参議院/自由民主党(無派閥) | ||
鳩山二郎 | 衆議院/自由民主党(二階派) | 内閣府大臣政務官兼任 | |
環境大臣政務官 | 宮崎勝 | 参議院/公明党 | |
神谷昇 | 衆議院/自由民主党(二階派) | 内閣府大臣政務官兼任 | |
防衛大臣政務官 | 大西宏幸 | 衆議院/自由民主党(岸田派) | |
松川るい | 参議院/自由民主党(細田派) | 内閣府大臣政務官兼任 |
勢力早見表[編集]
- ※ 内閣発足当初(前内閣の事務引継は除く)。
- ※ 内閣官房副長官(政務)は副大臣に含む。
- ※ 太字はいわゆる自民党五役。
- ※ 有隣会の所属議員は、他派閥と掛け持ちしている議員を含め衆参30名。
- ※ 慣例により形式的に派閥から離脱中の総理大臣、衆参議長、党幹部は派閥所属議員に含む。
名称 | 勢力 | 国務大臣 | 副大臣 | 政務官 | 補佐官 | その他 |
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細田派 | 98 | 5 | 5 | 6 | 0 | 政務調査会長、参議院幹事長 |
麻生派 | 56 | 3 | 3 | 2 | 0 | 衆議院議長、参議院議長、総務会長 |
竹下派 | 54 | 2 | 4 | 4 | 1 | 選挙対策委員長、 参議院議員会長 |
公明党 | 57 | 1 | 3 | 3 | 0 | |
無派閥 | 54 | 4 | 3 | 2 | 1 | 自由民主党総裁、幹事長代行 |
岸田派 | 46 | 2 | 2 | 4 | 0 | |
二階派 | 46 | 2 | 2 | 4 | 0 | 幹事長 |
石破派 | 19 | 1 | 2 | 1 | 0 | |
有隣会 | 18 | 0 | 1 | 0 | 0 | |
石原派 | 11 | 1 | 1 | 1 | 0 | 国会対策委員長 |
民間 | / | 0 | 0 | 0 | 2 | |
- | / | 20 | 25 | 27 | 4 | / |
内閣の動き[編集]
組閣[編集]
菅義偉首相は、この内閣を「国民のために働く内閣」と名付けた[1]。
携帯電話料金の引下げ[2]などを政策に示し、第203回国会冒頭の所信表明演説では自身が目指す社会像として「自助、共助、公助、そして絆」を掲げ、「自分でできることは、まず、自分でやってみる。そして、家族、地域で互いに助け合う。その上で、政府がセーフティネットでお守りする。そうした国民から信頼される政府を目指す」と述べた[3]。
また、経済政策ではアベノミクスの継承[4]など、基本的には安倍前政権の方針を引き継いでいくことを示した。これに対し、野党側からは「アベのいないアベ政治」と菅政権を批判する声も出た[要出典]。
大阪府選出の議員は7人が副大臣や政務官に起用された。菅は大阪を地盤に持つ日本維新の会代表の松井一郎と蜜月の関係であり、そのため自民党本部と大阪府連との関係がぎくしゃくしていることから、党内融和を図った人事ではないかとの観測を呼んだ[5]。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策[編集]
2021年1月7日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大をうけて、小池百合子東京都知事、大野元裕埼玉県知事、森田健作千葉県知事、黒岩祐治神奈川県知事の要請に応じ、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の1都3県を対象に翌1月8日から2月7日までの期間で、(安倍前政権以来)緊急事態宣言を再発令することを発表した。ただ、度重なる対応の遅れや国民との考え方のズレが原因となり、常に多くの国民から批判を浴びている。[6]。
緊急事態宣言下の2021年1月の東京で4人の与党議員が深夜まで銀座のクラブにいたことが判明し、公明党の遠山清彦は議員辞職、自民党の松本純国対委員長代理、田野瀬太道文部科学兼内閣府副大臣、大塚高司国会対策副委員長ら3議員は離党した[7][8]。さらに2月には自民党の白須賀貴樹議員も緊急事態宣言下の夜に麻布の高級ラウンジに同伴出勤していたことが明らかになり、離党した[9]
GoToキャンペーン[編集]
菅首相就任後初の外遊(ベトナム、インドネシア)[編集]
規制改革[編集]
菅首相は2020年9月16日に行われた総理大臣官邸記者会見において、「7年8か月、官房長官を務める中で、なかなか進まない政策課題は、だいたい役所の縦割りや前例主義が壁になってできなかった」としており、縦割り行政と既得権益、悪しき前例を打破して、規制改革を進めていく考えを示した[10]。
翌17日には、行政改革担当大臣の河野太郎が自らのウェブサイトに「行政改革目安箱」の欄を設け、縦割り行政によって生じた弊害などを誰でも投稿できるページ(いわゆる「縦割り110番」)を開設した[11]。目安箱には開設から9時間で約3,000件の投稿があったとされ、当初の見込みをはるかに超える意見が寄せられたことから、18日未明に新たな投稿の受付を停止した[11]。これを受けて河野は、今後は内閣府のウェブページに開設されている「規制改革ホットライン」で情報提供を受け付けるとしている[12]。
官僚人事[編集]
組閣前の2020年9月13日、「第2次安倍内閣(安倍晋三首相)で設立された内閣人事局の存在が、官僚の忖度を生んでいるのではないか」という指摘に対し、菅義偉は、内閣人事局の制度を改めるつもりはなく、「私ども(政治家は)選挙で選ばれている。何をやるという方向を決定したのに、反対するのであれば異動してもらう」と発言した[13]。
これに対し、野党社会民主党の参議院議員福島瑞穂は「恐怖政治の第一歩ですよ。独裁政治をやると宣言したのですから」と批判。ジャーナリストの清水潔は、「これが独裁です」と批判[14]。元総務官僚で立教大学特任教授の平嶋彰英は、「法治国家ではなく、人治だ」「内閣法の趣旨を理解せず、政治主導を履き違えている」と批判[15]するなどの批判があった。
「デジタル庁」設立構想[編集]
菅首相は、行政のDX(デジタル変革)を推進するための新しい行政機関として、「デジタル庁(英:Japan Digital Agency)」を設立する構想を掲げた。菅は首相就任前の自民党総裁選で、デジタル庁設置を自身の目玉政策として掲げていた。2020年9月16日の首相就任後の記者会見では、「複数の省庁に分かれる関連政策を取りまとめて強力に進める体制として、デジタル庁を新設する」と明言した。
そのため行政のDXを推進する担当大臣として「デジタル改革担当大臣」のポストを新設し、IT政策に精通した平井卓也衆議院議員を充てた。「デジタル改革関係閣僚会議」も新設し、菅首相はこの場でデジタル庁創設に向けた基本方針をまとめるよう指示した。2021年1月招集の通常国会で関連法案を提出する意向だ。併せて、2001年に施行されたIT基本法(高度情報通信ネットワーク社会形成基本法)の抜本的改正も目指すとしている。実務を主導する平井デジタル改革相は2020年9月30日に、デジタル庁設置に向けた「デジタル改革関連法案準備室」を内閣官房内に置き、自ら室長に就任した。約50人のスタッフは経済産業省や総務省などから集めた。
デジタル庁の姿は2020年10月中旬時点ではまだ明確ではないが、平井大臣はデジタル庁長官には民間人を充てる方針を示している。今後は、デジタル庁がシステムの構築や標準化に向けてデジタル、IT予算と人事権をどの程度掌握できるかなどが焦点になる。
実はデジタル庁構想より前から、行政のDXに関する動きはあった。その動向からデジタル庁の在り方をある程度類推できる。2019年5月には、国の行政手続きを原則電子化すると定めた「デジタルファースト法」が成立している。同法に基づき、同年12月に「デジタル・ガバメント実行計画」を閣議決定し、2024年度中に国の行政手続きの9割を電子化するための工程表を示した。
政府全体のIT調達予算は年間7000億円程度あるとされる。各省庁が縦割りで予算を編成して調達するため、コストが高止まりになりがちで、構築されるシステムも省庁ごとに部分最適になりがちだ。このため、新型コロナウイルス感染症対策を打つ過程で、各省庁や地方自治体との間でシステム連携がスムーズにできず、給付金の支給に遅れが生じるなどの問題が顕在化した。
デジタルファースト法の付則ではIT調達予算を内閣官房に一元化することを検討事項としている。さらにデジタル・ガバメント実行計画では、内閣情報通信政策監(政府CIO)が全省庁のプロジェクトを一元的に管理すると規定している。予算権限をデジタル庁が握れば、システムの標準化などを通じて全体最適やコスト削減を実現できる可能性が広がる。必要な人材を各省庁や民間から登用できる人事権を持つことで、DXプロジェクトを強力に推進するための体制も構築しやすい。
しかし、予算や人事の権限移管には各省庁からの激しい抵抗が予想される。政治主導をどこまで貫けるかで、デジタル庁の姿は大きく変わりそうだとの見方がある[16]。
菅政権が2021年9月の発足を目指すデジタル庁の業務概要が明らかになった。情報システム関係の予算を一括計上し、システムの統合を進め、運用経費などを令和7年(2025年)までに3割削減するとしている。作業部会がまとめたデジタル庁の業務概要によると、デジタル社会の形成に関する司令塔として、勧告権など強力な総合調整機能を持つ組織とし、国や地方自治体などの情報システムを統括するとしている。そして、国の情報システムに関係する予算をデジタル庁に一括計上し、各府省に配分する仕組みを段階的に整えるとともに、システムの統合を図ることで、運用経費などを令和7年(2025年)までに3割削減するとしている。
また、マイナンバー制度全般について、企画、立案を一元的に担う体制を構築するほか、サイバーセキュリティの専門チームを設置し、国の行政機関などに対するセキュリティ監査を行うことなども盛り込んだ。政府は、こうした内容を、年内に策定するデジタル庁の新設に向けた基本方針に盛り込む方針を示した[17]。
日本学術会議会員の任命問題[編集]
2020年9月、日本学術会議が推薦した新会員候補者105人のうち、6人が任命から除外された。菅総理大臣が任命を拒否した形になり、推薦した候補者が任命されなかったケースは過去にない異例のことである[18]。
「菅総理に日本学術会議会員の任命拒否をされた6人は(安倍前政権下の)安全保障関連法や特定秘密保護法などで政府の方針に異論を示してきた人物であり、政府の意に沿わない人物は排除しようとする意図ではないか」と指摘されている[19]。
この問題について、菅内閣は非承認理由を明らかにしておらず、日本学術会議は10月2日、菅内閣に対し、承認拒否の理由の開示と承認拒否撤回の要望を提出した[20]。この問題に対し、「過去の国会答弁と矛盾する」[21]「違憲」「違法」[22][23][24]などの指摘が相次いでいる。ジャーナリストの木村正人は「赤狩り」と批判している[25]。
2020年11月2日、国会衆議院予算委員会において菅首相は日本学術会議の会員選考について「閉鎖的で既得権益のようになっている」と批判し改革の必要性を強調した[26]。
マスコミ関係者を内閣総理大臣補佐官に任命[編集]
菅義偉首相は、10月1日付で前共同通信社論説副委員長の柿崎明二を自身の側近の一人として内閣総理大臣補佐官に任命した。柿崎は報道番組等で第2次安倍内閣以降の政策や姿勢を痛烈に批判しており、安倍内閣で約8年内閣官房長官を務めていた菅首相にとっては宿敵ともいえ、また政治経験のないマスコミ関係者に首相補佐官になったというのは史上初めてのことであった。
ジャーナリストの須田慎一郎は「批判的な官邸スタッフからは、『この8年間、反安倍で、安倍前総理に批判的な言説、物書きで食って来た人間が、なぜ今更、首相補佐官になるんだ』というコメント」があり「左派の人たちからすると、『この裏切り者め!』というように、両方からネガティブな反応が返って来ました。」とコメントしたうえで「菅さんはつくづく怖い人だな」と語っている[27]。
菅義偉の長男による高級官僚違法接待問題[編集]
2021年2月3日、菅義偉の長男である菅正剛(すが せいごう)が勤務する東北新社の関連会社が放送法の許認可事業を行っているにもかかわらず、その所管省である総務省の幹部である谷脇康彦総務審議官ら13人を、2020年10月から12月にかけて39回以上も菅長男らが高級料亭で違法接待していた問題が発覚した[28][29]。接待を受けた13人の中には総務省出身の山田真貴子内閣広報官も含まれていた[30]。
名称に関するトリビア[編集]
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- 菅義偉(すが よしひで)内閣は、過去に存在した菅直人(かん なおと)内閣(2010年6月 - 2011年9月:菅直人内閣、菅直人内閣 (第1次改造)、菅直人内閣 (第2次改造))と、姓の文字は同じだが、読み方の異なる内閣である。副総理に留任した麻生太郎は、自身の派閥の会合で「かん内閣」「かん政権」と2回読み間違えた[31]。公明党の高木陽介国会対策委員長も、「かん内閣」と読み間違え、即座に訂正した。
- 過去に同姓の首相は親族同士で就任した福田赳夫・康夫、鳩山一郎・由紀夫の2例と、血縁関係のない同姓同士の鈴木貫太郎・善幸、田中義一・角栄、加藤友三郎・高明の3例の計5例で、同じ漢字で読みが異なる姓同士の首相は初めてとなる。
- 菅義偉の首相就任に伴い、「カン(菅 直人)」「ノダ(野田 佳彦)」「アベ(安倍 晋三)」「スガ(菅 義偉)」と姓の読みが2文字となる首相が4代続いている。なお、菅直人首相以前で姓の読みが2文字の首相は「ハラ(原 敬)」「アベ (戦前)(阿部 信行)」「キシ(岸 信介)」「ミキ(三木 武夫)」「ウノ(宇野 宗佑)」「ハタ(羽田 孜)」「モリ(森 喜朗)」「アベ (第一次)(安倍 晋三)」の8名10代であり、いずれもその前後の首相の姓は3文字以上の読みである。姓の読みが2文字の首相が2代以上連続したことは一度も無かった。
脚注[編集]
注釈[編集]
出典[編集]
- ^ “菅内閣の初閣議「国民のために働く内閣」 基本方針を決定”. NHKニュース. (2020年9月17日) 2020年9月24日閲覧。
- ^ “菅政権が掲げる携帯電話料金引き下げ、今後の焦点はNTTドコモ”. 日経クロストレンド. (2020年11月18日 |accessdate= 2021年2月16日)
- ^ “第二百三回国会における菅内閣総理大臣所信表明演説”. 首相官邸 (2020年10月26日). 2021年2月16日閲覧。
- ^ 嶋津洋樹「菅政権の「アベノミクスの継承」とは その意味を探る」『ロイター』橋本浩、2020年9月29日。2021年2月16日閲覧。
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関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- 閣僚名簿 - 首相官邸
- 令和2年10月26日 第二百三回国会における菅内閣総理大臣所信表明演説 - 首相官邸
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