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金明輝

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
金 明輝
名前
カタカナ キン ミョンヒ
ラテン文字 KIM Myung Hwi
ハングル 김명휘
基本情報
国籍 大韓民国の旗 韓国
生年月日 (1981-05-08) 1981年5月8日(44歳)
出身地 兵庫県伊丹市[1]
身長 186cm
体重 76kg
選手情報
ポジション DF
利き足 右足
ユース
1997-1999 日本の旗 初芝橋本高校
クラブ1
クラブ 出場 (得点)
2000-2001 日本の旗 ジェフユナイテッド市原 0 (0)
2000 日本の旗 ヴァンフォーレ甲府 (loan) 5 (0)
2002 大韓民国の旗 城南一和天馬 0 (0)
2003-2006 日本の旗 佐川急便大阪SC 52 (3)
2006 日本の旗 バンディオンセ神戸 0 (0)
2007 日本の旗 アローズ北陸 25 (3)
2008-2010 日本の旗 カターレ富山 46 (3)
2011 日本の旗 サガン鳥栖 0 (0)
通算 128 (9)
監督歴
2014-2015 日本の旗 サガン鳥栖U-15
2016-2018 日本の旗 サガン鳥栖U-18
2018 日本の旗 サガン鳥栖
2019-2021 日本の旗 サガン鳥栖
2025- 日本の旗 アビスパ福岡
1. 国内リーグ戦に限る。2011年12月4日現在。
■テンプレート■ノート ■解説■サッカー選手pj

金 明輝(キン ミョンヒ、김명휘1981年5月8日 - )は、兵庫県伊丹市出身の元サッカー選手、サッカー指導者。在日韓国人。現役時のポジションはディフェンダー

来歴 ~選手として

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幼稚班と初級部は伊丹朝鮮初級、中級部は尼崎朝鮮中級に通った。初級部の頃からプロのサッカー選手を目指しており、全国高校サッカー選手権大会への出場を強く望むようになった。

中学3年生の時、朝鮮高校に選手権への出場が認められることが決まったが、高校3年生まで出場できるかは不透明だった。迷った末「どうしても選手権に出たい」との思いを貫き、初芝橋本に進学することにした。[2]

2000年、ジェフユナイテッド市原でプロサッカー選手としてのキャリアを開始。

JFLJ2を中心に数クラブを渡り歩いたのち、2011年シーズンをもって現役を引退[3]

来歴 ~指導者として

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2012年よりサガン鳥栖のスクールコーチにとして指導キャリアをスタート。U-15コーチ・監督を3年間務めた。

2016年、サガン鳥栖U-18監督に就任。2017年・2018年とプリンスリーグ九州を連覇[4]

2018年8月よりトップチームコーチを兼任していたが[5]、10月18日にマッシモ・フィッカデンティが辞任したことを受け、トップチーム監督に就任。朝鮮学校卒業生として初めてJ1クラブの監督に就任した。[6][注 1]

就任から最終節まで5試合を3勝2分0敗の成績を残しJ1残留に導いた[7]

2019年シーズンは監督の座をルイス・カレーラスに譲り、再びトップチームコーチに就任。

2019年5月4日大分トリニータ戦からカレーラスの後任監督となり[8]、5月7日に正式に監督就任[9]。チームを再建し残留させた。

2020年8月12日、チーム内で新型コロナウイルスのクラスター感染が発生、自らも陽性判定を受け[10]、チームは2週間の活動休止を余儀なくされた[11]

2020年9月度のJ1月間優秀監督賞を受賞[12]。チーム活動再開後、9月の8連戦で3勝2分3敗の成績が評価された。

2021年シーズンは限られた戦力を最大限に活かし、4年ぶりのJ1一桁順位である7位まで導いた。

2021年12月20日、サガン鳥栖監督を退任[13]

2024年12月30日、アビスパ福岡の監督に就任することが発表された[14]

パワーハラスメント、コーチライセンス降級

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2021年12月30日、以前より複数の告発を受け、金による選手・スタッフに対するハラスメントの調査結果がJリーグより報告された。

金について「鳥栖U-18を指揮していた2016年から2018年にかけて、同チームおよびトップチームの選手やスタッフに対し、暴力行為や暴言を繰り返していた。その結果、多数のチーム関係者が深刻な精神的ダメージを受けるなどの被害が生じた」とパワーハラスメント行為を認定。[15][16][17]

以下、講談社ゲキサカが報じたハラスメントの内容

「お前のパスはこうなんや」と言いながら選手にボールをぶつけたり、選手の前髪が長いことに立腹して前髪を握って平手打ちをしたり、トレーナーのケアを受けていた選手の頭を叩いて「ケアしてる場合ちゃうやろ」「お前が冷やす権利あんのか」と発するなどしていた。

「ユースの試合が終わった後、ミスが多かった時、詰め寄られて胸ぐらをつかまれた。怖かった」「(ユースの頃からずっと暴言や暴行があったため)たまに殴られたりしても、当たり前のことだと思っていた」「ユースの頃は、月1回程度は暴力を受けていた」「拳骨で叩かれた。たんこぶができたこともあった」「平手で叩かれることもあった」といった証言が得られており、「有形力の行使や暴言が常態化していたものと認められる」

トップチームでは主にユース出身や若手選手に対して「死ね」「殺すぞ」「消えろ」のほか、「お前の顔は気持ち悪い」「ハゲ」など容姿を中傷するものもあった。ユースチームでも「貴様、サッカー辞めろ」「死ね」「俺の前から消えろ」などトップチーム同様の発言があった

スタッフに対する暴言・暴行も認定された。「見てるだけできしょい」「お前の無能のせいでみんなに迷惑がかかっている」と発されたスタッフは翌出勤日に出勤できず、別の日には「こいつに言いすぎると鬱って言われるからあまり言えない」「何もしていないやつに限って鬱とか言う。何もしていないのにできないとか言ってくる」などとメンタルの不調を揶揄したこともあった

チーム関係者からは「監督の話は、いつかは出るだろうなと思っていた。ちょっと遅いなと思うくらい」「理不尽がすごく多くて、ミーティングでつるし上げられている選手がいた」「何が正解かと、苦しかった。いいプレーをしても言われた。言われ過ぎて、良くわからなかった」

金に対し、JFA指導者に関する規則第20条第7号の「暴言・暴力及びハラスメント行為を行わない」行為に違反したとして、公式試合への出場資格停止8試合、又は8試合に相当する期間の経過(公式試合に参加する立場の役職に就いていない場合は、公式試合8試合に相当する期間《2022年2月19日から3月26日まで》の経過をもって、公式試合8試合の出場の資格停止を消化したものとみなす)と譴責処分を決定した[15]

2022年3月10日、日本サッカー協会からの処分として、JFA公認S級コーチからJFA公認A級コーチジェネラルへの降級が発表された。S級からA級への降格は制度初の処分。暴行の回数、未成年へ被害が及んでいたことが勘案された。またJFAの定める研修、社会奉仕活動が科されると発表された[18]

処分を受けた後、日本サッカー協会のコンプライアンス講習(マンツーマンで1回約3時間を8コマ、1カ月間)を受け、ボランティア活動もしたと本人は語っている。[19]

指導者復帰

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2022年11月14日、J2にいた町田ゼルビアのヘッドコーチに就任[1]黒田剛監督の下、2023年のJ2リーグに優勝。

2024年2月15日、日本サッカー協会理事会が金のS級コーチライセンスを再所得を認定。[20]

引き続き町田ゼルビアヘッドコーチを務め、2024年のJ1リーグ3位。

2024年12月13日、J1アビスパ福岡が2025年シーズンより金が監督に就任すると発表。[21]

2024年12月20日、鳥栖時代のパワハラ行為に由来する拒絶反応が一部から起こり[22]、アビスパ福岡の川森敬史代表取締役会長が記者会見を開催するに至った。[23][24]

以下、川森敬史会長の発言要旨

「監督人事自体は取締役会事項(中略)アビスパ福岡はルールに則って、(中略)取締役会企業様(中略)そういった方々に事前にご相談できる範囲で、新監督候補の反省の姿勢と実績についてご説明し、ご意見を求め(中略)クラブのバジェットとコンプライアンスの観点で、執行メンバーが責任を全うする体制を説明し、理解を得た」

「新監督候補に関しまして、当時ネガティブなコメントが目立ちました。私どももそういったものは一定の予想はしておりました。」

「当然、過去の問題については決して容認されるものではないとクラブとしては認識しております。(中略)過去の事実は変えることはできませんが、新体制に対してご懸念をいただいている皆様に対し、今後どのようにクラブへの信頼を持っていただけるかが大事」

「クラブとして金新監督にチームがさらに成長する指導を期待しておりますが、再出発の意思を固めた金さんと向き合い、共に進んでいきたい」

「特にパワーハラスメントが起きないよう、権限の集中や過度な責任追求ではなく、クラブに所属する誰もが自らのミッションを遂行する上で業務に集中できる環境に向けて、体系的に取り組んでいきたい」

2025年1月31日、2007年から17年間クラブのスポンサーを続けてきたふくやがスポンサー契約満了を発表[25][26]

所属クラブ

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個人成績

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国内大会個人成績
年度クラブ背番号リーグ リーグ戦 リーグ杯オープン杯 期間通算
出場得点 出場得点出場得点 出場得点
日本 リーグ戦 リーグ杯天皇杯 期間通算
1998 初芝橋本高 - - - 1 0 1 0
1999 5 - - 2 0 2 0
2000 市原 30 J1 0 0 2 0 - 2 0
甲府 27 J2 5 0 - 0 0 5 0
2001 市原 25 J1 0 0 0 0 1 0 1 0
韓国 リーグ戦 リーグ杯FA杯 期間通算
2002 城南一和 37 Kリーグ 0 0 0 0 0 0 0 0
日本 リーグ戦 リーグ杯天皇杯 期間通算
2003 佐川大阪 15 JFL 1 0 - - 1 0
2004 6 1 - - 6 1
2005 25 1 - - 25 1
2006 20 1 - - 20 1
2006 B神戸 29 関西1部 0 0 - 0 0 0 0
2007 北陸 5 JFL 25 3 - 2 1 27 4
2008 富山 4 14 2 - 1 0 15 2
2009 J2 15 1 - 1 0 16 1
2010 17 0 - 0 0 17 0
2011 鳥栖 5 0 0 - 1 0 1 0
通算 日本 J1 0 0 2 0 1 0 3 0
日本 J2 37 1 - 2 0 39 1
日本 JFL 91 8 - 3 1 94 9
日本 地域 0 0 - 0 0 0 0
日本 その他 - - 3 0 3 0
韓国 Kリーグ 0 0 0 0 0 0 0 0
総通算 128 9 2 0 9 1 139 10

指導歴

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  • 2012年 - 2021年 サガン鳥栖
    • 2012年 アカデミースタッフ (スクールコーチ)
    • 2013年 U-15 コーチ
    • 2014年 - 2015年 U-15 監督
    • 2016年 - 2018年10月 U-18 監督
      • 2018年8月 - 同年10月 コーチ (兼任)
    • 2018年10月 - 同年12月 監督
    • 2019年1月 - 2019年5月 コーチ
    • 2019年5月 - 2021年12月 監督
  • 2023年 - 2024年 FC町田ゼルビア ヘッドコーチ
  • 2025年 - アビスパ福岡 監督

監督成績

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年度 所属 クラブ リーグ戦 カップ戦
順位 勝点 試合 ルヴァンカップ 天皇杯
2018 J1 鳥栖 14位 11 5 3 2 0 - -
2019 15位 32 25 9 5 11 予選敗退 ベスト8
2020 13位 36 34 7 15 12 GS敗退 -
2021 7位 59 38 16 11 11 GS敗退 ベスト16
2025 福岡
  • 2018年は第30節からの指揮
  • 2019年は第10節に代行、第11節より正式に指揮

タイトル

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選手時代

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城南一和天馬

監督時代

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サガン鳥栖U-15
サガン鳥栖U-18

個人

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脚注・注釈

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脚注

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  1. ^ a b 金明輝氏 ヘッドコーチ就任のお知らせ』(プレスリリース)FC町田ゼルビア、2022年11月14日https://www.zelvia.co.jp/news/news-217075/2022年11月20日閲覧 
  2. ^ Jリーグでがんばってます”. 朝鮮新報(日本語版). 2024年11月7日閲覧。
  3. ^ 金明輝選手 現役引退のお知らせ』(プレスリリース)サガン鳥栖、2011年12月2日https://www.jleague.jp/jsgoal_archive/official/detail.php?press_code=1294952017年10月29日閲覧 
  4. ^ “サガン鳥栖U-18、プリンスL優勝”. 佐賀新聞. (2018年9月24日). https://www.saga-s.co.jp/articles/-/279002 2018年10月19日閲覧。 
  5. ^ 登録役員追加・変更・抹消のお知らせ』(プレスリリース)日本プロサッカーリーグ、2018年8月24日https://www.jleague.jp/release/post-55370/2018年10月19日閲覧 
  6. ^ トップチーム監督交代のお知らせ』(プレスリリース)サガン鳥栖、2018年10月18日https://www.sagan-tosu.net/news/p/3427/2018年10月19日閲覧 
  7. ^ “【号外】サガンJ1残留 最終節、鹿島と引き分け14位”. 佐賀新聞. (2018年12月1日). https://www.saga-s.co.jp/articles/-/309241 2019年4月9日閲覧。 
  8. ^ “最下位の鳥栖 突然の指揮官変更!カレーラス監督に替わり金明輝コーチが指揮”. スポーツニッポン. (2019年5月4日). https://www.sponichi.co.jp/soccer/news/2019/05/04/kiji/20190504s00002179267000c.html 2019年5月7日閲覧。 
  9. ^ 金明輝 監督就任のお知らせ』(プレスリリース)サガン鳥栖、2019年5月7日http://www.sagan-tosu.net/news/p/3881/2019年5月7日閲覧 
  10. ^ <新型コロナ>J1鳥栖・金監督が陽性 選手、スタッフも検査 きょう12日に結果判明”. 佐賀新聞LiVE (2020年8月12日). 2020年8月14日閲覧。
  11. ^ サガン鳥栖活動再開のお知らせ”. サガン鳥栖 (2020年8月25日). 2020年12月5日閲覧。
  12. ^ 明治安田生命Jリーグ 月間優秀監督賞:9月度 サガン鳥栖 金 明輝”. Jリーグ.jp. 2020年10月29日閲覧。
  13. ^ 金明輝 監督 退任のお知らせ』(プレスリリース)サガン鳥栖、2021年12月20日https://www.sagan-tosu.net/news/p/5880/2021年12月24日閲覧 
  14. ^ 金 明輝 氏 監督就任のお知らせ”. アビスパ福岡公式サイト | AVISPA FUKUOKA Official Website. 2025年6月17日閲覧。
  15. ^ a b Jリーグ 鳥栖金明輝前監督のパワハラ行為認定 クラブに罰金300万円 - 日刊スポーツ 2021年12月30日
  16. ^ 鳥栖・金明輝前監督のパワハラ認定…5年間にわたり暴力や暴言「クラブが裸の王様にしてしまった」の声も”. スポーツ報知 (2021年12月31日). 2025年6月14日閲覧。
  17. ^ ユース選手への暴力「常態化」。「お前の顔は気持ち悪い」など数々の暴言も…鳥栖・金明輝前監督のパワハラ報告書”. ゲキサカ (2021年12月30日). 2025年6月14日閲覧。
  18. ^ 鳥栖の金明輝前監督にA級降級処分、東京Vの永井前監督はS級ライセンス1年間停止 - スポーツニッポン 2022年3月10日
  19. ^ 「人は変われる」と言われる日まで…町田で再起をかける金明輝の挑戦【サッカー、ときどきごはん】”. 森マガ. 2025年6月14日閲覧。
  20. ^ ゲキサカ編集部 (2024年2月15日). “9人にS級コーチライセンスが認定!! 町田の金明輝コーチもパワハラ降級から2年で再取得”. ゲキサカ. 2025年6月14日閲覧。
  21. ^ 金 明輝氏 監督就任のお知らせ』(プレスリリース)アビスパ福岡、2024年12月13日https://www.avispa.co.jp/news/post-744082024年12月13日閲覧 
  22. ^ J1福岡・金明輝新監督 鳥栖で行った足払い事件など… パワハラ調査報告書に再注目”. 東スポWEB (2024年12月22日). 2025年6月14日閲覧。
  23. ^ Shimbun, The Nishinippon. “アビスパ福岡の金明輝新監督が就任会見 過去のパワハラによる批判踏まえ冒頭謝罪「一体感を大事に、選手、スタッフをリスペクト」:「おっ!」でつながる地元密着のスポーツ応援メディア 西スポWEB OTTO!”. 「おっ!」でつながる地元密着のスポーツ応援メディア 西スポWEB OTTO!. 2025年6月14日閲覧。
  24. ^ 新監督就任記者会見要約書”. アビスパ福岡公式サイト | AVISPA FUKUOKA Official Website. 2025年6月14日閲覧。
  25. ^ 末継智章「アビスパ福岡とスポンサー契約満了発表の「ふくや」、社長が説明した2つの疑念 再契約も示唆」『西スポWEB OTTO!』2024年12月31日。2025年1月12日閲覧。
  26. ^ 「ふくや」1月でアビスパ福岡のスポンサー契約満了 新監督の選定プロセスに疑問”. 西日本新聞me (2025年6月14日). 2025年6月14日閲覧。
  27. ^ 金明輝選手の期限付き移籍について (2000.07.19)』(プレスリリース)ジェフユナイテッド市原・千葉、2000年7月19日。オリジナルの2002年2月9日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20020209234048/http://www.so-net.ne.jp:80/JEFUNITED/info/i_2000/i_2000_07.html2017年10月29日閲覧 

注釈

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  1. ^ トップチーム監督就任に併せ、U-18監督は桑原勇斗に交代

関連項目

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外部リンク

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