期限付き移籍

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期限付き移籍(きげんつきいせき)は、サッカーなどのプロスポーツにおいて、選手が現在所属しているクラブとの契約を保持したまま、期間を定めて他のクラブへ移籍する制度。「レンタル移籍」や「リース移籍」とも呼ばれる。英語ではloan dealと言う。

期限付き移籍では、通常の移籍(完全移籍)にしばしば見られる移籍金が発生しない代わりに、移籍先のクラブから移籍元のクラブに対してレンタル料を支払う、選手報酬の支払いを肩代わりするという形態が一般的である。

利点・欠点[編集]

利点[編集]

  • 移籍先チームの立場では、高額の移籍金を支払うリスクを避けつつ戦力を補充できる。特に資金力の乏しいクラブは期限付き移籍を多用する傾向がある。
  • 選手の立場では、出場機会の増加が見込める。また移籍先クラブと選手の双方にとって、期限付き移籍は一種の「試行期間」であり、期限付き移籍先のクラブでの活躍が認められて、後に完全移籍するケースも多々ある。なお、将来的な完全移籍を前提としている場合、期限付き移籍の際に定めた移籍金を支払えば完全移籍に変更できるという契約を結ぶケースがあり、報道などでは「買取オプション」と表現される。
  • 移籍元クラブの立場では、出場機会を与えづらい若手選手に試合経験を積ませることができる。
  • 余剰戦力となっている、あるいはクラブに合わない外国籍選手をレンタル移籍させることによって外国人枠を空け、新たな外国籍選手を獲得することができる。

欠点[編集]

  • 選手は移籍元クラブとの契約を維持しているため、仮に選手が活躍して名声を上げた場合にも移籍先クラブの潜在的財産とはならない。また、移籍元と移籍先が同じリーグの場合、移籍元のクラブとの対戦では契約により出場できず戦力にならないこともある。
  • 活躍しても移籍元クラブの意向に左右され、原則として元のクラブに戻るため、期限付き移籍による戦力補強を多用したクラブは期限付き移籍期間終了後に戦力ダウンとなる。

日本サッカー協会の期限付き移籍制度[編集]

日本サッカー協会ではJリーグおよびJFL旧JFL含む)所属のプロサッカー選手について、期限付き移籍制度を定めている。期限付き移籍がJFAの定める正式な名称であるが、一般にはレンタル移籍という用語が通用する。

期限付き移籍の場合、まず移籍元クラブ、移籍先クラブ、および選手の3者が合意に基づいて期限付き移籍契約を結ぶ。この際、移籍金は「移籍元クラブと移籍先クラブの合意による」と規定されているが、慣例としては発生しない。これに続いて、選手は移籍先クラブとの間に選手契約を結ぶが、契約の諸条件は原則として移籍元クラブとの契約条件と同じでなければならない。また、選手は移籍先クラブのA契約25名枠に含まれることとなる。

期限付き移籍期間が終了した場合、選手は自動的に移籍元クラブに再移籍する。ただし、3者の合意により期限付き移籍の延長や完全移籍に変更することも可能である。完全移籍に移行する場合、移籍元クラブに契約延長の意思がある場合には移籍金が発生するが、この場合年齢係数が半分になり通常の完全移籍より金額は低くなる。また、移籍元クラブが契約を延長しない場合には移籍金が発生しない。

期限付き移籍期間における契約の解除については規定がなく、両クラブの事情などを勘案し3者間の交渉によって解除を決定することになる。

2013年シーズンから、「移籍元クラブとの試合には出場できない」などの出場制限契約を結んでいる場合、条件を公表することが義務付けられた。

Jリーグでは1994年からこの制度が導入された。適用第1号は当時ヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ)に在籍していた菊原志郎で、浦和レッズに1年間の期限付きで期限付き移籍した。その後も多くの選手が期限付き移籍によって活躍の場を得ており、現在では移籍の一手段として完全に定着している。

セレッソ大阪からスペイン・マジョルカへ移籍した大久保嘉人京都パープルサンガからフランス・ルマンへ移籍した松井大輔FC東京からイタリア・チェゼーナへ移籍した長友佑都など、海外のクラブに移籍する選手が、移籍最初のシーズンは完全移籍ではなくレンタル契約で移籍し、実績を挙げれば完全移籍に移行する事例も多い。

育成型期限付き移籍[編集]

18-23歳の選手が所属クラブより下位カテゴリ所属クラブ(例:所属元がJ1クラブの選手はJ2以下)へ移籍する場合に限り、移籍期限外での期限付き移籍を可能にする「育成型期限付き移籍」を2013年シーズンから試験導入した。

これを導入した背景について、日本サッカー協会は、2009年でトップチームの若手育成大会「Jサテライトリーグ」が廃止されたことよって、若手選手の実践機会が大幅に減ってきていることから、より多くの公式戦への出場機会を提供し実践を積むことを念頭に置いている。2013年は試験導入としており、2014年以後は2013年の試験導入の結果などを踏まえて判断するとしていた[1]

なお、J3リーグ発足当初の2014年から、J2以上に所属するクラブに在籍する選手で、トップチームの出場機会が少ない選手を対象とした「JリーグU-22」については、この期限付き移籍のルールとは別に、各試合ごとに各クラブから無作為で選手を選抜する方式がとられ、事実上所属クラブとU-22の「二重登録」としていたが、U-22の累積警告・退場は所属元クラブへは反映しないことになっていた。また2016年から参加が認められる各クラブ単位のU-23選抜チームについても、これらの期限付き移籍とは別に、トップチームとの明確な選手登録の線引き・区分けはしないで、日本プロ野球と同じように一つのチームでトップとU-23を自由に選手登録ができるようにする方式が計画されている。

その他[編集]

世界のサッカー界においては、日本での導入以前から期限付き移籍は広く行われてきた。ヨーロッパではその他の一部スポーツでも、期限付き移籍が導入されている。

日本では上述のサッカーに加え、アイスホッケーバレーボールラグビーにおいて期限付き移籍制度が導入されている。プロレスにおいては団体同士の交渉によって期限付き移籍となることがある。また、現在野球協約の規定で行えないプロ野球でも、同様の制度を国内で導入する検討が行われている。なお、日本のプロ野球ではかつて、一部の球団で「野球留学」という名目で、任意引退の扱いで日本国内の球団が選手の所有権利を持ちながら大リーグ傘下のマイナーリーグでプレーする、レンタル移籍に近い概念の選手がいたが、1998年11月の野球協約第68条第2項の改正により、任意引退の制度を利用した海外移籍は禁止された。2012年より育成選手独立リーグへの「派遣」という名目のレンタル移籍が認められた[2]

2011年にはプロバスケットボールのbjリーグにおいて東日本大震災の影響で活動休止となった3球団(仙台埼玉東京)の選手を救済する目的で緊急導入され、2013年に発足したNBLにおいて本格導入されている。

アメリカのプロスポーツ界においては、選手の労働組合との兼ね合いやフリーエージェント制度などとの関連もあり、期限付き移籍制度は導入されていない。

スポーツ業界以外では、日本の防衛省が民間企業の社員研修をかねて、民間企業の社員を2年から3年ほど防衛省にレンタル移籍させる、「任期制自衛官」制度の設立を検討していると報じられた(防衛省、人材確保に民間からの「レンタル移籍制度」(読売新聞)より参照)。

出典[編集]

  1. ^ サッカー協会:「育成型期限付き移籍」試験的に導入へ(毎日新聞2012年11月23日 2014年3月10日閲覧)
  2. ^ “独立リーグが果たすべき役割とは 求められるNPBとの連携強化”. 東奥日報. (2012年8月31日). http://www.toonippo.co.jp/news_kyo/entertainment/20120831010023821.asp 2015年4月21日閲覧。 

関連項目[編集]