格下げ車両

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京急2000形電車。元来は快速特急用として登場し、後に3ドアロングシート車に格下げ改造された。 上:格下げ前 下:格下げ後
京急2000形電車。元来は快速特急用として登場し、後に3ドアロングシート車に格下げ改造された。
上:格下げ前
下:格下げ後
観光バスから路線バスに格下げ改造した車両の例(サンデン交通) 前面に方向幕が設置され、中央に扉が増設されている。
観光バスから路線バスに格下げ改造した車両の例(サンデン交通
前面に方向幕が設置され、中央に扉が増設されている。

格下げ車両(かくさげしゃりょう)とは、優等車両(特別席車両や優等列車用車両、観光バス)を一般用に改造・転用した鉄道車両もしくバスのことである。格下げ車とも呼ばれる。

車両の性質上、高速・長距離走行と快適性が重視される優等車両[1]は接客設備や性能は時代とともに変化するため後継車両が登場すると見劣りすることがあり、程度が良くても性能や設備にランクの劣る車両は格下げの体制で一般車両に転用していた。昨今では車両の水準が向上したことや一貫して優等車両を使用する方針に転換しつつあること、バスにおいてはバリアフリーに難があることなどから以前と比べ格下げ車両は減少傾向にある。

鉄道[編集]

優等車(特別席車両)の格下げ[編集]

グリーン車から普通車に格下げ改造したキハ28形5000番台

優等車の陳腐化による格下げは、古くから多く行われている。優等車はある程度の水準を保つ必要があることから、新型優等車の登場に伴って旧型優等車が格下げされるのは、必然の流れであった。一等車二等車がそれぞれ二等車、三等車に格下げされるばかりでなく、合造車や非旅客用の荷物車郵便荷物車、事業用車に改造される例もあった。一般用の車両ばかりでなく、皇室用の供奉車が種車になった例もある。

日本国有鉄道(国鉄)・JRの座席車ではリクライニングシートを備えた特別二等車(特ロ)に比べて設備が劣るボックスシート・転換クロスシート・回転クロスシートを備える並型二等車(並ロ)は1968年までに近郊形車両であるサロ110形・サロ111形を除いて二等車(普通車)に格下げされている。グリーン車では急行形車両においては四国・九州地区で使用されていたキロ28形の座席を交換することなく格下げし、普通車の指定席に転用したキハ28形5000番台・5200番台が存在したほか、交直流電車では先頭車の絶対数不足からサロ165形サロ455形から改造したクハ455形600番台が存在した[2]特急形車両では極めて異例であるが、485系電車においては東北特急廃止で余剰となったクロ481形を九州地区への転用に際し格下げ改造したクハ481形600番台、「ひたち」のモノクラス化および短編成化に際してサハ481形の絶対数不足からサロ481形・サロ183形・サロ189形から格下げ改造したサハ481形300番台やクハ481形1100番台、「しらさぎ」用付属編成の捻出および「スーパー雷鳥」用編成の10両貫通編成化を目的として同じくサロ481形から格下げ改造したサハ481形500番台が存在した。ただしこれら485系の例では、座席は格下げ後の等級の一般的な設備と同等のものに取り替えられており、接客設備(主に座席)の大幅な変更を伴うことなく種別や等級だけを下げる他の事例とはかなり趣きを異にする。

優等列車用車両の格下げ[編集]

優等列車用車両の格下げでは扉の増設を伴わないもの、扉の増設を伴うもの、近郊形グリーン車への格下げがある。後継車両に置き換えられたり余剰となった特急・急行用車両を一般列車に転用し、高性能化や冷房化、経年車両の置き換えなどの体質改善や輸送力増強に充てるケースがある。

扉の増設を伴わないもの[編集]

北陸本線の普通列車で使用する475系

国鉄・JRでは急行列車の廃止・削減の影響を受けて余剰車両の有効活用の観点から一般形車両の体質改善のために急行形車両を原形に近い形で普通列車に転用した例があり、中には座席の一部もしくは全体をロングシートに改造した車両も存在したほか、四国旅客鉄道(JR四国)ではキハ185系気動車を普通列車用に格下げ改造した車両が存在する。

私鉄では東武鉄道では5700系電車が特急車時代の外観・内装のまま快速列車急行列車快速急行に使用されたほか、1800系電車では輸送量の少ない支線区での高性能化のために座席の一部を撤去し、通勤車に格下げ改造した例がある。ほかには座席の一部をロングシート化・クロスシート部を2+1列化し、嵐山線の普通列車に転用した阪急6300系電車や特急車時代のまま志摩線の普通列車用に転用された近鉄680系電車、先頭車の構造の問題から扉の増設が困難だった西鉄1300形電車などがある。変わり種として、名古屋鉄道では事故で損傷した1030系・1230系1134Fのうち、編成を組んでいた1030系が事故廃車となったため、損傷が少なかった1230系を復旧に際して1380系に格下げ改造した例がある。

扉の増設を伴うもの[編集]

419系電車

この種の改造では国鉄・JRより優等列車において動力分散方式を早くから採用している私鉄の旧型車に見られた。特に料金不要の優等列車を多く設定している阪急電鉄京阪電気鉄道西日本鉄道では高性能車でも扉の増設を伴う格下げ改造が行われている。

国鉄・JRでは夜行列車の廃止・削減で余剰となった583系電車を扉の増設・セミクロスシート化した419系・715系電車が存在した他、457系電車を短編成化し、中央部に扉を増設した717系電車900番台が存在した。

私鉄では扉を増設・ロングシート化・つり革の設置など通勤形車両に近い形に改造する場合があり、この場合も通勤車格下げと称する場合がある。

元来、優等列車用車両では高速・長距離運転を行う性質上走行距離が大きく、扉の増設などの改造も車体強度を低下させるなど、老朽化を進行させやすい。一例として、格下げ改造を受けた阪急2800系電車が老朽化で全廃された後も、先行して登場した一般車両である2300系電車の方が大量に残存した。また、京阪1900系電車では格下げ後に冷房化と更新修繕を行ったが、経年のある車両への追加改修工事にコストを要したことに鑑み、後継車両である3000系電車はさらに後継となる8000系電車の導入後は格下げされることなく大部分が廃車となるなど、こうした改造はコストがかかりやすい傾向にあるため、昨今ではこの種の改造は行われなくなりつつある。その一方、先述の419系電車は交直流電車という車両製造コストの高さから改造後も長く使用され、種車の583系時代よりも長く使用される異色例となった。

近郊形グリーン車への格下げ[編集]

サロ110(1200番台を除く)・112形は特急形・急行形車両の改造で賄われた。サロ110形は0(→1000)・900番台がサロ153から、301がサロ180から、302・303はサロ181から、304 - 311と1301 - 1305はサロ183から、351 - 362と1351 - 1358はサロ489・481から、401がサロ165からそれぞれ改造されたものである。サロ112形は30両がサロ152から、1両がサロ163からそれぞれ改造された。

格下げを前提とした車両[編集]

小田急2300形
暫定的な特急用として登場し、2度に亘って準特急用、一般車(通勤車)に格下げされた。

登場後は暫定的に優等列車で使用し、本来の優等列車用車両導入後に一般車両へ格下げを前提とした車両もある。

小田急電鉄では特急増発用に製造された2300形電車はSE車こと3000形電車の導入が計画された時期に導入されたため、3000形登場後は格下げを前提としていた[3]。外観・内装は有料特急用車両そのものであるが、システム上では一般車両である2220形電車と同一で3000形導入後は準特急用に2扉セミクロスシートに改造され[4]、1963年にはNSEこと3100形が導入されて準特急が廃止されたため、3扉ロングシートの一般車に改造された。

近畿日本鉄道では6431系電車名古屋線に導入された当時は狭軌であったため、標準軌への改軌後は大阪・名古屋両線共通の標準軌間用特急車両の導入が決定されていたことから導入後は一般車への格下げを前提としていた。外観・内装は有料特急用車両そのものであるが、システム上では在来車との混結を前提としたため、釣り掛け駆動であった。改軌後は標準軌用の台車に交換し、しばらくは特急列車で使用されたが、後継車両の増備につれて見劣りがしてきたことから1965年に3扉ロングシートの一般車に改造された。

京成電鉄では「開運号」[5]の高性能化を目的に3200形の専用編成が導入され、「空港特急」用としたAE形導入後は一般車両への格下げを前提としていた。外観こそ3扉で通勤車に近いものの一般車との違いは扉は片開きで車内設備はセミクロスシートであり、便所も備えていた。AE形登場後はロングシート化と便所を撤去している。

東日本旅客鉄道(JR東日本)では秋田新幹線建設に伴い、北上線経由の暫定的な特急列車である「秋田リレー」用にキハ110系300番台が導入された。外観では200番台と同一であるが、座席はE217系電車のグリーン車用でデッキも備えていた。秋田新幹線開業後は座席のセミクロスシート化・デッキ仕切りを撤去し、当初の予定通り一般車に格下げされ、飯山線などへ転用されている。なお、座席はE217系電車のグリーン車に転用された。

車体更新・機器流用の事例[編集]

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475系電車(上)と車体更新改造した717系電車200番台(下) 車体更新車では種車の原形をとどめない。
475系電車(上)と車体更新改造した717系電車200番台(下)
車体更新車では種車の原形をとどめない。

格下げの範疇に含めるかどうかは見解が分かれるが、優等列車用車両の機器を流用したり一般車両の車体に載せ替えた車両もある。

この改造では車体は完全な新製車両と同等で旅客サービス面においては優位となるが、車両性能は種車のままでスピードアップなどへの対応が難しく、性能向上が図られない割には改造規模が大きくコストも嵩むため、あまり行われていない[6]

国鉄・JRでは交直流急行形電車においては車体を載せ替えて近郊形電車に改造した413系・717系電車165系電車の機器を流用した通勤形電車であるJR東日本107系電車がある。

私鉄においては京成電鉄では格下げに際して通勤形車両の車体に乗せ換えた1600形電車や初代AE形電車の機器流用した通勤車である3400形電車のほか、名古屋鉄道では特急の一部特別席化で廃車となった1000系電車の機器を流用した5000系電車がある。近畿日本鉄道では10000系電車の機器を流用した2680系電車10100系電車の機器を流用した2000系電車がある。

その他[編集]

スハ43系客車
元来は急行列車への使用を前提に製造されたが、撮影時点では普通列車に使用されていた(仙台駅、1985年3月撮影)

国鉄では10系以前のいわゆる旧型客車については1両単位で管理されており、普通車については普通列車で使用することを前提とした戦災復旧車である70系客車と鋼体化改造車である60系客車を除いて種別ごとに使用形式を特に限定していないが、その多くがデッキ付きの2扉クロスシートで製造されているため、優等列車への使用することも前提とされていた。

そのため、程度の良い車両は優等列車での使用が優先され、後継車両の増備や置き換えにつれて捻出した中堅車や経年車は普通列車に使用されていた。1960年代後半以降は急行列車への運用は原則として近代化改造を施工した車両と10系客車に限定していた[7]

また、20系客車は元来は特急形であったが、後継車である14系客車24系客車の増備につれて次第に急行列車にも運用されるようになり、国鉄末期には夜行列車の廃止・削減につれて余剰となった14系客車や24系客車も20系客車の老朽化に伴い置き換え用として転用され、結果的には急行列車にも使用されるようになっている。

名古屋鉄道では1975年までは特急列車への使用と着席通勤を前提に汎用性を追求していたため、2ドア転換クロスシート車が伝統的に導入されていた[8]。登場後しばらくは特急専用で運用され、後継車の増備につれて格下げの体制で次第と広汎に運用されるようになっていたため、このように特急用や一般用といった車両区分の概念がなく、7000系・7700系7500系が長らく実質的な特急・急行用として使われ、1982年(昭和57年)以降は白帯が入った7000系・7700系(通称『白帯車』)のみが特急列車に充当されていた。 また、名鉄線内のみで有料特急専用で運用される電車においても1984年(昭和59年)に8800系が登場するまでは保有していなかった。1986年(昭和61年)に登場した2ドア転換クロスシート車である5300系・5700系も元来は高速・急行用車両であったが[9]、結果的には後継車両も急行列車に充当されるようになったことから格下げの体制で普通列車にも使用され、現在では全車一般車特急にも充当されたりするなど、広汎に運用されるようになったことから名鉄では2ドアクロスシート車については種別ごとに明確な用途を限定していない。→名古屋鉄道の車両形式も参照されたい。

日本国外における事例[編集]

台鉄DR2700型気動車

台湾台湾鉄路管理局では光華号用であったDR2700型気動車が格下げの体制で使用されている。

韓国ではセマウル号に使用されていた客車がムグンファ号に格下げの体制で転用されたケースがある。

ムグンファ号に転用された旧セマウル号車両


(参考)格上げの事例[編集]

JR北海道キハ400形気動車

優等列車はその性質上、速達性と快適性が要求されるため、格下の車両から格上げしたケースは格下げ車両より少ない。

国鉄・JRにおいては電車では157系電車は元来は準急形であったが、特急形車両に近い接客設備から臨時特急列車にも使用され、後年に完全に特急車と同一水準化する改造が行われ、それ以後は専ら特急形車両として使われた。気動車ではキハ40系気動車が優等列車用に改造された事例があり、北海道旅客鉄道(JR北海道)では急行列車用に高出力化と座席をリクライニングシートに交換したキハ400・480形が存在した他[10]九州旅客鉄道(JR九州)では「はやとの風」「指宿のたまて箱」用に格上げ改造した車両がある。またJR九州では「海幸山幸」用にキハ125に編入した上で格上げ改造[11]している。この他に急行形気動車であるキハ65形気動車では特急列車である「ゆぅトピア和倉」や「エーデル北近畿」用などに改造された車両が存在した。他にも60系客車においてオハ61形からオロ61形・オロフ61形[12]への格上げ改造をはじめ、国鉄からJRへの以降期に余剰急行型車両や余剰一般客車からジョイフルトレイン化改造された事例が多数存在する。また、貨車からトロッコ列車などに改造された事例や、西日本旅客鉄道(JR西日本)では223系1000番台のクハ222-1007・1008新快速の有料座席車用として改造した事例があり、これもある種の格上げと言える。珍しい例では格下げ車両が多かった近郊型グリーン車で、サハ165からサロ110-501に格上げ改造された車両がある。

私鉄においては、東武鉄道300系・350系電車は導入時点では運用列車の種別が急行であったが、後に運用列車が特急に格上げされたことにより特急用車両となった。ただし300系・350系電車は接客設備や速達性が他の特急用車両より劣るため、急行時代の料金が適用されている。名古屋鉄道ではキハ8000系気動車は元来は準急「たかやま」で使用されたため、準急用であったが、特急形に近い接客設備を持つことから1975年に特急「北アルプス」に格上げされたため、実質的に特急用として使用された。西日本鉄道では1000形電車は元来は急行用であったが、急行の特急格上げにより、2000形電車が登場するまで実質上の特急用車両として使われた。

大掛かりな格上げ改造を伴う事例としては、3扉ロングシート通勤車である西武101系電車を購入し、2扉リクライニングシート化した秩父鉄道6000系電車有料急行用車両や、近畿日本鉄道が買収した奈良電気鉄道より引き継いだ一般車を京都線の有料特急設定に際して格上げ改造した680系・683系電車が存在する。一般型車両を改造して観光列車化したものでは近鉄2013系「つどい」南海2200系「天空」、有料特急列車に改造したものでは東武日光線快速用車両であった6050系634型電車「スカイツリートレイン」や近鉄6200系を16200系「青の交響曲(シンフォニー)」などの事例が存在する。

日本国外では、韓国の韓国鉄道公社では日本の普通列車と同種の列車である通勤列車の廃止・削減で余剰となった9501系気動車ムグンファ号に転用されるケースが現れている。窓の大型化、座席のリクライニングシート化など優等列車に適した接客設備に改造している。

バス[編集]

日立電鉄の観光格下げ車。ハイデッカーから路線バスへの格下げは異例の存在。

バスにおいては観光バスに運賃表示器・運賃箱などのワンマン運転用の機器と方向幕を設置し、路線バスに転用するケースが地方のバス事業者で見受けられた。かつては観光バスも路線バスも標準床が主流であり、観光バスのグレードアップにつれて見劣りのする車両は路線バスに転用し、中には扉を中央もしくは後部に設置した車両も存在した。しかし、観光バスのハイデッカー化が進むと一般路線では使いづらくなり、ハイデッカー車に扉を増設した格下げ改造車は極めて少なく、バリアフリーに難があることから最近では高速バスに転用されるケースが多い。

参考文献[編集]

脚注[編集]

  1. ^ PHP研究所 梅原淳『雑学3分間ビジュアル図解シリーズ 特急列車のすべて』p. 78
  2. ^ なお、クハ455は改造当初リクライニングシートが残されていたが、急行列車への運用に就くことはなく、後年セミクロスシートに再改造が行われた。
  3. ^ 秀和システム 藤崎一輝『仰天列車 鉄道珍車・奇車列伝』p.154
  4. ^ 小田急の準特急は車内設備の格差によるもので週末に運行していた。また、平日には料金不要列車に使用された。
  5. ^ なお、「開運号」は京成の座席指定制列車としては、「スカイライナー」の前身にあたるが、運行形態などは大幅に異なる。スカイライナー#戦後復興期も参照されたい。
  6. ^ 鉄道ジャーナル社『鉄道ジャーナル』No.350 p.83
  7. ^ イカロス出版『J-train』Vol.25 p.27
  8. ^ 所属車両の約7割を2ドア転換クロスシート車を占めていた時期があった。
  9. ^ 5700系・5300系 - 名古屋鉄道
  10. ^ 後にキハ40形330番台・キハ48形1330番台に格下げされた。
  11. ^ 元は廃線になった高千穂鉄道から購入したトロッコ風気動車TR-400形気動車をJRに車籍編入したもので、厳密な意味での格上げとは異なる。
  12. ^ 後に冷房化してスロ62形・スロフ62形に改造された。

関連項目[編集]