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根菜類

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

根菜類(こんさいるい、: root vegetables, root crops[1])とは、地中にある部分を食用部とする野菜のことであり、ダイコンカブニンジンゴボウレンコンサツマイモジャガイモなどが含まれる。根野菜(こんやさい)、根物(ねもの)ともよばれる。食用部は必ずしも植物学上の「」とは限らず、地下茎根茎塊茎球茎鱗茎)を食用部とするものも多い。

定義

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野菜のうち、地下茎など地中にある部分を食用部位とするものは、根菜類とよばれる[2][3][4]。根野菜[5]や根物[6]ともよばれる。

野菜の定義は国や分野によってやや異なるが、日本ではふつう草(草本植物)に由来し主食とはされず低加工で利用されるものを野菜としている[4][7]ジャガイモサツマイモヤムイモヤマノイモなど)、タロイモサトイモなど)、キャッサバなどは根菜類としても扱われるが[8][9][10]、主食とされたり加工品原料とされることも多く、「いも類」として野菜とは別に扱われることもある[11][9][12][10]

テーブルビートの根の断面

食用部がである場合、幼根に由来する主根が肥大した多肉根であるもの(ダイコンニンジンゴボウなど)と、側根や不定根が肥大した塊根であるもの(サツマイモキャッサバなど)がある。多肉根では、主根の上部に続く茎(胚軸)も一体化して肥大していることがあり、一般的なダイコンでは食用部の一部、カブでは食用部の大部分が胚軸に由来する[13][14]。ダイコンなどでは肥大部の上部(おもに胚軸部)が地上に出ることがあり、この性質は抽根性とよばれる[15]。一方、ニンジンやゴボウでは根の収縮によって下方向への牽引作用があり、浅植えであっても多肉根は地中に引き込まれる[15]。また、ダイコン、カブ、ゴボウ、サツマイモなど多くでは維管束木部が肥大化するが(木部肥大型)、ニンジンやパースニップでは師部が肥大化し(師部肥大型)、テーブルビートクズイモでは形成層が同心円状に形成されて肥大する(環状肥大型)[13][16]。野菜栽培において、多肉根では岐根、曲根、裂根のような外形的障害、す入りや空洞症のような内部障害が生じることがあり、大きな問題になることがある[16]

食用とされる地下茎の中には、根茎であるもの(レンコンショウガなど)、塊茎であるもの(ジャガイモなど)、球茎であるもの(サトイモなど)が含まれる[17][18]。ただし、これらの区分は必ずしも一定したものではなく、塊茎と球茎を分けないこともある[19]鱗茎であるもの(タマネギニンニクラッキョウなど)もあるが[17][18]、鱗茎の主体は特殊化した葉(鱗茎葉)であり、これらは葉菜類(葉茎菜類)として扱われることも多い[15][8][20]。また、ネギニラとともに「ネギ類」[17]や「鱗茎菜類」[18]として他の野菜と分けられることもある。

生産分野では、根菜類のうち、ダイコンニンジンゴボウなど幼根から成長した主根が肥大するもの(植物形態学では多肉根)を直根類ジャガイモサツマイモサトイモヤマイモショウガなど幼根に直接由来しない根や地下茎が肥大したもの(植物形態学では塊根塊茎球茎根茎など)を塊根類または塊根・塊茎類、球根類として区別することがある[17][15][16][21][22]。直根類は種子から栽培する必要があるが、塊根類は栄養繁殖が可能であり、種子繁殖の必要がない[21]。一般的に、直根類の根には水分や還元糖・非還元糖が多いが、塊根類の地下器官にはデンプンなど多糖類が多い[13][15]

おもな根菜

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根菜類に分類されることがある野菜には、下表のようなものがある[3][17][11][20][18][8]。***は日本における指定野菜(消費量が多く、収穫量と出荷量が毎年調査される)、**は特定野菜(指定野菜に準ずる野菜; 特定地域に限るものもある)、*は地域特産野菜生産状況調査(調査は隔年)の対象種である(2024年現在)[23][24]。利用部位の種類(多肉根塊根根茎球茎塊茎鱗茎)によって分けているが、上記のようにこの区分は必ずしも一定ではなく[25][26]、また球茎と塊茎を分けないこともある[19]

画像 名称[英名] 分類群[17][11][27][28] 根菜とされる器官
[その他の利用部位]
用途[食用以外の利用]
ダイコン[17]***[daikon
ハツカダイコン[17]*[radish
アブラナ科ダイコン属
Raphanus sativus
多肉根
スプラウト、葉、果実][17]
生食、煮物漬物など[17][29][30]
カブ[17]**
turnip
ハクサイコマツナなどと同種
アブラナ科アブラナ属
Brassica rapa
多肉根
[葉][17][31]
煮物、蒸し物、漬物など[31]
スウェーデンカブ[17](ルタバガ)
rutabaga
セイヨウアブラナと同種
アブラナ科アブラナ属
Brassica napus
多肉根[17]
生食、煮物など
飼料[17][32]
セイヨウワサビ[17][33]*(ワサビダイコン、ホースラディッシュ)
horseradish
アブラナ科セイヨウワサビ属
Armoracia rusticana
多肉根[17] 薬味粉わさびなど[34]
マカ[35]
maca
アブラナ科マメグンバイナズナ属
Lepidium meyenii
多肉根[35] 発酵飲料など
[生薬][35][36]
テーブルビート[17](カエンサイ)
beetroot
テンサイフダンソウなどと同種
ヒユ科フダンソウ属
Beta vulgaris
多肉根[17] 生食、炒め物、煮物など[17][37]
ニンジン[17]***
carrot
セリ科ニンジン属
Daucus carota
多肉根
[葉、種子][17][38]
生食、炒め物、煮物、揚げ物、ジュースなど[17][38]
パースニップ[27][17][39](アメリカボウフウ、サトウニンジン)
parsnip
セリ科アメリカボウフウ属
Pastinaca sativa
多肉根[17] 煮物など[17]
セルリアック[17]
celeriac
セロリと同種
セリ科セロリ属
Apium graveolens
多肉根[17] 生食、煮物など[17]
パセリ[40](オランダネゼリ、根用パセリ)
parsley
セリ科オランダミツバ属
Petroselinum crispum
多肉根
[葉]
煮食、スープなど[40]
ゴボウ[17]**
edible burdock
キク科ゴボウ属
Arctium lappa
多肉根
[葉][17]
炒め物、煮物など[17][41]
モリアザミ[17][注 1](ゴボウアザミ、ヤブアザミ) キク科アザミ属
Cirsium dipsacolepis
多肉根[17] 漬物など[17][42]
バラモンジン[27][17]サルシファイ
salsify
キク科バラモンジン属
Tragopogon porrifolius
多肉根[17] 煮物など[17][43]
キバナバラモンジン[18][44](キクゴボウ)
black salsify
キク科フタナミソウ属
Scorzonera hispanica
多肉根
[葉][18][44]
煮物など[44]
レレン[45][46](トビータンブー)
lerén
クズウコン科
Goeppertia allouia
塊根[45][46][47] 煮る、焼く、デンプン源など[45][47][48]
キャッサバ[49][50][注 2]
cassava
トウダイグサ科キャッサバ属
Manihot esculenta
塊根[51] 煮物、焼き物、蒸し物、デンプン、タピオカ、アルコール原料など[51]
クズ[52]
kudzu
マメ科クズ属
Pueraria lobata
塊根、葉、花[53][54] デンプン原料(葛粉)など
[薬用、飼料、繊維][54]
クズイモ[17][35][注 3](ヤムビーン)
yam bean
マメ科クズイモ属
Pachyrhizus erosus
塊根[17] 生食、煮物、天ぷらなど[17][55]
ハヤトウリ[56]
chinchayote
ウリ科アレチウリ属
Sicyos edulis
塊根[56]
[果実、茎葉][57]
生食、茹でる、シチューなど
[生薬、飼料、繊維][57]
サツマイモ[4][9][注 2]**(カンショ)
sweet potato
ヒルガオ科サツマイモ属
Ipomoea batatas
塊根
[葉][11]
煮物、焼き芋、天ぷら、デンプン・アルコール原料など
[飼料][11][58]
イモゼリ[59]
arracacha
セリ科
Arracacia xanthorrhiza
塊根[60] 生食、煮る、焼く、揚げるなど[59][60][61]
ヤーコン[17]
yacón
キク科ヤーコン属
Smallanthus sonchifolius
塊根、塊茎
[葉][17][35]
生食、煮物、炒め物など[17]
ショクヨウカンナ(アチラ)[35][62][63]
edible canna
カンナ科カンナ属
Canna edulis
根茎[62] デンプン源など
[飼料][62][63][64]
ショウガ[4][18][注 4]**
ginger
ショウガ科ショウガ属
Zingiber officinale
根茎[18]
[葉、芽][25]
薬味、香辛料、漬物など
[生薬][25]
ナンキョウ(ガランガル)[65]
greater galangal
ショウガ科ハナミョウガ属
Alpinia galanga
根茎
[花、種子][65]
香辛料など
[生薬][65]
ウコン(ターメリック)[66]
turmeric
ショウガ科ウコン属
Curcuma longa
根茎[66] 香辛料など
[生薬、染料][66]
クズウコン[67][68]
arrowroot
クズウコン科クズウコン属
Maranta arundinacea
根茎[67] 煮る、焼く、デンプン源など
[生薬][67][69]
ハス**(レンコン)[4]
lotus root
ハス科ハス属
Nelumbo nucifera
根茎
[種子][18][17][70]
煮物、炒め物、天ぷら、漬物など[17][70]
ワサビ[17][注 4]
wasabi
アブラナ科ワサビ属
Eutrema japonicum
根茎
[葉][17]
薬味[71]
タロイモ[注 2]taro[72][73]
 サトイモ[4]***、ハスイモ[74]など
サトイモ科サトイモ属[注 5]
Colocasia spp.
球茎
葉柄[73][75]
煮物、汁物、田楽など[17]
ゾウコンニャク[76]
elephant's foot
サトイモ科コンニャク属
Amorphophallus paeoniifolius
球茎[77]
[種子][76]
茹でる、カレーなど
[生薬][76]
クワイ[17]*
arrowhead
オモダカ科オモダカ属
Sagittaria trifolia
球茎[78][79] 煮物、茶碗蒸しなど[17][80]
タシロイモ[81]
Polynesian arrowroot
タシロイモ科タシロイモ属
Tacca leontopetaloides
塊茎[81] デンプン[26]
ヤムイモ[注 2][4](ヤム)yam
 ナガイモヤマノイモ**[注 6]ダイジョトゲドコロカシュウイモゴヨウドコロミツバドコロキイロギニアヤムシロギニアヤムクシクシなど[11][4][84]
ヤマノイモ科ヤマノイモ属
Dioscorea spp.
塊茎(担根体[注 7]
むかご
とろろ、茹でる、焼く、揚げるなど[17][84][89]
ショクヨウガヤツリ[90]
chufa
カヤツリグサ科カヤツリグサ属
Cyperus esculentus
塊茎[90] 煮物、油など[90]
オオクログワイ[91][注 8]
Chinese water chestnut
カヤツリグサ科ハリイ属
Eleocharis dulcis
塊茎[91] 生食、煮物、デンプンなど[91]
アメリカホドイモ[93][94][95](アピオス)
American potatobean[96]
マメ科Apios
Apios americana
塊茎[93] 煮る、焼く、揚げるなど[95]
オカ[97]
oca
カタバミ科カタバミ属
Oxalis tuberosa
塊茎
葉柄[97]
煮物など[97]
マシュア[35](アヌ[98]
mashua
ノウゼンハレン科ノウゼンハレン属
Tropaeolum tuberosum
塊茎[35] 揚げる、焼くなど
[生薬][35]
ウルーコ[99](オユコ[35]、ユルカ[100]
ulluco
ツルムラサキ科ウルルクス属
Ullucus tuberosus
塊茎[99] 生食、煮物など[99][101]
マウカ[102]
mauka
オシロイバナ科オシロイバナ属
Mirabilis expansa
塊茎
[葉][103]
スープ、シチューなど
[飼料][103]
ジャガイモ[4][注 2]***(バレイショ)
potato
ナス科ナス属
Solanum tuberosum
塊茎[104] 煮物、蒸し物、揚げ物、デンプン・アルコール原料など[11][104]
チョロギ[17]
Chinese artichoke
シソ科イヌゴマ属
Stachys affinis
塊茎[17] 漬物、煮物、炒め物など[17][105]
イモジソ[106] シソ科コリウス属
Coleus rotundifolius
塊茎
[葉][106]
スープ、カレーなど
[生薬][106]
キクイモ[17]
Jerusalem artichoke
キク科ヒマワリ属
Helianthus tuberosus
塊茎[107] 生食、煮物、漬物など
[飼料][17][107][108]
タマネギ[4][注 9]***[onion
エシャロット[注 10]*[shallot
ヒガンバナ科ネギ属
Allium cepa
鱗茎[17] 生食、煮物、炒め物、揚げ物、漬物など
[薬用][110][111]
ニンニク[4][注 9]**
garlic
ヒガンバナ科ネギ属
Allium sativum
鱗茎
[茎、葉][17][112]
薬味、生食
[薬用][17][112][113]
ラッキョウ[9][注 9]**
Chinese onion
ヒガンバナ科ネギ属
Allium chinense
鱗茎[17] 漬物、煮物など
[薬用][114][115]
ユリ[17]*(ユリ根
lily
ユリ科ユリ属
Lilium spp.[注 11]
鱗茎[17] 煮物、酢の物など[17]
タケノコ[4][注 12]
bamboo shoot
イネ科
マダケ属など[注 13]
地下茎からの若茎[121] 生食、煮物、天ぷら、メンマなど[121][122]

ギャラリー

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脚注

[編集]

注釈

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  1. ^ 「ヤマゴボウ」とよばれることもあるが、標準和名としてのヤマゴボウヤマゴボウ科の全く別の植物であり、有毒種である。
  2. ^ a b c d e 多量のデンプンを蓄積し、主食やデンプン原料とされることもあるため、「イモ類」として野菜から除かれることもある[9][12]
  3. ^ 南米で利用されている近縁種としてアヒパ(Pachyrhizus ahipa)がある[35]
  4. ^ a b 日本標準商品分類では「香辛野菜及びつまもの」に分類される[8][23]
  5. ^ サトイモ属以外の Xanthosoma、クワズイモ属(Alocasia)、キルトスペルマ属(Cyrtosperma)などのものもタロイモとよばれることがある[72]
  6. ^ 日本の作物統計などではヤマノイモの名でまとめられているが[8][82]、日本で栽培されているものはほとんどナガイモ(Dioscorea polystachya)であり、狭義のヤマノイモ(自然薯、Dioscorea japonica)の多くは野生品である[83]
  7. ^ ヤマノイモ属の「イモ」は、維管束の配列や発生過程から地下茎が肥大したもの(塊茎)と考えられているが、葉を付けず全面に根を生じるため典型的な塊茎とは異なる[84][85][86][87]。そのため、担根体ともよばれるが[85][86][87]ヒカゲノカズラ綱イワヒバ属ミズニラ属に見られる担根体とは異なる構造である[88]
  8. ^ 日本には近縁種のクログワイ (Eleocharis kuroguwai) が分布しており、水田雑草となっているが、オオクログワイと同様に塊茎が食用に利用されることがある[92]
  9. ^ a b c 根菜として扱われることもあるが、可食部である鱗茎の主体は特殊化した葉(鱗茎葉)であり、葉菜(葉茎菜類)として扱われることも多く[15][8][20]、またネギ類[17]や鱗茎菜類[18]として他と分けられることもある。
  10. ^ エシャロット(エシャレット[8]、シャレット[18]、シャロット[27])は、本来はタマネギの1変種(Allium cepa var. aggregatum)であるが[27]、日本ではラッキョウを軟白栽培したものがエシャロットとよばれている[109]
  11. ^ 日本ではオニユリコオニユリヤマユリが、中国では オニユリ、ハカタユリLilium davidii が栽培・利用される[17][116]
  12. ^ 葉茎菜に分類されることが多いが[18][8]、根菜に分類している例もある[4]
  13. ^ 日本では主にモウソウチク (Phyllostachys edulis)、他にマダケ (Phyllostachys reticulata)、ハチク (Phyllostachys nigra) が栽培されているが、チシマザサ (Sasa kurilensis; ネマガリダケ[117]) なども食用とされる[118]。中国ではマダケ属 (Phyllostachys)、トウチク属 (Sinobambusa) などが[119]、東南アジアではホウライチク属 (Bambusa)、マチク属 (Dendrocalamus)、ダイマチク属 (Gigantochloa)、Lelebaヒイランチク属 (Schizostachyum) など[120]が利用される。

出典

[編集]
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関連項目

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外部リンク

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