カヤツリグサ属
カヤツリグサ属 | |||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
カヤツリグサ(Cyperus microiria)
| |||||||||||||||||||||
分類(APG III) | |||||||||||||||||||||
| |||||||||||||||||||||
種 | |||||||||||||||||||||
|
カヤツリグサ属 (Cyperus) は、カヤツリグサ科の主要なグループのひとつである。
特徴
[編集]カヤツリグサ属は、単子葉植物綱カヤツリグサ科の代表的な属である。多くは水湿地に生えるが、海岸に生育するものもあり、畑の雑草となるものもある。少数ながらパピルスのような有用種もある。世界の熱帯から亜熱帯を中心に分布し、温帯まで広がるものがある。約700種が知られている。日本からは40ほどの種や変種、それに自然雑種が知られている。外来種もいくつか知られている。また在来種とされている種でも、史前帰化植物ではないかと考えられているものもある。
小さいものは高さ数cmのものから、大きいものは4mを越えるものまである。一年性のものは地下部があまり発達せず、多年生のものでは塊状の地下部をもつものや、匍匐茎を発達させるものもある。いずれにせよ、根元に数枚の葉をもち、そこから枝分かれしない花茎が上に伸び、その先端には数枚の苞に囲まれて花序が生じる。茎の途中には節がない。
花序は多数の小穂が軸の回りに並んでつくものが単位となって、軸が長ければブラシ状になり、短ければ掌状、あるいは頭状になる。それがいくつも茎の先端から出る。また、それを支える柄が短く、全体が花茎の先端に頭状に集まるものもある。
小穂は鱗片が2列に並んだもので、多くの場合、雄しべと雌しべだけを備えた花が1枚の鱗片の下に収まり、1つの小穂は多数の花からなるのが普通である。花の数が少ないものもあり、ヒメクグ類では二つしか花を含まない。ホタルイ属などにみられる花被に由来する構造などはみられない。果実は三角形の断面を持つかやや扁平で、柱頭は細長く伸びて基部がふくらんだりはしない。
小穂は偏平な楕円形から線形のものが多い。多くのものでは熟した果実が鱗片と共に脱落し、後に小軸が残る。ただし、例外もある。ムツオレガヤツリは小穂の小軸が鱗片1枚毎に折れるようになっている。イヌクグやヒメクグでは、小穂の基部に関節があって、小穂まるごと脱落する。
形と生態
[編集]全体の姿は種によって大きく異なる。葉の形になるのは、花茎の根元の根出葉と、花茎の先端の苞葉である。両方が少しずつあるものもあれば、どちらかがよく発達するものもある。
根出葉が発達して、苞がほとんど目立たないものは、裸地に生えるハマスゲなどがある。カヤツリグサでは若いときは根出葉が発達するが、花茎が伸びると次第に苞の方が目立つようになる。メリケンガヤツリは、大型種で、苞も発達するが、根出葉もとても大きくなる。
苞の方がよく発達するタイプもある。シュロガヤツリは、極端に苞だけが発達するもので、根出葉は葉身がなく、苞だけが多数出て、茎の一本それぞれが、ヤシの木の樹形のようになったものである。
根出葉も苞も発達せず、茎だけになったものもある。日本ではシチトウがこれで、細長い茎だけが浅い水底から抜き出て並ぶ形になる。パピルスもこのタイプで、先端に伸びる髪の毛状の房は、すべて花軸である。
多くの種が湿地に生育する。日本では水田やその周辺で多くの種を見ることができる。大型種は水辺に大きな群落を作るものもある。シチトウは河口の干潟周辺に群落を作り、沖縄ではマングローブの周辺に顔を出す。
より乾燥した土地に生育するものもある。ハマスゲは乾燥に強く、地下に塊状の地下茎をもち、匍匐茎を横に伸ばすので、やっかいな雑草である。
分類
[編集]カヤツリグサ属はその範囲のとり方にいくつかの説がある。広義のカヤツリグサ属の中には、小穂が一花で、小穂がその付け根で脱落するヒメクグ属 (Kyringa)、小穂が鱗片一枚分ずつ関節を持って折れるムツオレガヤツリ属、鱗片の中の果実が左右から偏平になるカワラスガナ属など、独立した属として認められることもあるものを多数含む。近年は分子系統に基づく解析も行われており、旧来の細分属は系統を反映しないという判断もあり、またカヤツリグサ属が側系統であるとの判断があり、ヒンジガヤツリ属など数属を含める説が浮上している。
以下に日本産のものを中心に代表的なものを上げる。下位分類は旧来のものによる。
カヤツリグサ属 Cyperus
- (狭義のカヤツリグサ属 Cyperus)
- ツクシオオガヤツリ C. Ohwii Kuekenth.
- カミガヤツリ(パピルス) C.papyrus L.
- シュロガヤツリ C. alternifolius L.
- カンエンガヤツリ C. exaltatus Retz. var. iwasakii (Makino)
- オニガヤツリ C. pilosus Vahl
- クグガヤツリ C. compressus L.
- コアゼガヤツリ C. haspan L.
- ヒメガヤツリ(ミズハナビ) C. tenuispica Steud.
- カヤツリグサ C. microiria Steud.
- コゴメガヤツリ C. iria L.
- ウシクグ C. orthostachyus Franch. et Savat.
- ヒナガヤツリ C. flaccidus R. Br.
- タマガヤツリ C.difformis L.
- メリケンガヤツリ C. eragrostis Lamark
- ヌマガヤツリ C. glomeratus L.
- シチトウ C. monophyllus Vahl
- ハマスゲ C. rotundus L.
- (ミズガヤツリ属 Juncellus)
- (カワラスガナ属 Pycereus)
- (イヌクグ属 Mariscuc)
- イヌクグ C. cyperoides (L.) O. Kuntze
- (ムツオレガヤツリ属 Toulinium)
- ムツオレガヤツリ(キンガヤツリ) C. odoratus L.
- (ヒメクグ属 Kyllinga)
- ヒメクグ C. brevifolius (Rottb.) Hassk. var. leiolepis (Franch. et Savat.) T. Koyama
脚注
[編集]参考文献
[編集]- 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他 『日本の野生植物 草本II 離弁花類』 1982年、平凡社。
- 北村四郎・村田源・小山鐵夫 『原色日本植物図鑑 草本編(III)・単子葉類(改定49刷)』 1987年、保育社。