弱者男性

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ファイル:社会.gif
NPO法人日本弱者男性センターが発表した立体作品『社会』。正面から眺めると「男尊女卑」と読めるが、鏡に映すと「女尊男卑」の文字が浮かび上がる。

クリエイティブコモンズに基づく著作権者表示:平田智剛 who says that "立体作品(→社会)はある角度(→フェミニズム)から眺めれば『男尊女卑』かもしれないが、【鏡】に映すことで別の角度(→マスキュリズム)から眺めれば、同時に『女尊男卑』たり得る。社会の多面性を無視し、女性差別のことしか取り上げない政府・メディアや『日本は男性上位の社会』と語る社会学者や活動家は視野狭窄であり、『【鏡】を置かないという男性差別』をしており、その結果として弱者男性を無意識のうちに否定し、また偏見を助長している".

弱者男性(じゃくしゃだんせい)とは、独身貧困障害など弱者になる要素を備えた男性のことである[1]。  2015年頃の日本で、未婚で恋人もいない非正規雇用の貧困中年男性の意味でキモくて金のないおっさん(KKO)と自称する男性たちがいたが、KKOは差別的な用語だとして、同じような意味で代わりに「弱者男性」という用語が使われるようになった。

女性をあてがえ論[編集]

弱者男性論はしばしば、反フェミニズムや反リベラリズムミソジニー(女性蔑視)とセットになる[2]。その一例として「女性をあてがえ論」があり、これは制度設計によって弱者男性に女性をあてがえという主張である[2][3]。また、それを少し弱めた主張として、「勝ち組の強者女性は負け組の弱者男性を積極的にケアすべきだ」という主張がなされることもある[2]

また、弱者男性論についてネット上で語られることが多い言葉が上昇婚であり、中には「高年収な女性は下方婚すべきである」または「上昇婚を望む女性はわがままで分不相応だ」といった主張もある[4]

評論・見解[編集]

NPO法人日本弱者男性センターの平田智剛は、2022年11月19日の国際男性デーに実施された男性専用車両イベントに合わせ「社会」と名付けられた作品(記事内右上に画像を掲載)を公開し、また「女性差別のことしか取り上げない政府やメディア、また『日本は男性上位の社会だ』と叫ぶ人たちは視野狭窄であり、その結果として弱者男性を無意識のうちに否定し、偏見を助長している」と声明を発表した[5]

批評家の杉田俊介は、「弱者」の定義は曖昧だとしつつ、その構成要素の候補として、労働の非正規性や収入、容姿、コミュニケーション能力、パートナーの有無などを挙げている[2]

批評家のベンジャミン・クリッツァーは、そのつらさの内実として、経済的な困窮もありつつも、女性パートナーの不在による孤独感や承認の欠如が大きいと指摘している[6]

評論家の藤田直哉は、マジョリティであり強者であるとされる「男性」の中に存在する恵まれない者や不幸な者を提示しているのが弱者男性論であると主張している[7]

批評家の斎藤環は、社会は弱者男性に対して温かくはなく、「弱者男性の安楽死を合法化せよ」という差別的な言説がネット上で飛び交っているとしている[1]。一方で、弱者男性の怨嗟の矛先はさらに弱い立場の者に向かい、結果的に弱者切り捨てを促進してしまっていると指摘している。

実業家のトイアンナは、弱者男性に対するはてな匿名ダイアリーに寄せられた「弱者男性は弱者男性同士でセックスすればいい」「弱者男性の安楽死を合法化しよう」「正直弱者男性のことなんかどうでもいいし、死ねばいい」などの意見を取り上げ、「言語道断の差別である」と論じた[1]。また強者の男女は弱者男性を「実力がないために貧困に陥った」「努力してこなかった人」として無視すると述べた[1]。そして、「男らしさ女らしさ」の呪縛からの解放が必要であると論じている[1]

フリーライターの鎌田和歌は、弱者男性論の中核となっている識者の中には年収の高い男性もおり、強者男性が弱者男性論を煽っている面があることに疑問を呈している[4]。その上で、社会問題の解決に至る議論をネット上に求める難しさを指摘している。

ライターのすぎたとおるは、発達障害うつ病を患った女性作家がしばしば「理解のある彼(夫)くん」を登場させるため、「弱者女性は理解のある彼(夫)くんに救われるが、弱者男性は誰にも救われない」と弱者男性界隈で定期的に炎上するが、これを生存者バイアスであるとし「理解のある彼(夫)くんと出会えなかった弱者女性は生還できないがゆえにレポートがない」と評した[8]

経済アナリストの立木信は、2022年現在の中年男性はちょうど就職氷河期世代にあたり、1991年バブル崩壊後の就職難であった世代であるとしている。工場は経済のグローバル化で海外に移転し、外国人労働者が増え、女性の社会進出も活発したしわ寄せが男性の若年層の非正規雇用に目立つようになったとしている。そして、これまでは「負け惜しみ」「男らしくない」と言われ口に出すこともできなかった弱者男性の本音が「真の被害者は弱者男性でもあり、国家や社会からの制度的支援が何もない」といった主張という形で世に出てきたとしている。これは日本に限らず、弱者男性を支援する「メンズリブ」運動が世界で起きているとした[9]

実業家の西村博之は「弱者男性」問題について「誰からも好かれていないし、期待されていないおっさんをどうにかしないと社会に悪影響があるよね」と評し個人的にそういう人を「無敵の人」と呼んでいるとし、「家族や恋人ができたらいいよね」という解決策があるがそれは現実的に難しく、そこで注目したいのが、南米ベネズエラの食糧危機であり、ニコラス・マドゥロ大統領は、貧困地域に食料としてウサギを配布した。しかし国民はウサギをペットとして名前を付け、一緒に寝てかわいがっていて、全然食べなかった。人は、弱い存在から頼られることで幸せを感じたりする生き物なので、「弱者男性」にウサギを配ると「自分が社会からいなくなったら、ウサギの世話をする人がいなくなって、ウサギがかわいそう」ってことで、ウサギの世話をし続けるために社会に居続けてくれると持論を展開した[10]

脚注[編集]

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出典[編集]

  1. ^ a b c d e 日本の被差別階級「弱者男性」の知られざる衝撃実態…男同士でケアすればいいのか”. 現代ビジネス (2021年5月21日). 2022年2月21日閲覧。
  2. ^ a b c d 「真の弱者は男性」「女性をあてがえ」…ネットで盛り上がる「弱者男性」論は差別的か?”. 文春オンライン (2021年4月27日). 2022年2月21日閲覧。
  3. ^ 「弱者男性の安楽死を合法化せよ」明らかな差別的発言がまかり通る日本のヤバさ”. PRESIDENT Online (2022年2月9日). 2022年2月21日閲覧。
  4. ^ a b 女性の雇用制限が少子化対策になる?炎上ツイートから見る「弱者男性論」”. DIAMOND online (2021年5月8日). 2022年2月21日閲覧。
  5. ^ 作品「社会」について”. NPO法人日本弱者男性センター (2022年11月23日). 2022年11月24日閲覧。
  6. ^ 「フェミニズム叩き」「女性叩き」で溜飲を下げても、決して「幸せにはなれない」理由”. 現代ビジネス (2021年4月3日). 2022年2月21日閲覧。
  7. ^ (藤田直哉のネット方面見聞録)自己の解放へ向かう、新しい「弱者男性」論”. 朝日新聞DIGITAL (2021年5月15日). 2022年2月21日閲覧。
  8. ^ 理解のある彼くん問題と、暴力的な男の方がモテる問題について”. ATLAS (2021年3月25日). 2022年7月9日閲覧。
  9. ^ 「弱者男性」がクローズアップされるその本質的な理由とは何か(1/2ページ)”. ウチコミ!タイムズ (2022年1月21日). 2022年7月11日閲覧。
  10. ^ 2ch創設者ひろゆき提言「キモくて金ないおっさんにウサギを配ろう」(2/2ページ)”. イザ! (2018年7月9日). 2022年6月19日閲覧。

関連項目[編集]

属性[編集]

  • 無敵の人 - 社会的に失うものがないため犯罪を犯すことに抵抗がない人。
  • 子供部屋おじさん - 子供部屋で成人後も暮らす中年男性のこと。
  • 喪男 - モテない男性を表す2ちゃんねる用語。
  • 絶食系男子 - 女性との交際がない男性のこと。
  • インセル - 自身に性的な経験がない原因は対象である相手の側にあると考える人のこと。
  • 就職氷河期 - 貧困に陥った中年男性はだいたいこの時代に就職活動し、就職難を自己責任とされた。
  • 8050問題 - 親が責任を持って面倒を見るべきという価値観が多い中、親も子も高齢化して孤立化している問題。
  • 表現の自由戦士 - 表現の自由を重視し、それらの規制に反対する者を指すインターネットスラング。
  • イデナム - 反フェミニズムの男性を指す韓国のスラング。

思想[編集]

文学[編集]