嘘松
嘘松(うそまつ)とは、TwitterなどのSNSに投稿された真偽不明の話や、その投稿者を指すインターネット・ミームである[1]。この名称は、2015年から放映されたアニメ『おそ松さん』に由来するという[1][2]。
起源[編集]
J-CASTニュースやAll Aboutによれば、「嘘松」というインターネット・ミームが広まったのは2016年頃だという[3][4]。一説によると、非現実的な「目撃談」をTwitter上で発信した人物がいて、そのアカウントが『おそ松さん』のファンだったことから「嘘松」という表現が誕生したのだという[3]。こうした情報を発信しがちな利用者が本当に『おそ松さん』のアイコンを使用していたとか[1]、『おそ松さん』アイコンを好むという印象[5]、によってこうしたミームが誕生したともいう[2][4]。
やがて、あまりにもエキセントリックでいかにも作り話っぽかったり、真偽が定かでなかったり、明らかに大きな誇張があるような、多くの人からみて到底信じられないようなエピソードを、実話や体験談・目撃談として発信する利用者や、その発信そのものを「嘘松」と呼ぶようになった[1][3]。J-CASTニュースが実施したアンケートでは、「嘘松を何度も目撃したことがある」との回答が全173票のうち73パーセントにのぼったという[3]。
特徴[編集]
「嘘松」が発信する「体験談」には、しばしばドラマ風の台詞や人物が登場する[1][5]。こうした情報はしばしば「知人から聞いた話」や「立ち聞きした話」になっていて、「あまりにできすぎた」話であるにもかかわらず、確実に嘘だと断定することが難しい[4]。
分類[編集]
傾向[編集]
キーワード[編集]
具体例[編集]
電車内で迷惑な男がいて、まくしたてて注意したら逃げた。乗車していたみんなが拍手した。 — ねたらぼ2017年5月7日付「ねっと用語知ったかぶり」[2]
分析[編集]
承認欲求が人を「嘘松」に駆り立てる、との指摘がある[3]。ロシアのコンピュータセキュリティ業者カスペルスキーが、世界18か国で行った調査(2017年1月発表)によると、回答者の12パーセントが、SNSで「いいね」をもらうために架空の体験談を投稿すると回答した[3]。
成蹊大学客員教授でITジャーナリストの高橋暁子[7]は、注目を浴びるために「嘘松」が発信した「嘘」「妄想」「デマ」に「騙された」利用者は、「嘘松」に不快の念を抱くことがあるという[4]。
フリーライターの井上トシユキは、「話を『盛る』ということは日本のネット文化の、ある意味『基本』なんです」と指摘する[3]。井上によれば、古くはプロレス、最近ではユーチューバーなどもこうした文化の影響下にあり、嘘とわかっていながら話にのっかったり、それにツッコミをいれたりしながら、観客としてそれらを受け入れる楽しみ方があるのだという[3]。
類似・関連表現[編集]
- エアプ - 2017年にガジェット通信による「ネット流行語大賞」にノミネートされたスラング。実際には経験がないのに、聞きかじった話を基にして知ったかぶりをする行為やその人を指すスラング。もともとは「エアプレイ」の略で、ゲームをプレイしていないのにプレイしたかのような話をするものを指していた[8]。
- 誇張しのぶ - 『鬼滅の刃』に登場するキャラクター「胡蝶しのぶ」の名前をもじったもの[6]。
- And Then The Whole Bus Clapped(するとバスの乗客が全員拍手喝采した) - 英語圏のSNSで見られる嘘松的な投稿を指す言葉[9]。
脚注[編集]
出典[編集]
- ^ a b c d e 朝日新聞出版、『知恵蔵mini』、2017年10月5日、「嘘松」(コトバンク版)。2021年8月11日閲覧。
- ^ a b c ねとらぼ(ITmedia)、2017年5月7日付、「ねっと用語知ったかぶり」、その話どこまでホント? Twitterにはびこる奇病「嘘松」とは。2021年8月11日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o J-CASTニュース(ジェイ・キャスト)、2018年3月18日付、なぜ「嘘松」はなくならない? 日本ネット文化の「盛る」DNA。2021年8月11日閲覧。
- ^ a b c d e All About、SNS用語集、2019年7月5日付、高橋暁子「嘘松」の意味とは?ネットで広がる嘘投稿、。2021年8月11日閲覧。
- ^ a b c d e f g h エキサイトニュース(エキサイト)、2017年2月9日付、「コネタ」実話のような創作のような「嘘松ツイート」ってなに?。2021年8月11日閲覧。
- ^ a b c d e しらべぇ(博報堂DYホールディングス)、2020年10月22日付、ネットに突如現れた「誇張しのぶ」が話題 「嘘松」の後継者と注目集まる。2021年8月11日閲覧。
- ^ All About、SNS用語集、2019年7月5日付、高橋暁子プロフィール「ITリテラシー ガイド 高橋 暁子、。2021年8月11日閲覧。
- ^ J-CASTニュース(ジェイ・キャスト)、2018年2月9日付、ネットの流行語「エアプ」って何? ゲーム用語が拡大...「母親エアプ」「雪国エアプ」も。2021年8月11日閲覧。
- ^ “And Then The Whole Bus Clapped”. Know Your Meme. 2022年10月24日閲覧。