子供部屋おじさん

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子供部屋おじさん(こどもべやおじさん)とは、日本インターネットスラングで、実家の子供部屋におじさんになっても暮らす中年男性のことを指す[1]。略して「こどおじ」ともいう[2]。同様の状態の中年女性を指す子供部屋おばさん(略して「こどおば」)という類語がある。

概要[編集]

2014年2ちゃんねるで提唱された造語[3]である。

「子供部屋おじさん」は、『週刊朝日』編集部の選出による2019年の流行語30選に入賞した[4]

ニート引きこもりとは異なり、実家で暮らしていても就労はしていることもある[3]。また、パラサイト・シングルとも似ているが、それらは不況や社会構造から来たものとして中立的な意味合いも持ち、厚生労働省などの公的機関においても普通に用いられる用語である一方で、「こどおじ・こどおば」という語は、もっぱら個人の自立心の無さを揶揄する蔑称として用いられる[5]

テレビ朝日「モーニングショー」(羽鳥慎一担当の時代)で行われたアンケートでは、「大人になっても実家で暮らすこと」について、20-30歳代の人は61%がアリと回答する一方で、40-70歳代の人は55%がナシと回答し、子供世代と親世代でのギャップが明らかになった[6]

社会問題化[編集]

実家で引きこもり状態となった「子供部屋おじさん」が家庭内不和を生み出す事例はしばしば報告されている[7][8]。そうした事例を踏まえ、記者の山口準は、その本質は「子供部屋に住み続けていること」ではなく「性格や生活スタイルが子供のままおじさんになってしまった人々」ではないかと指摘している[7]

子供部屋おじさんが起こした事件が頻発していることから、社会問題的な色合いが濃くなってきているとされ、「日本社会の病巣となっている」という指摘もある[9][10]。子供部屋おじさんの息子が将来事件を起こすことを恐れ、父親が息子を殺害した元農水事務次官長男殺害事件も発生している[11][9]

また、引きこもりが長期化して50代の中年引きこもりを80代の親が見るという8050問題も、子供部屋おじさんと関連した社会問題として言及されている[12]。8050問題は、収入が老親の年金に頼るため少ないことや、本来なら被介護者である高齢者が介護者になること(老老介護)、それによって精神的・身体的な負担になることなどが問題とされる。

論評[編集]

就職氷河期世代との関係[編集]

  • 厳しい経済的状況に対して実家暮らしは家賃などの出費を節約し貯金に回せるなどの利点や、親の介護や家業手伝いなどやむを得ないケースもあり、また特に地方では実家を基盤としそのまま家を継ぐことは昔から珍しくないこと、家庭に問題がなく、実家から職場へ通えるのであれば、わざわざ家賃を払って一人暮らしをする必要性はないという意見もある[13][14]
  • 中川淳一郎は、子供部屋おばさんがあまり揶揄の対象にならず、おじさんばかりが揶揄の対象になるのは男性差別であるとし、子供部屋おじさんがバカにされる理由について、就職氷河期世代が非正規雇用として年下の正社員にこき使われる立場になったことを要因として考察している[11]

非婚社会との関係[編集]

  • 独身研究家・コラムニストの荒川和久は、親元未婚に対して「社会の落伍者」であるかのようなレッテル貼りを行うことや、「『おじさん』という属性なら叩いていいという風潮」は、未婚化や少子化の本質的部分をあいまいにしてしまうと危惧している[1]。さらに、荒川は「いつまでも親元に住んでいるから結婚ができないんじゃないか」という声に対し、2000年2015年国勢調査をもとに40 - 50代親元未婚率と生涯未婚率(45 - 54歳の未婚率平均)との差分相関から、むしろ一人暮らしのほうが未婚率は高いとし「自立する・しないや甘える・甘えないという問題以前に、子にしても親にしても、そもそも経済的問題が最も大きいのではないでしょうか」と論じている[1]
  • フリーライターの赤木智弘は、2015年国立社会保障・人口問題研究所による「出生動向基本調査」および2016年総務省による「親と同居の未婚者の最近の状況」の統計から「未婚の人が増えたことで、同世代の人口に対する子供部屋おじさんの割合も増えた。その結果、その存在が現代社会の闇のように、見えてしまうようになったのである」「結局、子供部屋おじさんとは『普通の未婚中年のありふれた生活様式』に過ぎない」とし、「いかにもダメそうな人間」を取り上げた「子供部屋おじさんを悪い存在ということにしたい」という意図の見える記事に対して苦言を呈している[5]

その他[編集]

  • 西村博之は、ニートと同様に子供部屋おじさんも「彼らは、あるとき突然現れたのではなく、太古からずっといた」とし、地元である東京都北区赤羽には生活保護受給者も多かったため、大人が働いていない状況を当たり前に感じていると述べている[15]。また、自らの動画コンテンツは「時間の余ってる無職とニートと子供部屋おじさんと子供部屋おばさんと子供部屋子供」を対象にしていると述べている[16]
  • SUUMOが2019年に発表した調査によると「子供部屋おじさん」が発生する背景として「分譲住宅の住宅性能が上がったものの、賃貸住宅の性能が改善されないために、実家の居心地の良い環境から抜けられない」という要因が指摘されている[10]

題材とする作品[編集]

脚注[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c 荒川和久 (2019年10月28日). “子ども部屋おじさんと揶揄する人に欠けた視点”. 東洋経済オンライン. 2020年11月14日閲覧。
  2. ^ 日野百草 (2020年3月29日). “40代無職の子供部屋おじさん兄弟「俺たちはずっとこのまま」”. NEWSポストセブン. p. 2. 2020年10月14日閲覧。
  3. ^ a b SNSなどネット用語の「DQN・こどおじ・バズる・ステマ」ってどんな意味なの?”. 2020年12月13日閲覧。
  4. ^ 「週刊朝日が選ぶ2019年流行語30」『週刊朝日』2019年11月8日号、108頁。
  5. ^ a b 赤木智弘 (2020年1月22日). “「子供部屋おじさん」は問題視されるべき存在なのか? 統計データから読み解く”. DANRO. 2020年7月28日閲覧。
  6. ^ 実家に親と住む未婚男性=「子供部屋おじさん」、元乃木坂・斎藤ちはるアナが結婚相手として敬遠する理由は…”. 中日新聞 (2020年12月2日). 2020年12月5日閲覧。
  7. ^ a b 実家に寄生する“子供部屋おじさん”の実態…家族が悲痛の叫び”. 日刊SPA! (2019年3月17日). 2020年7月28日閲覧。
  8. ^ 部屋を破壊し、暴言をはく「こどおじ」に居座られる母の苦悩「追い出す方法は…」”. 弁護士ドットコムニュース (2021年10月22日). 2022年7月31日閲覧。
  9. ^ a b 日本の“こどおじ”による狂気の事件が乱発! 就職氷河期世代は日本の病巣なのか?”. 日刊サイゾー (2019年8月2日). 2020年11月20日閲覧。
  10. ^ a b 「子供部屋おじさん」誕生の背景には「賃貸住宅の品質問題」があった!?”. マネーフォワード (2019年9月24日). 2020年11月20日閲覧。
  11. ^ a b 令和になってもコロナ禍でもバカにされ続ける「氷河期こどおじ」の絶望【連載】中川淳一郎の令和ネット漂流記(31)
  12. ^ 実家に戻る“子供部屋おじさん”の深刻事情。リストラ・離婚で親元に戻る例も”. 日刊SPA! (2020年1月9日). 2022年7月9日閲覧。
  13. ^ 「30歳を過ぎて実家暮らしは恥ずかしい?」で議論 「家から通勤できるのに家賃は無駄金」という声も”. キャリコネニュース (2017年8月31日). 2020年11月14日閲覧。
  14. ^ 「実家暮らし」「子ども部屋おじさん」ってそんなにダメ? 無理して貯金できない方がよっぽどヤバいのでは”. キャリコネニュース (2020年11月13日). 2020年11月14日閲覧。
  15. ^ 【時代の論客】ひろゆきが「ダメな人の味方をする」意外なワケ” (日本語). ダイヤモンド・オンライン. 2023年1月30日閲覧。
  16. ^ ひろゆき [@hirox246]. "2021年3月17日のTweet" (ツイート). Twitterより2023年1月30日閲覧

関連項目[編集]