キモくて金のないおっさん

キモくて金のないおっさん（キモくてかねのないおっさん）とは、容姿が良くなく、低年収の中年または老けた容姿、つまり経済力も性的魅力もない非モテ男性を指すネットスラングである。2015年ごろから広まった概念で、「KKO」「キモカネ」と略すこともある。言葉の強さから「弱者男性」と言い換えられることもある。

定義・背景

キモくて金のないおっさんという言葉が生まれた背景には、Twitterで2015年5月の議論が端を発している。 当時、ネット論客の一柳良悟が「オッサンの貧困を最近扱っているけど、驚くほど共感を得られない。性の商品化が問題などと言う人もいるけれど、買えない、売れない、キモくて金のないオッサンの方がどう考えても詰んでると思うのは俺だけ？」と、疑問を呈したことがきっかけとなり、一気に広まった。

「キモくて金のないおっさん」という単語で一気に認知を得られた背景には、2000年からニュースで扱われるようになった孤独死問題や、2008年のリーマン・ショックから派生して話題になった年越し派遣村問題がある。日本の男性の貧困、孤独が可視化されるようになったことから、徐々にマジョリティ・強者であるとされる男性にも、恵まれない者がいると認識される機会が増えていった。しかし、昭和の日本家庭に存在した家父長制のなかで年長者であること、男性であることは二重の意味で強者のシンボルとなっていたため、「弱い男性がいる」ことに対する理解は、女性・子供の人権問題と比べて遅くなったとする意見がある。　

ジェンダー論、労働政策を専門とするジャーナリストの奥田祥子は、日本では1991年に起きたバブル崩壊により生まれた就職氷河期世代が、そのまま正規雇用に就けずリストラ、未婚、老親介護の危機に直面すると指摘している。　同様の問題は氷河期世代の女性にも起こりうるが、女性は「家事手伝い」という肩書で無職期間をごまかせる一方、男性はニートと呼ばれ、社会的に追い詰められやすいとの意見がある。

なお、現在は「キモくて金のないおっさん」という言葉そのものが差別的であるとして、「弱者男性」という言葉に置き換えられつつある。

弱者トーナメント・キモいが金や権力あるおっさんとの比較

「キモくて金のないおっさん」は、弱者トーナメント中でも共感が得にくく、最も軽視されている。ジャーナリストの佐々木俊尚によると、弱者トーナメントでは共感の得やすい「弱者性」で勝った側が、弱者男性など負けた側に危害を加えるって事態が常に起きていている。この問題が複雑なのは「キモくて金のないおっさん」など弱者≠善人なことにあり、弱者男性に寄り添う人でさえも「心の綺麗なキモくて金のないおっさんしか助けたくない！」みたいになっていることにある。逆に「キモイおっさん」という枠組みの中でも、広河隆一のようなお金は持ってるキモいおっさん、「キモくて権力のあるおっさん」もいる。「キモくて金のないおっさん(弱者男性)」からLINEがきても、単に無視やブロックするだけでなのに対して、広河系の権力はあるキモいおっさんからの場合は、「それができないことがあるから難しい」と指摘されている。

関連項目

• 無敵の人 - 社会的に失う地位、年収、家族などがなく、犯罪に手を染めることへ抵抗がない者を指す言葉。
• 子供部屋おじさん - 幼少期に育った子供部屋で、成人後も暮らしている中年男性の蔑称。
• インセル - 自分に性的な経験がない原因が女性にあると考える男性のグループ。

• 男性差別
• 孤独死
• メンズリブ - 男性が男らしさからの開放を訴える運動。