宇宙大戦争

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宇宙大戦争
Battle in Outer Space
監督 本多猪四郎(本編)
円谷英二(特撮)
脚本 関沢新一
製作 田中友幸
出演者 池部良
安西郷子
千田是也
土屋嘉男
音楽 伊福部昭
撮影 小泉一(本編)
有川貞昌(特撮)
編集 平一二
配給 東宝
公開 日本の旗 1959年12月26日
上映時間 91分(通常版)
96分(零号版)
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
前作 地球防衛軍
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宇宙大戦争』(うちゅうだいせんそう)は、1959年昭和34年)12月26日に公開された日本特撮映画。製作、配給は東宝。カラー、東宝スコープ。同時上映は『サザエさんの脱線奥様』。 アメリカ、イギリスなどの英語圏では『 Battle in Outer Space 』のタイトルで公開された。

概要

東宝が『地球防衛軍』の姉妹編として製作した大作SF映画。『地球防衛軍』に登場した安達博士、白石、リチャードソン博士、インメルマン博士という役名が本作に再登場している。ただし、インメルマン博士以外の人物を演じたのは別の俳優である。

ナタール人の武器である「冷却線による浮遊現象」の科学考証の基礎となっている「重力の本質は核振動であり、物質が絶対零度に近づくほど、核振動が微細なものとなる。したがって、絶対零度近くにまで冷やされた物体は無重量状態となる」という理論は、映画製作当時唱えられていた仮説に基づいているが、実際は当時の物理学でもすでに否定された学説である。

月面のシーンは、1950年に噴火したばかりの三原山の溶岩地帯で撮影された[1]。重力の少ない月面でのふわふわとした歩行演技は、土屋嘉男の発案によるもの。共演者らは半信半疑で抵抗する者もいたが、土屋はのちにアポロ宇宙船の月面着陸の中継映像を見て、我が意を得たりの思いだったと語っている[要出典]

特撮監督の円谷英二は当時すでに世界的名声を得ており、彼の特撮映画は海外でも大評判となっていた。この映画ではついに、東宝が製作発表した段階でアメリカの映画バイヤーが買い付け契約を結ぶために来日し、これは以後の恒例となった。

本作品では「侵略者ナタール人の基地は月の裏側にある」という設定になっており、国際会議の場面で月の裏側の図解が出てくる。これは映画公開より少し前の1959年10月4日、ソ連の無人探査機ルナ3号が世界で初めて撮影に成功した月面裏側の写真に基いて作図されたもの。つまり、当時としては「宇宙に関する最新の情報」が盛り込まれたSF映画である。

なお、零号版フィルムでは合成前のカットシーンや合成素材、光線のタイミング、シーンの尺の長さ等が異なった物が収録されているものの、長い間所在不明とされていたが、フィルムの発見により、2014年11月24日に日本映画専門チャンネルで初放送された。

あらすじ

1965年、宇宙ステーションJSS3が謎の円盤群に襲撃され、反撃するも及ばず宇宙の塵と化す。さらに世界中で、鉄橋や汽船が空中に舞い上がるといった怪事件が続発。東京郊外の国際宇宙科学センターでは緊急の国際会議が開催され、何者かが意図的に超低温状態を作り上げ、物質の核振動を停止し無重力状態にしているのでは、という結論を出す。だが、会議のメンバーであるアーメッド教授が既に「ナタール」と名乗る異星人に洗脳され、宇宙科学センターで新開発された熱線砲を盗もうとしていた。幸い、センターの技師・岩村の機転により熱線砲は無事だったが、任務に失敗したアーメッド教授は突如飛来した円盤の発する光線を浴び、たちまち溶解。あとには小さな金属板が残される。

調査の結果、その金属板がアーメッド教授の脳を操縦していたこと、そして異星人ナタールは既に月面に潜伏していることが判明する。国連では、安達博士はじめリチャードソン博士、勝宮、白石、岩村など16名の科学者・技師から成る調査隊を編成、月面への派遣を決定する。だが出発前夜、1人ドライブを楽しんでいた岩村はその途中で不思議な声を聴き、それきり意識と記憶が飛んでしまう。翌日、全世界の人々が見守る中、調査隊を乗せた宇宙探査艇スピップ1号および2号は無事発射され、一路月へと向かう。

その途上、ナタールは宇宙魚雷で2隻の宇宙船を攻撃。勝宮たちは迎撃するが、それを妨害したのは岩村だった。出発前夜のドライブで、彼もまたナタールによって脳内に金属板を埋め込まれ、洗脳・操縦されていたのだった。辛くも攻撃をかわした一同に向け、ナタール人は「これ以上の接近すると命の保証は無い」と無線で警告する。だが調査隊は目的を達成すべく、月面に強行着陸を敢行。やむなく岩村を拘束して船に残し、月面探検車でナタールの前線基地へ接近する。その前線基地には多数の円盤が発着し、既に地球侵略の準備が整っていた。それと前後して、ナタールは岩村へ命令を発信。操縦された岩村は拘束ベルトを解き、機関室の燃料弁と酸化剤タンクを全開してスピップ1号を爆破する。

ついに調査隊はナタールに対し、安達博士と勝宮が操縦する月面探検車の熱線砲とで攻撃を開始。激しい光線の打ち合いの末、前線基地の機能を停止させることに成功する。地球へ戻ろうとする調査隊の前にナタールの円盤が出現するが、それを迎撃したのは基地の機能停止によりナタールの洗脳が解けた岩村だった。小型熱線銃1丁で単身円盤に立ち向かう彼を残し、爆破を免れたスピップ2号で一同は月面を脱出。が、岩村の犠牲的精神に涙しない者は無かった。

この事件は世界中に衝撃を与え、ナタールの基地復旧・総攻撃は時間の問題であり、全力をもって迎え撃つべきという認識が高まる。かくして熱線兵器を搭載した宇宙戦闘機と地対空熱戦砲が量産され、対ナタール戦の準備が進められる。そして遂にナタールの円盤群が地球に襲来。人類は宇宙戦闘機を続々と打ち上げ、ここに決戦の火ぶたは切られた。

登場キャラクター

ナタール・地球側のメカ類はすべて、小松崎茂のデザインを入江義雄が図面に起こし、井上泰幸らによって制作された。

この映画で作られた、石膏製の3サイズの月の表面のミニチュアは、のちにさまざまな特撮映画に流用されている。『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』では、M宇宙ハンター星雲人の司令官の座る椅子の背に使われた。

地球側の迎撃ミサイル基地の特撮セット設営では、スタジオの高さが足りなかったため、美術スタッフの井上泰幸は独断でスタジオの地面を掘り下げてこれを行い、守衛に見つかって本社の大目玉を食らった。怒られている井上の後ろで、特技監督の円谷は必死で笑いをこらえていたという。さらにロケット打ち上げのシーンで「天井も空けますか?」と提案したところ、円谷は「乱暴なことはやめろ!」と叫んだという[2]

月面探検隊の宇宙服は、後年TV番組の『ウルトラマン』第38話のQ星探検服に流用されている。

ナタール人

無重力攻撃を得意とする侵略宇宙人。宇宙服を着込んでいてその素顔は不明。やや小柄である。インプラントらしきものをこめかみに埋め込み特定の人物を操ることができる。主な戦力は円盤戦闘機(重力を無効化する冷却線と光線を発射)と宇宙魚雷(隕石型でマンハッタンゴールデンゲートブリッジを1発で破壊)。地球侵略の前線基地が月の裏側にあり、最終決戦では小型円盤数機を従えた司令母艦で地球に来襲する。

主要円盤は、『地球防衛軍』のミステリアン円盤の流用。劇中後半の冷却線によって建物が空中に舞い上がる、印象的な東京攻撃のシーンは、発泡スチロールなど軽い素材で造られた市街地のセットの根元に圧縮ボンベを仕込み、高圧空気を一気に吹き出すことで、建物や車両の浮上を表現している[3](同様の表現法は『世界大戦争』でも見られる)。『三大怪獣 地球最大の決戦』の宇宙円盤クラブ会長室にナタールの円盤が釣り下げられている。

登場メカニック

スピップ号
国際宇宙科学センターが開発した宇宙ロケット(宇宙艇)。作中には2機が登場し、それぞれ機首・噴射口・尾翼先端部の色が異なる(1号艇は赤、2号艇は青)。胴体には「JAPAN SPACE PATROLE」の文字、尾翼には「FFE」の文字と国連マークが描かれている。船体には特殊金属S250号が使用されており、武器として機首に熱線砲を有する他、機首に宇宙レーダーを、胴体内部に月面探検車1台を搭載している。乗員は1機につき8名。自動自衛システムを持っているが、ナタールに洗脳された岩村が内部から破壊した1号艇は自爆してしまう。
1号と2号の2機ずつ、1尺と3尺ほどのミニチュアが造形された。素材はバルサ材やブリキ。月面着陸場面のため、下半分の実物大模型も作られた。映画の劇中では尾翼に国連マークが描き込まれているが、宣伝ポスターや合成スチール写真では何故か旧帝国軍のような白い縁取りの日の丸が描き込まれていた。
月面探検車
蛇腹で前後を繋いだ連接式の装軌車両で、通常はキャタピラで移動するが、エアークッションを用いて浮上走行をすることも可能。スピップ号と同様の熱線砲を装備している。スピップに1台ずつ搭載されており、2台が登場したが、1台はナタールの攻撃でキャタピラが切れて掴座してしまったため放棄される。
月面探査が進んでいない時期に製作されたため、「月面の一部に希薄な大気が存在する」という当時の学説のひとつを援用し、ホバークラフト効果で高速移動する場面がある。1尺と3尺ほどのミニチュアが2機ずつ造形された。
ホバークラフトで月面車が空中移動するシーンで、円谷監督は月面車を吊り固定して、バックの岩山のほうを回転台に乗せて回転させることでスピード感ある映像に仕上げている。ホバークラフト時に噴出している気体は、ガスではなく水を霧状にしたものを使っている。
宇宙ステーションJSS3
国際宇宙科学センターが運用していた宇宙ステーション。形状はドーナッツ型で、外周のリング部を回転させることによって遠心力を用いた人工重力を発生させている模様。また、上部に光弾の発射装置を有しているが、ナタール人の円盤には効かなかった。過去にたびたびナタール人の怪電波を傍受しており、冒頭でナタール円盤の攻撃を受けて破壊される。
戦闘ロケット(宇宙戦闘機)
本来は無人の宇宙偵察用ロケットであったが、ナタール人の来襲に伴い急遽有人戦闘機として改造され、シベリア平原・アリゾナ砂漠・東京国際宇宙科学センターからナタール円盤を迎撃する。
発進シーン及び空中戦用に1尺サイズのミニチュアが多数製作されている。米国・日本所属機とソ連所属機ではデザインが違う(前者は超音速実験機X-15をベースにデザインされており、後者は無尾翼デルタ翼機となっている)。
地上熱線砲
原子力R600をエネルギー源とするパラボラアンテナ型の巨大熱線砲。円筒型の支柱に支えられたA型とU字型の支柱に支えられたB型がある。東京国際宇宙科学センターに配備され、東京を襲撃したナタール円盤を迎撃、これを全滅させた。また、これらとは別に月面調査隊の装備品として、ライフルタイプの熱線銃や重機関銃ほどの大きさの熱線放射機も登場している。
B型のミニチュアは後に、『妖星ゴラス』に富士山麓宇宙港のレーダーとして、『世界大戦争』に連邦国ICBM基地の地上レーダーとして再登場している。

スタッフ

本編

特殊技術

特殊視覚効果

出演

映像ソフト

  • 1982年にビデオソフトが発売[4]
  • 2004年10月29日にDVDが発売。

脚注

  1. ^ 平凡社『国民大百科事典』での解説より[要ページ番号]
  2. ^ 『特撮映画美術監督 井上泰幸』キネマ旬報社、2012年、91頁。ISBN 978-4-87376-368-2。"天井に穴を開けようとした『宇宙大戦争』"。 
  3. ^ 『東宝特撮映画大全集』ヴィレッジブックス、2012年、42 - 45頁。ISBN 9784864910132 
  4. ^ 宇宙船』第12号、朝日ソノラマ、1982年、80頁。 

関連項目

外部リンク

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