マイルチャンピオンシップ南部杯

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マイルチャンピオンシップ南部杯
第21回マイルチャンピオンシップ南部杯
開催国 日本の旗 日本
主催者 岩手県競馬組合
競馬場 盛岡競馬場
第1回施行日 1988年10月9日
2024年の情報
距離 ダート1600m
格付け JpnI / 国際LR
賞金 1着賞金7500万円
出走条件 サラブレッド系3歳以上(指定交流)
出走条件も参照
負担重量 定量(負担重量を参照)
出典 [1]
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マイルチャンピオンシップ南部杯(マイルチャンピオンシップなんぶはい)は、岩手県競馬組合盛岡競馬場で施行する地方競馬重賞競走JpnIダートグレード競走)である。例年は農林水産大臣が賞を提供しているほか、JBC競走に向けた重要な前哨戦「Road to JBC」にも指定されており、正式名称は「農林水産大臣賞典[注 1] マイルチャンピオンシップ南部杯〔Road to JBC〕」と表記される。

通称は南部杯。また中央競馬マイルチャンピオンシップと区別するためマイルCS南部杯マイル南部杯MCS南部杯と表記される事がある。日本で行われる常設のGI・JpnI競走としては唯一、三大都市圏以外で行われる(持ち回りのJBC競走は除く)[2]

競走名は江戸時代盛岡藩を治めていた南部氏に由来し、45代当主南部利昭に了承を得て、名称と南部家の家紋が使用されている[2]。表彰式には毎年南部家当主が出席し、南部杯を授与している。

概要[編集]

岩手県競馬組合創立25周年を記念し、1988年北日本マイルチャンピオンシップ南部杯として創設された競走[3]、第1回は水沢競馬場のダート1600mで施行された。創設当初は北日本地区(道営、東北、北関東)交流競走で[3]、地方競馬の北日本地区のマイル最強馬決定戦の位置付けとされた。

1995年に中央・地方全国指定交流競走に指定されたと同時に現在のマイルチャンピオンシップ南部杯に改名、北日本地区以外の地方所属馬及び中央競馬所属馬も出走可能になった。1996年には開催場を現在の盛岡競馬場に変更、1997年には前年から施行されたダートグレード競走のGI(統一GI)に格付けされ[3]、日本の秋のダートのマイル最強馬決定戦として定着していった。

2002年からはJBC競走へのトライアル「Road to JBC」に指定されており、本競走の優勝馬にはジャパンブリーディングファームズカップ2競走(JBCクラシックJBCスプリント)への優先出走権(出走できるのはどちらか一方の競走)が与えられる。Road to JBCに指定された競走では南部杯が唯一のJpnI競走である。

発走時のファンファーレは岩手競馬のJpnI用のファンファーレが使用されている。2007年に岩手競馬のファンファーレはJpnI用を含め全てが新しい物に切り替わったが、JpnI用のファンファーレは2009年から従来の物に戻されている。また、2015年から2年間は盛岡市の市民吹奏楽団「グーテン・ライエ吹奏楽団」による生演奏だった。2022年からは陸上自衛隊第9音楽隊による生演奏となっている[4]。2011年の東京競馬場での開催(後述)の際もJRAの関東GIファンファーレではなく従前のファンファーレが使用されている。

条件・賞金等(2023年)[編集]

出走条件
サラブレッド系3歳以上。フルゲートは16頭で中央競馬所属馬の出走枠は7。
負担重量
定量、3歳55kg、4歳以上57kg、牝馬2kg減[1]
賞金等
1着7,000万円、2着2,450万円、3着1,400万円、4着910万円、5着490万円。着外手当は6着90万円、7着60万円、8着以下30万円[5]
副賞
南部杯、農林水産大臣賞、日本中央競馬会理事長賞、日本馬主協会連合会長奨励賞、日本地方競馬馬主振興協会会長賞、岩手県馬主会会長賞、地方競馬全国協会理事長賞、全国公営競馬主催者協議会会長賞、NAR生産牧場賞、岩手県知事賞、開催執務委員長賞[5][1]
優先出走権付与
優勝馬にJBCクラシックとJBCスプリントの優先出走権が付与される。

優先出走権付与競走[編集]

対象競走と付与条件は以下の通り[6]

競走 競馬場 距離 付与対象 備考
青藍賞 M2 水沢競馬場 ダート1600m 1着馬 かつては地方全国交流であったが、2023年現在は岩手所属限定の競走
クラスターカップ JpnIII 盛岡競馬場 ダート1200m 3着以上の地方他地区所属馬

過去の賞金額[編集]

中央競馬地方競馬全国指定交流競走に指定された1995年以降
回数 総額賞金
(万円)
1着賞金
(万円)
2着賞金
(万円)
3着賞金
(万円)
4着賞金
(万円)
5着賞金
(万円)
08回(1995年) 9,250 5,000 2,000 1,000 750 500
09回(1996年)
第10回(1997年) 1億1,100 6,000 2,400 1,200 900 600
第11回(1998年)
第12回(1999年) 1億500 2,100 1,020 780
第13回(2000年)
第14回(2001年) 1億200 1,800
第15回(2002年)
第16回(2003年)
第17回(2004年)
第18回(2005年)
第19回(2006年)
第20回(2007年)
第21回(2008年) 8,500 5,000 1,500 850 650 500
第22回(2009年) 7,500 1,150 650 450 250
第23回(2010年) 6,750[7] 4,500 1,035 585 405 225
第24回(2011年) 8,530 1,800 1,100 680 450
第25回(2012年) 6,750[8] 1,035 585 405 225
第26回(2013年)
第27回(2014年)
第28回(2015年)
第29回(2016年)
第30回(2017年)
第31回(2018年)
第32回(2019年) 6,975 1,170 630 450
第33回(2020年) 8,000 5,000 1,400 800 500 300
第34回(2021年) 1億200 6,000 2,100 1,200 600
第35回(2022年)
第36回(2023年) 1億2,250 7,000 2,450 1,400 910 490

歴史[編集]

  • 1988年 - 3歳以上の競走馬による北日本地区交流競走「北日本マイルチャンピオンシップ南部杯」として創設。水沢競馬場のダート1600mで施行。
  • 1995年
    • 中央・地方全国交流競走に指定。
    • 名称を「マイルチャンピオンシップ南部杯」に変更。
    • 開催日が体育の日(現・スポーツの日)に固定される(祝日改正法適用前で日曜日に該当した1999年を除く)。
  • 1996年 - 施行場を盛岡競馬場に変更。
  • 1997年 - ダート競走格付け委員会にGI(統一GI)に格付けされる。
  • 2002年 - Road to JBCに指定される。
  • 2007年 - 国際セリ名簿基準委員会(ICSC)の勧告に伴い、統一グレード表記をJpnIに変更。
  • 2008年 - 1着賞金が5,000万円に減額、その後2010年には再度4,500万円に減額(2019年まで)。
  • 2011年
    • 本年のみJRAが主催し、東京競馬場のダート1600mで「農林水産省賞典 マイルチャンピオンシップ南部杯」の名称で施行、売上の一部を支援金として岩手県競馬組合に拠出。このため、岩手県馬主会会長賞の寄贈を行わなかった。
    • 本年のみ、出走枠を地方競馬所属馬は5頭(うち岩手所属馬2頭まで)、フルゲート16頭までに変更。
  • 2012年 - 施行場を盛岡競馬場に戻す。
  • 2016年 - 中央競馬所属馬の出走枠が1頭増えて7頭に、あわせてフルゲートが1頭増えて16頭となる[9]
  • 2018年 - 禁止薬物問題発生を受け農林水産大臣賞を返上したため、レース名称は「マイルチャンピオンシップ南部杯」となる。
  • 2020年
    • スポーツの日が2020年東京オリンピックの開会式が行われる予定だった7月24日に変更されたため、レース史上初めて平日開催となった。
    • 1着賞金額が見直しにより、4,500万円から5,000万円となる[10]
    • レース売得金が17億7595万900円(前年比約160%)となり、2011年のJRA東京開催を除き売り上げレコードを更新した。
  • 2021年
    • 1着賞金が6,000万円に増額。
    • スポーツの日が当年に延期となった東京オリンピックの開会式が行われる7月23日に変更されたため、2年連続で平日開催となった。
    • 農林水産大臣賞がつくようになり、レース名が「農林水産大臣賞典 マイルチャンピオンシップ南部杯」に戻る。
  • 2023年
    • 1着賞金が7,000万円に増額。
    • レモンポップが歴代史上最大着差となる2秒の大差(12馬身)をつけて勝利。
  • 2024年 ‐ 1着賞金が7,500万円に増額。

歴代優勝馬[編集]

コース種別を記載していない距離は、ダートコースを表す。また馬齢は全て現行表記のもの。

回数 施行日 競馬場 距離 優勝馬 性齢 所属 タイム 優勝騎手 管理調教師 馬主
第1回 1988年10月9日 水沢 1600m グレートサーペン 牡6 高崎 1:42.4 工藤勉 渡邉和泰 三原勝太郎
第2回 1989年10月8日 水沢 1600m ダイコウガルダン 牡4 上山 1:42.4 水戸賢二 村山博 熊久保勅夫
第3回 1990年10月7日 水沢 1600m グレートホープ 牡4 盛岡 1:40.0 菅原勲 小西重征 小野寺喜久男
第4回 1991年10月13日 水沢 1600m タケデンファイター 牡5 新潟 1:40.8 大枝幹也 佐藤忠雄 赤川喜一郎
第5回 1992年10月11日 水沢 1600m タケデンマンゲツ 牡6 宇都宮 1:42.0 平澤則雄 平石正己 熊久保勅夫
第6回 1993年11月23日 水沢 1600m トウケイニセイ 牡6 盛岡 1:39.8 菅原勲 小西重征 小野寺喜久男
第7回 1994年9月25日 水沢 1600m トウケイニセイ 牡7 盛岡 R1:39.5 菅原勲 小西重征 小野寺喜久男
第8回 1995年10月10日 水沢 1600m ライブリマウント 牡4 JRA 1:40.6 石橋守 柴田不二男 加藤哲郎 他2名
第9回 1996年10月10日 盛岡 1600m ホクトベガ 牝6 JRA 1:38.3 的場均 中野隆良 金森森商事(株)
第10回 1997年10月10日 盛岡 1600m タイキシャーロック 牡5 JRA R1:36.2 横山典弘 土田稔 (有)大樹ファーム
第11回 1998年10月10日 盛岡 1600m メイセイオペラ 牡4 水沢 R1:35.1 菅原勲 佐々木修一 (有)明正商事
第12回 1999年10月11日 盛岡 1600m ニホンピロジュピタ 牡4 JRA 1:38.4 武豊 目野哲也 小林百太郎
第13回 2000年10月9日 盛岡 1600m ゴールドティアラ 牝4 JRA 1:38.3 後藤浩輝 松田国英 吉田和子
第14回 2001年10月8日 盛岡 1600m アグネスデジタル 牡4 JRA 1:37.7 四位洋文 白井寿昭 渡辺孝男
第15回 2002年10月14日 盛岡 1600m トーホウエンペラー 牡6 水沢 1:38.7 菅原勲 千葉四美 東豊物産(株)
第16回 2003年10月13日 盛岡 1600m アドマイヤドン 牡4 JRA 1:35.4 安藤勝己 松田博資 近藤利一
第17回 2004年10月11日 盛岡 1600m ユートピア 牡4 JRA 1:35.9 横山典弘 橋口弘次郎 金子真人
第18回 2005年10月10日 盛岡 1600m ユートピア 牡5 JRA 1:36.7 安藤勝己 橋口弘次郎 金子真人ホールディングス(株)
第19回 2006年10月9日 盛岡 1600m ブルーコンコルド 牡6 JRA 1:36.6 幸英明 服部利之 (株)荻伏レーシング・クラブ
第20回 2007年10月8日 盛岡 1600m ブルーコンコルド 牡7 JRA 1:36.8 幸英明 服部利之 (株)ブルーマネジメント
第21回 2008年10月13日 盛岡 1600m ブルーコンコルド 牡8 JRA 1:37.3 幸英明 服部利之 (株)ブルーマネジメント
第22回 2009年10月12日 盛岡 1600m エスポワールシチー 牡4 JRA 1:35.4 佐藤哲三 安達昭夫 (株)友駿ホースクラブ
第23回 2010年10月11日 盛岡 1600m オーロマイスター 牡5 JRA R1:34.8 吉田豊 大久保洋吉 (有)サンデーレーシング
第24回 2011年10月10日 JRA東京 1600m トランセンド 牡5 JRA 1:34.8 藤田伸二 安田隆行 前田幸治
第25回 2012年10月8日 盛岡 1600m エスポワールシチー 牡7 JRA 1:35.9 佐藤哲三 安達昭夫 (株)友駿ホースクラブ
第26回 2013年10月14日 盛岡 1600m エスポワールシチー 牡8 JRA 1:35.1 後藤浩輝 安達昭夫 (株)友駿ホースクラブ
第27回 2014年10月13日 盛岡 1600m ベストウォーリア 牡4 JRA 1:35.9 戸崎圭太 石坂正 馬場幸夫
第28回 2015年10月12日 盛岡 1600m ベストウォーリア 牡5 JRA 1:36.8 福永祐一 石坂正 馬場幸夫
第29回 2016年10月10日 盛岡 1600m コパノリッキー 牡6 JRA R1:33.5 田辺裕信 村山明 小林祥晃
第30回 2017年10月9日 盛岡 1600m コパノリッキー 牡7 JRA 1:34.9 田辺裕信 村山明 小林祥晃
第31回 2018年10月8日 盛岡 1600m ルヴァンスレーヴ 牡3 JRA 1:35.3 M.デムーロ 萩原清 (株)G1レーシング
第32回 2019年10月14日 盛岡 1600m サンライズノヴァ 牡5 JRA 1:34.2 吉原寛人 音無秀孝 松岡隆雄
第33回 2020年10月12日 盛岡 1600m アルクトス 牡5 JRA R1:32.7 田辺裕信 栗田徹 山口功一郎
第34回 2021年10月11日 盛岡 1600m アルクトス 牡6 JRA 1:35.3 田辺裕信 栗田徹 山口功一郎
第35回 2022年10月10日 盛岡 1600m カフェファラオ 牡5 JRA 1:34.6 福永祐一 堀宣行 西川光一
第36回 2023年10月9日 盛岡 1600m レモンポップ 牡5 JRA 1:33.8 坂井瑠星 田中博康 ゴドルフィン

東京競馬場での施行[編集]

2011年はこの年に発生した東日本大震災の影響により、東京競馬場にて施行された[11]。岩手県競馬自体は5月より盛岡競馬場での開催を再開しダートグレード競走も施行されていたが競馬関連の施設が大きな被害を受けるなどして開催日数の減少による経営環境の厳しさなどからJRAに要請を行い、本競走は盛岡競馬場と姉妹提携を結んでいる東京競馬場にてJRA主催により施行されることとなった。

JRAは当初開催予定のなかった10月10日を「岩手競馬を支援する日」と題して東京競馬場開催を追加し(震災で中止となった3月13日の阪神競馬の事実上代替開催)、岩手競馬所属で活躍した競走馬の名前(トーホウエンペラーメイセイオペラ)を冠した競走も行われた。当競走のスタート前のファンファーレは、例年通り盛岡競馬場で使用されている曲を使用した[12]。また日曜日以外の競走で初めてWIN5が実施され、南部杯を含めた第8競走から第12競走が対象となった。

この年の入場人員は5万9475人で同年のフェブラリーステークスを上回ったほか、売り上げは70億2941万6200円で前年の本競走の約14倍を記録した[13]

脚注・出典[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 日本中央競馬会(JRA)主催かつ東京競馬場での開催となった2011年度は「農林水産省賞典」と表記。2018年については、同年に2度にわたって禁止薬物陽性馬が発生した不祥事に伴い、農林水産省に対し桐花賞とともに「農林水産大臣賞典」の本年度の取り消し申請を行った(賞金は変動なし。大臣賞典の冠消える 岩手競馬、重賞の南部杯と桐花賞 - 岩手日報 2018年9月28日)ためレース名に「農林水産大臣賞典」はつかなかった。その後も2020年まで農林水産大臣賞はつかず、「マイルチャンピオンシップ南部杯」として行われた

出典[編集]

  1. ^ a b c 令和5年度第8回 盛岡競馬競走番組表(概定)” (PDF). 岩手競馬オフィシャルページ. 2023年10月5日閲覧。
  2. ^ a b 南部杯ってどんなレース? その由来や今年の出走メンバーを紹介 - netkeiba.com、2023年10月6日配信・閲覧
  3. ^ a b c 注目レースピックアップ”. 岩手競馬オフィシャルページ. 2018年10月6日閲覧。
  4. ^ いよいよ南部杯ウィーク!盛岡競馬場イベント情報”. 岩手競馬オフィシャルページ. 2022年10月6日閲覧。
  5. ^ a b 令和5年度 第8回 盛岡競馬 改定番組” (PDF). 岩手競馬オフィシャルページ. 2023年10月5日閲覧。
  6. ^ 令和5年度番組編成要領及び諸規程集” (PDF). 岩手県競馬組合. p. 10. 2023年10月5日閲覧。
  7. ^ 第23回 マイルチャンピオンシップ南部杯出馬表”. KEIBA.GO.JP (2010年10月11日). 2019年12月15日閲覧。
  8. ^ 第25回 マイルチャンピオンシップ南部杯出馬表”. KEIBA.GO.JP (2012年10月8日). 2019年12月15日閲覧。
  9. ^ 2016シーズン 岩手競馬の競走体系”. 岩手競馬 公式WEBSITE. 2016年10月8日閲覧。
  10. ^ 2020年の競走体系”. 岩手競馬 公式WEBSITE. 2020年9月27日閲覧。
  11. ^ 「マイルチャンピオンシップ南部杯(JpnI)」の日本中央競馬会主催による東京競馬場での施行について”. 岩手県競馬組合 (2011年6月29日). 2011年12月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年2月14日閲覧。
  12. ^ 【レースハイライト】第24回 マイルチャンピオンシップ南部杯JpnI”. web Furlong. 2014年2月14日閲覧。
  13. ^ 【MCS南部杯】売り上げ前年比14倍”. サンケイスポーツ (2011年10月11日). 2011年10月11日閲覧。

各回競走結果の出典[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]