ビブリア古書堂の事件手帖

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ビブリア古書堂の事件手帖
ジャンル 日常の謎
ビブリオミステリ
小説
著者 三上延
イラスト 越島はぐ
出版社 アスキー・メディアワークス
レーベル メディアワークス文庫
刊行期間 2011年3月25日 -
巻数 既刊6巻(2014年12月現在)
漫画
原作・原案など 三上延(原作)
越島はぐ(キャラクター原案)
作画 ナカノ
出版社 角川書店
掲載誌 アルティマエース
月刊Asuka
レーベル 角川コミックス・エース
発表号 アルティマエース:Vol.3 - Vol.7
月刊Asuka:2013年2月号 - 2014年9月号
発表期間 2012年2月18日 - 2014年7月24日
巻数 全6巻
漫画
原作・原案など 三上延(原作)
越島はぐ(キャラクター原案)
作画 交田稜
出版社 講談社
掲載誌 good!アフタヌーン
レーベル アフタヌーンKC
発表号 2012年23号 -
発表期間 2012年7月6日 -
巻数 既刊3巻(2014年1月現在)
ドラマ
原作 三上延
演出 松山博昭宮木正悟
制作 フジテレビドラマ製作センター
放送局 フジテレビ
放送期間 2013年1月14日 - 2013年3月25日
話数 11話
その他 詳細はテレビドラマ版記事を参照。
テンプレート - ノート
プロジェクト 漫画
ポータル 文学漫画

ビブリア古書堂の事件手帖』(ビブリアこしょどうのじけんてちょう)は、三上延による日本ライトミステリ小説シリーズ。イラストは越島はぐ2011年からメディアワークス文庫アスキー・メディアワークス)より刊行されている。文庫本書き下ろし作品。

古書に関して並外れた知識を持つが、極度の人見知りである美貌の古本屋店主・栞子(しおりこ)が、客が持ち込む古書にまつわる謎を解いていく日常の謎系のビブリオミステリ[1]。作中で扱われる古書は実在するもので、それら書籍の売上が伸びたり絶版本が復刊されるなどの影響を与えた[2]

メディアワークス文庫で初のミリオンセラー作品であり[3]、2014年12月現在、シリーズ累計の発行部数は600万部をこえた[4]。2012年には、本屋大賞にノミネートされた[5]メディアミックスとして2種類の漫画化作品と、テレビドラマが制作されている。

物語の舞台

JR北鎌倉駅(本作の舞台近辺)

物語開始時は2010年8月。神奈川県北鎌倉を舞台としている。地名は実在のものを用いているが、ビブリア古書堂の店舗や登場人物はフィクションである(作者後書きより)。

4巻は2011年4月を描いており、現実と同じく東日本大震災が起きたことになっている。        

ビブリア古書堂
北鎌倉駅のホーム隣の路地の向かいで営業している古本屋。古い木造の建屋で、何十年も前から営業している老舗。人文科学系の専門書を主に扱うが、マンガや文庫本の棚もある。ネット上にある古本の検索サイトに参加しており、売り上げの多くはネット通販でまかなわれているらしい。店のカウンターの奥は店主が住んでいる母屋へ通じている。
栞子の祖父、聖司が敬虔なクリスチャンで、このため、ラテン語で聖書を意味する『ビブリア』を店の屋号にしたという[6]

あらすじ

1巻から3巻までは、時系列順の一話完結の連作短編のかたちをとっている。4巻は3巻までを受けた長篇である。

1巻

プロローグ
高校時代、北鎌倉の駅近くの坂道にある古書店。白髪まじりの中年男が一人で経営しているはずの古書店で、小さなワゴンを引っ張り出している女性を見て気を引かれる。立看板には「ビブリア古書堂」とあった。声をかけようと思ったが自分の体質を思いやめてしまった。
第一話 夏目漱石『漱石全集・新書版』(岩波書店)
五浦大輔は幼い頃、本好きの祖母の本棚をいじりひどく殴られてから、本を長時間読むことが出来ない体質になっていた。大学を卒業するが、就職を決めた会社は卒業直前に倒産してしまい、無職の状態が続いていた。その年の盛夏の8月のこと、大輔の母・恵理が1年前に他界した祖母の遺品『漱石全集』の1冊に、夏目漱石のサインがあるのを見つける。母に頼まれた大輔は、サインが本物であるかどうかを調べるため本の値札に記されていたビブリア古書堂を訪れると、店主は入院しており、店番からは病院へ行くよう言われる。病院にて大輔が女店主篠川栞子に会うと、高校時代にビブリア古書店で見かけ、気にかかっていた女性だった。漱石のサインは偽物であったが、篠川栞子は田中嘉雄宛の献呈署名の体裁になっていることを訝しみ、田中嘉雄からのプレゼントだったものを大輔の祖母が書いたと落書きと偽装するためにやったのだろうと推理する。帰宅後署名は偽物だったと報告すると、大輔は母に、迷惑をかけたお詫びに菓子折を持って行けと言われる。翌日菓子折を求めた先で伯母に会った五浦は、祖母と祖父に関する昔話を聞くうちに昨日聞いたサインの話の中に自分にも関わる重大な秘密に気付く。栞子を見舞い、そのことを話した大輔は、栞子からビブリア古書堂で働かないかと持ちかけられて快諾するのだった。
第二話 小山清『落穂拾ひ・聖アンデルセン』(新潮文庫)
常連の志田小菅奈緒笠井菊哉登場の挿話。
大輔がビブリア古書堂で働き出してから3日が経った。今までは栞子の妹の篠川文香が店番をしていたが、今朝は母屋から出てこない。店番となった大輔は、常連と自称する男に万引きを取り押さえてもらう。せどり屋の志田と名乗ったその男は、盗まれた本を探してもらいたくて来たという。志田はせどり屋仲間と商品を交換するために待ち合わせをし、トイレに立った時に女子高校生に自転車を倒され文庫本『落穂拾ひ』を盗まれたようなので、もしその本を売りに来たら黙って買い取り、自分に買い戻させてほしいということだった。入院中の栞子にそのことを話すと、犯人とすれ違った志田の待ち合わせ相手に詳しく話を聞いて見る必要があると言い出したため、大輔はその相手・笠井菊哉に会って話を聞き、さらに事件に関わると思われる男子生徒に出くわして、渦中の少女の身元が判明することとなった。大輔が掴んだ情報を栞子に電話で伝え、犯人の少女・小菅を病院へ呼び出し栞子がその推理を話すと見事に当たっていた。後日、小菅が志田のもとに謝りに行くと、彼女の行動の裏に男子生徒への想いと失恋があったことを知った志田はかえって同情し、小菅と『落穂拾ひ』について語り合い、打ち解けたのだった。
第三話 ヴィノグラードフ・クジミン『論理学入門』(青木文庫)
常連の坂口昌司しのぶ夫妻登場の挿話。
ビブリア古書堂に古びた文庫本を持ち込み、買い取ってもらいたいという初老の男・坂口昌司が現れる。明日の正午には査定を終えておいて欲しいと言い置いて彼は出て行く。それからしばらくして坂口の妻を名乗る女から電話がかかってきてその文庫本を売るのを止めてもらえないかという。病院でそのことを栞子に話しその本をチェックすると、坂口には前科があったことがわかる。そこへ坂口の妻・しのぶがやって来てその本を返して欲しいという。栞子が本人以外には返せないというとそこに坂口本人があらわれる。坂口は前科のことを妻には話していなかった。栞子は坂口にはそれ以外にも秘密があることを見抜く。しかし、全ての事情を坂口に告白されても、しのぶの夫への愛は揺らぐことがなく、坂口は夫婦の思い出にかかわるその本『論理学入門』の売却を中止する。
第四話 太宰治『晩年』(砂子屋書房)
大輔は栞子が入院するに至った秘密を打ち明けられる。栞子が所持する太宰治の『晩年』は、祖父・父と受け継いできた初版本、しかも署名入りのアンカット本で極めて貴重なものだという。文学館の展示に貸し出したことから所持していることが知られ、大庭葉蔵と名乗る男からその本を譲るようしつこく迫られ、ついにある日、夕立の中で石段から突き落とされたという。栞子は大輔にレプリカを使って犯人をおびき出そうと言い出す。『晩年』が病院にあることに気付いた大葉だが、栞子は大葉と対峙し『晩年』を燃やし捨てる。錯乱する大葉を大輔が取り押さえ、大葉は逮捕された。栞子のあまりの手際に、自分が信頼されていないことを悟った大輔は、ビブリア古書堂を辞めるといって店の鍵を返し病院を辞す。
エピローグ
再び無職に戻った大輔は、就職面接の帰りに歩道のベンチにいる栞子に呼び止められる。栞子は今日退院したという。そして自分が一番大事にしている古書を渡して預かってくれと差し出す。本を読めない自分がもっていても仕方がないから預かれないと返す大輔に栞子は落胆するが、大輔は続けて『晩年』の事件が解決したら、その内容を話すという約束を果たして欲しいとせがみ、栞子はうれしそうに話し出すのであった。

2巻

プロローグ 坂口三千代『クラクラ日記』(文藝春秋)I
栞子が退院しビブリア古書堂へ戻ってきた。大輔は栞子から彼女の私物である5冊の坂口三千代クラクラ日記』を店の均一台に出すよう言われる。なぜ5冊も持っているのか大輔は不思議に思う。
第一話 アントイ・バージェス『時計じかけのオレンジ』(ハヤカワNV文庫)
大輔がひとりで店番をしているときに、桃源社刊 国枝史郎『完本・蔦葛木曽桟』を探しているとFAXが届き、直後に電話が掛かってきたが、大輔のつたない対応に「ほんまに素人やね、あんたは」と言って電話を切られてしまい、在庫があったのに自分のせいで客を逃した大輔は落ち込む。
小菅奈緒が店を訪れ大輔に、奈緒の自慢の妹である小菅結衣が書いた読書感想文のせいで家庭内に波風が立って悩んでいるとぼやく。それは『時計しかけのオレンジ』の感想文で、内容について学校で注意されたことから、親が買った本のチェックを強要してくるようになり、止めさせたいので相談しに来たということだった。大輔は栞子に相談するからといって感想文を預かる。栞子は感想文を読んで、筆者は本当の意味で『時計じかけのオレンジ』を読んでいないと指摘する。栞子は結衣を店に呼び出し、結衣が『時計じかけのオレンジ』を未読であることが分かった根拠を説明する。
第二話 福田定一『名言随筆 サラリーマン』(六月社)
大輔は高校時代に交際していた晶穂と再会する。晶穂の父が亡くなり、晶穂と父とは疎遠になっていたが蔵書をビブリア古書堂に売ることになっていたと言われ、五浦にとって初めての宅買いとなった。晶穂の実家に宅買いへ向かった大輔と栞子は、晶穂の異母姉の光代から「何十万円もの売り値がつく本が1冊ある」と教えられるが、査定ではそこまでの本は見付からなかった。ビブリア古書堂では買い取り価格を付けられない本を、晶穂は新古書店に売ろうと車に積んで先に出発するが、あることに気付いた栞子は、あわてて晶穂を追いかけ、『完本・蔦葛木曽桟』を大輔に問い合わせてきた人は晶穂の父であり、そこからビブリア古書堂か関わることになった理由を推理し、晶穂に亡父が本に託して遺したかったであろう想いを伝えるのだった。
宅買いから車で戻る途中、大輔は栞子の体調が悪いことに気付き、急いでビブリア古書堂まで戻った。帰りしな、大輔は廊下の壁際の本の山から売ったはずの『クラクラ日記』と女性の絵画を見つける。栞子をモデルに描かれていたように思えたが、日付は30年前であるため、栞子を描いた絵ではなかった。
晶穂が「大輔」と呼んでいたことを切っ掛けに、この話の終わりから、2人のお互いの呼び方が「五浦さん」「篠川さん」から「大輔さん」「栞子さん」に変わる。
第三話 足塚不二雄『UTOPIA 最後の世界大戦」(鶴書房)
文香によると、大輔が廊下で見つけた絵画の女性は、栞子と文香の母親篠川智恵子だという。智恵子は結婚する前はビブリア古書堂の店員であったこと、10年前に失踪したこと、また悲しむので栞子には智恵子の話は絶対にしないことを、大輔は文香から頼まれる。
ビブリア古書堂に、ダンボール箱を抱えた男性がやってくる。男は栞子に足塚不二雄の『UTOPIA 最後の世界大戦』(鶴書房版の初版)は幾らになるか尋ね、栞子の回答に男は満足そうにダンボール箱の中身の査定を依頼する。男は買い取り票に住所を途中まで書くと理由をつけて店から出て行き、ダンボール箱を置いたまま戻って来なかった。足塚不二雄は藤子不二雄のペンネームで最初の単行本。男が『最後の世界大戦』を所持していると考えた栞子は大輔を伴い、須崎と書き残した男の家を突き止める。須崎は2人迎え入れると、彼の亡父が藤子不二雄のコレクターであり、『最後の世界大戦』をビブリア古書堂から買ったこと、智恵子が栞子と同様に家を突き止めたことがあり、その方法が知りたかったこと、父がコレクションの一部を智恵子に譲ったことを明かし、『最後の世界大戦』を父に安価で売ってくれた智恵子に感謝していることを伝える。栞子により智恵子が家を突き止めた方法が明かされたため、『最後の世界大戦』以外の藤子不二雄の残りのコレクションを改めて買取らせてもらうこととなった。
帰り道、栞子は智恵子と須崎の父の間に行われたであろうやり取りを推理し、母・智恵子は須崎の思っているようなよい人物ではないこと、10年前に栞子へ『クラクラ日記』を残し失踪したことを大輔に明かす。また須崎から古書を買い取るために真実を打ち明けずにいたことは、母のやってきた不誠実な行為と変わらないと栞子は自己嫌悪し、自分は結婚するつもりはないと打ち明ける。
エピローグ 坂口三千代『クラクラ日記』(文芸春秋社)II
2週間後、大輔は栞子の私物の本を均一台に出すよう言われた中には3冊の『クラクラ日記』があった。大輔が栞子に尋ねると、新たに購入した理由は秘密と言われるが、大輔はその秘密を当ててみせた。

3巻

プロローグ 『王さまのみみはロバのみみ』(ポプラ社)I
プロローグとエピローグは文香の筆記の体裁で記されている。
文香は口が軽いことを自覚しており、それが原因で店に放火が起きたと思っている。ストレスがたまらないよう、夜中にパソコンに向かって近況を記していた。周りの人達はたちは誰も知らない。自分の行いを、家の中で見つけた『王さまのみみはロバのみみ』の物語に重ねる。
第一話 ロバート・F・ヤング『たんぽぽ娘』(集英社文庫)
絶版文庫を買うため、大輔と栞子は古本業者による市場である古本交換会へ出向く。市場には、篠川智恵子と確執があったため栞子を毛嫌いしている「ヒトリ書房」の井上太一郎、栞子が子供の頃から付き合いのある「滝野ブックス」の滝野蓮杖も参加していた。大輔たちは滝野が出品していた絶版文庫に入札するが、僅差で井上に落札されてしまった。翌日、ビブリア古書堂へ滝野から、井上が落札した絶版文庫からロバート・F・ヤング『たんぽぽ娘』が盗まれていたと電話がかかってくる。そこに井上がやってきて、タイミング悪くカウンターに置かれた『たんぽぽ娘』を栞子が盗んだ自分のものだと決めつけてきた。大輔の弁明により井上は栞子を疑う考えを改めるが、栞子たちが真犯人を探し出すまでは証拠として預かると『たんぽぽ娘』を持ち去ってしまう。その晩2人で居酒屋に行き、栞子は大輔に短編でもあるので『たんぽぽ娘』を読むことを奨める。亡くなった父親も母親からもらった『たんぽぽ娘』を時々出しては見ていたと語る。翌日、滝野もやってきていた。栞子が手はずを整えていたため犯人は店を訪れてることになっていた。栞子は犯人を特定するに至った推理を明かし、事件は解決した。
次の日の夕方、大輔は井上が預かっていた『たんぽぽ娘』を受け取るため「ヒトリ書房」を訪れ、井上からクリスマスカードを見せられる。それは失踪している智恵子が井上へ宛てたカードであった。大輔は井上から智恵子と栞子には気をつけろと忠告を受ける。
第二話 『タヌキとワニと犬が出てくる、絵本みたいなの』
坂口しのぶと正月4日の横須賀線で出会った大輔は、しのぶが子供の頃読んだ本を探して欲しいと頼まれる。ところが、本の題名も著者も出版社もわからないという。辛うじて聞き出せたのは「タヌキとワニと犬が出てくる、絵本みたいなので、たぶん西洋が舞台で」と本の内容もうろ覚えである。しのぶの実家を探すこと奨める大輔に、しのぶは五浦たちの同行を望む。翌日に栞子に相談しても分からずに頭を悩ませていると、夫の坂口昌司がビブリアを訪ねてきて、しのぶの目的は本を探すことではなく両親に会いに行くことであり、しのぶと両親の関係がうまくいっていないことと、自分がしのぶの実家に出入りを禁じられていることを話す。大輔たちがしのぶの実家の川端家に行くと、古いが手入れされている様子がうかがえる「なかよしの家」と書かれた犬小屋が残っていた。昔、小屋で飼っていた犬はトービクという名前で、それは本に出てくる犬の名前だった。家に入ると、しのぶの部屋は使っていた頃のままになっていたものの目指す本はなかった。しのぶはこの家になくても、まだ探す時間があるからと話す。しのぶの母親の川端ミズエは二言目には娘をこきおろし、本を探しに来たことまでくだらないことだと言い募り、それに対し栞子は腹を立てて反論する。さらに気付いたことを指摘しながら質問するが、揃って川端家から出されてしまう。
結局、文香と奈緒のおかげで「タヌキみたいな動物」の名前が判明したことから本が特定され、児童書専門の古本屋から取り寄せることができた。しのぶに本を渡す日、しのぶの父親も同席していた。本を通じて、しのぶがどんな気持ちで少女時代を過ごしていたのか、そして両親はどんな気持ちでいたのかを語り合う。そしてしのぶがこの時に本を求めた理由も、最近のしのぶの変化から栞子は分かっていたのだった。
第三話 宮澤賢治『春と修羅』(關根書店)
栞子は、母の智恵子と同級生だった玉岡聡子という女性から連絡を受ける。栞子と大輔は聡子の家を訪ね、盗まれた本宮沢賢治春と修羅』を取り返してほしいと頼まれる。聡子の亡くなった父親は『春と修羅』の初版本を2冊持っており、後に買い求めた状態の悪い方の本が盗まれたと言う。なぜ既に所持している上に状態の悪い本を買ったのかという疑問に対して、件の本はかつてビブリア古書堂から購入した本であり、聡子の父が働き始めた智恵子を応援するつもりで買ったのだろうと語る。最近になって遺言どおりに大部分の蔵書を父親の母校に寄贈しようとする聡子に対して、兄と兄嫁は売却して金を分けることを要求してきたために口論となり、2人が去った後に書斎を見てみると本が無くなっていたという話だった。栞子と大輔は、聡子の兄夫婦とその息子の昴に会って話し、栞子は犯人を特定する。犯人から盗んでしまった理由を聞き、穏便に本を取り戻すことに成功する。玉岡聡子へ返すにあたっては、状態の悪い方が大事だという本当の理由や、聡子が隠していたこと、思い至ることができなかった『春と修羅』に関する亡父の真意を突きつけ、聡子の父が望んでいたとおりにするように奨めるのだった。
話の終わりに聡子から、栞子の父は栞子が『クラクラ日記』を処分しようとしていることに気付いていたことを聞かされる。ビブリア古書堂に戻り、父の遺品を探す栞子。しかし『クラクラ日記』を見つけることは出来なかった。
エピローグ 『王さまのみみはロバのみみ』(ポプラ社)II
文香は父の部屋で探しものをしていた2人を見て、秘密がバレるかもしれないと思った。栞子にバレたら、この『王さまのみみはロバのみみ』のような行為を止めなることになると考えた文香は、今まで書いてきた日記ではなく手紙の体裁の文面を書き、メールアドレスを確認してから送信した。

4巻

この巻は長篇である。章題として取り上げられている作品はすべて江戸川乱歩の作品・著書である。なお、小説中で江戸川乱歩『二銭銅貨』のトリック、『人間椅子』『大金塊』の趣向を明かしている。

プロローグ
東日本大震災の余震がまだ続くある日、篠川姉妹は従姉妹の結婚式に行き、大輔はひとりで店番をしていた。余震があったあと一本の電話があった。栞子によく似た声は、篠川姉妹の失踪した母親・智恵子からだった。店を見下ろせる北鎌倉駅のホームから掛けてきたのだ。「また来るわね。娘たちによろしく」ということばを残して智恵子は姿を消した。
第一章 江戸川乱歩『孤島の鬼』
智恵子から電話のあった翌日、篠川智恵子に用事がある、いないんだったら古書に詳しい人を呼んで欲しいという客が来た。やってきたのは代理人で、江戸川乱歩の古書に関することだという。栞子は智恵子が何かをしようとしているのなら放っておけないと、大輔と雪ノ下の依頼主の来城慶子のもとへ赴く。昨日の代理人は田辺邦代といい慶子の妹だった。案内された書斎にあった蔵書は、江戸川乱歩の生前に出版した一般向けの著書が、雑誌のバックナンバーも含めて全て揃っている大変な価値あるコレクションだった。慶子は喉頭癌で声帯を取ってしまった上に震災で怪我をして車椅子で生活していた。邦代は宮城県に住んでいたが、震災のこともあり、姉の面倒をみるために鎌倉に滞在しているという事情があった。声帯以外からの発声を練習中だという慶子の会話がわかるのは、妹の邦代と甥のカズヒロだけで、邦代の通訳や事前の打ち合わせからの説明によると慶子は、名士で資産家の鹿山明の世話になっていたが、明が死んだために彼の蔵書と雪ノ下の家を相続していた。姉妹は一冊のフェルトのカバーがかかった江戸川乱歩の著書の初版本を示し、本に触れずに書名を回答することを求められる。これは依頼にあたってのテストであり栞子は『孤島の鬼』と正解する。クローゼットにある特殊な金庫を見せられ、金庫の中には明が慶子に遺した江戸川乱歩に関する何らかの珍品が入っており、開けるためには鍵の他に暗証番号が必要で、鍵は鹿山家から届けてもらう手はずだが、暗証番号が不明なので調べて欲しいという依頼内容だった。成功すれば蔵書を全てビブリア古書堂に売るという。慶子からこれ以上の情報を得ることは身体的な障害のためか捗々しく行かなかったので、さらに詳細な鹿山明の情報は、書いて纏めてたものを届けてもらうことになった。邦代は、慶子のいないところで、実は鹿山家から鍵は見つからないと言ってきたので、鍵の捜索もやって欲しいと頼んできた。
第二章 江戸川乱歩『少年探偵団』
その日の夕方、来城慶子からの資料が届いたといので改めてビブリア古書堂を訪れると、文香と志田がいた。大輔の本を読めない体質のことは栞子から文香、文香から志田に伝えられていたことを大輔は知らされる。志田はヒトリ書房の井上と何かあったかと聞いてきた。文香はヒトリ書房を知らなかった。
雪ノ下を去ってから2時間も経たないうちに届いた資料は、何枚ものレポート用紙に系図やら鹿山明の父・鹿山総吉の略歴などが、確りとまとめられていた。明は総合専門学校の経営者として成功し、今は明の息子・義彦が学長を務めている。邦代は手回し良く、鹿山義彦に明日の夕方の会見の約束まで取り付けていた。
翌日、栞子と大輔が鹿山邸を訪ねて会った義彦に言うには、鹿山家の家族たちは明のことは厳格で生真面目な教育者だと思っていて、来城慶子はおろか、鎌倉の家の存在すら遺言状で初めて知ったということだった。鹿山家では教育方針も厳しく読書やテレビ鑑賞も制限されていたが、乱歩の少年探偵団のシリーズだけは父親が買ってくれたという。そして探偵小説に出てくる大邸宅のような鹿山邸で、子供のころは妹と幼馴染と3人で少年探偵団ごっこをして遊んでいたと懐かしげに語るのだった。
栞子は義彦に、『少年探偵 江戸川乱歩全集』と明氏の書斎を見せて欲しいと頼む。義彦の本はポプラ社版であり、明の書斎の抽斗からは、光文社版の江戸川乱歩全集の読者への特典プレゼントであるBDバッチが出てきた。バッジは各冊に1枚ついている引換券3枚で1つもらえたものなので、光文社版が3冊以上はあるはずだったが見当たらなかった。義彦の妹の直美にも話を聞きたいと申し出ると、同居はしているがヒトリ書房で働いており、今日は残業で遅くなると知らされる。ヒトリ書房に行くと閉店後だったが、主人の井上は留守で直美に話を聞くことができた。そして、栞子と直美はシリーズの中の『魔法人形』を語り合い盛り上がる。だが直美は、子供には厳しく冷たく接していたにもかかわらず、愛人を囲っていた父の明を嫌っており、父の本のことは知らないと突っぱねられてしまう。その翌日、ビブリアに井上が話があるとやって来たため、居合わせていた志田に店番を頼み、母屋で話を聞くことになった。井上にとって鹿山明は子供の頃の知り合いであり、古本屋を始めたときに陥った経営危機を助けてくれた恩人だという。実は幼馴染であった直美が婚家を家出したときも直美をアルバイトに雇ったが、直美には明のコレクションや取引のことは秘密にしていた。ところが篠川智恵子が、明や直美の私的な秘密の事情を嗅ぎつけてたことを仄めかして、鹿山明に紹介するように脅してきたことがあり、それが井上が智恵子を忌避し嫌悪する理由だったが、話を聞いていた栞子の様子をみて智恵子のような悪辣さを持っていないことを知り、栞子に対する態度が少し和らぐのだった。井上は鍵を探すついででいいから、明が自分に無関心だったという直美の誤解を解いて欲しいと言い、鹿山家の再調査の許可が出るように義彦を説得してくれた。
栞子たちが鹿山邸を再訪すると、井上の協力によって直美が知らずに案内してくれた書斎の秘密隠し場所には、あるはずだが見当たらなかった出版社版の乱歩の少年向けシリーズなどが収められていた。井上もその場に現れ、呆然とする直美に栞子は、明が直美のことを親として、また同好の志として見守り気遣っていたことを示す品も共に収められていたことを教えて手渡す。戦前版の『大金塊』を含めた4冊が欠けていたが、井上と直美が去った後、さらに探すと残りの4冊と共に鍵が見つかった。鍵が見つかったので慶子の家に急行すると来客中であり、その来客とは篠川智恵子であった。
第三章 江戸川乱歩『押絵と旅する男』
急いで帰ろうとする栞子と大輔だったが、智恵子は北鎌倉の家に帰るのならば乗せて欲しいと車に乗り込んできた。仕方なく同乗を許してビブリア古書堂に到着すると、母屋の玄関先には文香が智恵子を待っていた。文香は自分に何も残していかなったことを訴えると、智恵子が残していたと答え、実は幼い文香は母親がいなくなったことに対して癇癪を起こして投げ捨てた本を、栞子が保管していたという。その本は安野光雅『旅の絵本』(福音館書店)だった。文香は、母恋しい思いはあるが、篠川家と店は姉妹で維持できているので母が必要な状態には既に無く、今までのような連絡もせず会いに訪れない状況を続けるようなら、帰ってきた時に家に入れない可能性もあり得ることを智恵子に言い渡す。
去り際、智恵子は大輔と栞子に、あの金庫には「『押絵と旅する男』の第一稿」が入っているという自分の推理を語る。乱歩自身の手で大須のホテルで便所に破り捨てたとされており、横溝正史も同泊していたため随筆の中で証言しているが、捨てた場面に立ち会ったわけではないので、当時大須のホテルで働いていたはずの鹿山総吉が捨てた原稿を回収した可能性が高いと予測していた。
智恵子は明日の午後には暗証番号を探し出して見せるので、蔵書の買い取りは折半にすることを申し出る。栞子が断るとヒントをいくつか残して智恵子はあっさりと去って行ったが、その様子を訝しんだ栞子は大輔に急いで車を鹿山邸に出すように頼むと、案の定、智恵子は栞子と自分の声が似ていることを電話で利用し、代理人として先回りしていた。しかし、ふたりは何とか暗号解読に必要なトリックが仕込まれたガジェットを手に入れることに成功する。大輔の助け舟もあって栞子は遂に解読し、翌日に金庫は開けられたのだった。
金庫が開けられた直後に、中にあった鹿山明の形見の品物を持って旅に出た慶子を見送った栞子と大輔。そこに現れた智恵子は金庫の中身について慶子がふたりを誑かした可能性を告げ、それを確かめるために共に追いかけ、さらに智恵子の蓄えた本の世界を共有し合おうと栞子を誘うが、栞子は大輔とデートの約束を優先して断ったため、智恵子はひとりで慶子のあとを追っていった。
この事件が解決した次の定休日に大輔は栞子とデートをし、彼女への想いを告白する。
エピローグ
デートの数日後、栞子の留守を見計らって大輔は志田を呼び出し問い詰め、智恵子と志田に縁があったことと、智恵子が篠川家から離れた理由がとてつもなく入手困難な古書を探すためであったことを知るのだった。

5巻

6巻

登場人物

五浦大輔(ごうら だいすけ)
主人公で、語り手。23歳の男性。
小学生の頃の些細な悪戯が原因で、活字を見ると体調が悪くなる「活字恐怖症」であり、読書とは縁遠い人生を送ってきた。本当は、本に対して憧れに近い感情を抱いている。本はほとんど読めないが、漫画ならば多少は長い時間読むことができ、小説でも短編ならば体調が悪くなる前に完読できることもある。
内定していた会社が倒産し、大学卒業後無職の状態が続いていたために、母親につけられたあだなは「ぷー輔」。祖母が遺した『漱石全集』を査定してもらうために「ビブリア古書堂」を訪れ、そこで栞子に祖母の秘密を解いてもらった縁で、アルバイトとして就職する。
学生時代に柔道で鍛えたため、大柄な逞しい体格をしていて市販のスタンガン程度では気絶せず、階段から落ちても立ち上がることができるほど丈夫。だが勝負事はあまり好きではなく朴訥で心優しく、正義感が強い。
篠川栞子(しのかわ しおりこ)
もう1人の主人公で、探偵役。北鎌倉の古本屋「ビブリア古書堂」の女店主。25歳。物語開始(第1巻第1話)の前年に前店主の父親を亡くし、店を継いだ。
黒髪の長髪に透き通るような肌をした美人で母親似。近眼で、普段は眼鏡を着用している。小柄で身体は細いが、巨乳。
本の話以外では他人と目を合わせることもできない、内向的な性格。古書の知識は並大抵のものではない。普段はたどたどしいしゃべり方をするが、本が絡む話になるといわゆる「スイッチが入った」状態になり、別人のようにキビキビとしたしゃべり方にかわり、相手に構わずその知識を語り続ける。
登場時に腰椎、脊椎などに重篤な怪我を負って入院しており、退院してからも杖をついている。
希少な本を入手するためなら手段を選ばない性格だった母親を嫌っているが、自分も母親と似た部分があることを自覚しており、そのことを恐れている節がある。
篠川文香(しのかわ あやか)
栞子の妹。大輔の母校に通う高校生。
古書についての知識はほとんどない。明るく無邪気で誰とでも打ち解けられるが、口が軽い。篠川家の家事をほぼ取り仕切っており、料理が得意。
篠川智恵子(しのかわ ちえこ)
栞子・文香の母。10年前に失踪し、行方不明になっている。自分の持っていた本の知識は栞子に受け継がれているが、推理力や知識の豊富さは長女以上である。洞察力は人間関係にも及び、押しが強く、自分の望みを叶えるためや損得勘定から不道徳や不誠実なことも辞さない。
大学院を家の事情で退学したのち、客として出入りしていたビブリア古書堂の店員となり、前店主と結婚した。店では主に通販を担当し、独自に動いて「儲かっていた」と言われるほどの利益をあげていた。失踪はしているが離婚の手続きはしていない(4巻)。
栞子と瓜二つである。
志田(しだ)
ビブリア古書堂の買い取り常連の男で、せどり屋。ホームレスで、鵠沼の橋の下に住んでいる。
『落穂拾い』にまつわる事件で小菅と親しくなる。その後本に対する感想を言い合う関係となって、彼女から「先生」と慕われるようになった。金属製の爪切りと耳掻きを贈られた。
「志田」は偽名。本名は不明であったが、5巻で判明する。
篠原智恵子は恩人。
笠井菊哉(かさい きくや)/田中敏雄
志田の知り合いで、同じくせどり屋。長身でノーブルな雰囲気の青年。インターネットで廃盤CDやゲームを取り扱う「笠井堂」の店主。志田からは「男爵」と呼ばれる。
1巻で大庭要三と名乗り、栞子の「晩年」を狙って栞子を階段から突き落とした。笠井菊也は「せどり男爵物語」からとられた偽名であり、本名は田中敏雄で、作中で大輔の祖母と不倫関係にあったとされている田中嘉雄の孫である。
1巻の事件で被告として裁判を待つ身であるが、保釈中の6巻で再登場し、主人公のふたりに、栞子の持つ「晩年」とは別の祖父が手放した「晩年」の捜索の依頼をする。大輔に対して既知感を持っており、6巻で大輔が祖父にまつわる縁を明かした際には、大輔に対して血縁者としての情を表している。
小菅奈緒(こすが なお)
文香の同級生で、女子高生。ショートカットで長身の活発な性格。ボーイッシュで男口調で話す。学校では人気がある。
『落穂拾い』にまつわる事件をきっかけに、ビブリア古書堂の常連客となったが、事件に関して自分が取った行動や気持ちを全て言い当てられたことから、栞子に対しては苦手意識があり、主に大輔や文香と交流している。
坂口昌志(さかぐち まさし)、坂口しのぶ
逗子に住む夫婦。『論理学入門』をめぐる一件を機に、ビブリア古書堂の常連客となった。
作者は自分と同じ生年月日のキャラクターを登場させる癖があり、本作では坂口しのぶが当たるという[7]
滝野蓮杖(たきの れんじょう)
港南台にある「滝野ブックス」の息子。古書市場では経営員。
短い髪をきっちりと分け、メタルフレームの眼鏡を着用し、顎に薄く髭を生やしている。栞子とは顔見知りであり、幼い頃からお互いの家を行き来していた間柄。
井上太一郎(いのうえ たいちろう)
辻堂にある古本屋「ヒトリ書房」の店主。主にミステリーを取り扱っており、品揃えが充実している。
真っ白な白髪と針金のように痩せた体躯。かつて智恵子には私生活を種に顧客の紹介を強要されたことがあり、栞子に対しても冷淡な態度を見せる。

制作背景

著者の三上は実際に古書店で3年間にわたるアルバイトの経験があった。ファンタジーやホラーで小説家としての実績を重ねたあと、書き下ろしの依頼を受けていつか書きたいと思っていた古書店を舞台とした小説を別の企画と共に提案したところ、この企画の方が採用され、執筆に至った。この企画は20代男性を対象としたものであったが、2013年現在、読者層は女性が8割を占めている。[8]

三上は4巻発売時点で物語はそろそろ後半に入るという構想を語っており、長さとしては「あと2〜3巻か、もう少し伸びるかも」と語っている。あまり長い作品にはできないという展望であるが、その一因は「古書のネタ探しが大変」なためだという。[8]

既刊一覧

# タイトル 発行日 ISBN
1 ビブリア古書堂の事件手帖 〜栞子さんと奇妙な客人たち〜 2011年03月25日 ISBN 978-4-04-870469-4
2 ビブリア古書堂の事件手帖2 〜栞子さんと謎めく日常〜 2011年10月25日 ISBN 978-4-04-870824-1
3 ビブリア古書堂の事件手帖3 〜栞子さんと消えない絆〜 2012年06月23日 ISBN 978-4-04-886658-3
4 ビブリア古書堂の事件手帖4 〜栞子さんと二つの顔〜 2013年02月22日 ISBN 978-4-04-891427-7
5 ビブリア古書堂の事件手帖5 〜栞子さんと繋がりの時〜 2014年01月24日 ISBN 978-4-04-866226-0
6 ビブリア古書堂の事件手帖6 〜栞子さんと巡るさだめ〜 2014年12月25日 ISBN 978-4-04-869189-5
オフィシャルブック
タイトル 発行日 ISBN 出版
栞子さんの本棚 ビブリア古書堂セレクトブック 2013年5月25日 ISBN 978-40-4100827-0 角川文庫

作中で扱われた古書

標題として明確に記されている本および各巻末で参考文献として掲げられているもののうち本文で内容にふれられているものを列挙する。古書であるため、当然ながらそれら書籍は本作発表当時には絶版であるものが多く、現在発行されている同一作品と内容が異なるものも多々ある。

第1巻
第2巻
第3巻
第4巻
参考文献と本文中の記述とのずれがあるので適宜選択した。
江戸川乱歩の各作品は、光文社文庫版『江戸川乱歩全集』全30巻に収録されている。
第5巻
第6巻

社会的評価

2012年1月、発行部数がシリーズ累計103万部となり、メディアワークス文庫で初のミリオンセラー作品となった[3]

累計発行部数は2012年4月時点で200万部、第3巻が発売された同年6月時点で300万部を突破した[9]。2012年の文庫部門総合ベストセラー第1位(トーハン調べ)で、2013年2月発売の4巻の初版発行部数が80万部であり、累計は600万部をこえた[4]

受賞や書評雑誌によるランキングとしては、第65回日本推理作家協会賞(2012年)短編部門に「足塚不二雄『UTOPIA 最後の世界大戦』(鶴書房)」(第2巻収録)がノミネート、2011年度本の雑誌が選ぶ文庫ベストテン第1位に選ばれた[10]

2012年には本屋大賞にノミネートされた[5]。文庫本のノミネートは初[11]。また、同じく書籍関係者である図書館員が「来館者に手に取ってもらいたい本」を選ぶ「TRCスタッフが選んだ本2012」(図書館流通センターによる企画)では、第1巻が文庫部門の1位となった[12][13]

登場書籍への影響

テレビドラマ化以降、作中に登場する夏目漱石の『それから』、宮沢賢治の『春と修羅』などのモチーフとなった書籍も売上を伸ばし、放送直後にネット書店などで売り切れ状態になるという現象も起きている。作品にはマニアックなものも多く、異例な反応として注目を集めた。『ダ・ヴィンチ電子ナビ』編集部は、小山清『落穂拾ひ』などは絶版となっていたが、2013年の3月にちくま文庫から復刊されることが決まったことを、本作で取り上げられたことによる影響とみている。[2]ロバート・F・ヤングの『たんぽぽ娘』が河出書房新社から復刊される際にも、本作の登場書籍であることにふれられている[14]

漫画版

2012年から2つの漫画版が連載を開始している。

アルティマエース・ASUKA版(ナカノ作画)

角川書店の隔月刊雑誌漫画雑誌『アルティマエース』Vol.3号(2012年2月18日発売)より連載開始[15]。アルティマエースがVol.7号で休刊となったため、角川書店の月刊少女漫画雑誌『月刊Asuka』の2013年2月号(2012年12月24日発売)より連載を再開し、2014年9月号(2014年7月24日発売)まで連載された。原作の第1巻から忠実にコミック化しており、原作第1巻のコミカライズは第1巻から4巻に渡るなどゆったりとした丁寧なペースでコミカライズしていたが、原作第2巻を最後まで描いたコミックス第6巻にて完結した。作画はナカノ、単行本のレーベルは角川コミックス・エース

2012年8月現在、第1巻だけで発行部数が10万部を突破している[16]

# 発行日 ISBN
1 2012年6月26日 ISBN 978-4-04-120371-2
2 2013年1月10日 ISBN 978-4-04-120581-5
3 2013年7月26日 ISBN 978-4-04-120780-2
4 2014年1月25日 ISBN 978-4-04-120943-1
5 2014年3月24日 ISBN 978-4-04-121053-6
6 2014年9月26日 ISBN 978-4-04-102113-2

good!アフタヌーン版(交田稜作画)

講談社の漫画雑誌『good!アフタヌーン』2012年23号(2012年7月7日発売)から連載開始[17]。作画は交田稜

# 発行日 ISBN
1 2012年12月21日 ISBN 978-4-06-387866-0
2 2013年6月7日 ISBN 978-4-06-387901-8
3 2014年1月23日 ISBN 978-4-06-387943-8

テレビドラマ

2013年1月14日から3月25日まで、フジテレビ系列の月9枠にて連続テレビドラマ化された。栞子を演じた主演女優は剛力彩芽で、当時の彼女のボーイッシュなイメージとは不一致なキャスティングは、インターネット上などで賛否両論を生んだ[18][19]。ドラマの時系列は原作と違いエピソードの順番がシャッフルされたり、栞子の怪我の事情が変わった部分がある。また、オリジナル要素としてメインキャラクターたち行きつけの甘味処とその店員たちが登場した。

脚注

  1. ^ 杉江由次 (2011年10月25日). “10月25日(火) - 帰ってきた炎の営業日誌”. WEB本の雑誌. 本の雑誌社. 2013年3月7日閲覧。
  2. ^ a b この段落の出典。マニアックでも売れる! “ビブリア古書堂効果”がすごい!”. ダ・ヴィンチ電子ナビ. メディアファクトリー (2013年2月25日). 2013年2月27日閲覧。
  3. ^ a b ビブリア古書堂の事件手帖:第1巻が発売9カ月で初の首位獲得 シリーズ累計は100万部を突破”. まんたんウェブ (2012年1月12日). 2012年1月21日閲覧。
  4. ^ a b 6巻初版帯より。
  5. ^ a b 本屋大賞”. 本屋大賞 (2012年1月23日). 2012年1月23日閲覧。
  6. ^ 6巻85~86頁。補足ながら、通常、ビブリア、ビブリアン、は、「古書マニア」といった意味合いで使用される。
  7. ^ 講談社アフタヌーン『ビブリア古書堂の事件手帖』”. 2013年1月5日閲覧。
  8. ^ a b この段落の出典。多葉田聡 (2013年3月8日). “「ビブリア古書堂」が大ヒット、三上延さん”. 読売新聞. 読売新聞社. http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20130304-OYT8T01066.htm 2013年3月11日閲覧。 
  9. ^ ビブリア古書堂の事件手帖 : 3巻で累計300万部突破 異例のハイペース”. まんたんウェブ. 2012年6月22日閲覧。
  10. ^ 『ビブリア古書堂の事件手帖』2月22日発行第4巻 初版発行80万部、シリーズ累計470万部” (PDF). 角川グループ (2013年2月19日). 2013年2月23日閲覧。
  11. ^ 文庫で初の「本屋大賞」候補『ビブリア古書堂の事件帖』が売れる理由”. WEB本の雑誌. 本の雑誌社 (2013年2月6日). 2013年3月7日閲覧。
  12. ^ TRCスタッフが選んだ本2012(2012年12月3日)、図書館流通センター、2013年3月14日参照。
  13. ^ 全国の図書館員が選ぶ「来館者に手にとってもらいたい本」”. ダ・ヴィンチ電子ナビ. メディアファクトリー (2013年2月6日). 2013年3月14日閲覧。
  14. ^ たんぽぽ娘|この本の内容”. 河出書房新社. 2013年5月16日閲覧。
  15. ^ 「ビブリア古書堂の事件手帖」アルティマでマンガ連載開始”. コミックナタリー (2012年2月18日). 2012年2月25日閲覧。
  16. ^ ヤングエース2012年9月号(2012年8月4日発売)443頁
  17. ^ 「ビブリア古書堂の事件手帖」マンガ化、good!アフタで”. コミックナタリー (2012年5月7日). 2012年7月1日閲覧。
  18. ^ 「THIS WEEK:原作ファンが猛反発 剛力彩芽がフジ月9初主演決定の舞台裏」『週刊文春 2012年12月6日号』、文藝春秋、53頁。 
  19. ^ 古書店の剛力彩芽 肩にかけたショールで知的な落ち着き表現”. NEWSポストセブン. 小学館 (2013年1月21日). 2013年4月12日閲覧。

外部リンク