キャラクター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。124.100.243.131 (会話) による 2012年4月22日 (日) 10:11個人設定で未設定ならUTC)時点の版であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

ファイル:Candyキャンディー.jpg
キャンディにもなっているアニメキャラクター

キャラクターは、小説漫画映画アニメコンピュータゲームなどのフィクションに登場する人物や動物など、あるいはそれら登場人物の性格や性質のこと。

概説

人間動物のような生物や、生物を模したロボットに限らず、さまざまな道具、時には生物の器官元素、さらには感情自然国家など、ありとあらゆる概念は擬人化とデフォルメを介することでキャラクター化されうる。略してキャラとも言われる。

「キャラクター」の語源である英語の「character」という語の本来の意味は、「特徴」「性質」である。その意味での用例として、似た性質を持つ人物が社会集団に複数いる状態を『キャラがかぶる』と表現することがある。また、人物を意味する場合も本来は架空の登場人物とは限らず、日本語でもCMキャラクターなどは実在の人物をさす用例も多い。

日本語において、架空の登場人物を指す「キャラクター」という言葉は、1950年代ディズニーアニメーション映画の契約書にあった「fanciful character」を「空想的キャラクター」と訳した際に誕生したとされている[1]

登場人物としてのキャラクター

アニメキャラクターの着ぐるみ

通常は物語を構成するために位置づけされる登場人物のことを指し、物語に関与しない群集モブキャラクター)や通行人などがキャラクターと呼ばれることは少ない。キャラクターには必要に応じて外見的特徴や内面的特徴(具体的には体格、服装、職業、経歴、特技、欠点、口癖など)が設定される。

サブキャラクターは、モブキャラクターとほぼ同じ意味にあたる[要出典]

広く大衆性を獲得した場合、そのキャラクターは帰属する集団の一般的イメージを再定義する。シャーロック・ホームズなどのいわゆる名探偵から連想される探偵像は、現実の(21世紀初頭における)探偵とは乖離したキャラクター像となる。また、実在した人物を題材にして優れた作品が作られた場合も、実際とは程度の差こそあれ、かけ離れた人物像が広く認識されることもある。たとえば宮本武蔵または坂本龍馬の一般的イメージは、吉川英治または司馬遼太郎の著作による影響を色濃く受けている。 また、企業などの放送コマーシャルやポスター媒体の広告モデルとして起用されるタレント・俳優・モデルらのことを「(商品名・または企業名)イメージキャラクター」として紹介される事例も多い。

種としてのキャラクター

単一の登場人物(生物)ではなく、作品に登場する架空の生物種そのものがキャラクターとして扱われる場合がある。これらは登場人物としてのキャラクターとは異なる性質を持つ。

キャラクターとなる架空の生物には複数の個体が存在するため、外見的あるいは内面的な性質には様々な個性を持つものが許容される。よって、唯一無二の存在と比較するとキャラクターイメージの形成が難しい反面、各人の持つイメージも壊しにくく、スピンオフ作品やキャラクターグッズにおける多様な展開が容易である。

キャラとキャラクター

漫画評論家の伊藤剛は、その著書『テヅカ・イズ・デッド』にて、図像として描かれて「人格のようなもの」を想起させ、作品を離れて自律化しうるキャラと、それをベースとしてテクストの背後に人生や生活を感じさせるものとしてのキャラクターを使い分けている。そして、例えば「『NANA』はキャラクターは立っているがキャラは弱い」というように、キャラクターとしての強度とキャラとしての強度は一致しないとしている(『NANA』の例でいえば、登場人物の一人であるハチがあたかも現実に存在するかのように思えるという意味でキャラクターは立っているが、二次創作などを通じて原作と異なる環境でも存在感を発揮するという意味でのキャラの強度は低いと考えられる)。[2]

この「キャラクター」と「キャラ」の使い分けは、しばしば批評家東浩紀が提示したデータベース消費と絡めて言及される。円堂都司昭によれば、データベース消費論でいうところの物語の水準が「キャラクター」でデータベースの水準が「キャラ」となる[3]。さらに、現実世界における擬似的な仮想人格としてのキャラについて論じるときも、伊藤の「キャラ/キャラクター」の使い分けが援用されることがある[注 1]

キャラクターの商品展開

優れたキャラクターは高い人気を持ち、ぬいぐるみなどの玩具や、キャラクターの印刷された文房具などによって、キャラクターの出自である作品以上の売上がもたらされることも稀ではない。

漫画やテレビなどのキャラクターを商品に印刷したり、企業のイメージアップにテレビCMに使うなどすると、ライセンス料を払わねばならないためコストは上がるが企業のイメージアップや販促に有効な手段であるので、キャラクターの作成に力を入れている企業、団体も多い。

そのほか、公共交通機関を運営する会社に於いても、会社の所有する乗り物でキャラクターを作ったり、擬人化された動物等に会社の制服を着せる等して、それを、関係施設や切符などにプリントしたりして、イメージアップを進めていたりする。首都高の場合は『Mr.ETC』、福岡市交通局(福岡市地下鉄)の場合は『ちかまるくん』、京阪電鉄の場合は『おけいはん』と呼ばれるイメージキャラクターが存在する。

ミッキーマウス」は商業的かつ世界的にも成功したキャラクターのひとつであり、多くのキャラクター商品が販売されている。ゲームの隠しキャラクターだった「うみにん」のように出自の作品の知名度は大して無かったものの、商品化によって人気を獲得する例もある。また、「ハローキティ」「バービー」「モンチッチ」のように商品であることを目的としたキャラクターも多く考案されていて、それらの中には元々背景となる物語が存在しない物もある。

対象

70年代以前はキャラクターを使った商品展開の対象は主に子供たちであったが、東京ディズニーランドのオープン以降は大人達へも広がっていき、80年代にはロボットアニメブームにより大人も対象とした商品展開が増え始めた。

例えば銀行で既存キャラクターを統一的に使用し、預金者に対しグッズをプレゼントしたりキャッシュカード通帳に描くことでそのキャラクターのファンに顧客になってもらおうとする方法は広く取られている(三菱東京UFJ銀行におけるディズニーキャラクター、横浜銀行におけるトムとジェリーなど)。また、近年の萌えブームに便乗しておたく層をターゲットとした萌え絵美少女キャラクターを利用する商品展開も増えつつある(埼玉県久喜市(旧・鷲宮町)・幸手市におけるらき☆すたを起用した町おこし秋田県羽後町における西又葵キャラ起用商品など)。

問題点

日本においてキャラクターを使った商品展開は深く浸透しているが、一方で以下のような批判や問題もある。

  • 本来子供向けに想定されている漫画・アニメ・特撮(北斗の拳ウルトラマンなど)をパチンコパチスロにまで起用[注 2]タイアップ)するケースも多く見られ、節操のないライセンスが著作権の乱用になっているのではないか、という指摘もある(パチンコ店には児童および保護者同伴でも入店できないため、不公平なものになる)[要出典]

市場規模・実態

キャラクター商品の小売市場規模 推移(日本国内。単位:億円)[4]

1995: 17500

1996: 16500

1997: 18500

1998: 19300

1999: 20700

2000: 16800

2001: 16300

2002: 16000

2003: 17000

2004: 16420

2005: 16100

2006: 16018

2007: 15936

2008: 15406

2009: 15770

2010: 16170

キャラクター・データバンクの調べによると、2010年の日本のキャラクターの小売市場は推定で1兆6170億円。2010年時点で2年連続で前年を上回っている。


バンダイキャラクター研究所(現:キャラ研)が2000年に行った調査によると、小学生から60歳代までの日本人のうち、何らかのキャラクター商品を所有している人の割合は83.9%、また好きなキャラクターがあると回答した人の割合は87.0%に達する。

法律上の取り扱い

日本の著作権法上、キャラクター(の性格)には著作権を認めていない。キャラクターは漫画・アニメ・小説等の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であり、具体的表現そのものではなく、著作物ではないとの判断による。

漫画に登場するキャラクターの場合、「絵」が著作物として保護される場合があるが、キャラクター(の性格)自体は保護されない。最高裁はポパイ・ネクタイ事件判決[5]でこの立場に従い、『ポパイ』のキャラクターはポパイの登場する連載漫画から独立した著作物ではない(第1回公表漫画の著作権の保護期間が満了したためポパイの絵の著作権も消滅)と判示した。

マスコット・キャラクター

団体、商品、催事などの認知度を高める手段として、マスコットキャラクターがよく用いられる。略してキャラクターとも呼ばれる。詳細はマスコットの項を参照のこと。

脚注

注釈

  1. ^ キャラ (コミュニケーション)#キャラとキャラクターを参照。
  2. ^ 権利者によっては、パチンコ・ギャンブルのように児童や青少年に不適切なものや、青少年に提供できないサービスなどに対してはライセンスしないケースもある(藤子プロなど)。

出典

  1. ^ 宮下真(著)、星野克美(監修)『キャラクタービジネス 知られざる戦略』青春出版社、2001年、64-65頁。ISBN 4413018273
  2. ^ 伊藤剛 『テヅカ・イズ・デッド ひらかれたマンガ表現論へ』 NTT出版、2005年、54頁・95-108頁。ISBN 978-4757141292
  3. ^ 円堂都司昭 『ゼロ年代の論点 ウェブ・郊外・カルチャー 』 ソフトバンククリエイティブ、2011年、143頁。ISBN 978-4797362145
  4. ^ キャラクター・データバンク調べによる。1995年〜2003年の数字は『CharaBiz Data』2004、キャラクター・データバンク、2004年、7頁。2001年〜2010年の数字は『CharaBiz Data』2011(10)、キャラクター・データバンク、2011年、37頁。
  5. ^ 最判平成9年7月17日民集51巻6号2714頁

関連項目