1973年ベルギーグランプリ
レース詳細 | |||
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1973年F1世界選手権全15戦の第5戦 | |||
ゾルダー・サーキット (1973-1974) | |||
日程 | 1973年5月20日 | ||
正式名称 | XXXI Grote Prijs van Belgie | ||
開催地 |
ゾルダー・サーキット ベルギー リンブルフ州 ヒュースデン=ゾルダー | ||
コース | 恒久的レース施設 | ||
コース長 | 4.220 km (2.622 mi) | ||
レース距離 | 70周 295.379 km (183.540 mi) | ||
決勝日天候 | 晴(ドライ) | ||
ポールポジション | |||
ドライバー | ロータス-フォード | ||
タイム | 1:22.46 | ||
ファステストラップ | |||
ドライバー | フランソワ・セベール | ティレル-フォード | |
タイム | 1:25.42 (28周目) | ||
決勝順位 | |||
優勝 | ティレル-フォード | ||
2位 | ティレル-フォード | ||
3位 | ロータス-フォード |
1973年ベルギーグランプリ(英: 1973 Belgian Grand Prix)は、1973年のF1世界選手権第5戦として、1973年5月20日にゾルダー・サーキットで開催された。
30回目の「ヨーロッパグランプリ」の冠がかけられた[1][注 1]レースは、ティレル・006を駆るジャッキー・スチュワートが優勝した。
レース前
ベルギーGPは前年のニヴェル・ボレールからゾルダー・サーキットに移った[2]。しかし、本レースの開催1週間前にジャッキー・スチュワート、エマーソン・フィッティパルディ、フランソワ・セベールといった数人のドライバーがコースを視察した後、過去のレースによる影響で路面が荒れたことを指摘し、ゾルダー・サーキットの所有者は本レースのわずか1週間前にコースの再舗装を行うことを即座に決めた。
エントリー
本レースからカーナンバーが年間を通じて固定された[3]。翌1974年は前年度(1973年)のコンストラクターズランキング順に割り当てられ、以後1995年まではドライバーズチャンピオンにならない限り(または前年度チャンピオンとの契約がない限り)、カーナンバーを変更することはなかった[4][注 2]。
フェラーリはアルトゥーロ・メルツァリオ用の312B3が完成せず、前戦スペインGP同様ジャッキー・イクスのみ参加する。エンサインもマシンが完成せず欠場した[5]。テクノは細身のシャシーに前年型のサスペンションを合体させた[6]新車PA123/6[5][注 3]で復帰したが、スポンサーのマルティーニ・エ・ロッシとチームの間の混乱から、並行して別のマシンが制作されていく。ドライバーは前年をもってF1から撤退したマトラからクリス・エイモンが移籍してきた[6]。
エントリーリスト
- 追記
予選
先述の通り路面を再舗装したものの、金曜日の練習走行中にマシンが通過するにつれて路面が2箇所で剥がれ落ち、ジョージ・フォルマー(シャドウ)とジャン=ピエール・ジャリエ(マーチ)が事故に見舞われた[5]。フランソワ・セベール、エマーソン・フィッティパルディ、ジャッキー・スチュワートはコースの安全性を理由に走行を拒否し、セベールはFIAに対し、サーキットがコースの再舗装を行わければレースをキャンセルすると迫った。これに伴い、同日の夜に改めて再舗装が行われ、翌土曜日の練習走行及び予選は無事行われた[5]。
ロニー・ピーターソン(ロータス)がポールポジションを獲得し、マクラーレン・M23を駆るデニス・ハルムが2番手に付けてフロントローを分け合った。2列目はジャッキー・イクス(フェラーリ)とセベール(ティレル)、3列目はジャン=ピエール・ベルトワーズ(BRM)とスチュワート(ティレル)が並び、E.フィッティパルディ(ロータス)は9番手からスタートする[2]。ジャリエはアクシデントによりマーチ・731が破損したため、古い721Gに乗り換えた[5]。
予選結果
順位 | No. | ドライバー | コンストラクター | タイム | 差 | グリッド |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | ロニー・ピーターソン | ロータス-フォード | 1:22.46 | - | 1 |
2 | 7 | デニス・ハルム | マクラーレン-フォード | 1:23.00 | +0.54 | 2 |
3 | 3 | ジャッキー・イクス | フェラーリ | 1:23.10 | +0.64 | 3 |
4 | 6 | フランソワ・セベール | ティレル-フォード | 1:23.22 | +0.76 | 4 |
5 | 20 | ジャン=ピエール・ベルトワーズ | BRM | 1:23.25 | +0.79 | 5 |
6 | 5 | ジャッキー・スチュワート | ティレル-フォード | 1:23.28 | +0.82 | 6 |
7 | 10 | カルロス・ロイテマン | ブラバム-フォード | 1:23.34 | +0.88 | 7 |
8 | 24 | カルロス・パーチェ | サーティース-フォード | 1:23.34 | +0.88 | 8 |
9 | 1 | エマーソン・フィッティパルディ | ロータス-フォード | 1:23.44 | +0.98 | 9 |
10 | 8 | ピーター・レブソン | マクラーレン-フォード | 1:23.52 | +1.06 | 10 |
11 | 16 | ジョージ・フォルマー | シャドウ-フォード | 1:23.86 | +1.40 | 11 |
12 | 19 | クレイ・レガツォーニ | BRM | 1:23.91 | +1.45 | 12 |
13 | 23 | マイク・ヘイルウッド | サーティース-フォード | 1:23.96 | +1.50 | 13 |
14 | 21 | ニキ・ラウダ | BRM | 1:24.51 | +2.05 | 14 |
15 | 22 | クリス・エイモン | テクノ | 1:24.79 | +2.33 | 15 |
16 | 14 | ジャン=ピエール・ジャリエ | マーチ-フォード | 1:24.83 | +2.37 | 16 |
17 | 26 | ナンニ・ギャリ | イソ・マールボロ-フォード | 1:24.89 | +2.43 | 17 |
18 | 9 | アンドレア・デ・アダミッチ | ブラバム-フォード | 1:25.28 | +2.82 | 18 |
19 | 11 | ウィルソン・フィッティパルディ | ブラバム-フォード | 1:25.57 | +3.11 | 19 |
20 | 15 | マイク・ボイトラー | マーチ-フォード | 1:25.77 | +3.31 | 20 |
21 | 25 | ハウデン・ガンレイ | イソ・マールボロ-フォード | 1:26.68 | +4.22 | 21 |
22 | 17 | ジャッキー・オリバー | シャドウ-フォード | 1:28.12 | +5.66 | 22 |
23 | 12 | グラハム・ヒル | シャドウ-フォード | 1:30.45 | +7.99 | 23 |
ソース:[9][10] |
決勝
ポールポジションからスタートするロニー・ピーターソンがウォームアップ中にクラッシュし、メカニックは決勝を前にロータス・72Eを修理することを余儀なくされた[5]。
スタートでピーターソンが先行し、その後ろをフランソワ・セベールが追いかけ、ジャッキー・イクス、デニス・ハルム、カルロス・ロイテマンが続いた。セベールは2周目にピーターソンを抜いて首位に立ち、2位以下を引き離し始める[2]。イクスは6周目にオイルポンプの故障によってオイルが漏れてリタイアし、ハルムはイクスのオイルに乗ってしまい大きく順位を落とした[5]。これでロイテマンは3位に浮上したが、14周目にエンジントラブルでリタイアした。4周後に3位のエマーソン・フィッティパルディと4位のジャッキー・スチュワートがピーターソンを抜き去り、20周目にはセベールがスピンしてE.フィッティパルディが首位に立った。その5周後にはスチュワートが首位に浮上して後続を引き離し始めた。E.フィッティパルディは燃料圧力に問題を抱え始め、48周目にセベールの後ろまで後退し、スチュワートとセベールによるティレルの1-2体制が出来上がった[2]。
スチュワートはファン・マヌエル・ファンジオに並ぶ通算24勝目を挙げ、ティレルは今季初の1-2フィニッシュを達成した。E.フィッティパルディは2戦続けてマシンに問題を抱えながらの走りだったが、ティレル勢に続く3位でフィニッシュした。旧型ブラバム・BT37を駆るアンドレア・デ・アダミッチが4位入賞を果たし、後にドライバーズチャンピオンとなるBRMのニキ・ラウダが5位でフィニッシュして初のポイントを獲得した。6位はテクノのクリス・エイモンで、同チームも初のポイントを獲得した[5]。
ドライバーズチャンピオン争いは首位のE.フィッティパルディと2位のスチュワートの差が7点に縮まり、コンストラクターズチャンピオン争いはティレルがロータスを1点上回って首位に立った[5]。
レース結果
順位 | No. | ドライバー | コンストラクター | 周回数 | タイム/リタイア原因 | グリッド | ポイント |
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1 | 5 | ジャッキー・スチュワート | ティレル-フォード | 70 | 1:42:13.43 | 6 | 9 |
2 | 6 | フランソワ・セベール | ティレル-フォード | 70 | +31.84 | 4 | 6 |
3 | 1 | エマーソン・フィッティパルディ | ロータス-フォード | 70 | +2:02.79 | 9 | 4 |
4 | 9 | アンドレア・デ・アダミッチ | ブラバム-フォード | 69 | +1 Lap | 18 | 3 |
5 | 21 | ニキ・ラウダ | BRM | 69 | +1 Lap | 14 | 2 |
6 | 22 | クリス・エイモン | テクノ | 67 | +3 Laps | 15 | 1 |
7 | 7 | デニス・ハルム | マクラーレン-フォード | 67 | +3 Laps | 2 | |
8 | 24 | カルロス・パーチェ | サーティース-フォード | 66 | +4 Laps | 8 | |
9 | 12 | グラハム・ヒル | シャドウ-フォード | 65 | +5 Laps | 23 | |
10 | 19 | クレイ・レガツォーニ | BRM | 63 | アクシデント | 12 | |
11 | 15 | マイク・ボイトラー | マーチ-フォード | 63 | アクシデント | 20 | |
Ret | 14 | ジャン=ピエール・ジャリエ | マーチ-フォード | 60 | アクシデント | 16 | |
NC | 20 | ジャン=ピエール・ベルトワーズ | BRM | 56 | 規定周回数不足 | 5 | |
Ret | 11 | ウィルソン・フィッティパルディ | ブラバム-フォード | 46 | エンジン | 19 | |
Ret | 2 | ロニー・ピーターソン | ロータス-フォード | 42 | アクシデント | 1 | |
Ret | 8 | ピーター・レブソン | マクラーレン-フォード | 33 | アクシデント | 10 | |
Ret | 25 | ハウデン・ガンレイ | イソ・マールボロ-フォード | 16 | アクシデント | 21 | |
Ret | 10 | カルロス・ロイテマン | ブラバム-フォード | 14 | エンジン | 7 | |
Ret | 16 | ジョージ・フォルマー | シャドウ-フォード | 13 | スロットル | 11 | |
Ret | 17 | ジャッキー・オリバー | シャドウ-フォード | 11 | アクシデント | 22 | |
Ret | 3 | ジャッキー・イクス | フェラーリ | 6 | オイルポンプ | 3 | |
Ret | 26 | ナンニ・ギャリ | イソ・マールボロ-フォード | 6 | エンジン | 17 | |
Ret | 23 | マイク・ヘイルウッド | サーティース-フォード | 4 | アクシデント | 13 | |
ソース:[11]
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- 優勝者ジャッキー・スチュワートの平均速度[8]
- 173.384 km/h (107.736 mph)
- フランソワ・セベール - 1:25.42 (28周目)
- ロニー・ピーターソン - 1周 (1)
- フランソワ・セベール - 18周 (2-19)
- エマーソン・フィッティパルディ - 5周 (20-24)
- ジャッキー・スチュワート - 46周 (25-70)
- 達成された主な記録[5]
- ドライバー
- 初入賞: ニキ・ラウダ - 18戦目[14]
- 最終ファステストラップ: フランソワ・セベール - 2回目
- 最終入賞: アンドレア・デ・アダミッチ[15]
- コンストラクター
- エンジン
第5戦終了時点のランキング
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- 注: トップ5のみ表示。前半8戦のうちベスト7戦及び後半7戦のうちベスト6戦がカウントされる。
脚注
注釈
出典
- ^ “1973 Formula 1 World Championship Programmes”. The Motor Racing Programme Covers Project. 2020年11月11日閲覧。
- ^ a b c d “Belgian GP, 1973”. grandprix.com. 2020年11月11日閲覧。
- ^ (林信次 1993, p. 134)
- ^ 辻野ヒロシ (2013年12月15日). “F1ドライバーが選ぶ自分のカーナンバー”. 2020年11月11日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j “Belgium 1973”. STATS F1. 2020年11月11日閲覧。
- ^ a b (林信次 1993, p. 69)
- ^ “Belgium 1973 - Race entrants”. STATS F1. 2020年11月11日閲覧。
- ^ a b “Belgium 1973 - Result”. STATS F1. 2020年11月11日閲覧。
- ^ “Belgium 1973 - Qualifications”. STATS F1. 2020年11月11日閲覧。
- ^ “Belgium 1973 - Starting grid”. STATS F1. 2020年11月11日閲覧。
- ^ “1973 Belgian Grand Prix”. formula1.com. 2014年9月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年12月22日閲覧。
- ^ “Belgium 1973 - Best laps”. STATS F1. 2020年11月11日閲覧。
- ^ “Belgium 1973 - Laps led”. STATS F1. 2020年11月11日閲覧。
- ^ “戦績:N.ラウダ”. F1 DataWeb. 2020年11月11日閲覧。
- ^ “戦績:A.デ・アダミッチ”. F1 DataWeb. 2020年11月11日閲覧。
- ^ “戦績:テクノ”. F1 DataWeb. 2020年11月11日閲覧。
- ^ a b “Belgium 1973 - Championship”. STATS F1. 2019年3月12日閲覧。
参照文献
- Wikipedia英語版 - en:1973 Belgian Grand Prix(2020年8月4日 18:33:59(UTC))
- 林信次『F1全史 1971-1975 [名手スチュワートの退場/若手精鋭たちの新時代]』ニューズ出版、1993年。ISBN 4-938495-05-8。
- アラン・ヘンリー『チーム・フェラーリの全て』早川麻百合+島江政弘(訳)、CBS・ソニー出版、1989年12月。ISBN 4-7897-0491-2。
外部リンク
- 1973 Belgian Grand Prix race report - Motor Sport Magazine(英語)
- Belgium 1973 - STATS F1(フランス語)
- Belgian GP, 1973 - grandprix.com(英語)
- 1973年第5戦ベルギーグランプリの結果 - F1 DataWeb
前戦 1973年スペイングランプリ |
FIA F1世界選手権 1973年シーズン |
次戦 1973年モナコグランプリ |
前回開催 1972年ベルギーグランプリ |
ベルギーグランプリ | 次回開催 1974年ベルギーグランプリ |
前回開催 1972年イギリスグランプリ |
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