間質性肺炎

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間質性肺炎(かんしつせいはいえん、IP:Interstitial Pneumonitis、間質性肺臓炎とも)はの間質組織を主座とした炎症を来す疾患の総称で、非常に致命的であると同時に治療も困難な難病である。進行して炎症組織が線維化したものは肺線維症(はいせんいしょう)と呼ばれる。間質性肺炎のうち特発性間質性肺炎(後述)は日本では特定疾患に指定されている。1989年には、歌手美空ひばりがこの病因により、52歳の若さで亡くなった事でも有名な病名である。

目次

[編集] 病態概念

肺は血液中のガスを大気中のものと交換する器官であり、大気を取り込む肺胞毛細血管とが接近して絡み合っている。それらを取り囲んで支持している組織が間質である。

通常、肺炎といった場合には気管支もしくは肺胞の炎症であり、中でも細菌感染によるものを指す。間質性肺炎の場合は支持組織に起こった炎症であり、肺胞性の肺炎とは異なった症状・経過を示す。大きな特徴は2つである。

肺コンプライアンスの低下
肺の支持組織が炎症を起こして肥厚することで、肺の膨張・収縮が妨げられる。肺活量が低下し、空気の交換速度も遅くなる。
ガス交換能の低下
間質組織の肥厚により毛細血管と肺胞が引き離される。その結果、血管と肺胞の間でのガス交換(拡散)効率が低下し、特に酸素の拡散が強く妨げられることになる。

[編集] 症状

その病態から、呼吸困難呼吸不全が主体となる。また、肺の持続的な刺激によりがみられ、それは痰を伴わない乾性咳嗽である(痰は気管支や肺胞の炎症で分泌されるため)。 肺線維症に進行すると咳などによって肺が破れて呼吸困難や呼吸不全となり、それを引きがねとして心不全を起こし、やがて死に至ることも多い。

[編集] 所見・診断

理学所見
診察上特徴的なのは胸部聴診音で、パチパチという捻髪音 fine crackleが知られる。これはマジックテープをはがす音に似ているため、マジックテープのメーカー(ベルクロ社)にちなんでベルクロラ音とも呼ばれる。また、呼吸器障害を反映してばち指がみられることもある。
臨床検査
単純X線撮影および胸部CTではすりガラス様陰影 ground-grassが特徴的である。これは、比較的一様に濃度が上がった、ぼやっとした肺陰影である。進行すると線維化を反映して蜂巣状を呈するようになっていく。診断は画像診断でほぼ確定することができる。
呼吸生理学検査では、%肺活量一秒率一酸化炭素拡散能の低下がみられる。これは重症度判定の目安になる。
血液検査では、非特異的だがLDH血沈の上昇が知られる。特異性の高い所見としてはSP-ASP-DKL-6の上昇があり、これは炎症の活動度の判定や治療効果の判定に信頼性が高い。
病理所見
硝子膜形成、II型上皮の腫大・増生、肺胞壁への炎症細胞浸潤がみられる。末期には蜂窩肺となる。

[編集] 治療

炎症の抑制を目的としてステロイドホルモン免疫抑制剤が使用されるが、奏功しない場合も多い。また、感染が原因である場合これらは増悪を招くおそれがある。

対症療法として呼吸不全に対して酸素投与が行われるが、進行して二酸化炭素排泄も不十分となった場合には酸素投与のみでは炭酸ガスナルコーシスを引き起こしかねないため人工呼吸器を導入せざるを得なくなる。

肺移植の有用性も検討されており移植の適応疾患に認められているが、日本では2005年の時点で10例程度施行されたのみである。

[編集] 予後

タイプにもよるが、進行性で治療に抵抗性のものでは数ヶ月で死に至るものもある。慢性的に進行した場合は10年以上生存することも多い。マイコプラズマ肺炎など一過性の感染によるものの場合は感染の終息とともに回復する。

[編集] 原因による分類

[編集] 感染

ウイルスマイコプラズマの感染により間質性肺炎を来すことがある。特にマイコプラズマによるものは頻度も高く、マイコプラズマ肺炎と呼ばれテトラサイクリンマクロライドなどの抗生物質が有効である。

[編集] 膠原病

関節リウマチ全身性強皮症皮膚筋炎多発性筋炎MCTDなど線維化を来す膠原病の一症候として間質性肺炎が出現する頻度が高い。これらの疾患では間質性肺炎が致命的となることも多い。

[編集] 放射線

強い放射線を浴びて発症することがある。画像診断程度の線量ではまず発生することはなく、放射線療法程度の強い被曝に起こる。照射野に一致した四角い炎症像を呈することが特徴。

[編集] 中毒・薬剤性

ブレオマイシンなどの抗癌剤漢方薬小柴胡湯インターフェロン、抗生物質などによるものがよく知られている。これらが疑われたときには原因薬剤の速やかな中止が第一となる。 中毒としては、パラコート中毒の際に細胞障害の結果起きることがある。この場合、パラコートの細胞障害作用には酸素が働いているため酸素投与は絶対禁忌となる。

[編集] 特発性

以上に挙げた明確な原因を持たないものは特発性間質性肺炎(IIP: Ideopathic Interstitial Pneumonitis)と呼ばれる。組織型によりいくつかに分類されるが、剥離性間質性肺炎は喫煙との関連が明らかになっている。

病理学的分類:Liebow(1968)の分類

  1. 通常型間質性肺炎(UIP: usual interstitial pneumoniae)
  2. 閉塞性細気管支炎を合併したびまん性肺胞障害(BIP: bronchiolitis obliterans and diffuse alveolar damage)
  3. 剥離型間質性肺炎(DIP: desquamative interstitial pneumoniae)
  4. 巨細胞性間質性肺炎(GIP: giant cell interstitial pneumoniae)
  5. リンパ性間質性肺炎(LIP: lymphoid inerstitial pnumoniae)

その後検討され、現在の分類では、

  1. UIP
  2. NSIP
  3. OP
  4. DIP
  5. RP
  6. DAD(diffuse alveolar damage)
  7. LIP

の7つに分類される。COPは以前ではBOOP(bronchiolitis obliterans with organizing pneumoniae:器質化肺炎を伴う閉塞性細気管支炎)と言われていたもの。

[編集] 急性増悪

間質性肺炎は、原疾患の病勢、治療薬の副作用、感染症などをきっかけに急激に症状が増悪し致命的となる場合がある。これを急性増悪といい、管理上の最大の問題となる。緊急的にステロイドパルス療法が行われるが、最終的に救命できないことも多い。