犯罪予告
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犯罪予告(はんざいよこく)とはなんらかの犯罪を行うと予告することで構成される犯罪行為。場所・日時などを特定した爆破予告や、個人名などを名指しした上での殺傷予告など。犯行予告(はんこうよこく)ともいう。
目次 |
[編集] 犯罪予告と刑罰
通常は脅迫罪に問われるが、爆破予告や無差別殺害予告の場合、脅迫の対象が広範囲に及ぶため、警察や対象とされた機関への業務妨害などに問われることもある。詳細に分けると以下のようになる。以下は予告を実行しない場合も犯罪に問われる。
- 特定の個人を脅迫した場合 - 脅迫罪
- 嘘の情報などを用いて業務を妨害した場合 - 偽計業務妨害罪
- 暴力的な表現を用いて業務を妨害した場合 - 威力業務妨害罪
- 上記3項目に当てはまらなくても、悪戯目的でやった場合 - 軽犯罪法違反(業務妨害)
最近では、予告によって警備を増強せざるを得なくなったとして、警察に対する偽計業務妨害の容疑で逮捕される例も増えている。また、実在しない場所に対する予告[1]や、犯罪予告であるかのように誤読させる[2][3]といった、文面どおりに読むと実行不可能、または意味がない場合でも罪に問われることがある。
弁護士の杉本智則は、「現実に社会に大きな結果を生じさせている以上、逮捕や有罪を免れる弁護方法は存在しない」といたずら目的の犯罪予告を非難している[4]。
[編集] 日本における犯罪予告の歴史
[編集] インターネット普及以前
インターネット普及以前は、相手方に手紙を送りつけるなどして害悪を告知し、脅迫罪に問われた事例が多い(口頭での害悪告知が脅迫罪に問われた事例も多いが、「犯罪予告」の範疇からは外れるものと考える)。
- 脅迫罪の成立が肯定された例
- 政治問題について二派の抗争が熾烈になっている時期に、一方の派の中心人物宅に現実の出火もないのに、「出火御見舞申上げます、火の元に御用心」という趣旨の文面の葉書を送付する行為[5]。
- 脅迫罪の成立が否定された例
- 「人殺し、売国奴、貴様に厳烈な審判が下されるであろう」と葉書で告知する行為。文面が婉曲であり、何人の手によって害悪が加えられるか全く不明確であるため(名古屋高判昭和45年10月28日刑月2巻10号1030頁)。
[編集] インターネット普及後
旧来の犯罪予告は、予告対象に手紙や電話を送りつける形態がほとんどだったが、インターネットが普及すると、掲示板サイト、ウィキサイトなどで犯罪予告が書き込まれる事例が増え、逮捕者も続出している。容疑者は、警察の依頼等でサーバが開示したIPアドレスと、インターネットサービスプロバイダが所有する住所・氏名などの情報から特定される。他人の無線LANからアクセスした書き込みで逮捕されるケースもある。
2000年(平成12年)5月3日に発生した西鉄バスジャック事件では犯人が掲示板サイト2ちゃんねるに犯罪予告ととれる書き込みを行っていた。このことが大きく報道されてからは、誘発されるように、2ちゃんねるに犯罪予告を書き込んで逮捕される人間や、それを実行に移し逮捕される人間が続出した。
大きな事件があると、2ちゃんねるに頻繁に書き込まれている殺害・襲撃予告と事件の関連性を関係機関がチェックしているとされる他、警察庁のサイバーフォースが定期的に検索を掛けるようになった。この検索を逃れるために「殺す」を「投す[2]」、「頃(ころ)す」と書き込む者も現れているが、文章内容から殺害予告と判定されることがほとんどである。
2008年(平成20年)6月8日の秋葉原通り魔事件でも携帯サイトの掲示板で予告が行われており、犯行直前までの経過が詳細に実況されていた。この事件以後に同様の通り魔事件が多発したことや、犯罪予告そのものが増加したことにより、犯罪予告への対処が社会全体で重要視されるようになり、いたずら目的も含めて厳重に処罰されるようになった。事件後の3ヶ月間で66人が逮捕されている[6]。6月11日には総務大臣が犯罪予告の検知を目的としたシステムを開発する意向を示し、その翌日には民間有志による犯罪予告情報共有サイト「予告.in」が公開された。警察当局は犯罪予告をみたら110番通報するように、掲示板運営者を通じて呼びかけている[7][8]。
また、殺害予告や襲撃予告に限らず、そのほかにも多種多様な犯罪予告がなされている。たとえば、2010年1月には、「ズボンをはかずにJR山手線に乗ろう。10日午後1時に大塚駅に集合」[9]と呼びかける檄文が、インターネット上に書き込まれた(公然わいせつの予告)。この事態を受け、巣鴨警察署では厳戒態勢を敷き、署長が自ら指揮杖を執り、60名あまりの警察官を率いて巣鴨駅を警戒する騒動となった[9]。
2011年2月には時間を指定して新宿駅前で通り魔殺人事件を起こすという書き込みが行われ、予定時刻には大勢の警察官や野次馬で騒然とした。
[編集] 判例
[編集] 池内ひろ美脅迫事件
評論家の池内ひろ美を脅迫する文章を2ちゃんねるに書き込み、予定されていた池内の講演会を中止させたとして男性が脅迫と威力業務妨害罪で逮捕・起訴された[10]。
裁判で男性は、「書き込みは客観的な意見を述べただけで危害を加える意味はなく、脅迫には当たらない」などと無罪を主張したが[11][12]2007年12月14日、東京地方裁判所の石井俊和裁判官は、「書き込みが殺人、放火の犯行予告であることは文面から明らか」と指摘し脅迫罪の成立を認定。男性に懲役1年、執行猶予4年を言い渡した[11]。
[編集] 小女子事件
2008年6月29日、2ちゃんねるに、「小女子を焼き殺す」、「おいしくいただいちゃいます」と書き込み、母校である埼玉県三郷市立丹後小学校の児童約490人を5日間にわたり集団下校させるなど同校教諭らの業務を妨害したとして、男性が威力業務妨害罪で逮捕・起訴された[3]。
男性は被告人質問で「(犯行の)目的はない」と述べ、検察官に、「目的もなく、人を殺すと書くのか」と問われると、「人とは書いていない」と反論し、「魚を焼いて食べるという意味だ」と主張した[3]。
検察側は論告で、「掲示板を盛り上げようとしてやった愉快犯で、動機は身勝手。小女子は『コウナゴ』と読み、魚の意味だといい逃れできるように言葉を選び、計画的で狡猾」と指摘し、懲役1年6月を求刑した[3]。
弁護側は、「周囲が本気でないと判断すると安易に考え、書き込んだ。学校に謝罪する意志もある」として寛大な判決を求めた[3]。
2008年9月29日、さいたま地方裁判所の西野牧子裁判官は、「いたずらではすまされない卑劣な犯行。他人の痛みを想像しない無神経さは看過できない」として、男性に懲役1年6月、保護観察付き執行猶予3年を言い渡した[13]。
西野裁判長は、「警察に捕まるか捕まらないかきわどい文章で勝負し、掲示板の反響がみたいという動機は身勝手。魚の意味だと言い逃れできるよう、『小女子』という言葉を選び、犯行は巧妙」と指摘。「学校に謝罪もなく、『小女子』は魚だと不合理な弁解を繰り返し、反省がない」と男性を厳しく非難した[13]。
[編集] 大学生活板犯行予告事件
2008年10月30日、2ちゃんねるの大学生活板に、パピヨンという名前で「明後日の午後七時三十分に新宿でナイフを使って大量殺人する」と書き込み、警察を新宿管内の警戒活動に当たらせて業務を妨害したとして、男性が偽計業務妨害罪で逮捕・起訴された。さらに男性は別のスレッドで「ダイナマイトを使って東京都庁を爆破する」と書き込んだ件で追起訴されたが、公判で男性は一貫して無罪を主張。第一に事件の発端となった殺害予告文章は投稿記事の前後のやり取りを見れば冗談とわかる文章で業務妨害の故意がない、第二に警察官が犯行予告現場で警戒活動をおこなった証拠がなくもし警戒活動を行っていたとしてもそれは警察の通常業務の範囲内で業務妨害とはならないというのが男性の主張である。
しかし、2009年7月14日に東京地方裁判所の前田巌裁判長は「被告人および弁護人の主張にはすべて理由がない」として懲役2年執行猶予4年の判決。男性はこれを不服として、控訴するが控訴棄却。さらに最高裁判所に上告後、上告取り下げ。
その上告中も男性は2ちゃんねるの大学生活板などで当時裁判を担当した国選弁護人を実名で挙げ自分本位な批判や殺害予告を繰り返す、判決の内容によっては実際に無差別殺人を行うなどの発言を繰り返し多方面から批判や警察への通報を受けるが再度逮捕されることはなく自分本位かつ反社会的な態度は増長の一途を辿った。
[編集] ウィキペディア上での犯罪予告
ウィキペディアの特質上、誰でも編集が可能なため、2008年以降大手マスメディアが伝えた日本国内での犯罪予告の投稿は2年間に10件、3人の逮捕者が出ている[14]。
尚、ウィキペディア上で犯罪予告を発見した場合は、Wikipedia:管理者伝言板/投稿ブロック#犯罪行為またはその疑いのある投稿に記載されている通り関係機関に通報を行い、混乱を避けるために通報後から対処完了の告知が出るまで該当部分への記述をそのままにしておくようにとのことである。また、ウィキペディア管理者に通報義務を負わせない、つまり見つけたら即、通報するようにとのことである。
ただし、Wikipediaは日本語版でも個人設定を変更しない限り投稿記録などの時刻表示は協定世界時(UTC)で行われるため、事件に関する記述の投稿時刻を日本標準時(協定世界時より9時間進んでいる)と間違えて「事件発生以前に書き込まれた犯行予告」と勘違いしない様に注意が必要である。実際、2008年11月に発生した元厚生事務次官宅連続襲撃事件の際、この事件に関する「社会保険庁長官」の項の編集の投稿時刻を取り違えられて「Wikipedia上に犯行予告」との報道がなされる騒ぎが発生している。
[編集] その他の有名な事例
- オバマ大統領暗殺投票
- アメリカでは、2009年9月28日、SNSのFacebookにてバラク・オバマ大統領を暗殺すべきかとうオンライン投票が実施されていたことが判明し、シークレットサービスが捜査に乗り出す事態にまで発展した[15]。捜査の結果、未成年者による作成だとわかったが、シークレットサービスは作成者と両親を刑事罰に問わないこととした[16]。
[編集] 脚注
- ^ “「埼京線」上野駅に殺害予告=「存在しない」と主張 - 32歳男を逮捕・警視庁”. 時事通信. (2008年7月14日) 2008年7月15日閲覧。
- ^ a b 電子掲示板に、「秋葉原のあの件を再現します」という秋葉原通り魔事件を連想させる題名で、「明日、名古屋駅で無差別に人を投します」と書き込んだ少年が逮捕された。“ニュース24時:ネット掲示板に「殺害予告」を書き込んだ疑いで少年逮捕 /愛知”. 毎日新聞. (2008年7月2日) 2008年7月15日閲覧。
- ^ a b c d e “「小女子焼き殺す」殺害予告で懲役1年6月求刑”. 産経新聞. (2008年9月24日) 2008年9月29日閲覧。
- ^ 杉本智則 (2008年7月9日). “止まらないネット予告”. 弁護士 杉本智則の雑感. 2008年9月12日閲覧。
- ^ 脅迫被告事件最高裁判所判決
1960年3月18日 第二小法廷判決
昭和34(あ)1812
“判決全文 (PDF)”. 判例検索システム. 最高裁判所. 2008年10月31日閲覧。
“判決情報”. 判例検索システム. 最高裁判所. 2008年10月31日閲覧。 - ^ “「ネット殺人予告」急増、秋葉原事件3か月で66人摘発”. 読売新聞. (2008年9月18日) 2008年9月20日閲覧。
- ^ “ひろゆき氏、警察から来た「犯行予告は110番」メールで2chにスレ立て 「直接伝えたほうが早そうだし」”. ITmedia News. ITmedia (2008年6月27日). 2009年5月13日閲覧。
- ^ 西村博之 (2008年6月26日). “警視庁から来たメールを張ってみるの巻”. 涙目ニュース速報@2ch掲示板. 2009年5月13日閲覧。
- ^ a b 「『ズボンはかず山手線に乗ろう』――ネット書き込みで警戒」『asahi.com(朝日新聞社):「ズボンはかず山手線に乗ろう」 ネット書き込みで警戒 - 社会』朝日新聞社、2010年1月11日。
- ^ “脅迫カキコミで逮捕者 池内ひろ美ブログ閉鎖”. J-CASTニュース (ジェイ・キャスト). (2007年2月27日) 2008年9月29日閲覧。
- ^ a b “2ちゃん「講演会血の海に」 池内ひろ美さん脅迫男有罪”. 産経新聞. (2007年12月14日) 2008年9月29日閲覧。
- ^ “池内ひろ美さん「殺害予告」で14日判決 弁護側は「落書き」と無罪主張”. J-CASTニュース (ジェイ・キャスト). (2007年12月13日) 2008年9月29日閲覧。
- ^ a b “あくびして退廷…「小女子焼き殺す」書き込み被告に有罪”. 産経新聞. (2008年9月29日) 2008年9月29日閲覧。
- ^ 【アンチ犯罪予告!!】フリー百科事典Wikipediaにおける事件簿
- ^ “「オバマを殺すべきか」米フェースブックでオンライン投票ページが発覚”. フランス通信社. (2009年9月29日) 2009年12月16日閲覧。
- ^ “オバマ大統領殺害を問うFacebook投票の作成者は未成年--シークレットサービスが究明”. CNET Japan (朝日インタラクティブ). (2009年10月2日) 2009年12月16日閲覧。