ヤマハ・セロー

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ヤマハ・セロー(SEROW)は、ヤマハ発動機1985年から日本で製造しているオフロード・オートバイで、25年以上も続いているロングセラーである。

目次

[編集] 概説

当モデルは初心者から熟練者まで幅広い層の支持を受けているのが最も大きな特長である。 またセローは「マウンテン・トレール[1][2]」車であり、林道山道や獣道(けものみち)あるいは道なき山奥などでの走破能力にすぐれたモデルである。 「SEROW セロー」とは日本語ではカモシカであり、カモシカの「道なき山中を身軽に長距離走り抜く」というイメージが当車のコンセプトに合致するため採用された。山奥で安全に遊ぶことも可能であり、トライアル的な走りかたも可能であり、それでいながら街乗りやツーリングにも柔軟に対応する[2]

セローの初期モデルが市場に登場してしばらくするうちに多くの人々に支持されるようになった理由としては、「二輪二足」という基本コンセプトを、シートの低さ(=足つきの良さ)や低速・高トルクに設定された第1速などで実現していたこと[3]、また、(当時のオフロード他車に比べて)車重が軽く、ハンドル切れ角も大きく設定されており坂道の途中でUターンもしやすいなど[2]、その「扱いやすさ」「取り回しのしやすさ」が徹底されていたこともある。また車体・外装に着目してみると、ユーザーが林道や山道などのダートや急傾斜にあえて大胆に挑戦して転倒する場合もあることを前提として設計や材質の選定が行われており、転んでもダメージが非常に少なく、走行しつづけることができる、と評価されていることも特長である[4]

セロー225は、セルを装備した第二世代(後述)が登場した1995年には(単年での)登録台数9505台を記録した[2]。その後も各社から次々と発表・販売され入れ替わってゆく様々なオートバイ車種に対して、長年に渡り比較的上位の販売台数を保持しつづけ[2]、細部の熟成も重ねつつ、息の長いロングセラーとなった。2005年には、日本でオートバイに対しても排出ガス規制が施行されたこと等も踏まえつつ、基本コンセプトをほぼ継承しつつ250ccエンジンを採用したモデルが登場した。

セローは「気軽で扱いやすい」存在で、「持っていて負担にならない[2]」という特徴があり、また好燃費で[5]気軽にツーリングに出かけることのできる車体であり、初心者や女性ライダーにとっては扱いやすく壊れない安心して乗れる初めてのバイクとして、ベテランにとっては、いつまでもつきあいつづけることができ[2]、林道や山中で楽しく冒険することもできるタフなバイクとして人気を保ちつづけている。

[編集] SEROW225

SEROW225(初代)

コンセプトに基づいてベストバランスを実現するために、排気量は250ccにせず、あえて225ccに設定された。単気筒OHCエンジンで、低回転域でも粘りがある。(→#誕生の経緯

[編集] 第1世代

  • 発売年 1985年 - 1989年
  • 型式番号 1KH/1RF/2LN
記念すべきSEROW225の初期モデルである。
タンクにデザインされたカモシカマークのツノのデザインが違うのではと言う指摘があり、マークの訂正を行った。

[編集] 第2世代

  • 発売年1989年 - 1993年
  • 型式番号 3RW1/3RW2/3RW3/3RW4
この世代から車体デザインが一部変更され、セルスターターを装備し始動性がアップ。悪路でのエンスト時などでも素早い回復ができるようになった。他にもガソリンタンク容量が7.6Lから8.8Lへの容量アップが図られている。
また、3RW3はスペシャルバージョンであり、SEROW225Sの名前が与えられている。

[編集] 第3世代

  • 発売年1993年 - 1996年
  • 型式番号 3RW5/4JG1/4JG2/4JG3/4JG4
4JG1よりリアがディスクブレーキになり、以降のモデルはSEROW225Wとなった。
そして、発売より10年が経過し、10周年記念モデルとしてSEROW225Wリミテッドエディション(4JG3) が発売された。

[編集] 第4世代

  • 発売年 1997年 - 1999年
  • 型式番号 4JG5/4JG6
ガソリンタンク容量が8.8Lから10Lへ、またリヤタイヤへチューブレスタイヤが採用されるなどの変更が行われている。
このモデルよりSEROW225WEと名称が変更されている。

[編集] 第5世代

  • 発売年 2000年 - 2004年
  • 型式番号 5MP1/5MP2/5MP3/5MP4
2000年より二輪車排出ガス規制が施行され、それに対応するためエア・インダクションシステムなどを採用したモデルとなった。
また、このモデルでSEROW225シリーズは幕を閉じ、「SEROW」の名前はSEROW250へ引き継がれることになった。

[編集] 日本国外モデル

225ccモデルは日本国外ではほぼ同一のモデルが「XT225」という名称で販売されていた。

[編集] SEROW250

[編集] 第6世代(250としては初代)

2005年型セロー250
  • 発売年 2005年 - 2007年
  • 形式番号 DG11J
2005年にフルモデルチェンジが行われ、SEROW250として生まれ変わった。
基本的なコンセプトはSEROW225を踏襲しているが、車体はトリッカーをベースに設計されたため、外見が大きく様変わりした。また、排気量が上がり、重量が10kg程度増加、スーパーローギアの廃止、フロントディスクカバーやアンダーガードがオプション扱いになるなど、前モデルまでの林道等の走破を目的とするものから通常の街中、舗装路でのツーリング、高速道での走行等をより意識とした仕様となっている。

[編集] 第7世代(250としての第2世代)

  • 発売年 2008年 -
  • 形式番号 DG17J
2008年1月30日にマイナーチェンジ。
自動車排出ガス規制強化によりエンジン系統に燃料噴射装置触媒を採用。エンジンセッティングを低回転域のトルク重視に変更した。


[編集] 防災仕様車両

東京消防庁 消防活動二輪部隊
高圧放水銃装備 SEROW250
2011年08月27日 NHK防災パーク2011
  • 東京消防庁ではSEROW225を10台・SEROW250を10台配備し、消防活動二輪部隊(クイックアタッカー隊)と称し情報収集・先行救助等に使用。10署所に配置し2台ペアで運用。1台は高圧放水銃を装備し、もう1台は簡易救助器具、応急救護資器材を装備している。
  • 静岡市が編成する静岡市オフロードバイク隊ではSEROW225を30台配備し、防災業務に使用している。

[編集] 誕生の経緯

セローが登場した'80代中期には人々の間でカタログ上での表面的・観念的な数値(スペック)ばかりで判断するという「スペック至上主義」のようなものが横行しており、(出力などの)突出した一部の数値ばかりに気をうばわれ、実際に乗って現実の道を走行した時の本当の乗りやすさや楽しさ、というものがあまり理解されていなかったが[2]、セローのコンセプトというのは当時のそうしたスペック至上主義の悪しき風潮を乗り越えたものである[2]

オフロード・バイクのメッカ、カリフォルニアのゴーマンのオフロード・パークを訪問したあるヤマハ社員[6]は、そこでエンデューロ的な楽しみ方が主流になっていることを見て、またそこではDT1(=ヤマハのオフロードバイクのルーツ的なモデル)が大活躍していることに良い意味で衝撃を受け、日本に帰国してから(既にあったヤマハのモトクロス・コースの他に)ゴーマンのオフロード・パークの縮小版のようなテストコースをわざわざ造った[2]。そんなころにヤマハ・XT200(DT125をベンチマークにして、125cc級の車体に200ccのエンジンをのせたモデル)に乗る機会を得て、それがDT1の延長上にあり、多用途性のベストバランス・バイクのイメージだということに気づき、同モデルを成熟させることで「新世代のDT1」を生み出す、ということに思い至った[2]。そしてXT200の次期モデルが立ち上がるタイミングを狙い、社内で提案を行い、彼が思い描く理想のモデルのプロトタイプを手作りで製作した。だがベスト・バランスということは、ひとつひとつの数値(スペック)は突出していないということなので(当時のスペック至上主義の風潮もあり)社内では発売に対して否定的な意見ばかりだったが、上記の日本に造ったテスト・コースにおいて、(既存のモトクロス車なども含めて)様々なモデルの、社員による体験試乗会を実施したところ、近藤のプロトタイプのもたらす楽しさ、つまり競技ではなく、何度も足をついてもいいから山頂までたどり着くことの爽快感、同車のコンセプトが社員たちに理解されるようになり、役員の中にもこのモデルを強く推す人が出た[2]。かくしてXT200の良さを残しつつ、弱点を補強しオリジナリティを持たせる手法でセローは開発された[2]。具体的には「走る・曲がる・止まる」という通常の三原則の他に「転ぶ」という原則を加えた点が新しく[2]、いろいろな場面でわざと転ぶテストを徹底して行ったのである[2]。かくしてセローの特徴、すなわちXT200よりも25mm低いシート高や、左右それぞれ51度のハンドルの切れ角、転んだ時のための引き起こし用のグリップ(車体側面や車体前部ヘッドライト下につけられている取っ手) 等が生まれた[2]。エンジンの排気量は、XT200の200ccから増強されたが、ベストバランスを実現するために、あえて法的な境界線である250ccにはせず、225cc[7]とした。これにより「225」という、他車には見られない、象徴的な排気量となったのである。

[編集]

2010年8月にはセロー発売25周年を記念してSEROW Natural Holidayといイベントが富士山の麓の御殿場市で開かれ、300台を超えるセローが集った。

2010年11月から韓国で放送され高視聴率を記録し2011年12月から日本で放送されているスパイアクションドラマ『アテナ:戦争の女神』のアクションシーンにセロー225が登場した。日本の鳥取を舞台とした回で、主人公の情報部員がセロー225に跨り華麗なアクセルターンとともに発進し、モーターボートで逃走する敵を追い運河沿いを激走しつつ銃撃戦を行い、岸からジャンプしてボートへの体当たりを行い敵を退治した。

[編集] 参考文献

  • 別冊MOTOR CYCLIST vol.392, 2010年8月号。p.12-33「【特集】ヤマハセローの25年」
  • STUDIO TAC CREATIVE 『SEROW MASTER BOOK』 (株)STUDIO TAC CREATIVE、2003年 ISBN 4-88393-107-2
  • 村岡ジッタのトレックテク』実業之日本社

[編集] 出典

  1. ^ 「トレール」とは、山などの中で、踏みならされてできた小道の意味
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 別冊MOTOR CYCLIST vol.392, 2010年8月号。p.12-33「【特集】ヤマハセローの25年」
  3. ^ 高ギヤ比で低速・高トルクに設定された第1速、および低回転域でも粘りのあるエンジンを用いて、アイドリング状態で人が歩くようなゆっくりとした速度で、また低いシートによってセローにまたがったまま(=二輪)両足も地面につきつつ(=二足)、通常のバイクでは乗ったまま前進することが困難な場所でも前進することが可能であること。その第1速を実現するためにセロー225のミッションは6速構成である(一般にオートバイは5速構成)。(特に初期型の第一速は「スーパー・ロー」とも呼ばれ、トライアル車なみの設定である。)
  4. ^ アルミ製エンジンガードは接触で変形することまで考慮されており、ブレーキ関係のロッドやリンケージはフレームの内側に配置することで護られる設計になっている。(出典:別冊MOTOR CYCLIST vol.392)。前後のフェンダーやナックル・ガードも、しなやかに曲がり元の形に戻る樹脂製。
  5. ^ 初代から、「燃費は意識しなくても30km/L」を超え、「遠出では35km/L程度まで伸びる」(出典:別冊MOTOR CYCLIST vol.392)
  6. ^ 近藤充
  7. ^ 正確には223cc

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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