アスタロト

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

コラン・ド・プランシー著『地獄の辞典』の挿絵におけるアスタロトの姿
アスタロトの印章

アスタロトAstaroth)は、数々のグリモワールに登場する高位の悪魔。日本語ではアスタロスアシュタロスとも表記される。

ゴエティア』によると、ソロモン72柱の魔神の1柱で、40の悪霊の軍団を率い、序列29番に位置する大公爵とされる。

ハインリヒ・コルネリウス・アグリッパの『隠秘哲学』によれば、悪魔の位階において告発者(中傷者)と呼ばれる第8位階の君主であるとされ、ギリシア語ではディアボロスと呼ばれるという[1]

セバスチャン・ミカエリスによれば、第一階級の悪魔の一人として怠惰を司り、聖バルトロマイの敵対者である。堕とされる以前は座天使の君主であったという。一方、ルイス・スペンスの『オカルティズムの事典』によれば、熾天使の地位にあったという[2]

術士アブラメリンの聖なる魔術の書』によれば、8人の下位王子(Eight Sub Princes)と総称される有力な悪魔の一人である。

『グリモリウム・ウェルム』および『大奥義書』では、皇帝ルシファー・君主ベルゼビュートと並んで地獄を支配する三柱の霊として名を上げられており、大公爵の地位にあるという。サルガタナスおよびネビロスという大悪魔を配下に持ち、ともにアメリカに住まう[3]

コラン・ド・プランシーが地獄の宮廷を紹介するところによれば、地獄帝国の大主計である[4]

『ホノリウスの書』では水曜日に召喚する霊として名前が挙げられている。この王および他の王の恩寵を得るために召喚される[5]

カバラにおけるクリフォトでは、ケセドに対応するGamchicothの長としてアスタロトの名が挙げられている[6]

召喚されると、巨大なまたはドラゴン(あるいはドラゴンに似た獣)にまたがった天使の姿を取り、右手には毒蛇を持ち、口からは毒ガスを吐き出すため、間近に寄らせるのは危険とされる。の王ベルゼブブのそばに、ロバの姿で現れることもあるという[7]。黒白の色をした人間の姿で現れることもある[8]

過去未来を見通す能力を持つ。質問者に学術を教授することもある。天地創造から天使がいかにして堕天したかということも語るが、天使として自分が受けた罰が不当であるとも主張する。

数々のグリモワールや悪魔学者によって高位の悪魔として言及される背景としては、旧約聖書にも異教の神としてしばしば登場するアシュトレトを起源に持つことが挙げられる。(アスタルテ#カナン地域におけるアシュトレトも参照のこと)

一方、初期のアスタロトは後代のそれと全く異なっており、黒い服を着た美しい姿だが非常に残忍な性格で、唇からは一筋の血を流し続け、他人の苦痛に微笑むという[要出典]。元になった女神アシュタロトはカナン神話アナトなどでは美しくも勇猛、残忍な争いの女神としての側面を持っているため、初期のアスタロトもこうした神格を反映した悪魔だったのだろうと思われる。なお、女神としてのアシュタロトはイシュタルからアフロディテへとその性格を伝播している[9]

[編集] 脚注

  1. ^ De occulta philosophia libri tres III, Chapter xviii
  2. ^ 『天使事典』 p.34 「アスタロト」の項
  3. ^ The Book of Ceremonial Magic, p185-186
  4. ^ 『地獄の辞典』 p.157
  5. ^ The Book of Ceremonial Magic, p288-289
  6. ^ S.L.MacGregor Mathers, The Key of Solomon The King(1888), p.122
  7. ^ 『地獄の辞典』 p.251
  8. ^ The Book of Ceremonial Magic, p194
  9. ^ アフロディテー、および金星神話の系譜[1]

[編集] 参考文献