ゴエティア

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ゴエティアラテン語:Goetia)はギリシア語γοητεία (ゴエーテイア)がラテン語化したもので、呪術・妖術などを意味する語である。近世のグリモワールレメゲトン』の第一書の表題としても知られており、『ゴエティア』といえば一般に同書のことを指す。

目次

ゴエーテイア [編集]

ギリシア語には魔術に類する言葉は何種類か存在するが、ゴエーテイアは古代ギリシアで γόης (ゴエース)と呼ばれた呪術師の業(わざ)を指し、呪術・妖術・奇術・いかさまを意味する[1]。その呼称は古代ギリシアのシャーマン的呪術師が霊を呼ぶために発する喚(おめ)き声に由来するといわれており[2]、「嘆き悲しむ、泣き叫ぶ、呻吟する」を意味する動詞の γοάω (ゴアオー)に関連する。

ルネサンス期の人文主義者ピコ・デラ・ミランドラは、魔術には悪霊の業である神霊魔術と自然哲学の完成形である自然魔術の2種類があると論じ、前者はギリシア人のいう「ゴエーテイア」、後者は「マゲイア」に相当するとした[3]ネッテスハイムのコルネリウス・アグリッパは『学問の空しさと不確かさについて』の中で、ゴエティアを「不浄な霊による業」と定義している。

近代西洋儀式魔術の観点からは、古代ギリシアの語彙としてのゴエーテイアは世俗的・実利的ないわゆる妖術(sorcery)や下位魔術(low magic)全般に相当するものともいえる。また、上述のルネサンス期の著述家がゴエティアとして言及している儀式魔術は、近代西洋儀式魔術ではいわゆる喚起魔術(magical evocation)に相当するものである。

『ゴエティア』 [編集]

ゴエティア』 (Goetia)別名『悪霊の書』(Liber malorum Spirituum)は、グリモワール(悪魔を呼び出して様々な願望をかなえる手順を記した魔術書)の一つ。日本では『ゲーティア』と呼ばれることが多いが、これはドイツ式ラテン語読みに近い読み方である。あまり普及していないが「ゴーシャ」という英語風表記もみられる。現代英語では「ゴイーシャ」のような発音になる[4]

『ゴエティア』は、全5部からなるグリモワール『レメゲトン』(Lemegeton 『ソロモン王の小さき鍵』とも)の第1部とされている。が、実際には『レメゲトン』を構成する5部のグリモワールはそれぞれ別々に成立し後に合本されたにすぎない。従って相互の関連性は薄い。

本書の内容は、ソロモン王が使役したという72人の悪魔(いわゆるソロモン72柱)を呼び出して様々な願望をかなえる手順を記したもので、そのために必要な魔法円護符のデザインと制作法、必要な呪文などを収録している。

本書には、この72人の悪魔の性格や姿、特技などが詳述されており、また悪魔を使役するための、72人各個専用の護符なども収録されている。そのため、後世にはむしろ悪魔名鑑として盛んに参照された。同様に悪魔名鑑として利用されるコラン・ド・プランシーの著書『地獄の辞典』には、ヨハン・ヴァイヤーの『悪魔の偽王国』の記述を参考にして[5]『ゴエティア』と共通する悪魔が多数収録されている。『地獄の辞典』第6版に追加されたM.L.ブルトンの挿絵は、創作要素も多分に含まれるものの、悪魔学の資料に基づいて描かれており、出版された『ゴエティア』にはこの挿絵が引用されているものもある[6]。『ゴエティア』ならびに『地獄の辞典』に収録されたブルトンの挿絵は、現在の多くの人々の悪魔のイメージに影響を与えている。

脚注 [編集]

  1. ^ An Itermediate Greek-English Lexicon, Oxford University Press. ISBN 0199102066.
  2. ^ アルフレッド・モーリー 『ヘルメス叢書 魔術と錬金術』 有田忠郎・浜文敏 訳、白水社、1993年。
  3. ^ ジョヴァンニ・ピコ・デッラ・ミランドラ 『人間の尊厳について』 大出哲・阿部包・伊藤博明 訳、国文社、1985年、ISBN 4772001077
  4. ^ Kraig, Donald Michael. Using Modern Magick (audio cassette tape). Llewellyn Publications.
  5. ^ 『地獄の辞典』 p.327
  6. ^ 例えば、S.L. MacGregor Mathers and Aleister Crowley, The Goetia the Lesser Key of Solomon the King: Lemegeton, Book 1 Clavicula Salomonis Regis(1995), ISBN 087728847X

参考文献 [編集]

関連項目 [編集]

外部リンク [編集]