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「ミダゾラム」の版間の差分

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:2009年6月、[[小児科]]領域でもけいれん重積状態に保険適用外で(病院の持ち出しで)使用されている実情があり、小児神経学会からも適応拡大の要請がなされている<ref>{{Cite web|author=大澤真木子|date=2009-06-04|url=http://child-neuro-jp.org/visitor/iken2/2009midazolam.html|title=ミダゾラムのけいれん重積状態への適応の早期承認に関する要望|publisher=日本小児神経学会|accessdate=2010-01-03}}</ref>。2009年9月16日、[[社会保険診療報酬支払基金]]より「けいれん重積状態を含むてんかん重積状態」に対して処方した場合、審査上認める通知が行われた。<ref>日本医事新報 No.4457, 27</ref>
:2009年6月、[[小児科]]領域でもけいれん重積状態に保険適用外で(病院の持ち出しで)使用されている実情があり、小児神経学会からも適応拡大の要請がなされている<ref>{{Cite web|author=大澤真木子|date=2009-06-04|url=http://child-neuro-jp.org/visitor/iken2/2009midazolam.html|title=ミダゾラムのけいれん重積状態への適応の早期承認に関する要望|publisher=日本小児神経学会|accessdate=2010-01-03}}</ref>。2009年9月16日、[[社会保険診療報酬支払基金]]より「けいれん重積状態を含むてんかん重積状態」に対して処方した場合、審査上認める通知が行われた。<ref>日本医事新報 No.4457, 27</ref>
:2011年9月、社会保険診療報酬支払基金は「[[区域麻酔]]での鎮静」も審査上認めると発表した<ref>http://www.ssk.or.jp/shinsajoho/teikyojirei/files/jirei194.pdf#page=2</ref>。
:2011年9月、社会保険診療報酬支払基金は「[[区域麻酔]]での鎮静」も審査上認めると発表した<ref>http://www.ssk.or.jp/shinsajoho/teikyojirei/files/jirei194.pdf#page=2</ref>。

===ガイドライン===
[[集中治療室]]での人工呼吸使用時はガイドラインにて、ミダゾラムより[[プロポフォール]]が推奨されており、費用面でもプロポフォールが有利である<ref name="pmid29184423">{{cite journal|author=Pradelli L, Povero M, Bürkle H, et al.|title=Propofol or benzodiazepines for short- and long-term sedation in intensive care units? An economic evaluation based on meta-analytic results|journal=Clinicoecon Outcomes Res|pages=685–698|date=2017|pmid=29184423|pmc=5687490|doi=10.2147/CEOR.S136720|url=https://doi.org/10.2147/CEOR.S136720}}</ref>。


== その他 ==
== その他 ==

2018年12月1日 (土) 05:56時点における版

ミダゾラム
ファイル:Dormicum.JPG
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
Drugs.com monograph
MedlinePlus a609003
胎児危険度分類
  • AU: C
  • US: D
法的規制
投与経路 Oral, I.M., I.V., parenteral
薬物動態データ
生物学的利用能Oral ~36%
I.M. 90%+
血漿タンパク結合97%
代謝Liver 3A3, 3A4, 3A5英語版
作用発現within 5 min (IV), 15 min (IM), 20 min (oral)[2]
半減期1.8-6.4 hours
作用持続時間1 to 6 hrs[2]
排泄Kidney
識別
CAS番号
59467-70-8
ATCコード N05CD08 (WHO)
PubChem CID: 4192
IUPHAR/BPS 3342
DrugBank APRD00680 チェック
ChemSpider 4047 チェック
UNII R60L0SM5BC チェック
KEGG D00550  チェック
ChEMBL CHEMBL655 チェック
化学的データ
化学式C18H13ClFN3
分子量325.77[1]
テンプレートを表示

ミダゾラム(Midazolam)はベンゾジアゼピン (BZP) 系の麻酔導入薬・鎮静薬の一つである。日本での商品名はドルミカムアステラス製薬製造販売)。静脈内注射後、通常5分以内に効果が発現し、1〜6時間継続する[2]前向性健忘症英語版を誘発する。

WHO必須医薬品モデル・リストに収載されている[3]。連用により依存症、急激な量の減少により離脱症状を生じることがある[4]向精神薬に関する条約のスケジュールIVに指定されている。麻薬及び向精神薬取締法の第三種向精神薬である。

禁忌

高齢者、小児、妊婦、アルコール依存症患者、薬物依存症患者、合併症を有する患者、精神障害を有する患者にベンゾジアゼピンを使用する際には特に注意が必要である[5]。重篤な患者においてはミダゾラムとその活性代謝物が蓄積する可能性があるので充分に注意する事[6]。腎障害または肝障害を有する患者ではミダゾラムの排泄が遅延し、作用強度・時間が増強されることがある[7][8]

副作用

添付文書に記載されている重大な副作用は、依存性、無呼吸、呼吸抑制、舌根沈下(0.1〜5%未満)、アナフィラキシーショック、心停止、心室頻拍、心室性頻脈、悪性症候群である[1]

主な副作用は、努力呼吸低血圧である[2]。活動性の亢進等の奇異反応が、特に小児または高齢者で見られることがある[9]。妊婦に用いた際にリスクがあることは確認されているが、授乳婦での母子へのリスクは確認されていない[10][11]

依存性

日本では2017年3月に「重大な副作用」の項に、連用により依存症を生じることがあるので用量と使用期間に注意し慎重に投与し、急激な量の減少によって離脱症状が生じるため徐々に減量する旨が追加され、厚生労働省よりこのことの周知徹底のため関係機関に通達がなされた[4]奇異反応に関して[12]、錯乱や興奮が生じる旨が記載されている[4]医薬品医療機器総合機構からは、必要性を考え漫然とした長期使用を避ける、用量順守と類似薬の重複の確認、また慎重に少しずつ減量する旨の医薬品適正使用のお願いが出されている[13]。調査結果には、日本の診療ガイドライン5つ、日本の学術雑誌8誌による要旨が記載されている[12]

作用機序

ミダゾラムはベンゾジアゼピン系薬剤の一つであり、中枢神経系のベンゾジアゼピン受容体に結合して抑制系のGABA受容体と相互作用し、GABAとGABA受容体の親和性を向上させて神経細胞の興奮性を鎮める事で、鎮静効果と抗痙攣作用を発揮する[2][14]:35

適応症

日本では、

である[1]

上部消化管内視鏡大腸内視鏡施行時の鎮静に用いられることもあるが、日本では保険適応はなされていない。アメリカ合衆国では一般的に用いられている。日本でも用いる施設が増えつつある[15]。内視鏡検査の苦しみを多くの国々では我慢している。アメリカ合衆国では用いられるのが一般的である[16]
内視鏡検査ではミダゾラムを成人男性では4mgを目処に投与することが多い。女性や小柄な体格である場合は減量して用いる。
2009年6月、小児科領域でもけいれん重積状態に保険適用外で(病院の持ち出しで)使用されている実情があり、小児神経学会からも適応拡大の要請がなされている[17]。2009年9月16日、社会保険診療報酬支払基金より「けいれん重積状態を含むてんかん重積状態」に対して処方した場合、審査上認める通知が行われた。[18]
2011年9月、社会保険診療報酬支払基金は「区域麻酔での鎮静」も審査上認めると発表した[19]

ガイドライン

集中治療室での人工呼吸使用時はガイドラインにて、ミダゾラムよりプロポフォールが推奨されており、費用面でもプロポフォールが有利である[20]

その他

ミダゾラムは水溶性であり、ジアゼパムのように希釈時に混濁することがなく、静脈注射での投与が容易である。また短時間作用型であり、速やかに覚醒することが特徴である。

アメリカ合衆国における死刑制度(薬殺刑)の中で、死刑囚を眠らせるための薬剤として使われた例がある。ただし、その効果については疑問視する意見もある[21]

関連項目

グレープフルーツジュース

出典

  1. ^ a b c d ドルミカム注射液10mg 添付文書” (2015年6月). 2016年4月3日閲覧。
  2. ^ a b c d e Midazolam Hydrochloride”. The American Society of Health-System Pharmacists. 2015年8月1日閲覧。
  3. ^ WHO Model List of Essential Medicines”. World Health Organization (2013年10月). 2014年4月22日閲覧。
  4. ^ a b c 厚生労働省医薬・生活衛生局安全対策課長. "催眠鎮静薬、抗不安薬及び抗てんかん薬の「使用上の注意」改訂の周知について (薬生安発0321第2号)" (pdf) (Press release). 2017年3月25日閲覧、および、使用上の注意改訂情報(平成29年3月21日指示分)”. 医薬品医療機器総合機構 (2017年3月21日). 2017年3月25日閲覧。
  5. ^ Authier, N.; Balayssac, D.; Sautereau, M.; Zangarelli, A.; Courty, P.; Somogyi, AA.; Vennat, B.; Llorca, PM. et al. (Nov 2009). “Benzodiazepine dependence: focus on withdrawal syndrome”. Ann Pharm Fr 67 (6): 408–13. doi:10.1016/j.pharma.2009.07.001. PMID 19900604. 
  6. ^ Cox, CE.; Reed, SD.; Govert, JA.; Rodgers, JE.; Campbell-Bright, S.; Kress, JP.; Carson, SS. (Mar 2008). “An Economic Evaluation of Propofol and Lorazepam for Critically Ill Patients Undergoing Mechanical Ventilation”. Crit Care Med 36 (3): 706–14. doi:10.1097/CCM.0B013E3181544248. PMC 2763279. PMID 18176312. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2763279/. 
  7. ^ Olkkola, KT.; Ahonen, J. (2008). “Midazolam and other benzodiazepines”. Handb Exp Pharmacol. Handbook of Experimental Pharmacology 182 (182): 335–60. doi:10.1007/978-3-540-74806-9_16. ISBN 978-3-540-72813-9. PMID 18175099. 
  8. ^ Verbeeck, RK. (Dec 2008). “Pharmacokinetics and dosage adjustment in patients with hepatic dysfunction” (PDF). Eur J Clin Pharmacol 64 (12): 1147–61. doi:10.1007/s00228-008-0553-z. PMID 18762933. http://www.springerlink.com/content/t56l04u3w07wj031/fulltext.pdf. 
  9. ^ Riss, J.; Cloyd, J.; Gates, J.; Collins, S. (Aug 2008). “Benzodiazepines in epilepsy: pharmacology and pharmacokinetics.”. Acta Neurol Scand 118 (2): 69–86. doi:10.1111/j.1600-0404.2008.01004.x. PMID 18384456. http://www3.interscience.wiley.com/cgi-bin/fulltext/120119477/HTMLSTART. 
  10. ^ Hamilton, Richart (2015). Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2015 Deluxe Lab-Coat Edition. Jones & Bartlett Learning. p. 21. ISBN 9781284057560 
  11. ^ Midazolam use while Breastfeeding”. 2015年8月29日閲覧。
  12. ^ a b 医薬品医療機器総合機構 (28 February 2017). "調査結果報告書" (pdf) (Press release). 医薬品医療機器総合機構. 2017年3月25日閲覧
  13. ^ 医薬品医療機器総合機構 (2017-03). “ベンゾジアゼピン受容体作動薬の依存性について” (pdf). 医薬品医療機器総合機構PMDAからの医薬品適正使用のお願い (11). https://www.pmda.go.jp/files/000217046.pdf 2017年3月25日閲覧。. 
  14. ^ 麻酔薬及び麻酔関連薬使用ガイドライン 第3版” (PDF) (2009年12月25日). 2016年4月3日閲覧。
  15. ^ 日本麻酔科学会の質疑応答
  16. ^ Medscape;Esophagogastroduodenoscopy
  17. ^ 大澤真木子 (2009年6月4日). “ミダゾラムのけいれん重積状態への適応の早期承認に関する要望”. 日本小児神経学会. 2010年1月3日閲覧。
  18. ^ 日本医事新報 No.4457, 27
  19. ^ http://www.ssk.or.jp/shinsajoho/teikyojirei/files/jirei194.pdf#page=2
  20. ^ Pradelli L, Povero M, Bürkle H, et al. (2017). “Propofol or benzodiazepines for short- and long-term sedation in intensive care units? An economic evaluation based on meta-analytic results”. Clinicoecon Outcomes Res: 685–698. doi:10.2147/CEOR.S136720. PMC 5687490. PMID 29184423. https://doi.org/10.2147/CEOR.S136720. 
  21. ^ 米の死刑執行で13分間苦しむ、薬物注射めぐる議論再燃 AFP通信(2016年12月10日)