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2021年1月17日 (日) 21:16時点における版

仮想通貨(かそうつうか、: virtual currency)は、一般的にはネットワーク上で電子的な決済の手段として広く流通しているが、法定通貨(法貨)との比較において強制通用力を持たない、または特定の国家による裏付けのないものをいう[1]。ただし、後述のように定義や分類は必ずしも一様ではなく複数存在する。

仮想通貨と、いわゆるネットクーポンや電子マネー等とは、決済の限定性(片方向性)や、限定的な流通制・汎用性で区別される。ただし、「デジタル通貨」と同様の意味で、これらを包含した用法とする場合もある。

定義

仮想通貨は広義にはゲーム内通貨などを含めることもある[2]。しかし、一般的には流通性や汎用性を持つ電子的な決済手段に限定して定義されることが多い[2]。流通性とは人的な交換可能性が高く不特定多数の人々の間で決済手段として用いられる性質を言う[3]。また、汎用性とは物的な交換可能性が高く特定の商品・サービスとの交換に限定されない性質を言う[3]

EUの決済サービス指令は利用が発行者による場のみに限定されている支払手段については非適用範囲としている[4]

日本では、資金決済に関する法律において「仮想通貨」の定義が導入されたことにより、英語圏で「cryptocurrency」(暗号通貨)と呼ばれているビットコイン(BTC)などが仮想通貨と呼ばれている。法改正により「暗号資産」と改称される予定。

アメリカ合衆国財務省の局である金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)は、2013年に発表されたガイダンスで仮想通貨を定義している。欧州銀行当局は、2014年に仮想通貨を「中央銀行または公的機関によって発行されたものでも、決済通貨にも付随するものでもなく、支払手段として自然人または法人によって受け入れられ、電子的に譲渡、保管または取引される価値のデジタルな表現」と定義した。 対照的に、中央銀行によって発行されるデジタル通貨は「中央銀行のデジタル通貨」として定義される。

仮想通貨は中央銀行政府などの国家主体が発行せず、規制が及ばない通貨としての性質が強調される用法もあるが、定義によっては、中央銀行などによる仮想通貨の発行は必ずしも排除されない。ベネズエラ政府が経済危機への対策として埋蔵原油を裏付けに発行したデジタル通貨「ペトロ」は仮想通貨と呼ばれている[5]ほか、中銀版デジタル通貨の検討・実験が始まっている[6]

一般に、ビットコイン(BTC)やオルトコインなどは、英語圏では「cryptocurrency」と括られるのに対し、日本では、資金決済に関する法律において「仮想通貨」の定義が導入されたことにより、仮想通貨と呼ばれる。

仮想通貨の代表格である暗号通貨は、中央集権的な管理権威を持たないのが特色であるが、一方で通貨の管理権威である主体による定義付けは、

以下のようになっている。

  • 2012年、欧州中央銀行は「未制御だが、特殊なバーチャルコミュニティで受け入れられた電子マネー」と定義。[7]
  • 2013年、アメリカ財務省金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)は「本物のお金」の対義語と位置づけ、どの司法組織においても法定通貨としての価値を持たないものとして、ガイダンスを発表した。[8]
  • 2014年、欧州銀行監督局は仮想通貨を「デジタルな価値の表現で、中央銀行や公権力に発行されたもの(不換紙幣を含む)でないものの、一般の人にも電子的な取引に使えるものとして受け入れられたもの」と定義付けた。[9]

日本では、2016年に成立し2017年4月に施行された改正資金決済法の第2条第5項で、「仮想通貨」は次のいずれかと定義された[10]

  • 「物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、なおかつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの」
  • 「不特定の者を相手方として相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの」

暗号資産への呼称変更

従来の「仮想通貨」の呼称では、既存の法定通貨と紛らわしく、誤解を招くことがあったため、2018年の国際会議で「暗号資産」(: crypto asset)の呼称が使われたことをきっかけに、日本でも2019年5月に「暗号資産」への呼称変更などを盛り込んだ資金決済法や金融商品取引法の改正法が国会で可決成立した[11][12]

分類

デジタル通貨は、電子的に転送され格納される特定の形態の通貨であり、すなわち、コインまたは紙幣などの物理通貨とは異なる。欧州中央銀行によれば、仮想通貨は「一般的にはデジタル」であるが、長い歴史を持つその先駆者であるクーポンは物理的なものである。[7]

暗号通貨は、暗号化を利用してトランザクションを保護し、新しい通貨単位の作成を制御するデジタル通貨である。[13] すべての仮想通貨が暗号化を使用するわけではないので、すべての仮想通貨が暗号化通貨であるとは限らない。暗号通貨は一般に合法的な通貨ではない。

ヨーロッパ中央銀行の定義に基づく分類[7]
物的貨幣 デジタル貨幣
貨幣暗号化なし 貨幣暗号化あり
法的規制なし[注 1] 集中管理[注 2] (広義の仮想通貨) (広義の仮想通貨)
(広義の仮想通貨)
  • 集中管理型仮想通貨
(広義の仮想通貨)
分散協調[注 5] (広義の仮想通貨) (広義の仮想通貨)
  • 分散型暗号通貨
法的規制あり[注 6]

歴史

仮想通貨の概念自体は、アメリカ合衆国上院で1995年には言及されており[16]1999年には一部の仮想通貨は存在していた[17]ユーロ2002年に現金が導入されるまでは決済通貨としてのみ存在したため、一種の仮想通貨であったともいえる。しかしその発達は電子マネーやソーシャルゲームとともにあり、仮想通貨という表現も2009年頃にできたものである[18]

仮想通貨の取得と使用

仮想通貨を入手する場合、一般的には、取引所に口座を開設して、通常の通貨(法定通貨)との交換を行う形になる。仮想通貨と他の仮想通貨を交換することも想定される。仮想通貨によっては、その発行者が、一定の資格を有する者、行動を行った者に対して、仮想通貨を新規に発行することもある。

法定通貨は、国家(中央銀行)によって発行され価値を保証されているが、国家(中央銀行)の経済政策による価値の変動リスクは常に伴っている。 仮想通貨は、利用者による仮想通貨自身への信用によってのみ価値が保証されているので、価値の変動を主導するのは利用者である。

日本では給与の支払い[19]税金の納付は、日本円で行う必要があり、仮想通貨による納付は、法令上認められていない。

日本では、仮想通貨と法定通貨を交換する取引所について、先述の資金決済法の改正で「仮想通貨交換業」として、金融庁への登録が必要になった[10]

問題点

仮想通貨には、日本円や米ドルなどの法定通貨のような手形交換所がないが、登録を受けた仮想通貨交換業者は存在している。決済記録に関する義務の規定がないが、ブロックチェーン技術によって決済記録は公開されている。

仮想通貨に対しては、以下の様な問題点が指摘されている。ブロックチェーンはこれらの原因になりうる。[20]

  • 利用者に対する価値の保証が無い。 
  • 街が停電したら使えない
  • 電磁パルスを撃たれたらデータが全て消える可能性がある
  • 51%攻撃による取引記録の改ざんの恐れがある。(ビザンチン将軍問題)
  • 闇市場を生みやすい。
  • 課税の逃げ道になる。
  • 資金洗浄に利用される。
  • いわゆる「セミナー商法」による、投資詐欺の可能性。[21](詐欺への注意喚起公報。)
  • 仮想通貨と法定通貨とを交換する取引所の管理体制の甘さ。[22] [23]
  • 電力の無駄問題。(採掘を有意な演算であるBOINCFolding@homeに委ねる動きもある。)
  • これから先、AI(人工知能)やロボットに置換されうる労働力に対して、準労働性の経済対価。

仮想通貨に対しては、利用者・投資家保護や資金洗浄脱税防止などを目的に、国家や業界団体などが規制を及ぼす動きも進んでいる[24]

種類

(種類の数などは年々変化しているが)、『日本大百科全書』(ニッポニカ)の2016年ころに編集された版では、「600種類を超える仮想通貨が存在する」と記述され、「それらの推定時価総額は2016年4月時点で約80億ドル」とされた[25]。2018年1月27日に掲載された朝日新聞の「キーワード」という記事では、「世界で1千種類以上あるとされ、全体の時価総額は約59兆円に達する」と解説された[26]

脚注

注釈

  1. ^ 国家もしくはその地の統治主体などによる価値の保証、および/または強制通用力の有無のことを言う。法的規制の有無ではない。
  2. ^ 発行主体がしばしば法令により限定的な価値の保証について有限責任を負う。
  3. ^ 例えば:iTunesコード、Amazonギフトコードなど
  4. ^ ただし政府保証(交付財源の保証)はあると言う特殊なクーポンだった
  5. ^ 発行、価値の保証のいずれも分散的、相対的であり、責任主体はない。よってその貨幣の価値も相対的となる。
  6. ^ 国家などまたは中央銀行により価値が保証される。しかし失敗国家、失敗経済(ハイパーインフレ)などにより価値を減失する。
  7. ^ 現在、銀行などにおいてもデジタル技術により台帳管理されている。デジタル化以前は通帳も大型で有印証券扱いであった。

出典

  1. ^ 岡田仁志、高橋郁夫、山崎重一郎『仮想通貨 - 技術・法律・制度』東洋経済新報社、2015年、2-4頁
  2. ^ a b 岡田仁志、高橋郁夫、山崎重一郎『仮想通貨 - 技術・法律・制度』東洋経済新報社、2015年、10頁
  3. ^ a b 岡田仁志、高橋郁夫、山崎重一郎『仮想通貨 - 技術・法律・制度』東洋経済新報社、2015年、9頁
  4. ^ 岡田仁志、高橋郁夫、山崎重一郎『仮想通貨 - 技術・法律・制度』東洋経済新報社、2015年、9-10頁
  5. ^ 「仮想通貨、乱造に動くベネズエラ 経済制裁を迂回」『日本経済新聞』電子版(2018年2月26日)2018年7月17日閲覧。
  6. ^ 「中銀版デジタル通貨の行方 金融機関向け仮想通貨 軸に」白井さゆり、『日本経済新聞』朝刊2018年7月4日(経済教室面)2018年7月17日閲覧。
  7. ^ a b c European Central Bank (October 2012). “1” (PDF). Virtual Currency Schemes. Frankfurt am Main: European Central Bank. p. 5. ISBN 978-92-899-0862-7. オリジナルの2018-02-04時点におけるアーカイブ。. http://www.ecb.europa.eu/pub/pdf/other/virtualcurrencyschemes201210en.pdf 
  8. ^ FIN-2013-G001: Application of FinCEN's Regulations to Persons Administering, Exchanging, or Using Virtual Currencies”. Financial Crimes Enforcement Network. pp. 6 (2013年3月18日). 2018年2月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年5月29日閲覧。
  9. ^ EBA Opinion on ‘virtual currencies” (PDF). European Banking Authority. pp. 46 (2014年7月4日). 2018年2月4日閲覧。
  10. ^ a b 林賢治 (2017年1月27日). “現役弁護士による仮想通貨(暗号通貨)に関する資金決済法改正についての概要”. ブロックチェーンビジネス研究会. 2018年2月4日閲覧。
  11. ^ “「仮想通貨」→「暗号資産」に名称変更 改正資金決済法が成立”. Engadget日本版. Engadget. (2019年5月31日). https://japanese.engadget.com/2019/05/31/bitcoin/ 2019年6月1日閲覧。 
  12. ^ “仮想通貨は「暗号資産」に改称 法定通貨との誤認防ぐ”. 朝日新聞. (2019年5月31日). https://www.asahi.com/articles/ASM5053B5M50ULFA02S.html 2019年6月1日閲覧。 
  13. ^ Andy Greenberg (2011年4月20日). “Crypto Currency”. Forbes.com. https://www.forbes.com/forbes/2011/0509/technology-psilocybin-bitcoins-gavin-andresen-crypto-currency.html 2014年8月8日閲覧。 
  14. ^ : steller
  15. ^ : ripple
  16. ^ SUBCOMMITTEE ON DOMESTIC AND INTERNATIONAL MONETARY POLICY. “The Future of Money”. Congressional Hearing. Internet Archive. 2014年5月27日閲覧。
  17. ^ Samuelson, Kristin (2011年11月13日). “The ins and outs of Bitcoin. Does the latest digital currency have staying power?”. Chicago Tribune. オリジナルの2012年1月27日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20120127141540/http://articles.chicagotribune.com/2011-11-13/business/ct-biz-1113-outside-opinion-bitcoin-20111113_1_virtual-currency-digital-wallet-second-life 
  18. ^ Sutter, John D. (2009年5月19日). “Virtual currencies power social networks, online games”. CNN. http://www.cnn.com/2009/TECH/05/18/online.currency/index.html?eref=rss_tech 
  19. ^ 労働基準法第二十四条 賃金の通貨払いの原則、日本銀行法第四十六条 日本銀行券の発行
  20. ^ クローズアップ現代”. 2015年5月29日閲覧。
  21. ^ "知人からの勧誘、セミナーでの勧誘による仮想通貨の購入トラブルにご注意-「必ず儲(もう)かる」という言葉は信じないで!" (Press release). 国民生活センター. 30 March 2013. 2018年2月5日閲覧
  22. ^ “甘い管理体制、流出招く 仮想通貨市場に冷水”. 日本経済新聞. (2018年1月28日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26239430X20C18A1EA2000/ 2018年2月4日閲覧。 
  23. ^ 仮想通貨交換業者に対するこれまでの対応等 - 金融庁2018年4月27日金融庁
  24. ^ 「仮想通貨業界、自主規制へ始動 顧客保護など急ぐ」日本経済新聞ニュースサイト(2018年4月23日)2018年7月17日閲覧。
  25. ^ a b c d e f g h 仮想通貨 かそうつうか virtual currencydigital currencycrypto-currency”. 日本大百科全書. 小学館. 2018年1月5日閲覧。
  26. ^ 朝日新聞掲載「キーワード」
  27. ^ 仮想通貨「NEM」とは”. 日本経済新聞. 2018年2月28日閲覧。

関連項目