8センチCD
8センチCD (8cm CD) は、コンパクトディスク (CD) のサイズの規格のひとつ。通常のCDの直径が12センチメートルに対し、直径が8センチメートルの小型CDの事である。
1988年にイギリス・日本・アメリカ・フランス・ドイツ・香港等で発売された。
ミニCDあるいはディスク自体が小さい事から「Small」を付し、かつ略してSCDとも呼ばれる[注釈 1]。また欧米(特にアメリカ等)等では3インチCD (3inch CD)、略してCD3とも呼ばれる(それに対し通常のCDは5インチCD、CD5)。
本記事では、8センチCDと区別する為、以降、通常のサイズのCDを「12センチCD」と呼ぶ。
規格
内周8センチメートルにデジタル音声、外周4センチメートルにアナログ映像を記録したCDビデオ(CDV)等という規格が存在する。この内周部分のみを単一のオーディオディスクとしたのが8センチCDである。
記録方式の規格とは直交的で、音楽CD等の場合は12センチ音楽CD等と同じくレッドブック、CD-ROM等の場合は12センチCD-ROM等と同じくイエローブック、CD-R及びCD-RW等の場合はオレンジブックに準拠する。
音楽CDの場合、パッケージには、通常の「COMPACT Disc DIGITAL AUDIO」(CD-DA)等の記録方式のロゴに加えて、「CD SINGLE」のロゴが加わる。ただしディスク本体には、特別な表記は無い。
容量
格納可能な情報量(メガバイト、MB) はモード1のCD-ROMでのその物である。音楽ディスクとしてはこれよりやや多い。
- 18分 (155 MB) - 低密度モード。
- 21分 (185 MB) - 12センチCDの74分 (650 MB) と同密度。
- 24分 (210 MB) - 12センチCDの80分 (700 MB) と同密度。機器によっては正常に再生出来ない事がある。
- 34分 (300 MB) - エンハンスト密度モード。対応機器は殆どは無い。
再生環境
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トレイ式のプレーヤーでは、トレイに段差を設け8センチCDを置く凹部を設けている。また、8センチCD非対応のCDプレーヤーに対しては、専用アダプターを8センチCDの外周に取り付けて12センチCDと同じ大きさに調整することで再生可能になる。プレーヤーの中には、アナログレコードのプレーヤーのように、真ん中にスピンドルを設けて、そこにCDを取り付けて回転させるようにし、トレイを省いたものも主にCDラジカセやゲーム機、そして、DVDやBD等による、録画機や再生機等を中心に、出回った。この方式では、CDの大きさに関係は無く、CDを取り付けるだけで再生が可能となる。またトレイ中央にCDを固定するためのノッチが設けられているプレイヤーであれば、縦置きでも再生可能である。これ以外のスロットイン方式や垂直トレイ方式では物理的に装填ができない。
カーオーディオのCDプレイヤーでは8センチCD対応アダプタを取り付けるとレンズ等の故障の原因となる。嘗ては8センチCD対応が当たり前であったが、近年では安価な機種や自動車メーカー純正品になると非対応となるものも少なくない。カーナビゲーションでは対応という場合も多かったが2000年代以降に入ると徐々にカーナビでも非対応となっていった。フロアなどに固定して使うCDチェンジャー利用時の場合には確実にそのままでは挿入が出来ない為別売りの8センチCD用トレイを購入する必要があったが、現実には購入が簡単なアダプタが使用される場合が多かった。
8センチCDについては当初からCDプレーヤーの性能および適応性が問題視されていた。登場した当時は8センチCDに完全対応しているプレーヤーはまだ少なかった。この為、8センチCD非対応のプレーヤーではそのままでは8センチCDを演奏させることが出来ず、故障の原因になる事も少なくなかった。 特にカーオーディオ等に多いスロットイン方式のプレーヤーでは、8センチCDがプレーヤーに吸い込まれたまま取り出せ無くなる等のトラブルが多発した。この為オーディオ家電業界は、CDプレーヤーを12センチCDと8センチCDの両方に対応する必要に迫られた。
また、ソニーから8センチCDサイズのポータブルCDプレーヤー等も発売されたが、当時は8センチCDシングルの楽曲をまとめてカセットテープ等に録音・再生等にして聴くのが主流であり、プレーヤーもやや高価であった為、余りにも普及しなかった。
用途
12センチCDと同様に音楽・データ両方の用途で使用される。
- 音楽
- 音楽CDとしては、収録時間の関係から主にシングルやミニアルバム等に使用される。1988年2月に日本国内で8センチCDが発売されたが、[いつ?]現在販売されている8センチCDシングルで最も古いカタログは長渕剛の「乾杯」(1988年2月25日発売)である。縦横比1:2のパッケージ特性から、ジャケットアートにはソロ歌手等の全身ショット[2]や、バンドやグループ等の横並びショット等が見られる[3]。
- データ
- CD-ROMとしては、ドライバソフトやユーティリティ等、ハードウェアに付属するソフトウェア等にしばしば使われる。理由はそれらソフトウェアは小容量で済む事や製品パッケージ等が小さい時等は12センチCDの同梱が困難な為である。
現状
音楽用途として、欧米では1990年代初頭、日本では1999年以降[4]、マキシシングルに取って代わられ、市場から徐々に姿を消していった。理由はジャケットの見栄えの他、1990年代以降増加した外資系CDショップでは8センチCD専用の陳列棚が少なく、アルバムCDと同形状であるマキシシングルが優位であった点やレンタルショップ対策の為であった[5]。
2000年前後の12センチCDへの移行期においてはウルフルズの『コマソンNo.1』、KinKi Kidsの『硝子の少年』(初回生産盤)、モーニング娘。の『LOVEマシーン』、サザンオールスターズの『TSUNAMI』(初回生産盤)、米倉千尋の『陽のあたる場所』『Little Soldier』等、12センチCD用の薄型ケースとジャケットに8センチCDを入れるかたちで発売されたケースや、MISIAや宇多田ヒカル、山崎まさよし、スガシカオ等のアーティストでは12センチCD仕様と8センチCD仕様の2種類発売されたケースもあった。又、BLANKEY JET CITYの『赤いタンバリン』やXLの『O・K!』[注釈 2]、『おジャ魔女CDくらぶ おジャ魔女ソロヴォーカルコレクション』等、8センチCDの周囲を透明コーティングした12センチCDとして開発された「スーパー80」仕様[注釈 3]でリリースされたケースがあった。ただしこれはスロットイン式の機器では再生できない事例があり[注釈 4]台頭する事は無く、当仕様でリリースされるタイトルは僅かであった。
上記以降は、2015年に発売されたDEENの『ずっと伝えたかったI love you』(完全生産限定盤のみ)、2019年に発売されたサカナクションの『忘れられないの』[6]や2021年に発売されたザ・リーサルウェポンズの『雨あがる』[7]等、アーティスト自身が曲の雰囲気に合わせ、限定的に発売することもあるが、8センチCDで新曲が発表される事は殆ど無く、2005年以降の新譜は0もしくは1~4桁である[4]。
一方で、旧譜の生産は、新譜よりは多く、2022年度は878タイトルで販売等が継続されている[8]。例えば、B'z[注釈 5]・Mr.Children・ZARD・SMAP・ゆず・DEEN等が8センチCDでリリースした全シングルを始め、米米CLUB「君がいるだけで/愛してる」、小田和正「Oh!Yeah!⁄ラブ・ストーリーは突然に」、B.B.クィーンズ「おどるポンポコリン」、大事MANブラザーズバンド「それが大事」、X JAPAN「紅」、中島みゆき「命の別名/糸」、加山雄三・谷村新司「サライ」、THE BOOM「風になりたい」、ヒデ夕樹&朝礼志「この木なんの木」等である。
以上より、8センチCDのその物の生産及びに販売等には終了していない。店頭で見かける事は殆ど無いが、店頭での取り寄せやインターネットショップやライブ会場等でのCD物販コーナー等で購入等する事が出来る。
脚注
注釈
- ^ SCDには他に 8センチメートル×12センチメートルのビジネスカードCD、直径6センチメートルの6センチCDもある。
- ^ この2作は12センチCDの形態の品番が採番されている。
- ^ ニューマキシと呼称するケースもある。
- ^ 『おジャ魔女CDくらぶ おジャ魔女ソロヴォーカルコレクション』のジャケット内側にCD規格の追加仕様に基づいて製造されており、再生できない機器がある旨が記載されている。
- ^ 4thシングル「BE THERE」から13thシングル「裸足の女神」までの作品が2003年に12センチCD化されているものの、2023年6月現在、8センチCD・12センチCD共に販売され続けている。また、CDトレイが透明色に代わっていたり、価格表記・販売元表記等が変更になっている物もある。
出典
- ^ 第1回 バブルから始まる物語 8cmの嗜み 歌謡曲リミテッド - KAYOKYOKU LTD.
- ^ 第2回 フルショットの魅力 8cmの嗜み 歌謡曲リミテッド - KAYOKYOKU LTD.
- ^ 第3回 これがパノラマだ 8cmの嗜み 鈴木啓之 2018.02.19 歌謡曲リミテッド - KAYOKYOKU LTD.
- ^ a b “オーディオレコード 種類別新譜数の推移(1957年~)”. ホーム > 統計情報. 日本レコード協会. 2022年7月6日閲覧。
- ^ 音楽の新常識20 ヒットチャート (日経エンタテインメント!) - ウェイバックマシン(2000年4月17日アーカイブ分)
- ^ “サカナクション、最新アルバムより“忘れられないの”&“モス”を8cmCDでリカットリリース”. rockin’on holdings (2019年7月10日). 2022年7月6日閲覧。
- ^ “4thシングル「雨あがる」ビジュアル公開!”. ソニー・ミュージックエンタテインメント (2020年12月27日). 2022年7月6日閲覧。
- ^ “カタログ数推移”. ホーム > 統計情報. 日本レコード協会. 2023年5月27日閲覧。