猫と紳士のティールーム

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猫と紳士のティールーム
ジャンル 青年漫画
漫画:猫と紳士のティールーム
作者 モリコロス
出版社 コアミックス
掲載誌 月刊コミックゼノン
レーベル ゼノンコミックス
発表号 2022年10月号 -
発表期間 2022年8月25日 -
巻数 既刊3巻(2024年2月20日現在)
その他 監修:吉田直子
テンプレート - ノート
プロジェクト 漫画
ポータル 漫画

猫と紳士のティールーム』(ねことしんしのティールーム)は、モリコロスによる日本漫画。『月刊コミックゼノン』(コアミックス)にて、2022年10月号より[1]連載中。

あらすじ[編集]

とある街にある紅葉商店街。その片隅に開店した紅茶専門店「CAMELLIA TEA ROOM」。紅茶を愛してやまない店主・瀧が、自ら厳選した茶葉を丁寧に淹れて提供している。ただ、瀧は大変な人見知りであるため、接客はいつも緊張して一苦労。それでも、訪れてくれた客に美味しい紅茶を楽しんで貰いたいと、おもてなしの心を込めて誠実に、至福のひとときとなる一杯を淹れるのである。

CAMELLIA TEA ROOM[編集]

店のお勧めでありメインでもある「本日の紅茶」は、2杯分の紅茶と菓子のセットで700円[注釈 1]。店を訪れた客の雰囲気やちょっとした言動からイメージした茶葉とティーカップを瀧が選び、優美なティーサービス(ティーポット、シュガーボウル&ミルクジャグのセット、プレースマット)で提供する。客からの要望にも柔軟に応じている。銘柄や個性が分からなくても、好みの味わいや風味を伝えれば瀧が適切と思われる茶葉を提案する。
セットの菓子は複数用意してあり、茶葉の個性とマリアージュするものを選んでいる。ケーキはCAMELLIA TEA ROOMの近くに店を構える老舗洋菓子店から仕入れたもの、スコーンなどの焼き菓子は瀧が自ら腕を振るったものである。なお、アフタヌーン・ティーは予約制。

「本日の紅茶」以外のアラカルトメニューも充実しており、茶葉は豊富に取り揃えている。シングルオリジンティー、ブレンドティー、フレーバードティー[注釈 2]、センテッドティー[注釈 3]と充実している。店で提供している茶葉と同じものをオリジナルパッケージの小箱に入れ、販売もしている。

レンガ造りのビルの1階が店舗。クラシックな欧州の邸宅を思わせる店内は、英国ヴィクトリア調の高級アンティーク家具や調度品で彩られており、マントルピースホールクロックキャッシュレジスタードアノブの細部に至るまで瀧の拘りが見てとれる。
客席は、カウンターに4席、ティーテーブル席が2つ、猫足ソファセットは1組。2階にはクラシカルな観音開きの扉を有したダイニングルーム (Parlourがあり、ネオ・ゴシック調のダイニングテーブルセットが設えてある。なお、同じフロアに瀧の私的居住空間も設けられている。更に螺旋階段を上ると屋上に出られる。

店には愛猫のキームンが看板猫として常駐している。そのため、直火のガスコンロを使用せず電磁調理器を使用。食器や調理器具はカウンター下に収納している[注釈 4]。また、猫にリスクがあるとされている柑橘系(レモンティーなど)の注文を受けた時は、階上の部屋に移動させている[注釈 5]

登場人物・動物[編集]

瀧 静(たき しずか)
紅茶専門店「CAMELLIA TEA ROOM」の店主。52歳。独身。愛猫のキームンと生活をしている。
すらりとした長身、口髭と顎髭を蓄え、豊かな髪はオールバックに整えている。丸メガネ越しにも涼し気な目元、スッと通った鼻筋が際立つ端正な顔立ちである。ウィングカラーのシャツに蝶ネクタイウェストコート(夏はカマーベスト)、ソムリエエプロンを身につけて接客をしている。気合を入れる時、両手で蝶ネクタイの端を持ち、横に引いて正す癖がある。
極度の人見知りで他人と目を合わせるのが苦手。そのため一見無表情で不愛想に見えるが、それは緊張しているためである。性格はいたって穏やかで温厚。客から紅茶に関する質問をされると瞬時に緊張から解き放たれ、頬を紅潮させて満面の笑みで堰を切ったように饒舌になる(兄からは「紅茶オタクと言われるほどである)。そのギャップに心を撃ち抜かれてファンになる客が増えている。しかし、延々と話し続けていると愛猫のキームンが割って入り制止するため、ハッと我に返るのがお約束[2]
「CAMELLIA TEA ROOM」の上の階に住まいを構えている。自宅で一人分の紅茶を入れる際はティープレスを使用(朝食時にはジャワが定番)。愛用のティーカップは、口髭が汚れないよう飲み口に工夫が施されているムスタッシュカップ(Moustache Cup)[注釈 6]。瀧はこのカップを使いたいがために口髭を生やしている。朝食はフル・イングリッシュ・ブレックファストを簡略化したものを好んで作っている[注釈 7]
ティールームを開業する前は父が経営する企業グループに勤務していた[注釈 8]
キームン
瀧の愛。瀧にとって家族であり相棒であり、癒しの存在。また「CAMELLIA TEA ROOM」の看板猫である。ティーテーブル席横の出窓スペースがお気に入りの場所。
長毛種の黒猫。下顎と首下から胸にかけて一部白い毛が生えている。蝶ネクタイ風の首輪をつけており、正面からみるとタキシードを着ているように見える。瀧が抱きかかえて余るほどの大柄である。
名前の由来は中国紅茶の「祁門紅茶(キームンこうちゃ、きもんこうちゃ)」。瀧からは「キームンくん」、瀧の兄からは「クロちゃん」と呼ばれている。
人間の言葉を理解しているような賢さがある。特に、瀧が紅茶の知識を止めどなく披露し続けていると、頃合いを見て一鳴きしたり肩に飛び乗ったり、時には甘噛みをして制止する。

静の親族[編集]

瀧 馨(たき かおる)
静の兄。弟に負けず劣らずのナイスミドル。静から「兄上」と呼ばれている。
自信に溢れ、堂々とした立ち振る舞いである。身長は静よりも2cm低い178cmであるが、体躯も姿勢も良いため全く見劣りしない。
父の跡を継ぎ、岳山グループを率いるCEOに就任、手腕を発揮している。
人見知りで大人しい静と正反対で、頭に血が上りやすく声も大きい。静を心配するあまり口うるさいことを言うが鎮火するのも早い。50代になった弟を今でも子ども扱いして愛でている思慮深い善き兄である。その過保護ぶりは妻・昌(あきら)に時々諫められるほどである。

「CAMELLIA TEA ROOM」顧客[編集]

片出(かたいで)
軽やかなショートボブが似合う爽やかな女性。少し引っ込み思案な社会人1年生。
仕事でミスをして落ち込んでいた時に偶然「CAMELLIA TEA ROOM」の前を通り掛かり、キームンに誘われるように店に入った。今まで経験したことのない、瑞々しい紅茶の美味しさに感激。勇気を出して茶葉の種類を尋ねると、先程までのクールな表情から一転、嬉々として蘊蓄を語り続ける瀧のギャップに驚き、それを制するキームンの絶妙なコンビネーションにすっかり魅了された。以来、足繁く店に通うようになった。
山田三姉妹(やまだ:ゆあ、みちか、カンナ)
CAMELLIA TEA ROOMから程近い高校に通う仲良し三人組の女子高生。名字は同じだが血縁関係はない。3人はクラスメイトであり、席も並んでいる[注釈 9]。その様子から、いつしか「山田三姉妹」と呼ばれるようになった。3人とも瀧のことを「瀧先生」と呼んでいる。
ゆあ(結愛)
最近初めてロイヤルミルクティー(市販されている紙パック入り)を飲み、その美味しさを知ったばかり。紅茶専門店で本格的なミルクティーを飲んでみたいと思い、みちかとカンナと共に「CAMELLIA TEA ROOM」を訪れた。
瀧が愛する紅茶を基に披露する茶葉や菓子類の知識、更に歴史や地理に至るまで多岐に亘って博識であることに感銘を受けた。
みちか
天真爛漫で明るい笑顔が印象的な少女。キームンをとても気に入っている。
カンナ(甘菜)
屈託のない笑顔でハキハキと発言する快活な少女。
アールグレイを注文した婦人
中学生二人の子を持つ兼業主婦。「CAMELLIA TEA ROOM」の前でショッピングバッグが破損するアクシデントが起き、瀧からエコバッグを貰い受ける。そのまま帰るに忍びないので店に入ることにした。普段はコーヒー党であるが「本日の紅茶」で提供された紅茶とケーキのペアリングに衝撃を受ける。時々来店しては同じ組み合わせのオーダーをしている。
ヌワラエリヤを注文した老夫婦
夫人
新婚旅行先のジャワで飲んだヌワラエイヤ・アイスティーの味が忘れられないご婦人。瀧が気圧される程のストレートな物言いをする、いわゆるツンデレな一面がある。「CAMELLIA TEA ROOM」も瀧のことも気に入っており、閑古鳥が鳴きそうな店を心配している。茶葉を購入するために来店することがある。
夫君
妻の口撃もするりと交わし、どこか飄々と大抵のことは笑い飛ばしてしまう大らかな性格。
塩原
片出の上司。役職は部長。普段はエスプレッソに湯を注ぐアメリカーノを常飲している。
配属当初は引っ込み思案で口数も少なかった部下の片出が、最近ようやく部内で雑談に応じるようになったことに心弛びしている。片出が熱心に薦めていた「CAMELLIA TEA ROOM」に休日を利用して一人で訪れた。

「CAMELLIA TEA ROOM」関係者[編集]

佐藤(さとう)
創業60年を誇る洋菓子店「ケーキのさとう」の店長でありケーキ職人。「CAMELLIA TEA ROOM」にケーキを卸している。
屈託のない笑顔とお喋りで人の懐に入るのが上手い陽気な性格。筋肉質な体をコックコートに、やや窮屈そうに納めている。ツーブロックのヘアスタイル、顎髭を蓄えている。
「CAMELLIA TEA ROOM」を開店するにあたりペアリングさせる菓子を探していた瀧が「ケーキのさとう」を訪れ、商品を購入したことが切っ掛けで知り合う。当時の瀧は、目にかかるほど伸ばした前髪と顔の半分を覆うような無精髭で表情が読めない風貌だったため“殺し屋のような見た目”と佐藤夫婦は評していた。その後「瀧」という名字から「たっきー」と呼ぶようになり、現在に至る。
亀本(かめもと)
瀧と同世代の女性。岳山グループの会計士をしており、馨の命により三カ月に一度「CAMELLIA TEA ROOM」の出納帳などのチェックに訪れている。瀧が会社勤めをしていた若い時分から淡い憧れを抱いていた。

サブタイトル[編集]

各話 サブタイトル 紅茶 フードペアリング
第1話 ダージリンとアップルパイ ダージリン
(セカンドフラッシュ)[注釈 10]
アップルパイ
第2話 アールグレイとザッハトルテ キームンアールグレイ ザッハトルテ
第3話 ディンブラとマドレーヌ ディンブラ マドレーヌ
第4話 ロイヤルミルクティーとカヌレ ロイヤルミルクティー
アッサム[注釈 11]
カヌレ
特別編 瀧のモーニングルーティン ジャワ フル・イングリッシュ・ブレックファスト
〈瀧バージョン〉
第5話 ルフナのクリームティーセット ルフナ クリームティー
スコーンクロテッドクリームジャム添え〉)
第6話 正山小種とサンドイッチ 正山小種 サンドイッチ
全粒粉パンスモークサーモンクリームチーズキュウリ
第7話 苺のカスタードタルトと紅茶占い キャンディ カスタードタルト
第8話 アイスレモンティーとクランペット アイスレモンティーニルギリ クランペットバターゴールデンシロップ添え)
第9話 アッサムとバノフィーパイ アッサム トフィーナッツ
バノフィーパイ
第10話 マサラチャイとカレー マサラチャイ
(茶葉:ドアーズCTC製法ティーバッグ〉)
スパイス:ジンジャーシナモンカルダモンクローブ
カレー[注釈 12]
第11話 ヌワラエリヤとスフレケーキ ヌワラエリヤ(アイスティー) スフレチーズケーキ
第12話 ダージリンとモンブラン ダージリン・ティー
(オータムナル)
モンブラン和栗を使用)
第13話 サモワールとクッキー キャンディ(サモワールにて提供) クッキー
クラービャ〈イチゴジャム〉[注釈 13]メレンゲアイスボックスクッキー[注釈 14]ショートブレッドディアマンクッキー[注釈 15]ブールドネージュ
第14話 デカフェティーとマカロン セイロンブレンド
(ルフナ、キャンディ、ディンブラ)超臨界二酸化炭素抽出法で抽出)
マカロン(バニラ〈ホワイトチョコクリーム〉・フランボワーズ
第15話 ウヴァとティラミス ウヴァ ティラミス

書誌情報[編集]

  • モリコロス 『猫と紳士のティールーム』 コアミックス〈ゼノンコミックス〉、既刊3巻(2024年2月20日現在)
    1. 2023年2月20日発行、ISBN 978-4-86720-477-1
    2. 2023年8月19日発行、ISBN 978-4-86720-532-7
    3. 2024年2月20日発行、ISBN 978-4-86720-617-1

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 価格を設定した瀧自身も、採算度外視であるという自覚がある。兄から赤字になると心配された。
  2. ^ 着香茶。花や果実、香料などを用いて茶葉に香りを添加したもの。
  3. ^ 移香茶。茶葉に花や果実、香辛料などを混ぜてその香りを茶葉に吸収させたもの。
  4. ^ 猫のキームンが店内に常駐しており、歩き回るために危険を回避している。
  5. ^ 柑橘類の皮に多いリモネンソラレンの成分が猫に有害とされており、中毒を引き起こして嘔吐や下痢になる可能性が否定できない。皮膚炎、肝臓に負担がかかるとも言われている。同様に香辛料も動物に禁忌とされているため、瀧はプライベートでもスパイスを用いたマサラチャイやカレーを食する際にも、念のためにキームンを別室に隔離する。
  6. ^ 1860年代にイギリスの陶芸家・Harvey Adamsが発明したとされている。
  7. ^ イギリスではプレートに載せる定番とされるベイクドビーンズブラックプディングが苦手なので他の物で代用。また、油を使うフライパン調理ではなく、オーブンでグリル調理をして摂取カロリーをセーブしている。
  8. ^ 「CAMELLIA TEA ROOM」の会計は赤字であるが、瀧家の土地活用という体を為していることに加え、父の遺産や株式配当金が十二分にあるため運営資金は賄えている。
  9. ^ 教室での座席は出席番号(五十音順)であり、前から「カンナ、みちか、ゆあ」の順である。
  10. ^ 作者はキャッスルトン茶園の「ムーンライト」を参考にした。
  11. ^ 「CAMELLIA TEA ROOM」では“ミルクティー”と呼ばず、イギリス式に“ティーウィズミルク”(Tea with Milk)として提供している。
  12. ^ 今回は店での提供ではなく、片出及び瀧が各々自宅で調理したカレーとのフードペアリング。
  13. ^ アゼルバイジャンで生まれたとされる高価なスパイスや香料がふんだんに使用されている伝統的菓子。のちにソビエト連邦(現:ロシア)に伝わり、製造コストを抑えるレシピに改良されたが、味の良さから人気を博した。そのレシピはGOST規格(国家標準)に定められ、アゼルバイジャンの首都・バクーの名と異国風クッキーの意味を有する中東の語を組み合わせた「バクー・クラビイェ(Бакинское курабье)」)と名付けられた[3]。日本では「ロシアンケーキ」もしくは「ロシアンクッキー」として流通しているものが多い。
  14. ^ 作中に「又の名をダッチビスケット」とある。「ダッチ(Dutch)」は「オランダの―」という意味である。
  15. ^ 側面にグラニュー糖をまぶして焼き上げるアイスボックスクッキーの一種。グラニュー糖をダイヤモンドに見立て、その名がついた。

出典[編集]

  1. ^ モリコロス新連載「猫と紳士のティールーム」紅茶専門店と紳士な店主の物語”. コミックナタリー. ナターシャ (2022年8月25日). 2023年7月28日閲覧。
  2. ^ 紅茶専門店の「イケオジ」が見せた意外すぎる表情”. 東洋経済オンライン. 東洋経済新報社 (2023年3月8日). 2023年6月23日閲覧。
  3. ^ クラビイェ:ソ連のクッキーとなった花の形をした東方のクッキー(レシピ)”. ロシア・ビヨンド. ロシア・トゥデイ (2020年6月12日). 2024年1月27日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]