「日本の救急車」の版間の差分

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===中型・大型トラックベースなど===
===中型・大型トラックベースなど===
東京消防庁に配備されている京成自動車工業の「スーパーアンビュランス」に代表される救急車のことである。このほかにも[[日本赤十字社]][[岡山県]]支部は多目的救急車(仕様は[[日野・レンジャー]])を、[[熊本県]]支部は片側だけが拡張するタイプ(仕様は[[いすゞ・ギガ]])を保有している。性格はいわゆる“救急車”ではなく、移動医務・処置室と言える。
東京消防庁に配備されている京成自動車工業の「スーパーアンビュランス」に代表される救急車のことである。このほかにも[[日本赤十字社]][[岡山県]]支部は多目的救急車(仕様は[[日野・レンジャー]])を、[[熊本県]]支部は片側だけが拡張するタイプ(仕様は[[いすゞ・ギガ]])を保有している。“救急車”ではなく、移動医務・処置室として使用する。


====東京消防庁の特殊救急車(スーパーアンビュランスなど)====
====東京消防庁の特殊救急車====
[[Image:Superambulance-fuso.jpg|thumb|200px|right|スーパーアンビュランス(スーパーグレートベース)]]
[[Image:Superambulance-fuso.jpg|thumb|200px|right|スーパーアンビュランス2台目]]
[[画像:SUPERAMBULANCE.jpg|thumb|200px|right|スーパーアンビュランス(ギガベース)]]
[[画像:SUPERAMBULANCE.jpg|thumb|200px|right|スーパーアンビュランス3台目]]
[[Image:SuperAmbulance2.jpg|thumb|200px|right|スーパーアンビュランス(拡張時)]]
[[Image:SuperAmbulance2.jpg|thumb|200px|right|スーパーアンビュランス3台目(拡張時)]]


*スーパーアンビュランス
[[京成電鉄]]グループの京成自動車工業が艤装・発売する車両で、[[東京消防庁]]の[[消防救助機動部隊]](ハイパーレスキュー)に配備されている。3軸仕様の大型トラックがベースとなっている。
**1台目
*:[[1994年]]10月、[[三菱ふそう・ザ・グレート|ザ・グレート]]をベースにしたモデルが[[千代田区]]丸の内消防署に配備される。
*:[[1996年]]12月、[[東京消防庁第二消防方面本部]][[消防救助機動部隊]]([[大田区]])発足のため、同隊に配転となる。
*:[[2004年]]、第二消防方面本部消防救助機動部隊のスーパーアンビュランス更新に伴い[[東京消防庁第八消防方面本部]]消防救助機動部隊([[立川市]])に配転となる。
*:[[2006年]]、引退。この間、[[地下鉄サリン事件]]等に出動した。
**2台目
*:2004年、[[三菱ふそう・スーパーグレート|スーパーグレート]]をベースにしたモデルが第二消防方面本部消防救助機動部隊に配備される。1台目に比べ、患者室のドアやドアステップの構造が改善されている。
**3台目
*:2006年、[[いすゞ・ギガ|ギガ]]をベースにしたモデルが第八消防方面本部消防救助機動部隊に配備される。[[渋谷温泉施設爆発事故]]等で出動している。


*東京消防庁は3B型を思わせる[[マイクロバス]]型の特殊救急車を配備している。現在の車両は[[トヨタ・コースター|コースター]]をベースにしたモデルで、[[感染症]]患者搬送用カプセル型ストレッチャー(アイソレータ)が積載できる。[[規制が議論されている兵器|NBC]]災害対応部隊である[[東京消防庁第三消防方面本部]]消防救助機動部隊([[渋谷区]])に配備されている。
*スーパーアンビュランス1台目
:[[1994年]]10月、[[三菱ふそう・ザ・グレート|ザ・グレート]]をベースにしたモデルが丸の内消防署に配備される。
:[[1996年]]12月、[[東京消防庁第二消防方面本部]]消防救助機動部隊発足のため、同隊に配転となる。
:[[2004年]]、第二消防方面本部のスーパーアンビュランス更新に伴い[[東京消防庁第八消防方面本部]]に配転となる。
:[[2006年]]、引退。この間、[[地下鉄サリン事件]]等に出動した。
*スーパーアンビュランス2台目
:2004年、[[三菱ふそう・スーパーグレート|スーパーグレート]]をベースにしたモデルが第二消防方面本部に配備される。1台目に比べ、患者室のドアやドアステップの構造が改善されている。
*スーパーアンビュランス3台目
:2006年、[[いすゞ・ギガ|ギガ]]をベースにしたモデルが第八消防方面本部に配備される。[[渋谷温泉施設爆発事故]]等で出動している。

また、東京消防庁はかつての3B型を思わせる[[マイクロバス]]型の特殊救急車を配備している。現在の車両は[[トヨタ・コースター|コースター]]をベースにしたモデルで、[[感染症]]患者搬送用カプセル型ストレッチャー(アイソレータ)が積載できる。[[規制が議論されている兵器|NBC]]災害対応部隊である第三方面消防救助機動部隊に配備されている。


=== 自衛隊の救急車 ===
=== 自衛隊の救急車 ===

2008年3月23日 (日) 06:52時点における版

高規格救急車の一つ
名古屋市消防局北消防署日産パラメディック)
高規格救急車の一つ
東京消防庁トヨタハイメディック)

日本の救急車(にほんのきゅうきゅうしゃ)は、日本における救急車の事情などを紹介する。

日本において救急車は消防車パトロールカーと同様に緊急自動車の一つで、サイレンを鳴らして緊急走行を行うことができる。正式名称は救急自動車きゅうきゅうじどうしゃ)。

概要

救急車には、消防本部およびごく一部の消防団が保有するものと、病院などが保有するものがあるが、119番通報により出動するものは前者であり、後者は主に病院間の転院搬送・災害対応などに用いられる。これ以外にも、患者搬送を行うことを目的とした民間の車両がある(ただし、民間の車両については消防や病院の救急車と異なり、緊急自動車の指定は受けられないため、寝台車両・患者搬送車と呼ばれることが多い)。以上の他、日本赤十字社が運営する病院、自衛隊や大企業の工場・一部のテーマパーク自衛消防隊なども救急車を保有している。

日本の消防の救急車においては、隊員3人以上及び傷病者2名以上を収容でき、その他法令で構造や設備が定められている。

日本で救急業務が消防の任務とされた1963年以降、救急車の出動件数は例外なく増加の一途をたどっている。特に緊急性のない救急要請の増加が著しく、本当に救急車が必要とする傷病者への救急出動に支障が出ていることも多い。そのため、緊急性がなく安易な救急要請を抑制するため、軽微な傷病での救急車利用について、傷病者や医療機関から使用料を徴する救急車の有料化が総務省消防庁やいくつかの自治体で検討されている。

歴史

  • 1931年(昭和6年)- 救急車を大阪府大阪市にある日本赤十字社大阪支部に配備。日本における最初の救急車となる。
  • 1933年(昭和8年)3月13日 - 神奈川県警察部(現在の神奈川県警察本部)に属する横浜市山下町消防署(現在の横浜市安全管理局中消防署)に配備、消防機関においては初めての導入となった。
  • 1963年(昭和38年)- 消防法が改正され、各自治体消防が救急業務を行うように義務化され普及が進んだ。
  • 1991年(平成3年) - 医師法が改正され、救急車内において救急隊員が処置を施すことが可能になり、また同時に救急救命士が全国で数多く誕生することに。
  • 1992年(平成4年) - トヨタ自動車が日本初の高規格救急車「ハイメディック」を発表。
    • 後に、他社が後を追いかけ数多くのモデルが登場。

納入に至るまで

日本で救急車を納入する際には、基本的には競争入札(一般競争・指名競争)が行なわれる。納入までの主な手順は次の通り。

    • 救急自動車を納入する際は更新および増隊の必要の有無に基づいて本部で決定され、消防本部を運営する地方公共団体の議会(以下、議会)で新年度の計画を発表される。
    • その後、各消防本部が運営する地方公共団体の入札業者名簿に登録されている販売業者に対し、入札の公告を告示をする。販売業者は期間内に仕様や金額を書いた各種用紙一式をまとめた封筒を各消防本部の指定先に届ける。
    • 開札が行われた後、入札額が一番低い販売業者が落札し、仮契約を結ぶ。その後、議会で可決されれば、契約は成立する。
    • その後販売業者は、自動車メーカーに対し発注し、その後、自動車メーカーから指示を受けた艤装メーカーがは車輌を生産する。なお、乗用車に比べて生産台数が少ない救急自動車は原則として受注生産車輌のため生産完了までは1~2ヶ月はかかる。
    • 生産完了後、販売業者の元に救急自動車が届けられ、後付の装備を装着する。なお、救急自動車は型式を取得していても指定自動車でないため国土交通省直轄の運輸局にて持ち込み検査を行い、登録の完了後、各本部に納入される。
  • 救急自動車をはじめ物品各種は、公共工事とは異なり談合があまり見られない為、インターネットのウェブサイト上で公告を行なわない地方公共団体は多い。
  • 入札業者名簿に登録されている業者が1社しかない場合や、指示内容や諸事情(生産中止など)により納入が不可能になったりした場合は1社間との随意契約で済まされることが多い。
  • 入札で救急自動車が納入されるだけでなく、個人や民間企業や各種法人から寄贈されることもある。(法人では日本損害保険協会日本自動車工業会日本宝くじ協会など、民間企業では安田生命(現在の明治安田生命)や山之内製薬(現在のアステラス製薬)などが有名である)この場合は車体に寄贈者名や「助成車両」のネームが入る。類似したケースでは日本赤十字社の新潟県支部などが消防本部に救急車を貸与している。この車両には赤十字マークが付けられている(ミニカーの救急車においては赤十字マークは定番であるが、日本においては日本赤十字社と自衛隊所属車両のみに許されるマークである)。

搭載されている主な医療用資器材

高規格救急車の車内
  • 観察用資器材-聴診器、血圧計(自動式・タイコス式)、検眼用ペンライト、患者監視装置 (心電図・脈波・血圧・血中酸素飽和度)等- 傷病者のバイタルサインなどを測定する。
  • 人工呼吸器(バックバルブマスク・デマンドバルブ・自動式人工呼吸器等)
  • 自動式体外除細除器 - 電気ショックを与える医療器具。VF(心室細動)やpulselessVT(無脈性心室頻拍)の、致死的不整脈を治療するために使用する。法改正により、一般市民でも使用できるようになった自動体外除細動装置(AED)と救急車に積載されるものと異なる点は、隊員自らが心電図モニターにより除細動の適応を判断し解析を行い、除細動適応であれば通電する。※一般市民仕様のAEDを救急隊装備として使用するケースもある。
  • 気道管理セット(吸引器、喉頭鏡、マギル鉗子、開口器、経口経鼻エアウェイ等)
  • 搬送器材各種(メインストレッチャー・サブストレッチャー・布担架・スクープストレッチャー等)
  • 毛布
  • 感染予防用具(プラスチックグローブ、マスク、防護衣類、ゴーグル等)
  • 脊柱固定用具(バックボード、頸椎固定カラー、ストラップ) -交通事故などの高エネルギー外傷で脊椎が損傷している可能性がある患者に対し全身固定を目的として使用。
  • 外傷キット(滅菌ガーゼ・タオル包帯・三角巾・空気膨張型副木等)
  • 分娩セット
  • 救出用具(サイドウィンドウを割る為のハンマーシートベルトカッター、バール、ベンケイ(消防士の使用する物と同じ)等) これで対応出来ない事案の場合は特別救助隊の出動を要請する事になる
  • 医療用酸素(10リットルボンベ×2~3本)
  • 特定行為セット(ラリンゲアルマスク、食道閉鎖式エアウェイ、気管チューブ、静脈留置針、輸液セット、アドレナリン)-医師の具体的指示を受けた「認定救急救命士」が使用できる。

法令関係・デザインなど

最近、一部の本部で救急自動車に貼り付けられることが多くなったスター・オブ・ライフ(生命の星)

車体の色は道路運送車両法に基づき白色のみと定められ、色の付いたテープ状の帯(赤色または青色)が入るのが一般的であるが、色帯のデザインや形状は本部ごとに異なる。例えば、札幌市消防局の場合は色帯を「Sapporo」の頭文字である「S」をモチーフに変形させたものや大阪市消防局のように全体に色帯が無いもの(ただし平成16年から配備された高規格救急車のリアのテールゲートのハンドル付近に赤帯が入った)や川崎市消防局のようにフロント部分のみ色帯が無いケース(平成17年度更新車両からはフロント部分にも色帯あり)もある。

上部に赤色回転灯(近年は高輝度LEDなどを用いたストロボ灯 前方側方以外には投光の必要がないため)を備え、自動車の追突事故防止に後面・出会い頭衝突防止に前面に赤色の点滅または回転灯(前方集中型警光灯)、また後部に指示方向点滅灯(以上の灯器は一部装着していない車両もある)、スピーカー、消防無線機などを備えている。なお、救急車のサイレン音「ピーポーピーポー」は厳密には法令上のサイレンではない(傷病者保護の為に例外的に認められた音)。法令上のサイレン(「ウーウー」音)は赤信号を通過するとき、またパトロールカーを想起させる為高速道路での緊急走行の際に鳴らす。(ただし、「ウーウー」音のサイレンを鳴らさずに「救急車が通ります進路を譲ってください」などと音声アナウンスで赤信号を通過することもある。)近年はアメリカで使われているピアッシング音(“ピヨピヨピヨ”という鋭い音 車上荒らし警報と同種)をアンプに装備している車両もある。

また、最近では救急車のマーキングは本部名などを英語で表記したり、スター・オブ・ライフ(生命の星―アスクレピウスの杖を中に入れたものも)や消防本部または市町村章のマークを貼り付けたものや、火災予防や救命講習の呼びかけなどをはじめとした消防本部からの告知の目的としたものがある。車両前部の”救急”の表示は、左右を反転させた「鏡文字」にしているものがある(例:上の名古屋市消防局の車両)。これは走行中の一般車両が、後方から接近する救急車をバックミラーで認識しやすいようにするためで、ヨーロッパなどでは一般的である(“AMBULANCE”を反転させてある)。

従来型(2B・3B型)と高規格の違い

2B型救急車の一つ
(横浜市消防局(撮影当時))
  • 2B型救急車 - 2(ツー)ベッド型の略で、高規格救急車に対して在来型救急車とも呼ばれる。1970年代まではステーションワゴンをベースにしたものが大半だったが、同年代以降は車内の圧迫感を抑えるために商用ワンボックスカーをベースにした車両が主流となっている。また2B救急車に高規格救急車同等装備を積載した準高規格救急車などと呼ばれるのもあるが正式名称ではない。
  • 3B型救急車- 3(スリー)ベッド型の略。マイクロバスをベースにした救急車で、広さを売りに1980年代から1990年代にかけて一部の消防機関に配備されたが、大きさや振動などマイクロバス特有のデメリットから高規格救急車が普及した現在ではほとんど見かけない。
  • 高規格救急車 - 在来型や外国製をベースに開発、規格化。車両室内の寸法などが細かく法令で定められており、それら全てをクリアし認定を受けた車両が総務省消防庁認定高規格救急車として販売されている。

その他 

  • 大型救急車 多くのベッド(担架)を積載しており航空事故や幹線道路等での大勢の負傷者の搬送の為のも存在する。3B救急車と似ているが仕組みが異なっており、主にマイクロバスやトライハートの改良した車両などが配備実績にある。
  • 軽救急車 現在日本の救急事情は限界を迎えており出動件数が全国平均8秒に一回程度となっている。高規格救急車や2B救急車購入も地方では厳しい為、軽ワゴン車を救急車カラーにし高規格救急車又は2B救急車が出動しており救急車が不足している際、中継ぎとして出動する車両の事をいう。消防自動車で補っている消防もある。

高規格救急車・ワークステーション

日本・外国製車両一覧

1991年の医師法改正によって救急救命士が誕生し「応急処置」の範囲を超える高度な処置が出来るようになった。しかし、当時の国産救急車規格では隊員の活動が制限されたり、新しく増える医療器具や処置器材を置くスペースがないなどの問題が発生する事がわかった。そこで救急救命士が車内で迅速に救命処置ができ、なおかつ医療器具などを無理なく搭載できる高規格な救急車、「高規格救急車」を規格化することになった。

フォード

  • F-250・E-350 (架装:ウィールドコーチ(E-350)・ジェイカブ・インダストリーズ(F-250) 車体:フォード)
    • 高規格救急車が導入される以前、オーストラリア仕様のフォード・F-250型救急車が、東京消防庁や川崎市消防局などに導入された記録がある。この車両は、ディーラーの近鉄モータースオーストラリア仕様を輸入したため、右ハンドル仕様だった。(外務省がODA物資として海外に輸出しようと購入したが、納入先が右ハンドル車が使用不可の地域だったため、止むを得ず納入を取りやめ、余剰分を国内に割り当てたとする説もある)
    • その後、高規格救急車の導入に合わせ、アメリカ・WHEELEDCOACH社製のフォード・E-350型救急車が大都市圏(東京消防庁・京都市消防局・名古屋市消防局などに配備された。大都市以外には大垣地区消防組合がある。また、数台が民間の病院や患者搬送サービス業者等にも納入された。

メルセデス・ベンツ

307D・310D(架装:クリスチャン・ミーセン(C.Miesen)社、ビンツ(BINZ)社 車体:メルセデス・ベンツ)

救急救命士法施行に伴い全国に初めて配備された高規格救急車の中で、忘れてはならないのがダイムラー・ベンツ社(現ダイムラー)製の310D型高規格救急車である。投入当時は国産の高規格救急車はまだ初期段階にあり、本格的な高規格救急車として後の国産高規格救急車の手本となった点も多い車である。310型は救急車として、高度医療機関のドクターカーとして、また外国製の救急車として話題にもなったことから、配備された数が多く、全国各地でその姿を見ることが出来た。この車両は、1991年頃より導入され始め、平成7年まで大都市やその周辺都市に配備された。主要な大都市以外では都留市消防本部がある。配備された車両の大部分は既に退役したが、未だに使用している自治体や医療機関も数多くある。

310D型が高規格型救急車なのに対し、それ以前(1987年頃)に、東京消防庁と横浜市消防局、名古屋市消防局に従来型の2B型救急車として307D型救急車が配備されていた。これは当時の自治省消防庁が、後に施行される救急救命士法の検討段階において、従来のキャブオーバー型救急車に代わる新しいタイプの救急車の検討・比較材料として、輸入車ディーラーであるウエスタン自動車(のちにヤナセに吸収)を通じ東京消防庁に2台試験的に導入、運用させた。横浜市消防局にはウエスタン自動車が寄贈したという話である。

310型の前モデルにあたるこの307D型救急車は、車体が大きいので資器材の収容能力も高く、また大きな車体の中で行う搬送患者の処置、防振架台のテスト等、後の高規格救急車の仕様を検討する上で良い検討材料になった。しかし、遅いと言われた後の310型に比べ、エンジンの排気量/馬力共にさらに小さく、動力性能の点で明らかに国産車に劣ったことから、あまり積極的な運用はなされなかったようだ。しかし、この運用結果を踏まえ、後の高規格救急車につながるデータが築かれていった。なお、310D型救急車の架装メーカーはクリスチャン・ミーセン社とBINZ社の2社であった。この2社は、ドイツ本国で特装車架装を手がける大手メーカーであり、日本で言うところのトヨタテクノクラフトとオーテックの様なものである。ミーセン社架装モデルは、当時メルセデス・ベンツの商用車系車両を販売していた三菱ふそう系列のSTBが、同じく三菱自動車系列の三菱自動車テクノサービスで国内仕様に手直ししたものを「メルセデス・ベンツ救急車」として販売していた。これは数が多く、国内の310D救急車のほとんどはミーセン社製である。なお、一部ではあるが、帝国繊維もBINZ社架装の車両を「テイセン F-5型」として販売していた。

日本国産車両一覧

現行モデル

札幌ボデー工業Tri-Heart(写真右)
札幌市消防局白石消防署菊水出張所所属)
  • HIMEDIC(ハイメディック、トヨタ自動車) (トヨタ・ハイエース)がベース。
  • PARAMEDIC(パラメディック、日産自動車)(日産・エルグランド)がベース
  • Tri-Heart(トライハート、札幌ボデー工業三菱ふそう・キャンターフルタイム4WDベース)
    • 通称:札消式高規格救急車。札幌市消防局が札幌ボデー工業と共同開発し、1992年に発売した日本初の4WD高規格救急車である。
    • 冬季の自然環境が厳しい寒冷地向けに開発された車両で、積雪などで発生する凹凸に対応するため後輪にエアサスペンションを搭載している。
    • 初代モデルでは大型だった車体を現行の2代目モデル(2000年に全面改良)で小型化。トラックベースの利点である広い患者室スペースは維持しつつも、不評だった取り回しの部分などの改良(最小回転半径を初代の7.6mから現行パラメディックと同等の6.4mに短縮)を施し、日本で唯一のトラックベース高規格救急車として販売を継続している。
    • 北海道以外の自治体では四街道市消防本部などが導入しており、自治体以外にも一部の日本赤十字社の病院で導入されている。
    • 現在札幌市消防局で実働しているトライハートは2000年に導入された2台のみ。その車両も2008年3月には非常用の予備車になる予定で、札幌市の実働する高規格救急車はすべてパラメディックへ入れ代わる。
    • 札幌市消防局でパラメディックが採用されている理由として、近年は市内の除雪が行き届いているため、乗用車ベースの4WDでも走行に支障がなくなってきた事、凍結路面などで隊員の安全確保と労力低減ができる電動巻き上げ装置付の防振ベッドが装備できる事、深夜の住宅街で停車していてもエンジン騒音が少ない事、などの理由からトライハートを敢えて採用する所までには至っていないらしい。
    • Tri-Heartとは、人命救助に当たって最も重要な「愛」「信頼」「誠実」の三つの心を表している。
  • また、この他には日野自動車の中型トラック「レンジャー」ベースの高規格救急車が北海道網走郡大空町東藻琴にある網走地区消防組合東藻琴分署に導入されている。参考資料(日野自動車ホームページより)

製造中止モデル

  • SUPERMEDIC (スーパーメディック、いすゞ自動車エルフベース)
    • 救急車で初めてエアーサスペンションを設定し、傾斜した坂道にも対応した防振架台が搭載された。2002年に製造終了。初代はエルフをベースとし2代目はコモベースだった。2代目は日産パラメディックとほぼ同仕様の車両だった。
  • DIAMEDIC (ディアメディック、三菱自動車工業(現・三菱ふそうトラック・バスキャンターベース)
    • 1997年7月7日に発売された。ボディサイズが小型で最小回転半径が4.9mというのが特徴である。前期後期の2種が存在。2002年のキャンターフルモデルチェンジに伴い製造終了。
  • OPTIMA(オプティマ、帝国繊維、キャンターベース)

中型・大型トラックベースなど

東京消防庁に配備されている京成自動車工業の「スーパーアンビュランス」に代表される救急車のことである。このほかにも日本赤十字社岡山県支部は多目的救急車(仕様は日野・レンジャー)を、熊本県支部は片側だけが拡張するタイプ(仕様はいすゞ・ギガ)を保有している。“救急車”ではなく、移動医務・処置室として使用する。

東京消防庁の特殊救急車

スーパーアンビュランス2台目
スーパーアンビュランス3台目
スーパーアンビュランス3台目(拡張時)

自衛隊の救急車

自衛隊の車両は陸・海自が緑、空自は紺色で、前面・側面に白地の赤十字マークを貼り付けてあり、サイレン・赤色灯も装備している。ワンボックス車がベースの車両は全国各地の駐屯地・基地に配備されている。また、陸上自衛隊の衛生隊は野外用にトラックをベースとした車両も保有している。

救急車ではないが、陸自・衛生科部隊では、野外手術システム(手術車・手術準備車・滅菌車・衛生補給車の4台で構成)を保有している。

ワークステーション

また、病院などと連携し、医師の救急車への乗り込みが行われている地域もあり、そのような救急車はドクターズカー(ドクターカー)と呼ばれ、このシステムをドクターカーシステムという。このシステムを効率的に利用するために、消防機関の救急車を総合病院や救急医療機関に配置していて、「ワークステーション」と呼ばれる。

消救車・PA連携

消救車(モリタ広報車)

消救車(しょうきゅうしゃ、正式名称:消防救急自動車)は、消防車の出動頻度に比べて、よく駆り出される救急車の運用効率化を図り、消火と救急の両方の機能を持つ車を配備することを目指して作られた車である。2台買うよりは若干安いが、効率的に運用できるかどうかはこれからの課題である(両方の機能を持つ車両は法令上も想定外だったため)。配備されている消防機関はまだ少なく、2004年12月にモリタが開発・製造した日野自動車のデュトロベースの車両が、千葉県松戸市消防局六実消防署に第1号として、 2007年4月には京都市消防局北消防署中川消防出張所に全国第2号として消救車が導入された。しかし、京都市消防局特注モデルのため、ポンプは小型動力ポンプしか搭載しておらず、患者搬送ベッドや生体情報モニターなどを備えるが最新の救急車に比べれば設備は劣る。

その一方で患者収容スペースを活かした指揮車仕様のタイプが2007年4月現在福岡市消防局北九州市消防局に配備されている事が確認されている。

また、救急出場に消防車を先行で出場させ(救急隊員の資格を持ったポンプ隊員が乗車している)、現場整理と先行処置に当たらせている消防機関もある(PA連携―Pump and Amburance)。

車内での救命処置

人工呼吸心臓マッサージなどの他に、現在では免許取得後一定の講習を修了した「気管挿管(きかんそうかん)認定救急救命士」によって、気管挿管で呼吸の確保が行えるようになっている、また自動体外式除細動器(AED)の発達により電気的除細動を医師の指示なしに行うことも可能になっている。2006年4月からはやはり講習修了済みの「薬剤投与認定救急救命士」によって、薬剤(アドレナリン)の投与が可能になった。

心肺停止の時間をできるだけ短くするため、救急車の現場到着の時点で、救命処置が開始されることが望ましい。このため、医師が現場へ臨場したり、医師の指示の元で救命処置が行われるのが理想である。

要員

多くの場合、救急隊長、運転担当の機関員、救急隊員の3名で構成され、午前9時から翌日午前9時までの24時間勤務である。従って、1台の救急車を維持するためには3交代とする必要上3個隊9名が必要であり(本部により1分署に2個隊6名の場合もあり、このような分署では隔日2交代勤務となる)、救急の専属でなく、消防隊(ポンプ・梯子)・救助隊との兼任で隊員資格を取得させ要員を確保している救急隊もある。

運用状況

民間の患者搬送車

消防庁によると、近年救急車の出場回数は増え続けており、2002年度には445万件にも及んだ。しかし「虫歯が痛む」「深爪した」「病院まで歩くのが苦痛」などという救急車を出動させる意味が全く無い不適切な要件も多く(いわゆるタクシーのような利用)、そのために本当に救急車が必要な症状のケガ人・病人を搬送するための救急車を出動することができず、多大な迷惑となっている。そのため、消防庁では救急車出動を有料化する検討をしており、これについて国民の間では、40%が有料化に賛成している(国政モニター お答えします―救急車の有料化について)。また、一定の条件の下、民間の患者搬送車に緊急自動車認定をおろす事も検討されている。また、自治体によっては使用の基準の広報活動や緊急性の薄い患者は民間患者搬送車への紹介等を行っている。また、悪質なケースの場合偽計業務妨害罪が成立することもある。

表記について

救急車は、消防法施行令第44条によると「救急自動車」と表記されており、特種用途自動車の緊急自動車の形状例示では「救急車」と表記されている。

関連項目

外部リンク

  • 特殊救急車(京成自動車工業株式会社)- スーパーアンピュランスについての解説。