ロアルド・ダール

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ロアルド・ダール
Roald Dahl
ロアルド・ダール、38歳の写真(1954年)
誕生 1916年9月13日
イギリスの旗 イギリス
ウェールズの旗 ウェールズ カーディフ
死没 (1990-11-23) 1990年11月23日(74歳没)
イギリスの旗 イギリス
イングランドの旗 イングランド オックスフォードシャー州オックスフォード
職業 小説家
脚本家
詩人
国籍 イギリスの旗 イギリス
ジャンル 短編小説
冒険小説
ファンタジー小説
児童文学
代表作 『チャーリーとチョコレート工場』
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ロアルド・ダール(Roald Dahl [ˈroʊəld ˈdɑːl]ノルウェー語: [ˈruːɑl ˈdɑːl]1916年9月13日 - 1990年11月23日)は、イギリス小説家脚本家

略歴[編集]

パイロット[編集]

カーディフランダフ地区にてノルウェー移民の両親のもとに生まれる。シェル石油で働き、タンザニアカナダにも行ったが、第二次世界大戦が始まってからはイギリス空軍の戦闘機パイロットとして従軍、5機撃墜を公認されエース・パイロットとなっている。1940年9月19日、搭乗していたグロースター・グラディエーター複葉戦闘機エジプトマルサ・マトルーフ近郊の砂漠で機位を喪失し不時着、重傷を負うも生還した。しかし、この際に脊髄を負傷した事による後遺症に生涯苦しめられた。後にこの事故はダールが発進前に受けた、誤った飛行ルート指示によるものと判明した。

作家[編集]

その後、アメリカに駐在中に与太話やパイロット時代の経験を元に小説を書くようになった。作家セシル・スコット・フォレスターが、取材のためにダールの飛行体験についてメモを書くよう依頼したが、ダールは話すより書く方が早いと思ってメモを作った。そのメモ(デビュー作の中の「簡単な任務」)の素晴らしさにそのままダール名義で出版されたことがきっかけでデビュー。1942年にはすでにグレムリンの話を書いていた(これをディズニー映画化しようとしたが頓挫)。風刺ブラックユーモアに満ちた短編小説や、児童文学で有名。

特に、「奇妙な味」と評されるダールの短編小説は、作家・評論家・翻訳家らへのアンケート結果によるミステリ・マガジン2007年3月号で、ミステリ小説オールタイム・ベストの短編部門第1位に輝いた『南から来た男』の他、『味』、『おとなしい凶器』などで、日常的な風景や会話の中に人間の心の奥底に潜む狂気をうかがわせ、高い評価を得た。1954年、短編集『あなたに似た人』でアメリカ探偵作家クラブ賞を受賞。

007シリーズで有名なイギリス人作家のイアン・フレミングの友人であり、映画『007は二度死ぬ』と『チキ・チキ・バン・バン』の脚本も手がけた。

家族[編集]

パトリシア・ニールとロアルド・ダール

1953年女優パトリシア・ニールと結婚した。ダールとの結婚前、彼女はゲイリー・クーパーと3年間不倫関係にあり、彼の子を妊娠したが、クーパーの妻はカトリック教徒であったため離婚に応じず、中絶せざるをえなかった。ニールはマスコミから袋叩きにあい、仕事も来なくなった。そんな時に彼女を可愛がっていた劇作家リリアン・ヘルマンの紹介によりダールと出会い結婚した。結婚後も女優を続け、アカデミー主演女優賞を受賞した。5人の子供に恵まれたが、妊娠中に脳卒中に襲われ、ダールの献身的な看護とリハビリのおかげで無事に出産し回復した。しかしダールは介護中に出会ったフェリシティー・クロスランドとの浮気を理由に1983年に離婚した。後にニールは自伝の結びに「自分の愛した男性はゲイリー・クーパーただ一人だった」と書いている。[1]

その後ダールはフェリシティー・クロスランドと再婚する。2人の間に子供はいなかったが、連れ子の長女オリヴィアが7歳の時に脳炎で亡くなり、息子セオは4ヶ月の時に交通事故で脳に障害を負った。ダールの死後、妻によってロアルド・ダール基金が設立された。ちなみにニールとの間に設けた子供たちは全員父になついていたため、その後もクロスランドのもとに集まったという。

エピソード[編集]

  • 宮崎駿はダールのファンであり、オマージュとして『紅の豚』や『風立ちぬ』で「銀河(天の川)」のような、「ヴァルハラへの昇天する飛行士たち」のエピソードを挿入した[2]。また、ダールのいくつかの日本語訳書において前書きや解説なども行っている。

主な作品・日本語訳書[編集]

短編集[編集]

  • Over to You: 10 Stories of Flyers And Flying(1946年)
  • Someone Like You(1953年)
    • 『あなたに似た人』 田村隆一訳(早川書房、1957年10月/ハヤカワ・ミステリ文庫、2000年)ISBN 978-4150712518
    • 『あなたに似た人 Ⅰ・Ⅱ』 田口俊樹訳(ハヤカワ・ミステリ文庫、2013年5月)ISBN 978-4150712594ISBN 978-4150712600
      • 『飛行士たちの話』に収録されている短編「あなたに似た人」Someone Like You(1945年)[3]と同じ題を通しタイトルにしているが、本作にはこの題の短編はない。
  • Kiss Kiss(1960年)
  • Switch Bitch(1974年)
    • 『来訪者』 永井淳訳(ハヤカワ・ミステリ文庫、1989年)ISBN 978-4150712549
    • 『来訪者 新訳版』 田口俊樹訳(ハヤカワ・ミステリ文庫、2015年7月)ISBN 978-4150712624
  • 『王女マメーリア』 田口俊樹訳(早川書房、1990年/ハヤカワ・ミステリ文庫、1999年)ISBN 978-4150712563
    • NEW ROALD DAHL'S COLLECTION OF SHORT STORIESの訳。日本オリジナル短編9作品

未収録短編[編集]

  • In the Ruins(1964年)
    • 「廃墟にて」: HMM'67.3
  • Ah, Sweet Mystery of Life(1974年)
    • 「ああ生命の妙なる神秘よ」: HMM'91.4

長編[編集]

  • My Uncle Oswald(1979年)
    • 『オズワルド叔父さん』 田村隆一訳(早川書房、1983年/ハヤカワ・ミステリ文庫、1991年)ISBN 4150712557

児童文学[編集]

以下の日本訳は評論社で刊行。2005年よりシリーズ新訳・文庫版『ロアルド・ダール コレクション』が刊行。

自伝的作品[編集]

  • Boy - Tales of Childhood (1984年)
  • Going Solo (1986年)
    • 『単独飛行』 永井淳訳 (早川書房、1989年) ISBN 4152034181
    • 『単独飛行』 永井淳訳(ハヤカワ・ミステリ文庫、2000年) ISBN 4150712581
  • My Year (1993年)
    • 『一年中ワクワクしてた』 久山太市訳、評論社 2000年9月 ISBN 4566010759
    • 『<ロアルド・ダール コレクション 20> 一年中ワクワクしてた』 柳瀬尚紀訳、評論社 2007年3月 ISBN 4566014290

アンソロジー[編集]

  • 『まるごと一冊 ロアルド・ダール』 田村隆一ほか訳、評論社、2000年10月 ISBN 4566010740
  • クリス・ポーリング『<ロアルド・ダール コレクション 別巻1> ダールさんってどんな人?』 スティーヴン・ガルビス 絵/灰島かり訳 2007年4月 ISBN 4566014304
  • 『<ロアルド・ダール コレクション 別巻2> 「ダ」ったらダールだ!』 ウンディ・クーリング 編、クェンティン・ブレイク 絵/柳瀬尚紀訳 2007年4月 ISBN 4566014312
  • 『<ロアルド・ダール コレクション 別巻3>  ダールのおいしい!?レストラン』 そのひかる訳、2016年9月 ISBN 4566014339

小冊子[編集]

  • Roald Dahl's Guide to Railway Safety(1991年), British Railway, ISBN 978-6132034410
    • 『ロアルド・ダールの鉄道安全読本』安藤陽訳、日本経済評論社、2001年。ISBN 9784818813892

ロアルド・ダール劇場[編集]

ロアルド・ダール劇場「予期せぬ出来事」(Roald Dahl's Tales of Unexpected)とは、ITVで1979年から放映されたドラマシリーズ。1988年まで全9シーズンが放送された。主にダール自身の短編小説を原作(他作家が原作の作品もある)とした1話完結/30分のミステリーで、本人が案内役で出演している。日本でも1980年から東京12チャンネル(現:テレビ東京)で放送された。現在、DVDが入手可能である。

脚本[編集]

出典[編集]

  1. ^ 『真実 パトリシア・ニール自伝』
  2. ^ 短編集『飛行士たちの話』(ISBN 978-4150712525)収録の『彼らは年をとらない』を参照。
  3. ^ アメリカ探偵作家クラブ(MWA)短編賞を受賞。

関連項目・文献[編集]

外部リンク[編集]