ギリシャの経済

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ギリシャの経済(ギリシャのけいざい)では、ギリシャ経済に関する事項を扱う。

失業率[編集]

ギリシャの失業率は2000年から2009年の期間では最悪でも11%で推移していた。EUに金銭支援を要請した2010年には12.8%に上昇、その2年後には24.4%にまで悪化してしまう。2014年には約26.5%となっている。この長期間の高失業率によって未来の経済成長率が低下することが懸念されている[1]IMFは2010年にギリシャ失業率の予測値を公表したが、それは極めて楽観的なものであった[2]

                      IMFが予測したギリシャ失業率 (%)                       現実のギリシャ失業率 (%)

国内総生産[編集]

2014年の一人当たりの名目GDPは22,317ドル[3]であり、世界平均の2倍を越えている。バルカン半島の国家の中では経済的に最も豊かな国であり、一人当たりの名目GDPはルーマニアやトルコの2倍以上、アルバニアの約5倍である。

2014年時のギリシャの実質国内総生産は2008年時の水準の約75%にまで低下している。IMFによる予測では2011年まで下げ基調で、以降ギリシャ経済は回復に向かうはずだった[2]。この予測は現実と大きくかけ離れた。 IMFは、緊縮財政政策がギリシャ経済に与える悪影響を過小評価していたことを認めた[4]

                      IMFが予測したギリシャ実質GDP(2008年度を100とした場合)                       現実のギリシャ実質GDP(2008年度を100とした場合)

産業[編集]

第一次産業[編集]

オリーブの木、タソス島にて。

農業では、オリーブ綿、葉タバコなど商品作物の生産が活発であるが、主食である小麦の生産は国内需給量をまかなうことができない。

2010年のギリシャの綿花生産量は欧州連合内最大で183.8千トンの生産量であった[5] 。また、コメの生産量は同第2位の229.5千トン[5]、オリーブの生産量も同第2位の147.5千トンであった[6]イチジクの生産量は同第3位の11千トン、スイカは578.4千トンであった[6]。また、たばこの生産量は同第4位の22千トンであった[5]国内総生産(GDP)に占める農業の割合は3.3%、労働人口の12%を占める[7]

ギリシャは欧州連合の共通農業政策における便益を享受している国の一つである。ギリシャが欧州連合の前身である欧州共同体(EC)に参加する際に、農業のインフラを整備した結果、農業生産高は上昇した。2000年から2007年にかけてギリシャにおける有機農業の生産高は885%上昇し、欧州連合内で最も高い上昇率であった[8]

2007年のギリシャの地中海における漁獲生産高は85,493トンであり欧州連合内第3位で約19%を占める[9]。また、地中海における漁船保有量は同第1位であり[9]、全体の漁獲生産高は87,461千トンであり同11位である[9]

第二次産業[編集]

鉱業では亜炭褐炭マグネシウムニッケルボーキサイト原油天然ガス、石材などの生産が行われている。

工業では、一次産品を利用したオリーブ油などの食品加工業や綿を中心にした繊維業などが盛ん。造船業、製鉄石油化学工業も発展を遂げている。

第三次産業[編集]

数多くの古代ギリシャ時代や東ローマ帝国時代の遺跡・遺構、エーゲ海の風光明媚な島々などの観光資源も多く、観光も重要な産業となっている。

公共部門[編集]

ギリシャには公務員が約100万人おり、総人口の約10%、全労働人口の25%を占めている[要出典][10][11][要高次出典]

ギリシャ経済危機 (2010年-)[編集]

2011年3月29日にアテネで行われた、緊縮財政の反対デモ。主催者発表では、10万人が参加したとされる。
CDS5年物スプレッドの推移。PIIGS5カ国のCDSスプレッド(ポルトガル(青緑)、アイルランド(青)、イタリア(茶色)、ギリシャ(橙)、スペイン(黄緑))の中でギリシャのスプレッドの拡大が突出しているのが分かる。因みにアイスランドは水色。
ギリシャとユーロゾーン平均のGDP対比債務残高

2009年10月、ギリシャにおいて政権交代が行われ、ゲオルギオス・アンドレアス・パパンドレウ新政権(全ギリシャ社会主義運動)下で旧政権(新民主主義党)が行ってきた財政赤字の隠蔽が明らかになった。従来、ギリシャの財政赤字は、GDPの4%程度と発表していたが、実際は13%近くに膨らみ、債務残高も国内総生産の113%にのぼっていた[12]

2010年1月12日欧州委員会がギリシャの統計上の不備を指摘したことが報道され、ギリシャの財政状況の悪化が表面化[13]

2010年1月15日、財政赤字を対GDP比2.8%以下にするなどとした3カ年財政健全化計画を閣議で発表するが楽観的な経済成長が前提であった[14]格付け会社は、相次いでギリシャ国債の格付けを引き下げ、債務不履行の不安からギリシャ国債が暴落した。株価も影響を受け、世界各国の平均株価が下落し、ユーロも多くの通貨との間で下落した[15]。2010年4月23日にはギリシャが金融支援を要請した。欧州連合ではユーロ圏諸国に対して、ユーロ経済圏の秩序維持のために起債上限額を制限している(安定・成長協定)。ギリシャは、こうしたルールを破ることとなったため、欧州各国が協調して問題に取り組むこととなったが、ドイツなどとの間で足並みの乱れも見られた[16]。欧州では、ギリシャのほか、スペインポルトガルなども財政赤字の拡大に苦しんでおり、こうした国へ飛び火することも懸念されたためである[17]

IMF欧州委員会ECBの3つはトロイカと呼ばれる。2010年からトロイカはギリシャに金銭支援を行っている[18]。その中でもドイツの融資割合はもっとも高い。トロイカは金融支援の条件としてギリシャに緊縮財政政策をとるように要求している。

2010年4月ユーロスタットが発表した財政赤字は2009年10月に発表された13%近くではなく13.6%であることが発表された[19]。2010年2月から断続的にストライキ、デモが行われており2月と3月には追加の財政再建策撤回を求めてギリシャ労働総同盟・ギリシャ公務員連合が24時間のゼネラル・ストライキを行い275万人が参加した[20][21]。メーデーのデモが行われデモ隊と警官隊が衝突、けが人が出る事態となる[22]。5月5日に行われたデモでは火炎瓶が銀行に投げ入れられ銀行員に死者が出る事件となった。犯行は無政府主義者とされている[23]

2011年7月25日格付会社ムーディーズは既に投機的等級にあるギリシャの格付けをさらに3段階引き下げ、従来の「Caa1」を「Ca」とした[24]

2011年9月28日、欧州委員会・国際通貨基金(IMF)欧州中央銀行(ECB)の3機関(トロイカ)で構成される合同調査団はアテネに戻り、ギリシャがデフォルト(債務不履行)回避に必要な次回融資を受けるにふさわしいかを判断するため、同国政府が最近合意した新たな緊縮措置や民営化計画の進捗について綿密に調査する見通しとなった[25]

2011年10月3日ギリシャ政府が、財政赤字削減目標未達となる見通しを発表したため、欧州金融市場は再び悪化した。これでギリシャが「ハード」デフォルト(債務不履行)となる可能性が高まった[26]

2011年10月12日ECBのトリシェ総裁は、債務削減合意を順守すれば、ギリシャはデフォルト(債務不履行)を回避できると述べた[27]

10月27日、欧州諸国は債務危機に対応するために、「ギリシャ債務の民間投資家の損失負担を50%とし、欧州金融安定ファシリティの融資能力を拡充するほか、2012年6月30日まで銀行の資本増強を決めた」[28]ものの、パパンドレウ首相が11月1日に第2次支援策の受け入れについて国民投票を実施すると発言したために、金融市場は再び不安定化[29]、内外での反発が強まった。11月2日にはアンゲラ・メルケルニコラ・サルコジの独仏首脳がパパンドレウ首相に対し、支援凍結とユーロ離脱をちらつかせながら圧力をかけ事態収拾に動いた[30][31]11月4日に国民投票を撤回[32]、翌11月5日にはパパンドレウ内閣の信任投票で僅差ながらも信任された[33]ものの、大連立交渉に失敗しパパンドレウは首相を辞任。11月11日、前欧州中央銀行副総裁のルーカス・パパデモスを首班とする大連立政権が発足した。このとき総選挙を2012年に繰り上げ実施することで連立政権内の合意ができていた。2012年5月ギリシャ議会総選挙では財政緊縮反対を掲げる左翼政党が大幅に躍進。連立交渉がまとまらず、翌月に再選挙(2012年6月ギリシャ議会総選挙)が行われることとなった。緊縮財政政策について政党により賛否がはっきりしているため、一連の選挙結果は欧州連合(EU)による金融支援を受けるのに不可欠である財政緊縮を堅持するか否かの動向に直結することから世界より注視されたが、6月の選挙では財政緊縮支持派の第1党が票を伸ばし連立政権の樹立に成功したことで、ようやく事態は沈静化へと向かうこととなった。

この一連の経済危機とその対策の不手際により、ギリシャの実質的な国内総生産は2009年から2012年の間に17%減少した[34]

2015年3月、ブラジル出身のPaulo Nogueira Batista IMF理事がテレビ出演し、ギリシャに対する融資がドイツとフランスの銀行を救済する目的だったことを理事たちが承知していた事実を漏らした[35]。4月9日、ギリシャはIMF に4億6200万ユーロを返済した[36]

財政問題[編集]

放漫な財政運営が続いた理由について白井さゆりは以下のように指摘している。

  1. 身の丈に合わない年金制度:「社会保障給付費」と「人件費」が利払い後歳出の7割を占める。年金給付水準が現役時代と大差なく他の先進諸国と比べて高いこと並びに年金受給開始年齢が早くて55歳前後であること
  2. 政権交代のたびに拡大を続けた大きな政府:王政崩壊後、政権交代があるたびに公務員としての雇用を増やしてきたことする。
  3. 脱税文化を持つギリシャ:脱税や税務署職員の汚職が蔓延しており徴税能力の低さにつながっている。例えば自営業者は一定水準の所得以下になると無税となることから領収書を発行しない、税務署職員に対する賄賂による脱税等である[37]

ギリシャ国民の納税意識については、様々な評論家等が言及を行っているが、2012年5月、国際通貨基金の専務理事が「ギリシャ人はみんな税金逃れをしようとしている」と発言した際には、ギリシャ国民から大きな反発を買っている[38]

ギリシャ国債[編集]

  • 2012年3月 10年国債の利回りは36.5%。
  • 2014年4月10日 ギリシャ国債発行で市場復帰

脚注[編集]

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  1. ^ Greece Comes to a Standstill as Unions Turn Against TsiprasN. Chrysoloras, Bloomberg, News, 12 Nov 2015
  2. ^ a b Greece:Staff report on request for stand-by arrangementIMF, Country report No. 10/110 (2010)
  3. ^ IMFの統計
  4. ^ IMF concedes it made mistakes on GreeceM. Steves and I. Talley, The Wall Street Journal, Europe, 5 June 2013
  5. ^ a b c Crops products (excluding fruits and vegetables) (annual data)”. Eurostat. 2011年10月19日閲覧。
  6. ^ a b Fruits and vegetables (annual data)”. Eurostat. 2011年10月19日閲覧。
  7. ^ The World Factbook”. 中央情報局. 2011年11月19日閲覧。
  8. ^ Sustainable development in the European Union (PDF)”. Eurostat (2009年). 2011年10月24日閲覧。
  9. ^ a b c Fishery statistics; Data 1995-2008 (PDF)”. Eurostat. 2011年10月20日閲覧。
  10. ^ “ギリシャへ3年間で14兆円融資 EUとIMF決定”. 朝日新聞. (2010年5月3日). オリジナル2010年5月4日時点によるアーカイブ。. http://web.archive.org/20100504192604/www.asahi.com/business/update/0503/TKY201005030001.html 2010年5月7日閲覧。 
  11. ^ “ギリシャ危機は日本への警鐘か”. 産経新聞. (2010年5月5日). http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/europe/387408/ 2010年5月7日閲覧。 
  12. ^ “ギリシャ財政危機 世界に影”. 産経新聞. (2010年3月7日). http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/europe/365797/ 2010年5月7日閲覧。 
  13. ^ “「ギリシャの財政赤字統計、修正が必要」=欧州委員会”. NTTスマートトレード. (2010年1月12日). http://www.nttsmarttrade.co.jp/market/2010/01/post_2851.html 2010年5月7日閲覧。 
  14. ^ “ギリシャ財政健全化計画、財政赤字GDP比を12年に2.8%へ引き下げ”. 朝日新聞. (2010年1月15日). http://www.asahi.com/international/reuters/RTR201001140125.html 2010年6月10日閲覧。 
  15. ^ “ギリシャの財政危機”. 毎日新聞. (2010年3月19日). http://mainichi.jp/word/news/20100319ddm007030016000c.html 2010年5月7日閲覧。 
  16. ^ “欧州委員長、ギリシャ支援の用意をあらためて示す”. ロイター. (2010年3月18日). http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-14395320100317 2010年5月7日閲覧。 
  17. ^ “スペインなどに財政危機波及も ギリシャ経財相が警告”. 共同通信社. (2010年2月3日). http://www.47news.jp/CN/201002/CN2010020301000267.html 2010年5月7日閲覧。 
  18. ^ Angela Merkel will be responsible for a Greek exit from the eurozoneD. Marans, The Huffington Post, 29 June 2015
  19. ^ 日本経済新聞 2010年5月8日
  20. ^ “ギリシャでゼネスト 二大労組が政府に攻勢”. 産経新聞. (2010年3月11日). http://sankei.jp.msn.com/world/europe/100311/erp1003111707005-n1.htm 2010年6月10日閲覧。 
  21. ^ “ギリシャ全土で最大規模ゼネスト  社会機能まひ”. 産経新聞. (2010年2月24日). http://sankei.jp.msn.com/world/europe/100224/erp1002242251007-n1.htm 2010年6月10日閲覧。 
  22. ^ “首都で「最大規模」デモ ギリシャ、警官隊と衝突 政府の追加緊縮策に反発”. 産経新聞. (2010年5月2日). http://sankei.jp.msn.com/world/europe/100502/erp1005020126000-n1.htm 2010年6月10日閲覧。 
  23. ^ “デモ隊の火炎瓶で3人死亡 ギリシャ一斉スト大混乱”. 朝日新聞. (2010年5月6日). オリジナル2010年5月7日時点によるアーカイブ。. http://web.archive.org/20100507015845/www.asahi.com/international/update/0505/TKY201005050167.html 2010年6月10日閲覧。 
  24. ^ ムーディーズ、ギリシャをさらに3段階格下げ「Ca」に2011年7月25日 ウォール・ストリート・ジャーナル
  25. ^ EU/IMF支援条件達成に向けたギリシャの取り組み2011年9月28日 ロイター
  26. ^ ギリシャ、デフォルト懸念深まる―財政赤字見通し悪化で2011年10月4日 ウォール・ストリート・ジャーナル
  27. ^ “ギリシャ、債務削減合意順守すればデフォルト回避可能=ECB総裁”. ロイター. (2011年10月12日). http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-23592020111012?sp=true 2011年10月12日閲覧。 
  28. ^ “欧州首脳:危機打開の包括策で合意-民間負担50%、基金最大5倍に(2)”. ブルームバーグ. (2011年10月27日). http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=a7sCJZ2N_FpQ 2011年11月5日閲覧。 
  29. ^ “ドラギECB新総裁、ギリシャ危機再燃でいきなり力量を試される展開に”. ロイター. (2011年11月2日). http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-23961120111102 2011年11月5日閲覧。 
  30. ^ 日本経済新聞 2011年11月4日朝刊
  31. ^ “ギリシャ次回融資、国民投票終了まで実行されず=仏独首脳”. ロイター. (2011年11月3日). http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-23974020111103 2011年11月5日閲覧。 
  32. ^ “ギリシャ、国民投票見送り 包括支援受け入れへ”. 日本経済新聞. (2011年11月4日). http://www.nikkei.com/news/headline/related-article/g=96958A9C9381E2E2E3E2E2E3E28DE2E6E3E3E0E2E3E39F9FEAE2E2E2;bm=96958A9C9381959FE2E7E2E2868DE2E7E3E3E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2 2011年11月5日閲覧。 
  33. ^ “ギリシャ議会:パパンドレウ政権の信任決議案を可決”. ブルームバーグ. (2011年11月5日). http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=agiR6VhV4uJQ 2011年11月5日閲覧。 
  34. ^ “ギリシャ危機が遺した負の遺産”. 日本ビジネスプレス (フィナンシャル・タイムズ). (2013年6月20日). http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38052 2013年6月20日閲覧。 
  35. ^ SOTT IMF's Director Batista spills the beans: Greek bailout was 'to save German and French banks' Wed, 04 Mar 2015
  36. ^ DebtNet IMFはギリシャへの融資で25億ユーロの儲け 2015/5/18
  37. ^ 白井(2010)pp.87-91
  38. ^ “IMFトップに猛反発=「税金逃れ」発言で―ギリシャ”. 時事通信 (時事通信). (2012年5月28日). http://www.excite.co.jp/News/economy_g/20120528/Jiji_20120528X953.html 2012年5月28日閲覧。 

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]