ジニ係数

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ジニ係数(ジニけいすう、: Gini coefficient)とは、主に社会における所得分配の不平等さを測る指標。ローレンツ曲線をもとに、1936年イタリア統計学者コッラド・ジニによって考案された。所得分配の不平等さ以外にも、富の偏在性やエネルギー消費における不平等さなどに応用される。

概要[編集]

ジニ係数のグラフ
ジニ係数は、ABの各面積の合計で割ったAの面積に等しい。すなわち、ジニ係数 = A / (A + B) となる。また、A + B = 0.5のため、 Aにも等しい (縦軸は0と1の間の値をとるため)

ジニ係数は、ローレンツ曲線と均等分配線(きんとうぶんぱいせん、: line of perfect equality)によって囲まれる領域の面積と均等分配線より下の領域の面積のとして定義される。均等分配線とは、所得の分布一様である場合のローレンツ曲線である。均等分配線より下の面積は 1/2 になるので、ジニ係数は均等分配線とローレンツ曲線が囲む領域の面積の 2 倍に等しい。あるいは、均等分配線より下の領域からローレンツ曲線より下の領域を除いた分の面積を 2 倍したものと表現することもできる。これはローレンツ曲線 L(F) の積分を用いて次のように表現できる。

ここで F は集団を所得が低い順に並べた際の、ある所得額を下回る集団の割合を表す。

ジニ係数がとる値の範囲は 0 から 1 で、係数の値が大きいほどその集団における格差が大きい状態であるという評価になる。特にジニ係数が 0 である状態は、ローレンツ曲線が均等分配線に一致するような状態であり、各人の所得が均一で、格差が全くない状態を表す。逆にジニ係数が 1 である状態は、ローレンツ曲線が横軸に一致するような状態であり、たった一人が集団の全ての所得を独占している状態を表す。

社会騒乱多発の警戒ラインは、0.4である。

留意点[編集]

ジニ係数は不平等さを客観的に分析・比較する際の代表的な指標の一つとなっているが、以下の点には留意する必要がある。

  • 同じジニ係数で示される状態であっても、ローレンツ曲線の元の形が著しく違えば、実感として感じる不平等さがまったく変わってくる可能性がある。
  • 税金社会福祉などによって再分配機能が充実した国の場合、初期所得(税引き前の給与)でのジニ係数と、所得再配分後のジニ係数が異なる。
  • 標本調査の場合、母集団からの調査対象の偏りが生じることがある。

使用例[編集]

ジニ係数を使って日本の所得分配の不平等度を計測している統計には、厚生労働省が実施している所得再分配調査がある。このほかにも、家計の所得・支出を調査している家計調査全国消費実態調査のデータを使って、ジニ係数が計算されている。

ジニ係数を計算するためには、個々の家計の所得を使ってローレンツ曲線を描く必要があるが、家計調査や全国消費実態調査などでは、ジニ係数の計算に利用できる公表データが、所得金額ごとや所得金額によって全体を5分割ないし10分割した世帯の平均値であったりする。こうした階層ごとの平均値を使って求めたジニ係数の近似値は、擬ジニ係数と呼ばれることがある。

日本の所得ジニ係数の推移[編集]

所得再分配とジニ係数 (等価再分配所得を基に)

右図は、厚生労働省の平成17年度所得再分配調査の結果から計算したジニ係数の1993 - 2005年までの推移である。それぞれ

  • 赤線は「直接税、社会保障給付金、現物支給」の再分配を考慮した所得のジニ係数
  • 青線は「社会保障給付金、現物支給」の再分配を考慮した所得のジニ係数
  • 緑線は当初所得のジニ係数

を示している。世帯人員数を考慮に入れた補正を行っている。

なお、この所得再配分調査は、当初所得老齢年金が含まれていないため、他の調査よりもジニ係数が高くなる。老齢年金を計算に入れた、国民生活基礎調査の結果に基づいて計算すると、ジニ係数は0.1ほど小さくなる。また、単身者世帯を調査対象に含まない全国消費実態調査に基づいて計算したジニ係数は、0.2ほど小さくなる。このように、ジニ係数は所得の定義や世帯人員数への依存度が大きいので注意が必要である。

上記、所得再分配調査の結果に寄れば、日本のジニ係数は、当初の高齢化によるとされる急激な上昇分を、社会保障の再分配によってほとんど吸収しているが、十分ではなく、日本の租税による富の再分配機能が弱まっているために、ジニ係数の上昇を早めている。原因として、中間所得層に対する税率が、経済協力開発機構(OECD)各国に比べて低すぎること、若年労働層に対する社会保障が、老人に比べると少ないことが明らかにされ、養育に対する財政支援も少ない事で、子育て世帯の貧困率を高めている可能性があることが指摘されている[1]

2008年の経済協力開発機構レポートでは、日本のジニ指数は1980年代より毎年上昇していたが、2000年以降の4年間にかけては、下落したと報告されている。しかしそれでも日本の貧困レベルは、OECD諸国の中で4番目に高いと指摘している[2]

厚生労働省が調査したところによると、2011年の所得再分配前のジニ係数は0.5536であったが、所得再分配後のジニ係数は0.3791となっている。0.5~0.6は「慢性的暴動が起こりやすいレベル」と言われ、社会騒乱多発の警戒ラインとされる0.4を所得再配分前の状態では上回っているが、税金などによる所得再配分機能により0.3791に抑えられており日本の所得の偏在は一定の秩序を保っているといえる[3][4]

世界各国のジニ係数の推移[編集]

2014年の各国のジニ計数。濃い赤が最もジニ計数が大きく、濃い緑が最もジニ計数が小さい。
第二次世界大戦後の世界各国の所得ジニ係数の推移
1820年–2005年の世界全体のジニ計数
世界全体のジニ計数[5][6][7]
1820 0.43
1850 0.53
1870 0.56
1913 0.61
1929 0.62
1950 0.64
1960 0.64
1980 0.66
2002 0.71
2005 0.68


注釈[編集]

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  1. ^ 内閣府経済社会総合研究所 Discussion Paper No.171 - 太田清「日本の所得再分配―国際比較でみたその特徴」(2006年12月)
  2. ^ Growing Unequal? Income Distribution and Poverty in OECD Countries (Report). OECD. (2008-08). ISBN 9789264044180. http://www.oecd.org/els/socialpoliciesanddata/growingunequalincomedistributionandpovertyinoecdcountries.htm. 
  3. ^ “市場のダイナミズム優先か再分配か、ピケティ著『21世紀の資本論』が巻き起こした大論争 (3/5)”. 日経BP. (2014年5月28日). http://www.nikkeibp.co.jp/article/matome/20140528/399513/?ST=business&P=3 2014年8月4日閲覧。 
  4. ^ ユースフル労働統計2015 ―労働統計加工指標集―|労働政策研究・研修機構(JILPT)
  5. ^ Evan Hillebrand (2009年6月). “Poverty, Growth, and Inequality over the Next 50 Years (PDF)”. FAO, United Nations – Economic and Social Development Department. 2012年7月29日閲覧。
  6. ^ Isabel Ortiz and Matthew Cummins (2011年4月). “Global Inequality: Beyond the Bottom Billion”. UNICEF. p. 26. 2012年7月30日閲覧。
  7. ^ Albert Berry and John Serieux (2006年9月). “Riding the Elephants: The Evolution of World Economic Growth and Income Distribution at the End of the Twentieth Century (1980–2000)”. United Nations (DESA Working Paper No. 27). 2012年7月30日閲覧。

関連項目[編集]