ウルトラ・スーパー・デラックスマン

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藤子・F・不二雄のSF短編 > ウルトラ・スーパー・デラックスマン

ウルトラ・スーパー・デラックスマン』は、藤子・F・不二雄(発表時は藤子不二雄名義)の読みきりSF漫画作品。

またここでは、パイロット作品といえる「カイケツ小池さん」についても紹介する。

ウルトラ・スーパー・デラックスマン[編集]

概要[編集]

S-Fマガジン1976年1月号に掲載。ブラックな内容と、主人公が小池さんと同じ顔であるミスマッチが、ブラックユーモアともギャグとも違うテイストを引き出している。小池さんと同じ顔を持つ、正義感は強いが非力な小市民が、ある日数々の超能力を持つ超人として目覚め、次第に歪んだ思いを振りかざす殺人鬼に変貌していく姿を描いた「カイケツ小池さん」のリメイクにあたる。個人の正義のエゴイズムとその先に待つ虚しさを描く。

ストーリー[編集]

句楽兼人(くらく・けんと)は月星商事(アニメでは日星(にっせい)商事)のサラリーマン。だが彼の正体は、弱者や困っている者を助ける正義の味方ウルトラ・スーパー・デラックスマンだった。真面目で正義感が強いが、度胸がなく社会の悪に鬱屈していた平凡なサラリーマンの句楽は、ある日突然、怪力、透視、飛行能力、核爆弾でも死なない不死身の肉体といった超能力を身につける。

登場人物[編集]

句楽兼人(くらく・けんと)/ ウルトラ・スーパー・デラックスマン
元は平凡なサラリーマン。正義感が強く世の中の不正に憤りを覚えていた。しかし非力ゆえに、悪を見て見ぬふりをする度胸のない自分に胸ふさがる日々を送っていた。ある日突然超人的な能力を身につけ、正義のために「ウルトラ・スーパーデラックスマン」として活躍をはじめるが、力のセーブがきかず、悪事を許せぬあまりに虫の居所によっては軽犯罪者に対しても過剰な殺戮を強行し、次第に世間の非難を浴びるようになる。すると「自分の力は正義のために授かった物だから自分に逆らう者は全て悪だ」という思考に至り、自分を糾弾・攻撃する警察や自衛隊やマスコミにも次々と攻撃を加えるなど、本来持っていた純粋な正義感は屈折し、その超人的なパワーを背景に周囲に対して理不尽な要求を繰り返し欲望のままに生きる暴君へと変貌していく。ただし友人である片山に対しては、「超能力者」になった故に孤独な環境となった寂しさや、「不死身」の苦悩を言葉に言い表せないでいた。ある時些細なことから句楽をしつこく狙った女を庇い、自分を糾弾した片山さえも粛清しようとするが、突如吐血し倒れる。診断の結果、「ウルトラ・スーパーデラックスがん細胞」という未知のがん細胞に体が蝕まれており、医師の努力もむなしく死を迎えた。名前は「スーパーマン」の主人公、クラーク・ケントをもじったもの。マントのデザインは原作では唐草模様の風呂敷だがアニメでは普通のものに変わっている。
片山(かたやま)
本作の主人公。句楽の同期社員であり親友。要領が悪く純朴な人柄のため出世できず、ダメ社員のレッテルを貼られる。アニメでは「しげお」という子供も登場する。ある日句楽に誘われ、妻の反対を押し切って彼の家に行く途中、ある出来事からウルトラスーパーデラックスマンの正体が句楽であることを知る。その後、句楽の豪邸にて彼から能力を手に入れた経緯と、今後についての悩みを聞かされていた。句楽の苦悩も理解できてはいたが、結局は暴君ぶりを改めようとしないため「正義の味方ではなく血に飢えた化け物」と糾弾するしかなく、彼を逆上させて殺されかけるが、結果的に句楽は吐血して倒れる。その後は搬送先の病院で句楽の死を見届けることになった。アニメでは最後に、句楽の病室にてウルトラ・スーパー・デラックスマンの服を見ては、原作でも理解していた句楽の苦悩を更に思案して、彼は平凡な一人のサラリーマンとして一生を終えたかったのだろうと考え至り、棺の中にその服入れるのはやめようと語るシーンが追加されている。
謎の女
句楽と片山の前に突然現れた名前・素性共に不明の女。付き合っていた男が句楽に殺されてから、句楽の命を狙っている。片山の制止も聞かずに執拗に句楽を攻撃した結果、自身を庇った片山と共に怒り狂った句楽に逆に命を狙われる。原作は目が隠れるほど長い髪にボロボロの服、素足でほとんど喋らない不気味な姿に対し、アニメ版では服はボロボロだが、髪は片目が隠れている程度で靴も履いていて、普通に喋る。

収録単行本[編集]

いずれも藤子・F・不二雄のSF短編を収録した短編集。

  • 「ウルトラ・スーパー・デラックスマン」
    • 『藤子・F・不二雄 SF短編PERFECT版』第3集

カイケツ小池さん[編集]

概要[編集]

ビッグコミック1970年4月25日号に掲載。「ウルトラ・スーパー・デラックスマン」のプロトタイプにあたる作品。最大の特徴は、主人公が念力で人を一瞬で殺すことが出来る事である。

ストーリー[編集]

つまらないことでも烈火のごとく怒る(東京都章が猥褻に見えるらしい)、正義感の強い投書マニアの主人公・小池生は、突然強力な超能力を身につけた。その力でヒーローらしく活躍していくが、ある日痴漢をパワーセーブできずに殺害してしまう。当初はその事で苦悩する小池だったが、その末に出した結論が「悪い奴が一人や二人死んだところで社会に損害は無い」という独善的な思考だった。その後、日頃から勤務を怠けている自分に対してきつく叱責する上司をはじめ、自分を散々馬鹿にしていたタバコ屋のおばあさんといった人々を次々と「くたばれ」という言葉から発する念力で瞬殺し、段々と殺人者に変貌していく。そんな小池には自分の心を癒してくれる女性がいた。その女性の名前は富士野雪子。いつものように彼女の家に行く小池だったが、そこで目のあたりにしたのは決して甘くない現実だった。

収録単行本[編集]

いずれも藤子・F・不二雄のSF短編を収録した短編集。

  • 「カイケツ小池さん」
    • 『藤子・F・不二雄 SF短編PERFECT版』第1集

アニメ[編集]

「藤子・F・不二雄のSF短編シアター」第3巻収録。

キャスト[編集]

スタッフ[編集]

主題歌[編集]

  • エンディングテーマ
    • 『スナオだからコワイ』 歌:GROUND NUTS
    • 作詞:前田カシ 作曲:鍋田健

原作との相違点[編集]

大きな相違点はないが、小さな点で以下のように異なっている。

  • SF短編シアターシリーズ全てに言えることだが、キャラクターデザインが異なっている。ただし句楽の顔はそのままである。
  • 句楽の家は原作より豪邸になっている。
  • 句楽の体が変化したのはラーメンを食べている最中ではなく、起床して窓を開けた時。また、怪力で壊したのは机ではなく、隣の家との間の壁。
  • 句楽を殺害しようと当局が彼の自宅に(付近住民を避難させた上で)小型核ミサイルを打ち込んだが、アニメでは特に説明が無い。
  • 句楽を襲う女性の武器が、大包丁ではなくナイフに、ハンマーではなく機関銃になっている。どちらも結果は原作と同じである。
  • 片山が寿司を食べようとするが、句楽が自分を襲った女性と付き合っていた男を惨殺したのを聞き、嘔気で声を漏らすシーンがある。
  • 句楽を説得しに来た文化人のうち、眼鏡の男がその後テレビの討論番組に出演し、「句楽はもはや正義の味方ではない」と非難するが、運悪く句楽に見られて彼に粛清されるシーンがある。
  • 句楽を襲う女性と付き合っていた男が、かっぱらいから、句楽から「悪口を言った」といいがかりをつけられて殺されたと変更されている。
  • 句楽が狂気に満ちた笑顔や高笑いと共に自分を襲った女性とそれをかばった片山を追いかける。また、地下道も原作では片山が見つけ隠れるためだったのに対し、アニメでは句楽を襲った女性が地下道を抜けて町へ出られることを前から知っており、そのために利用するというものになっている。
  • さらに片山に糾弾された句楽が、原作では「言ったな!」と逆上したのに対し、アニメでは引き続き狂気に満ちた笑顔で片山に対し「…お前も殺す。」と殺人予告をしては高笑いと共に片山や句楽を狙う女を生き埋めにしようとする。
  • 句楽が最期を迎える要因が、数年健康診断を受けていなかったことで発見が遅れたことになっており、冒頭にはその伏線が描かれている。