油圧ショベル

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一般的な油圧ショベル(前側、ボルボ・EC290B)
一般的な油圧ショベル(前側、ボルボ・EC290B)
一般的な油圧ショベル(側面)
一般的な油圧ショベル(側面)
ミニショベル(日立・EX30)
ミニショベル(日立・EX30)

油圧ショベル(ゆあつショベル)とは、油圧シリンダーにより作動する複数の腕状のもの(機械本体の基部から順にブーム、アーム)の先端にバケットを取り付けて掘削する自走式建設機械でいわゆる掘削機である。

概要

アーム先端に取り付ける作業装置は土砂等の掘削に適したバケットが標準であるが、バケットの代わりに各種アタッチメントに付け替えて様々な用途に使用でき、下部フレームにブレード(排土板)を装備した物もありブルドーザーのような整地作業もできる。油圧ショベルが登場する以前に鉱山や河川工事で用いられていた、ウインチでワイヤーを巻き上げ、巻き下げてブームとアームを動かしてバケットを前方に押し出して掘削するケーブル式ローディングショベルやドラグショベルが原型である。

下(後ろ)向きのバケットを取り付けてバックホーとして使うのがもっとも一般的だが、その他に、機体より上方の土砂を掘削して運搬車に積み込む作業に適した前向きローディングバケットや、圧砕機、鉄骨切断機を取り付けてビルの解体、コンクリートや道路のアスファルト、自然石を打撃により破砕するブレーカー等の多種多様なアタッチメントに交換でき非常に幅広い用途に使われる。

過去の労働安全衛生法および関連省令規則では、油圧ショベルで貨物を吊上げ運搬する行為に関する規定が設けられておらず、バケット等のアタッチメントに直接ワイヤーを掛け付けた吊り上げ作業でワイヤーが切断したり外れて吊り上げた貨物が落下して死亡事故が多発した為、クレーン設置が困難な狭隘な作業場所において地中埋設物の引き抜きや土留め支保工材を扱う場合に限り油圧ショベルを吊上げ作業に用いてもよいと指導されていたが、現在は関連省令規則が改定されて、省令規則の規定に合致する構造と安全装置を具備した「クレーン機能付油圧ショベル」でしか吊り上げ作業を認められていない。吊り上げられる重量は油圧ショベルの大きさで異なる[1]

呼称

油圧ショベルには、製造メーカーにより油圧式ショベルユンボバックホーパワーショベルドラグショベル等の商品名がつけられている。よくメディアで報道されるショベルカーなるものは存在しない。作業装置を除く機体質量が3トン未満のものは、ミニショベルさらに小型の機体質量が1トン未満のものはマイクロショベルと呼称されている。英語ではエクスカベーター (Excavator)。

広く使われている同義語・類義語には次のようなものがある。

油圧ショベル
1990年代に入ってから、社団法人日本建設機械工業会により新たに制定された統一名称である。
パワーショベル
小松製作所が商品名として用いた言葉が一般に広く普及したものである。
ショベルカー
新聞やテレビなどマスコミで使われることが多く、一般にも比較的よく知られた呼び名であるが、前述通り建設機械業界ではショベルカーなるものは存在しない。
ユンボ
もとはフランスの建設機械メーカーであるシカム社 (SICAM) の商標。新三菱重工業(現:三菱重工業)が技術導入して日本で生産・販売した結果、日本ではこの名前が広く普及した。現在では油圧ショベルを指す代名詞として現場などで使われている。
バックホー
バケットを機体側に引き寄せる方向に動かして作業するタイプの油圧ショベルを指す。ユンボ同様、工事現場ではよくこの名で呼ばれる。
ドラグショベル
「バックホー」と同意。専ら国土交通省など官庁の文書に使われ、日常使用することは少ない。
ローディングショベル
直訳すると「積み込みショベル」。主に大規模な鉱山採掘や河川掘進工事等の現場にて機体設置面(地表面)より上方の土砂を掘削して運搬車に積み込む作業で多用されている。作業装置の可動範囲は質量が同程度のバックホーと比べて狭く、高く上昇させたバケットを下方向きに回転して掬い取った土砂を排出することが出来ないため、バケット底部に設けたゲートを開閉して掬い取った土砂を排出する構造が多用されている。機体の大きさの割に作業装置の可動範囲が狭く、機体設置面(地表面)より下方の掘削には適さないので市街地や平野部では用いられ無い。油圧式では日本国内を含め世界的に機体質量数百トンから千トン程度の機種が多用されている。 
解体機
現代日本では油圧ショベルは建造物解体工事の主役となっているが、標準的な油圧ショベル(バックホー)は前下方への作業用に設計されているため、解体工事用に頭上方向への作業性を高めたモデルが各社からリリースされており、解体機と呼ばれる。通常の油圧ショベルが足元まで掘りやすいようブーム、アームが内側に屈曲しているのに対し、解体機は高所まで届くようリーチを伸ばすためほぼ直線形のブームや、さらに二重関節で可動範囲を広げた可動屈曲ブーム、中層建築物解体に特化した長大なブームとアームを持ち、作業装置到達高さが40メートルにも達するもの等、解体対象に応じて様々なタイプが存在する。

機構

クローラを含む下部フレームに対し操縦席を含む上部フレームが旋回する。旋回は油圧モーターで駆動し下部フレームの油圧機器には上部フレーム旋回中心部のスイベルジョイントにより油圧を伝える[2]

近年では街中の騒音を配慮し、騒音および振動に対する防止策などが講じられている。日本においては、国土交通省が低騒音型建設機械、超低騒音型建設機械の指定制度がある。

動力源

ほとんどの機械がディーゼルエンジン動力源としている。エンジンから得た動力を油圧ポンプ油圧力に変換し、油圧力を用いて走行・旋回およびブーム、アーム、バケット(アタッチメント)の操作を行う。

鉱山などで使われる機体質量100トン以上の大型機の中には、ディーゼルエンジンに直結した発電機で発電し、発電機から得る電力で油圧ポンプやギヤードモーターを駆動させて本体を動かす、ディーゼルエレクトリック駆動の油圧ショベルもある。

電気モーターを搭載し、外部電力を取り込んで油圧ポンプを駆動するタイプの油圧ショベル(通称:電機ショベル)もあり排気ガスを全く出さない。坑道や地下工事で多用されている。

エンジンにモーターとバッテリーまたはキャパシタを組み合わせた、ハイブリッド機の開発も盛んである。旋回を止める電力回生ブレーキの電力をキャパシタに蓄える事により、燃費を2割程度向上するという[2]

走行装置

多くはクローラによって走行するが、自動車のようなゴムタイヤを装備したホイール式もある。日本の建設土木現場ではほとんどがクローラ式であるが、道路工事ではホイール式が多用されている。海外では日本よりもホイール式の機種が多い。クローラー式でも金属製のクローラとゴム製のクローラがある。 なお、俗に言われるキャタピラーとは、後述する米国キャタピラー社の社名から来たものであり。本来は履帯若しくはクローラーと呼ばれる。

一般的にゴムタイヤ式はクローラ式より不整地での走行性や作業中の安定性に劣るが、アウトリガーや昇降排土板を備えた機種ではクローラ式よりも高い安定性を有する機種もある。また日本では大型特殊自動車として登録可能な機種が多く製造発売されており、登録すれば公道を自走して作業現場へ移動できるという利点がある。クローラ式のものは走行速度が極めて低い上に、路面を損傷する可能性が大きいので自動車登録は不可能であり、セルフローダートレーラー等の貨物自動車に積載して現場へ運ばなくてはならない。

油圧ショベルは現場に到着するとあまり場所を変えずに作業を行うところがブルドーザーなど他の多くの建設機械と異なっており、走行装置の損耗は少ない。

クローラの駆動は本体の油圧ポンプで走行装置の油圧モーターを動かして行っている。

アタッチメント

油圧ブレーカー
油圧ブレーカー
油圧クラッシャー
油圧クラッシャー
グラップル
グラップル

各種バケット

バケットの種類としては幅が狭い溝掘り用や広い軽作業用の他に以下の種類がある。

クラムシェルバケット
二枚貝のように開閉するバケット。掘削力が弱く硬質土掘削には適さないが、軟質土砂で深い穴を掘る作業に適している。国産では伸縮式アームと組み合わせて掘削深さ25メートルに達する機種が発売されている。クローラクレーンにクラムシェルを組み合わせたものより運転が容易かつ技能講習修了資格で操縦可能な上に、高価なワイヤーロープの損耗が僅少で、機動性にも優れているので、中小規模の深掘作業で採用が増えている。
法面バケット
幅が広く底部が平坦になっており、土手などの法面仕上げに使われる。
台形バケット
断面がV字型の溝を掘る時に使われる。
スケルトンバケット
底部が格子状になっており、解体コンリートガラと土砂を振るい分けたり、水中岩石の掘削に使われる。
リッパバケット
爪を太く長くしており、軟岩の破砕や破砕された岩石の掘削に使われる。
バケットクラッシャー
油圧モーターとふたつのジョーを備えたバケットで、硬い建築資材を粉砕できる。
生コンバケット
円錐形で底部が開き、生コン打設に使われる。

その他

アタッチメント専用の油圧配管ホースを装備し油圧を確保した機種でないと操作する事ができない。なお打撃系アタッチメント(ブレーカー)の操作には車両系建設機械運転者資格の "解体" が必要。

リッパ
抜根や岩盤の破砕、廃棄物の分別に使う太く長い爪。
油圧ブレーカー
タガネ(チゼル)の打撃で物を破壊する。コンクリート構造物の破壊、採石場での大岩石の小割り、道路工事のアスファルト岩盤破砕・溝堀などに使用する。発破作業が出来ないトンネル工事にも使用される。阪神大震災の復興には、高速道路解体岸壁解体などに活躍した。空気ハンドブレーカは欧米で開発されたものであるが、1957年ブルドーザに取り付けるために大型空気圧ブレーカが日本のNPKによって世界で初めて開発された、IPH-400が起源である(アイ・ピー・エイチ・400=アイヨン)の愛称で親しまれた。今はより効率のよい窒素ガスを封入した油圧式が主流となっている。
油圧クラッシャー
破砕機」、「圧砕機」、鉄骨切断機とも言う、巨大なペンチニッパービル高速道路などの解体に使われる。鉄筋コンクリート構造物を圧砕、内部の鉄筋を切断しながら解体を進める。用途により、「大割り」と「小割り」がある。大割り用は本体に回転機構(油圧または手動操作)を持ち、刃先の角度を変更できる(例えば梁を掴むときは刃先を垂直に、柱の場合は水平にする)。小割り用には磁石付の機種もあり、鉄筋の選別にも使われる。
ワニラー
ワニの口に似た形をしたアタッチメント。雑多な廃棄物や解体した建材を整理したりトラックに積み込む作業に適する。把握力は然程強くないので鉄骨やコンクリートを壊すことは難しいが、木造建築物程度なら破壊することもできる。
油圧カッター
鉄骨切断機とも言う、巨大なハサミ。鉄骨ビル、などの建造物切断解体や、廃車鉄道車輌航空機の解体に。
グラップル
剥いたミカンの皮を下に向けたような形状の開閉バケット。土砂よりも比重の軽い小粒物に適する。、廃棄物の積込や農林作業で使われているが、油圧ショベルの作業装置として使われている例は少ない。
ピラニアバケット
ピラニアの口のような形なのでこう呼ばれる。このアタッチメント1つでつかむ、掘る、積むの3役もこなせるので、主に木造家屋の解体工事で多用される。
リフティングマグネット
強力な電磁石により磁性のあるものを吸い付ける。金属の選別や鉄スクラップの移動に。電磁石の電源は油圧ショベル機体後部に搭載した発電機により得る場合が多い。
林業用ハーベスター
樹木の伐採、伐採木を掴んで送りながら小枝を切除、伐採木の長さを揃えて切断(玉切)の一連の作業が行える[2]

出力制御方法

油圧ショベルは出力の制御も主に油圧を用いて行っており、以下のような制御の方式が用いられている。 油圧ショベルの制御は基本的に油圧ポンプの吐出圧を一定の圧力に固定し、各アクチュエーターに必要な流量を供給するようにポンプの流量を制御する。

  • オープンセンタ・ネガティブコントロール制御
  • オープンセンタ・ポジティブコントロール制御
  • クローズドセンタ・ロードセンシング制御

それぞれの制御方法のオープンセンタ、クローズドセンタとは油圧回路を制御する弁の集合体であるコントロールバルブの構造に由来している。

オープンセンタ方式では、センターバイパスと呼ばれる回路が無負荷状態では解放され油圧がタンクに流れ込むのに対し、クローズドセンタ方式では無負荷状態ではセンターバイパスは閉じており油圧はタンクに帰らない。

オープンセンタ方式ではアクチュエーターに油圧が送られるとセンターバイパスの流量が減るため、センターバイパスの圧力が下がる。無負荷状態では逆にセンターバイパスの圧力が上がる。

このため、オープンセンタ方式ではセンターバイパスの圧力を取り出し、ポンプの流量を制御する。具体的にはネガティブコントロール制御では、センターバイパスの圧力が下がれば、負荷がかかっていると判断してポンプ流量を増やし、センターバイパスの圧力が上がると流量を減らす制御を行う。

操作方法

主に運転者の足元から出ている2本のレバーと、両手の近くに配された2本のジョイスティックレバーを用いて操作する。これらのレバーを大きく傾ければ機械は速く動き、小さく傾ければゆっくり動く。

足元から出ている2本のレバーでクローラを操作する。多くの場合このレバーに直結されたペダルもあり、このペダルでも同様の操作が可能である。

運転者の両手近くにある2本のジョイスティックレバーを縦横に操作して、左右旋回、ブーム上げ下げ、アーム曲げ伸ばし、バケット掘削開放の4つの操作を行う。機種によってはバケット以外の作業装置を装備しているので、それらを操作するためのレバーやペダルが追加されている。アタッチメントの操作は床に設置したペダルを使用するものと、作業機の操作レバーにボタンを追加するものがある。

スロットル(アクセル)の操作はレバー式、ダイヤル式、速い・普通・遅い・アイドリングのボタン式など、メーカー・機種によってまちまちである。スロットルが全開でもレバーを少ししか倒さなければ作業装置はゆっくり動くので、自動車と違ってスロットルを頻繁に操作することはしない。レバーを一杯に倒してもまだ動きが遅いと感じたときに開き、騒音や燃料消費を抑えたいときに閉じる程度である。

クローラの操作

クローラの操作は統一されている。片手でも両手でも操作できるよう、運転席の前方中心部に前後方向に操作できるレバーが2本隣合わせに配置される。

運転席を備えた上部旋回体は360度旋回可能なため、上部旋回体の向きによってレバーの操作が逆になるので注意が必要である。(「前進」は下部フレームに取り付けられている走行モーターが後方に位置している状態)

  • 両方のレバーを同時に前へ倒せば前進する。
  • 両方のレバーを後ろへ倒せば後退する。
  • 片方のレバーだけを操作すれば旋回する。
  • 片方のレバーを小さく、もう片方のレバーを大きく倒せばカーブしながら前進する。
  • 両方のレバーを互い違いに操作すれば超信地旋回する。
左クローラ前進 右クローラ前進
      ↑ ↑
      ○ ○
      ↓ ↓
左クローラ後退 右クローラ後退

作業装置の操作

2本のレバーの縦横の動きそれぞれにどの操作を割り当てるかは、かつてはメーカーごとにまちまちであったが、現在ではメーカー出荷時の操作方法はJISに定められた方式に統一されている。

作業現場では他の方式に変更されていることも多いが、現在ではJIS方式と、俗にコマツレバーと呼ばれる方式の2つにほぼ集約されているが、大きなゼネコンなどの現場ではJIS方式厳守である。

JIS方式

標準操作方式、ISOパターン、横旋回とも呼ばれる。バケットを横へ動かすときは横に、縦に動かすときは縦に左レバーを操作するという直感的で分かりやすい操作方法である。コマツパターン・日立パターンが普及している地域によっては「横旋回」とも言う。

      アーム伸ばし           ブーム下げ
        ↑                ↑
    左旋回←○→右旋回     バケット掘削←○→バケット開放
        ↓                ↓
      アーム曲げ            ブーム上げ

コマツパターン・日立パターン・住友パターン

JIS方式と比べて、右レバーは同じだが、左レバーの上下と左右が逆転している。「縦旋回」とも呼ばれる。JIS方式と人気を二分している。レバーの動きと機構の動きが一致しないため、分かりやすさではJIS方式に劣るが、小刻みに操作することの多いアームを操作しやすい横のレバー操作で操るので慣れた後の作業性は高い。例えばバケットに付いた土砂を振るい落とす動きを例に取ると、コマツパターン・日立パターン・住友パターンでは、左右のレバーを内側に寄せたり外側に倒したりを繰り返せばよいが、JIS方式では左右非対称の操作になってしまい操作しにくい。

       右旋回             ブーム下げ
        ↑                 ↑
 アーム伸ばし←○→アーム曲げ   バケット掘削←○→バケット開放
        ↓                 ↓
       左旋回             ブーム上げ

三菱パターン

他の方式と違って右レバーで旋回するので特に注意が必要である。また、アーム操作の上下およびバケット操作の左右(掘削・開放)も逆である。

      ブーム下げ            アーム曲げ
        ↑                ↑
 バケット開放←○→バケット掘削     左旋回←○→右旋回
        ↓                ↓
      ブーム上げ              アーム伸ばし

旧コベルコパターン

三菱と同じく右レバーで旋回するので特に注意が必要である。また、バケット操作の左右(掘削・開放)も逆である。

      ブーム下げ            アーム伸ばし
        ↑               ↑
 バケット開放←○→バケット掘削        左旋回←○→右旋回
        ↓                 ↓
      ブーム上げ              アーム曲げ

旧ナカミチ(中道)パターン

JIS方式と旋回・バケットのレバー操作が逆である。現在では見かけることは稀である。

      アーム伸ばし           ブーム下げ
        ↑                ↑
 バケット開放←○→バケット掘削     左旋回←○→右旋回
        ↓                ↓
      アーム曲げ            ブーム上げ

旧ヤンマーパターン

JIS方式に近いが、左レバーの上下が逆転している。現在では見かけることは稀である。

      アーム曲げ            ブーム下げ
        ↑                ↑
    左旋回←○→右旋回       バケット掘削←○→バケット開放
        ↓                ↓
      アーム伸ばし           ブーム上げ

操縦者

日本では、労働行為として油圧ショベルの作業運転を行う者は、労働安全衛生法に基づく車両系建設機械(整地・運搬・積込・掘削用)(機体重量3t以上は「車両系建設機械運転技術技能講習」を修了して修了証を交付された者、3t未満では「車両系建設機械特別教育」を受講済の者)である必要がある。また、大型特殊自動車登録された機体を公道で運転する場合は大型特殊自動車運転免許を交付された者に限られる。

尚、クレーン機能付油圧ショベルでは、吊り荷の玉掛け作業及びクレーン作業運転には、それぞれの資格(玉掛け及び小型移動式クレーン運転技能講習)が別途必要となる。

特殊な形式

掘削用

アームを旋回させる掩体掘削機
右側へ車体をローリングさせた様子

コマツが陸上自衛隊向けに開発した掩体掘削機掩体壕塹壕などの掘削作業を想定し、自社製品をベースにアームの360度回転や車体を左右に傾斜させる機能を追加している。

双腕式

日立建機製の双腕作業機「ASTACO」(東京消防庁仕様)

一般的な油圧ショベルは作業装置が一本であるが、日立建機は現場作業の多様化に合わせ双腕式の油圧ショベル「ASTACO(アスタコ)[3]」を開発した。二本の作業装置を利用して、対象物を掴んだまま切断したり、長い物などを折り曲げるなど、一本の作業装置では出来なかった作業に対応している。作業装置の操作は人間の腕の動きに合わせた専用レバーを使う独自方式で、JIS方式や日立パターンなどは全く違う。

精密作業が可能な双腕式は建設現場だけでなく災害救助にも効果を発揮するため、東京消防庁ハイパーレスキューが災害救助用として導入した[4]

また日立建機では自社の「ZAXIS135US」に副腕を追加した「ASTACO NEO」も開発している。副腕は主たる作業装置の補助として使うもので、二本とも同じブームとアームの作業装置を備えた「ASTACO」とは構造が違うが、操縦方式は同じである。

運転者の資格区分は不明。

遠隔操縦

油圧ショベルを目視で無線操縦する試みは各メーカーにより行われていたが、国土交通省が推進する情報化施工の一環として[5]、GPSによる位置情報と車体に取り付けたセンサから得た情報と、工程表や施工図のデータを統合し、作業地点まで自動走行したり作業ガイドや警告を端末に表示するシステムが提唱され、各社からシステムが販売されている[6]

国土交通省は大規模災害への対策として遠隔操縦式の建設機械を普及させるため、河川事務所や地方整備局を通し業者向けの施工見学会[7]や、分解空輸に対応した油圧ショベルを使った訓練を実施している[8]

ヤンマー仮想現実技術と電気駆動を組み合わせ、遠隔操作を前提とした屋内・災害現場用のコンセプト機を発表している[9][10]

無線を使用する場合には使用者の負担を減らすため免許を要しない無線局が利用される。

メーカー

日本のメーカー及び、日本に輸入されているもの

  • 日立建機 : 海外メーカーと提携せず独自技術で油圧ショベルを製造。以来小型から超大型までを手掛ける。0.28 - 1.00㎥の油圧ショベルをクボタOEM供給も行っている。
    • 全油圧式としては世界最大級の800t級ショベルがカナダで稼働している[11]
    • 2012年現在、双腕式を唯一製造している。
    • グループ会社の日建(旧山梨日立建機)では一般作業用ショベルに転用可能な地雷除去機を開発販売しており、世界的にトップシェア。
  • 小松製作所 : 米国ビサイラス社と提携していた。マイクロショベルから大型機までを手掛け、海外では700t超級も扱っている。
  • 住友建機 : ミニショベルからは撤退し、7t級 - 80t級まで。油圧ショベルベースの応用機、特殊仕様機も多い。
  • キャタピラージャパン : 米国キャタピラー社の日本法人。ミニクラスから大型80t級までラインナップ。ミニショベルの一部機種はクボタから調達、自社ブランドで販売している。100tを超えるクラスは自社生産をとりやめていたが、ビサイラス社を買収(2011年)しCATブランドの超大型が復活。
  • 加藤製作所 : 他社と提携せず独自で開発。現在は8t級の中型から40t級の大型までを手掛ける。かつては5t未満のミニクラスや、60t超級の大型もあった。
  • コベルコ建機 : ドイツのリープヘル社、米国P&H社と提携。現在はマイクロショベルから大型までを手掛ける。油圧ショベルベースの応用機、特殊仕様機も多い。
  • IHI建機 : 現在は8tクラスまでのモデル中心。かつては米国コーリング社と提携し大型もあった。また一時期コーリング社へOEM供給も行っていた。
  • 竹内製作所 : ミニショベルを日本で最初に手掛けたメーカー。
  • クボタ : かつてはドイツATLAS社と提携し、中型油圧ショベルを製造していたが、現在はミニショベルに重点。
  • ヤンマー : 農機のイメージが強いが、10t程度のクラスまでを手掛ける。
  • 北越工業(エアマン) : コンプレッサが主力ながらミニショベルも手掛ける。
  • 長野工業 : 日本よりも海外での販売が多い。
  • イワフジ工業 : 戦後に中島飛行機の解体を受けて中島飛行機黒沢尻工場が岩手富士産業となり、その後イワフジ工業として存続。竹内製作所と同じ時期にミニショベルを開発したが、現在は主に林業に特化した特殊仕様機を製造。
  • リープヘルドイツ) : 油圧ショベルをベースとした、スクラップハンドラーが輸入されている。
  • TEREX-FUCHS : 油圧ショベルをベースとした、スクラップハンドラーが輸入されている。
  • MB Japan : イタリアを本社に置く世界を代表する建設機械アタッチメントメーカーの日本法人。
  • いすゞ - 油圧ショベル自体は製造していないが、多くの製造会社にエンジンを供給している。
  • 株式会社オノデラ (北海道苫小牧市)- 油圧ショベル用のアタッチメントの製造を手掛けている。

なお、ピラニアバケットの名称は同社の登録商標である。

過去に製造していたメーカー(日本のみ)

  • 油谷重工 : フランスのポクレン社と技術提携。ミニチュア(トミカ)にもなって販売されたホイール式油圧ショベルのTY45が有名。のちに神鋼コベルコ建機と合併してブランド消滅。
  • 日本製鋼所 (JSW) : ドイツO&K社と技術提携。大型では40tを超えるモデルも存在した。提携終了後自社技術で開発を続けるも、のちに製造終了。最盛期には海外他社へのOEMも行っていた。製造は日本製鋼所東京製作所で行われていた。
  • 三菱重工業 : フランスのシカム社と技術提携してユンボを製造。のちに6t級より上のモデルは新キャタピラー三菱(現在のキャタピラージャパン)に統合。
  • 古河鉱業(古河機械金属): 自社で設計・製造。のちにIHIから供給を受けるが、途中より日立からに変更。古河ロックドリルが建設機械の販売を終了するまでOEMがあった。
  • ホクト建機 : かつて長野県に本社を置き設計、製造していた。ミニショベルのみ。
  • 日産機材(ハニックス工業) 
  • 高木鉄工所
  • 山口農機製作所(ウインブルヤマグチ)
  • 東洋運搬機 (TCM) : フランスPINGON社と提携し14Cを製造していた。またミニショベルを販売していたこともある。

油圧ショベルをテーマとした作品

備考

メーカーは納品先から指定が無い限り車体色を統一しており、日立建機はオレンジ、コマツとCAT、住友、KATO、は黄色、コベルコは黄緑である。

脚注・出典

関連項目