内閣情報調査室
内閣情報調査室(ないかくじょうほうちょうさしつ、Cabinet Intelligence and Research Office)は、内閣官房の内部組織の一つ。略称は内調(ないちょう)、CIRO(サイロ)。正式名称は内閣官房内閣情報調査室。
概要
内閣の重要政策に関する情報の収集及び分析その他の調査に関する事務(各行政機関の行う情報の収集及び分析その他の調査であって内閣の重要政策に係るものの連絡調整に関する事務を含む)をつかさどる情報機関である。その事務は内閣情報官が掌理する。
日本には他にも情報機関として公安調査庁、公安警察(警察庁警備局他)、国際情報統括官組織(外務省)、情報本部(防衛省)などがあるが、内閣情報調査室は内閣官房の中に置かれており、内閣の政策に関わる情報の収集・分析を行うことにその特徴がある。
沿革
- 1952年(昭和27年)4月9日 - 総理府内部部局組織規程(総理府令)の一部改正により、総理府の組織として内閣総理大臣官房調査室が新設される。
- 1957年(昭和32年)8月1日 - 内閣法(法律)の一部改正、内閣官房組織令(政令)の施行及び総理府本府組織令(政令)の一部改正により、内閣総理大臣官房調査室が廃されるとともに、内閣官房の組織として内閣調査室が設置される。
- 1977年(昭和52年)1月1日 - 内閣調査室組織規則の施行により、内閣調査室の内部体制が総務部門、国内部門、国際部門、経済部門、資料部門の5部門となる。
- 1986年(昭和61年)7月1日 - 内閣官房組織令の一部改正により、内閣調査室が廃されるとともに、内閣情報調査室が設置される(5部門体制は継承)。
- 1996年(平成8年)5月11日 - 内閣情報調査室組織規則(以下「規則」という)の一部改正により、内部体制に内閣情報集約センターが加えられる。
- 1999年(平成11年)3月1日 - 規則の一部改正により、内部体制に情報収集衛星導入準備室が設置される。
- 2001年(平成13年)
- 2004年(平成16年)4月1日 - 規則の一部改正により、情報管理部門が廃される。業務は総務・国内・国際の3部門に分散承継。
- 2008年(平成20年)4月1日 - 規則の一部改正により、内閣情報分析官が新設され、内閣衛星情報センター管制部を技術部に改編。カウンターインテリジェンス・センターを設置。
組織
内閣情報調査室は4部門・2センターに分かれており、総務部門、国内部門、国際部門、経済部門、内閣情報集約センター、内閣衛星情報センターがある。 内閣衛星情報センターを除く4部門・1センターは内閣情報官と次長両者の管理下に属するが、内閣衛星情報センターは内閣情報官の管理にのみ属し他の部署より1ランク上(次長とほぼ同格)の扱いであり、自前のセンター所長・センター次長の下にさらに内部組織(分課・副センターなど)を持ち、情報収集衛星の管理・分析などを統合的に行っている。この他に、カウンターインテリジェンス機能を強化するため、内閣情報官をセンター長とするカウンターインテリジェンス・センターが設置されている。
長は内閣情報官(中央省庁再編に伴い「内閣情報調査室長」に替えて設置)。その下に管理職たる内閣審議官(次長1人)、内閣参事官(所要の人数)、内閣情報調査室調査官(9人)、内閣情報分析官(5人)が置かれ、さらにそれらの事務を整理する内閣事務官(所要の人数)が業務に従事している[1]。
辞令上、「専任者」と「他省庁との官職併任者」がおり、時局に応じて専門知識を持つ出向者等を柔軟に受入れて人事配置できるようにするため、室内の所属職員数は法令では限定されていない。業務の内容から警察官僚の出向者も多い。
2005年(平成17年)4月1日時点での所属職員数(併任者を含む)は、内調プロパー(生え抜き)約70人、警察庁からの出向派遣者約40人、公安調査庁からの出向派遣者約20人、防衛庁からの出向派遣者約10人、外務省、総務省、消防庁、海上保安庁、財務省、経済産業省等から若干名の計約170人(第162回国会 衆議院安全保障委員会における政府参考人の答弁より[2])。
内閣情報官┬次長┬┬総務部門 │ │├国内部門 │ │├国際部門 │ │├経済部門 │ │└内閣情報集約センター │ └内閣情報分析官 └内閣衛星情報センター カウンターインテリジェンス・センター
- 総務部門:人事、予算、室内の総合調整などを扱う
- 国内部門:日本国民の意見の収集分析や日本国内の新聞・放送・雑誌などの論調分析を行う
- 国際部門:日本国外の政策に関する情報分析や新聞・放送・雑誌などの論調分析を行う
- 経済部門:日本国内外の経済状況の分析を行う
- 内閣情報集約センター:大規模災害など緊急事態における情報の集約・分析・連絡とその体制整備を行う。
- 5個班が24時間体制で内閣に入る大災害や重大な事故・事件に関する情報を処理している。防衛省、警察庁、消防庁、海上保安庁、気象庁等と直通のホットライン等で結ばれている。職員は主に防衛省、警察庁、消防庁、海上保安庁からの出向者で組織されており、情報集約センターが受け付けた通報は内閣総理大臣に報告され初動対応態勢が整えられる。首相官邸の地下には内閣危機管理センターがあり、初動対応時における内閣の指揮所になる。初動体制が整えられると内閣危機管理センターに内閣危機管理監と、これを補佐する内閣官房副長官補以下所要の職員(旧内閣安全保障・危機管理室構成員に相当)が参集する。
- 内閣衛星情報センター:下記で詳述
代 | 氏名 | 在任期間 | 前職 | 後職 | 備考 | |
---|---|---|---|---|---|---|
内閣総理大臣官房調査室長【総理府事務官】 | ||||||
1 | 村井順 | 1952.4.9 - 1953.4.1 | 国家地方警察本部 警備部警備課長 |
国家公安委員会出向 | 国家地方警察警視長兼任 | |
2 | 1953.4.1 - 1953.12.18 | 専任 | ||||
事代 | 鈴木耕一 | 1953.12.18 - 1954.1.27 | 事務代理 | |||
3 | 木村行藏 | 1954.1.27 - 1955.7.1 | 国家地方警察本部 警務部人事課長 |
警察参事官(警察庁警務部付) →1955.10.15広島県警察本部長 |
||
4 | 古屋亨 | 1955.7.1 - 1957.8.1 | 警視庁総務部長 | 内閣官房内閣調査室長 | ||
内閣官房内閣調査室長【内閣調査官】 | ||||||
1 | 古屋亨 | 1957.8.1 - 1962.5.8 | 内閣総理大臣官房調査室長 | 総理府総務副長官(事務担当) | ||
2 | 石岡實 | 1962.5.8 - 1964.7.28 | 九州管区警察局長 →警察庁警務局付 |
内閣官房副長官(事務担当) | ||
事代 | 吉村又三郎 | 1964.7.28 - 1964.7.31 | 内閣官房内閣調査室次長として 内閣官房内閣調査室長事務代理 |
|||
3 | 本多武雄 | 1964.7.31 - 1966.3.5 | 皇宮警察本部長 | 関東管区警察局長 | ||
4 | 大津英男 | 1966.3.5 - 1971.1.22 | 警察庁警務局長 | 退職 →1971.5.1日本道路公団監事 |
||
5 | 川島廣守 | 1971.1.22 - 1971.11.25 | 警察庁警務局長 | 内閣官房副長官(事務担当) | ||
事代 | 原富士男 | 1971.11.25 - 1973.11.27 | 内閣官房内閣調査室次長として 内閣官房内閣調査室長事務代理 |
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6 | 富田朝彦 | 1973.11.27 - 1974.11.26 | 警視庁副総監 | 宮内庁次長 | ||
事取 | 川島廣守 | 1974.11.26 - 1974.11.29 | 内閣官房副長官(事務担当)として 内閣官房内閣調査室長事務取扱 |
|||
7 | 渡部正郎 | 1974.11.29 - 1977.8.20 | 内閣総理大臣官房広報室長 兼内閣官房内閣広報室長 |
退職 | ||
事代 | 伊達宗起 | 1977.8.20 - 1977.8.23 | 内閣官房内閣調査室次長として 内閣官房内閣調査室長事務代理 |
|||
8 | 下稻葉耕吉 | 1977.8.23 - 1979.2.2 | 大阪府警察本部長 →警察庁警務局付 |
警察大学校長 | ||
9 | 森永正比古 | 1979.2.2 - 1980.8.18 | 警察庁刑事局保安部長 | 退職 | ||
10 | 福田勝一 | 1980.8.18 - 1982.5.20 | 警視庁副総監 | 警察庁警務局長 | ||
11 | 鎌倉節 | 1982.5.20 - 1984.2.17 | 警視庁副総監 | 警察大学校長 | ||
12 | 谷口守正 | 1984.2.17 - 1986.7.1 | 大阪府警察本部長 | 内閣官房内閣情報調査室長 | ||
内閣官房内閣情報調査室長【内閣調査官】 | ||||||
1 | 谷口守正 | 1986.7.1 - 1987.6.16 | 内閣官房内閣調査室長 | 退職 | ||
2 | 大高時男 | 1987.6.16 - 1989.6.30 | 皇宮警察本部長 | 退職 | 「高」ははしご高(髙) | |
3 | 森田雄二 | 1989.6.30 - 1992.9.1 | 警察庁長官官房長 | 退職 | ||
4 | 金田雅喬 | 1992.9.1 - 1993.3.8 | 警察大学校長 | 警察大学校長 | ||
5 | 大森義夫 | 1993.3.8 - 1997.4.4 | 警察大学校長 | 退職 | ||
6 | 杉田和博 | 1997.4.4 - 2001.1.5 | 警察庁警備局長 | 内閣情報官 | ||
内閣情報官 | ||||||
1 | 杉田和博 | 2001.1.6 - 2001.4.1 | 内閣官房内閣情報調査室長 | 内閣危機管理監 | ||
2 | 兼元俊徳 | 2001.4.1 - 2001.4.26 | 警察大学校長 | 退職 | ||
3 | 2001.4.26 - 2003.11.19 | |||||
4 | 2003.11.19 - 2005.9.21 | |||||
5 | 2005.9.21 - 2006.4.1 | |||||
6 | 三谷秀史 | 2006.4.1 - 2006.9.26 | 警察庁警備局外事情報部長 | 退職 | ||
7 | 2006.9.26 - 2007.9.26 | |||||
8 | 2007.9.26 - 2008.9.24 | |||||
9 | 2008.9.25 - 2009.9.16 | |||||
10 | 2009.9.16 - 2010.4.2 | |||||
11 | 植松信一 | 2010.4.2 - 2010.6.8 | 大阪府警察本部長 | 内閣官房参与 | ||
12 | 2010.6.8 - 2011.12.27 | |||||
13 | 北村滋 | 2011.12.27 - | 警察庁長官官房総括審議官 |
内閣衛星情報センター
英称:Cabinet Satellite Intelligence Center(略称CSICE)。「中央センター」、「情報分析センター」とも呼ばれる。日本国の安全の確保、大規模災害への対応その他の内閣の重要政策に関する画像情報の収集を目的とする情報収集衛星の運用、情報収集衛星により得られる画像情報の分析その他の調査に関する事項及び情報収集衛星以外の人工衛星の利用その他の手段により得られる画像情報の収集及び分析その他の調査に関する事項を担当する組織。東京都新宿区市谷本村町に所在している。定数は219名(2011年7月現在)[3]。
1999年に設けられた情報収集衛星導入準備室が発展し、2001年に設置された。情報収集衛星は2003年3月28日にH-IIAロケットで光学1号機とレーダ1号機が、2006年9月11日に光学2号機が、2007年2月24日にレーダ2号機と光学3号機実証衛星が、2009年11月28日に光学3号機が打ち上げられた。光学衛星とレーダー衛星の2組4機で運用する。
組織編制
- 所長(将で退職した幹部自衛官が、内閣事務官として務める[4])
- 次長(警察庁から警視監が出向、官名は内閣事務官(内閣官房内閣審議官))
- 管理部(総務課、会計課、運用情報管理課)
- 分析部(管理課、主任分析官5人)
- 技術部(企画課、管制課、主任開発官3人)
- 総括開発官1人(警察庁技官の出向)
- 副センター(別称・北浦副センター:中央センターのバックアップ、撮影データのメイン受信局。茨城県行方市長野江)
- 北受信管制局(別称・苫小牧受信管制局:副センターの受信域外のカバー。北海道苫小牧市)
- 南受信管制局(別称・阿久根受信管制局:副センターの受信域外のカバー。鹿児島県阿久根市)
- 副センターなど施設の銘板に別称を使用している例もあるが、規則上・辞令上の正式な名称は左記のものである。
データ
- 利用目的
- 外交・防衛等の安全保障及び大規模災害等への対応等の危機管理のために必要な情報の収集(外交等の安全保障及び危機管理)
- 利用省庁
- 首相官邸、内閣官房、外務省、防衛省、警察庁、公安調査庁、国土交通省(海上保安庁、国土地理院)、経済産業省、消防庁など
代 | 氏名 | 在任期間 | 前職 |
---|---|---|---|
1 | 國見昌宏 | 2001.4.1 - 2005.3.31 | 防衛省情報本部長 →1999.12.10退職 |
2 | 小田邦博 | 2005.4.1 - 2008.8.31 | 航空自衛隊航空総隊司令官 →2004.8.30退職 |
3 | 椋木功 | 2008.9.1 - | 防衛省情報本部長 →2008.3.24退職 |
内閣情報会議
日本国や日本国民の安全に関する情報のうち、内閣の重要政策に関するものについて、官邸と外交・防衛・治安等の情報を担当する省庁が緊密に連携して情勢を総合的に把握するため、原則として年2回開催される内閣情報会議が設置されている。この内閣情報会議の下には合同情報会議、情報収集衛星推進委員会、情報収集衛星運営委員会が置かれており、内閣情報調査室はこれらの会議の運営を担当している。
情報調査委託団体
内閣官房から情報調査委託費が交付されている団体[5]
※は補助金依存型公益法人(国から交付された補助金等が年間収入の3分の2以上を占める公益法人)
- アジア動態研究所
- アジア問題研究会
- 海外事情調査所
- 社団法人共同通信社
- 株式会社共同通信社
- 国際経済調査会
- 国際問題研究会
- 株式会社時事通信社
- ジャパン・オバシーズ・ニューズ・センター
- 東京出版研究会
- 社団法人東南アジア調査会(平成15年(2003年)度末に世界政経調査会と統合)
- 内外事情研究会
- 日本社会調査会
- 日本文化研究所
- 日本放送協会
- 社団法人民主主義研究会(平成15年(2003年)度末に国際情勢研究会と統合)
- 財団法人ラヂオプレス
関連項目
脚注
- ^ 内閣情報調査室パンフレット(抜粋)
- ^ 第162回国会 衆議院安全保障委員会第6号 議事録、2005年4月8日
- ^ 衆議院議員吉井英勝君提出大規模災害時における情報収集衛星の活用に関する質問に対する答弁書、2011年(平成23年)7月8日受領 答弁第286号
- ^ 日本共産党の吉井英勝は歴代所長が退職自衛官である理由について回答するよう政府に質問主意書を提出している。大規模災害時における情報収集衛星の活用に関する質問主意書、2011年(平成23年)6月30日提出 質問第286号
- ^ 内閣府本府等所管公益法人一覧
- ^ 国会会議録検索システム
- ^ 内閣 平成16年度省庁別財務書類