質問主意書
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質問主意書(しつもんしゅいしょ)とは、国会法第74条の規定に基づき、国会議員が内閣に対し質問する際の文書である。
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[編集] 質問と質疑の違い
国会においては、国政全般に関して内閣の見解をただす行為を質問と呼び、会議(本会議、委員会等)の場で議題となっている案件について疑義をただす行為を質疑と呼ぶ。 質疑は口頭で行うものであるのに対し、質問は緊急質問(国会法第76条)の場合を除き、文書で行うことが原則である。緊急質問に対して、文書(質問主意書)を用いて行う質問を、特に文書質問と呼ぶ。
[編集] 質問主意書の処理
質問主意書は、まず所属議院の事務局に提出され、議長の承認を得たのち、内閣に転送される。ただし、非公式には、議院事務局に提出された直後に院内の内閣総務官室に仮転送されており、内閣総務官室は、質問の項目ごとに答弁の作成を担当する省庁の割振りを仮決めし、各省庁にその適否を照会する。
各省庁は、仮決めされた割振りに異議がある(所管の誤りがある、他省庁と共同でないと答弁できないなど)場合は、照会から60分以内にその旨申し立て、省庁間及び内閣総務官室との協議を経て、仮転送当日のうちに割振りを決定する。
事実上、議院事務局に対する質問主意書の提出に時間制限がないため、国会開会中は、全省庁において答弁書の作成に関与しうる立場にある職員(ひとつの課で数人~十数人程度)は、自省庁に割り振られ、あるいは自らが担当すべき主意書が提出されないことが確認できるまで待機を要求され、もし担当が決定すれば、国会法第75条の定める7日以内という答弁の期限に間に合わせるため、すぐに答弁案の作成に着手しなければならない。
答弁案の作成に対する省庁の関与には、
- 執筆(答弁案の作成、閣議請議手続など)
- 合議(他省庁の作成した答弁案の内容確認、修正など)
- メモ出し(他省庁の答弁案作成に必要な資料の提供、答弁案の内容確認、修正など)
の各形態がある。答弁作成が複数省庁にまたがる場合は、最も質問主意書の主題と関係が深いか答弁の重要な部分を担当することとなった省庁が、全体の取りまとめを行う。
作成された答弁案は、原則として、仮転送から2ないし3日(営業日ではなく、休日・祝日を含む暦日。以下同じ)で、執筆した各省庁の法令担当課及び内閣法制局において、質問に対する適確さ、現行法令との整合性、用語・用字などにわたる審査と修正を終了する必要がある。その後、内閣総務官室、与党国会対策委員長への内容説明などののち、仮転送から6ないし7日後の閣議決定を経て、正式な答弁書として提出議院の議長に提出される。
なお、答弁作成のために大量の資料を要するなどの事情があって、上述の期限内に答弁できない場合は、その理由と答弁することができる期限を、閣議決定のうえ、議長に対して文書で通知しなければならない。
以上の「案文執筆~省庁内・内閣法制局審査~根回し~閣議決定」という事務手続は、分量的にも内容的にも、政令の制定手続に相当するものだといわれている。通常、政令の制定には、省庁内審査の開始からでも1~2か月を要するといわれているから、これを1週間程度の短期間で終えなければならない質問主意書の処理が、担当者に極めて強度と密度の高い労働を要求することは、想像に難くない。
[編集] 質問主意書に関する議論
上述のとおり質問主意書制度は、通常の国会質疑の場でなくとも政府の見解を質したり情報提供を求めたりすることができ、議席の少ない野党や無所属議員にとって有用な政治活動の手段であると評価されることが多く、実際にこの制度を積極的に利用する野党が増えている。また、質問主意書によって政府見解が明確になったり、政府の問題が明らかとなったりするメリットもあるとされる。2005年度は新党大地の鈴木宗男衆議院議員がこの制度を利用し外務省内のセクハラ事件などの情報を引き出した。
その一方で、質問主意書制度に関し、「行政の阻害要因となっている」との問題点も指摘されている。質問主意書の答弁を作成する場合、担当省庁は内閣法制局の審査を受け、閣議決定を受けなければならず、案件によってはさらに関係各省との調整も経なければならない。これにより、政府部内での作業が膨大に増え、本来業務が停滞し国民にとって損害となる、との指摘がある。
また、国会議員が単なるデータ調査の目的でいちいち質問主意書を提出し、行政機関の処理能力をはるかに上回る作業を強いることにより、行政の停滞や国民へのサービスの低下を招く、との指摘もある。さらには、配偶者の著述活動や弁護士業務に用いる資料を収集するためと思しき質問主意書が提出されるなど、国会議員の権利濫用が疑われるケースもある。そのため、7日以内に回答しなければいけないという規定を逆利用し、行政側が回答を拒否したケースもある。
民主党の長妻衆議院議員が2003年年6月6日に提出した「国の施設に入るテナントの選定及び適正使用料等に関する質問主意書」の場合、国の施設に入るテナントを省庁等別、店舗別に、1.店舗名、2.店舗を運営する法人等名、3.国との契約主体名、4.店舗の業種・内容、5.店舗が支払う月額使用料と支払先名、など13項目にわたり調査させた。[1]
2003年9月30日に回答が受領されたが、ページ数で1525ページ、pdfファイルで129MBという巨大なものであった。しかしながら本回答がその後の立法・政策立案に役立たせたという記録はない。
このように近年は、「質問が抽象的・意味不明で答弁の作成が困難」「論点が絞り込まれていないため答弁の分量が膨大になる」「一般向けの書籍や各省庁のWebサイトなどで公表済みの情報を要求する」といった、答弁を作成する行政機関が答弁書作成の負担を負うべきか疑問視される質問主意書の提出が目立つ。
政府内部のみならず、行政外部の有識者からもこうした指摘が出てきたことを受け、細田博之官房長官(当時)は2004年8月5日の記者会見で、民主党の長妻昭代議士の質問主意書を手に取り、「『自分は質問主意書日本一だ』と自慢して、選挙公報に出している人までいる。非常に行政上の阻害要因になっている」と発言し、質問主意書制度の運用の見直しに着手することを表明した。
これに対し野党は「国政調査権の制限である」と強く反発し、民主党の川端達夫国会対策委員長(当時)は「国民の負託を受けてわれわれが要求することに、(官僚が)徹夜してでもしっかりと対応するのは当然だ」と発言し、与野党の議論が紛糾した。その後の与野党の協議の結果、衆議院の議院運営委員会で、「事前に主意書の内容を各党の議院運営委員会の理事がチェックする」ことで合意した。 しかし、2009年3月2日に民主党山井和則衆議院議員が提出した内閣総理大臣に関する質問主意書は「参議院議員は内閣総理大臣になることができるのか。」など、国会の権能に関する常識レベルのことまで内閣への質問として提出されており[2]、民主党が事前チェックをしているとは信じがたい。
[編集] 諸外国との比較
ただし、諸外国との比較でみると、日本の質問制度はあまり活用されているとはいえない[3]。イギリス議会で1年間に5万件以上、フランス議会でも計1万5000件以上の、文書による質問が行われ[3]、政府統制の手段として有効活用されているのに対し、日本の衆参両議院では合計しても千件以下である。これについては制度の違いも大きく、例としてイギリスにおいては新たな作業や調査に一定以上のコストがかかる質問については、政府側は回答を拒否することもできる[4]。また回答期日を指定しない質問が大多数で、指定するものであっても回答期日が7日以内という急なものではない(例えば国会審議での口頭の質問でさえ、実質的には10営業日以前に通告することが求められる。)。さらに閣議決定のような大規模な手続きも必要なく、政府に過剰な負担がかからないような制度設計をしたうえで、大量の質問を受け付け処理している。
- 参考先例
- 衆議院先例集先例第415「質問主意書で資料を要求するものは、受理しない。議員の質問は、国政に関して内閣に対し問いただすものであるから、資料を求めるための質問主意書は、これを受理しない。」
- 参議院先例録先例第368「単に資料を求めることを目的とする質問主意書は、受理しない。内閣に対し資料を求めることは質問ではなく、また、内閣に対する資料の要求は、議院又は委員会の議決によることを要するので、単に資料を求めることを目的とする質問主意書は、受理しない。」
[編集] 脚注
- ^ 国の施設に入るテナントの選定及び適正使用料等に関する質問主意書
- ^ 平成二十一年三月二日提出 質問第一七八号
- ^ a b 大石眞2001『議会法』有斐閣アルマ
- ^ 木原誠二2002『英国大蔵省から見た日本』文藝春秋

