パイルドライバー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。14.13.18.160 (会話) による 2016年3月6日 (日) 08:31個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (→‎リバース・パイルドライバー)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

パイルドライバーのアニメーション

パイルドライバーPiledriver)とはプロレス技の一種、およびその派生技の総称。日本語名称としては、脳天杭打ち(のうてんくいうち)と呼ばれる。

概要

パイルドライバーには様々な派生型が存在するが、相手の頭を自分の膝の間に挟みこんだ状態で持ち上げ、真っ逆さまに落とすというのが基本形である。重機杭打ち機(パイルドライバー)で杭を打つようにして技をかけることからこの名がつけられた。元祖が誰であるかは諸説あるが、少なくとも日本においてはルー・テーズが開発したとされている(テーズ式パイルドライバー)。固有の名前を有する多くの派生技が存在し、必殺技(フィニッシュムーブ)としても広く用いられている。

基本的にはプロレスでしかみられない技ではあるが、2002年8月28日開催のDynamite!にて行われたボブ・サップアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラの一戦では、ノゲイラのタックルをサップがパイルドライバーのような形で返すという場面があった。

派生技

ドリル・ア・ホール・パイルドライバー

ドリル・ア・ホール・パイルドライバー

相手に正対して立ち、前に屈ませた相手の頭部を両方の太ももではさみこみ、相手の胴を抱え込むようにクラッチして持ち上げ、そのまま脳天から垂直にマットに叩き付ける。俗に「パイルドライバー」「脳天杭打ち」といえばこの技を指し、後述するテーズ式を除く全てのパイルドライバー系の技の元となった技。1950年代のアメリカのスターレスラー、バディ・ロジャースが決め技として使用しポピュラーになった。バディ・オースチンは、試合中にこの技で新人レスラーを2人殺してしまったとして、「キラー」というニックネームが付けられた(実際には誰も死亡させていない[1])。オースチンのパイルドライバーは、相手の頭を腿ではなく膝付近で固定、胴体をクラッチせず、タイツをつかんで引っ張り込むように落としていた。

ツームストーン・パイルドライバー

アンダーテイカーによるツームストーン

ボディスラムの要領で相手を逆さまに抱え上げ、頭部を膝の間に挟みこむ。そのまま両膝を曲げた状態で落下し、膝をつくと同時に相手の脳天をマットにたたきつける。その形から別名墓石落とし(はかいしおとし)、墓石式脳天杭打ち(はかいししきのうてんくいうち)とも呼ばれる。ドリル・ア・ホール・パイルドライバーとは相手の体の向きが逆(互いの腹が向き合う)になる。現在は、抱え上げてから一度、持ち方を変えて相手の胴を抱く形にし、ジャンプして叩き付けるタイプがこの名称で呼ばれている。イギリスが発祥といわれ、ビル・ロビンソンダイナマイト・キッドなどの欧州系レスラーが得意とし、初代タイガーマスクジ・アンダーテイカーなどが自身のフェイバリット・ホールドとしていた。アンドレ・ザ・ジャイアントもモンスター・ロシモフ時代に使用していたが、1972年にターザン・タイラーの首を折って以来みずから禁じ手とした。メキシコのルチャリブレではマルティネーテと呼んでおり、マットが硬いために頸椎を損傷する恐れがあるということで、全面的に禁止技に指定されている。アメリカでも最大のメジャー団体であるWWEをはじめ、禁止している団体が多い。WWEではジ・アンダーテイカーとケインが使うことがあるがこの場合は実際にはマットに叩きつけず腿に挟んだままで落としているものと思われる。また、持ち方を変えない形の方は、カール・ゴッチが得意とし、1964年3月オハイオ州でのディック・ザ・ブルーザー戦や、新日本プロレス旗揚げ当初のアントニオ猪木戦でも使用している。なお、その後は初代ブラック・タイガーの正体であるローラーボール・マーク・ロコが得意技として、日本では暗闇脳天落とし(くらやみのうてんおとし)、略して暗闇脳天とも呼ばれた。掛け手と受け手の体勢が上下対称になるため、掛けられている側が足をばたつかせて掛けている側の後方へ重心をかけて相手の胴を抱えたまま足から着地し、逆にツームストーンを見舞う返し方が存在し、時には互いにツームストーンの体勢のまま回転を繰り返す攻防が見られる。

ゴッチ式パイルドライバー

基本的にはドリル・ア・ホール・パイルドライバーと同一系統の技であるが、ドリル・ア・ホール〜のほうが相手の胴を持って上げるのに比べ、ゴッチ式は相手の足の付け根で両手をクラッチさせることに違いがある。しかし名称に出てくるカール・ゴッチ自身は、あまり使用していなかったとの説がある。現役選手では鈴木みのるが主な使い手。ゴッチ自身の解説によれば、「相手の足の付け根に両腕を回すことによって、体勢が崩れずに相手の脳天を垂直に打ちつけることができる」とのこと。これは胴に手を回して持ち上げ体勢が崩れた場合、無理に技を続けると相手の首が前に突っ込むように落ちてしまい頸椎を損傷しやすいことを防ぐ意味もあるのだという。一方鈴木みのるは、アマレスの「がぶり」を切るクラッチの一種で「テコの原理」を用い、重い相手でも持ち上げやすいからこの形を使い初めたと解説している。

テーズ式パイルドライバー

通常のパイルドライバーは相手の頭を両膝で挟み込むが、テーズ式は相手の胴を両手でクラッチして持ち上げ、単純にマットへと叩きつける。パワーボムの原型となった技であり、その名の通りルー・テーズが現役時代に使っていた(ただしゴッチ式とは異なり、現在同型の技を「テーズ式」と呼称することは少ない)。リバース・スラムとも呼ばれ、テーズ本人によればスタンプホールドの一種であり、パイルドライバーとは別の技だとしている。アントニオ猪木も同型の技をモンスターマンとの異種格闘技戦で使用している。

リバース・パイルドライバー

相手の頭を前にしたうつぶせ状態にして肩に担ぎあげたあと、頭を下に向けて胴体を両腕で抱え込んで、尻餅をつくようにしながら落とす技。相手の身体の向きはツームストーン・パイルドライバーと同じで、落とし方はドリル・ア・ホール・パイルドライバーと同じになる。

使い手は多く、ミスター雁之助ファイアーサンダージャマールRO'Zサモアンドライバー北尾光覇キタオ・ドリラーTARUTARUドリラージャイアント・バーナードバーナードライバーなど、各自オリジナルの名称でフィニッシュ・ホールドとして使用している。

この技はその形そのものからして受け手の首に与えるダメージを逃がすことが出来ないため、非常に危険であり、WCWに遠征していた蝶野正洋が同型の技を一時期使用していたスティーブ・オースチンにこの技を決められ頸椎を痛めたほか、後年オースチン自身もまたオーエン・ハートの同じ技を喰らって頸椎に重傷を負った。北尾の引退後に弟子筋に当たるTARUがTARUドリラーとして使用しているが、かける相手をほぼ軽量級の小柄な選手に限って、相手の頭部がほとんどマットに当たらないようにコントロールしている。天山広吉の必殺技であるTTDも原型はこの形であるが、危険すぎたため現在は通常のツームストーン式やみちのくドライバーIIに近い、途中で後頭部から落とす形を使用している(ビッグマッチ限定で「オリジナルTTD」として封印を解くことがある)。丸藤正道は2015年12月23日の鈴木みのる戦の終盤で、ゴッチ式パイルドライバーを得意とする鈴木に対し、ゴッチ式と同じクラッチをした股間に腕を通して固定する形のリバース・パイルドライバーを公開している。

スタイナー・スクリュー・ドライバー

略称はSSD。相手をブレーンバスターの要領で抱え上げてからリバース・パイルドライバーの様に落とす。スコット・スタイナーが元祖であり名称もそれに由来するが、非常に危険な技であるためか一時期を境にスコット本人は使用しなくなっている。齋藤彰俊デス・ブランドアジャ・コングアジャ・ドライバー高岩竜一タカイワ・ドリラー石井智宏イシイドリラーの名称で使用する。

ハイジャック・パイルドライバー

タッグ時の連携技で、スパイク・パイルドライバーとも呼ばれる。一人がパイルドライバーの体勢で抱え上げ、もう一人が相手の両足を掴んで叩きつける力を加える。通常のパイルドライバーにより速いスピードで力がこめられて叩きつけられる。元祖は山本小鉄星野勘太郎のヤマハ・ブラザーズ。その後アドリアン・アドニス&ボブ・オートン・ジュニアを経て、維新軍団(特に長州力アニマル浜口)のタッグの際に多用されて流行技となった。エプロンやコーナーなどの段差を利用する。超獣コンビスタン・ハンセン&ブルーザー・ブロディ)のこの技を喰らってジャイアント馬場が負傷し、連続試合出場記録が途切れた。190cmを越える巨漢のハンセン&ブロディが繰り出す場合の破壊力は絶大で、馬場が場外で足腰に力が入らなくなるほど。なお、全日本プロレス中継のメインアナウンサー倉持隆夫は、この技を「ツームストンパイルドライバー」と呼称していたが、誤り(そもそもツームストンパイルドライバーのツームストンはツー・ムストンではなくツーム・ストン)。

カナディアン・デストロイヤー

カナディアン・デストロイヤーのアニメーション(赤色が掛け手)

ピーティー・ウィリアムズが考案した技。相手に正対して立ち、前に屈ませた相手の頭部を両方の太ももではさみこみ、相手の胴を抱え込んだ(ドリル・ア・ホール・パイルドライバーを掛けようとする姿勢)体勢から、そのまま前方へジャンプし、空中で前方へ一回転して相手を頭部からマットへ突き刺すパイルドライバー。房総ボーイ雷斗ライトニング・ストームKzyCDJU―Tロタシオンとして使用する。類似技で、相手を落とすとき、頭部からではなく背面から落とすものがある。

エクスカリバー

相手が突っ込んできたところを懐に飛び込むようにして抱え、そのままツームストーン・パイルドライバーの体勢に移行し、その勢いで旋回しながら相手を頭頂部から叩き付ける。鈴木鼓太郎のオリジナル技であり、「ガンダム殺法」の一種。

なお女子プロレスラーのKAORUが同じ名前の技を使うが、技自体はみちのくドライバーIIに類似したものであり、全く別のものである。

男色ドライバー

相手の頭をタイツへ入れ(と言うより、ふらついている相手がなぜかタイツに吸い込まれる)て行うパイルドライバー。男色ディーノの得意技で、物理的な衝撃以上に精神的ダメージが強い。派生形として、ゴッチ式やツームストーンなどの形でも行われる。通常は3枚はいているタイツの1枚目と2枚目の間に頭が挟まれるが、3枚目と体の間に挟まれると「男色生ドライバー」となる。

漫画『キン肉マン』の主人公・キン肉マンが同型技を「パンツドライバー」として使った。現実の世界では、HWWA(一橋大学世界プロレスリング同盟)のブランコオギーソが90年代初から学生プロレスのリング上で使用。なお、大森隆男とのシングルマッチでディーノが男色ドライバーを仕掛けた際、逆に大森がディーノのタイツに頭を突っ込んだままアックスギロチンドライバーを繰り出しフォールを奪ったが、こちらも「パンツドライバー」として報道された。

安全式パイルドライバー

お笑いプロレス団体の西口プロレスに所属する三平×2の得意技。

相手を抱えて持ち上げるのではなく、相手に頭を軸に倒立してもらい、相手の足に自らの頭を挟んで、そのままパイルドライバーを決めるもの。

むろん相手にダメージはない。

さらに相手の頭の下に座布団を敷いてあげる事で『超安全式パイルドライバー』となる。

シットダウン式パイルドライバー

Kzyが韻波句徒として使用(チキンウィングで)

架空の派生技

以下はプロレスや格闘技を題材にした漫画対戦型格闘ゲームなどでみられるパイルドライバーの派生技である。得てして物理法則に反し、現実世界で目にできる技ではない。

キン肉ドライバー

漫画『キン肉マン』の主人公・キン肉マンの技。空中に放り投げた相手の両足を掴んで股裂きしつつ上下にひっくり返し、さらに相手の両脇をそれぞれ足で踏みつけながらマットに叩き付ける。キン肉マンの「火事場のクソ力」により落下スピードが上がることで足のフックを完璧なものとする。それだけに気力が充実していないと空中で外される可能性がある。作中では変形のツームストーン・パイルドライバーとされており、続編の『キン肉マンII世』では「疾風迅雷落とし」という別名もつけられた。

スクリューパイルドライバー

対戦型格闘ゲームストリートファイター』シリーズに登場するキャラクター、ザンギエフの必殺技。相手を抱えてジャンプし、きりもみ式に回転しながら上昇しなおかつ回転を維持したまま落ちる技。

後にベルトスクロールアクションゲームファイナルファイト2』やプロレスゲーム『マッスルボマー』でマイク・ハガーも使用している。

現実のプロレスではケニー・オメガヨシヒコを相手にザンギエフの得意技であるファイナルアトミックバスターのフィニッシュとして披露したが、今のところ人間相手には使用されていない。

パイルドロップ

特撮番組『仮面ライダー (スカイライダー)』の主人公スカイライダーの技。映画『仮面ライダー 8人ライダーVS銀河王』で使用。技の原理はキン肉ドライバーとほぼ同じだが、こちらはスカイライダーの特技である垂直飛びと技への捻りも含まれているため、威力は大きい。相手の怪人を直接は倒せなかったが、その技が致命傷となるほど。

脚注

  1. ^ Wrestler Profiles: "Killer" Buddy Austin”. Online World of Wrestling. 2010年8月8日閲覧。

関連項目